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Detective Chinguji Tokimeki


Episode1


 ――事件は、超人たちのホーリーランド、秋葉原電気街の一角にある、小さな公園で起こった。
 普段は、漢買い帰りで、かばんにいやんな同人誌やら、超人ゲームやらPCのパーツなどを、むやみやたらに大きい鞄に詰めなおす超人や、名物おでん缶で昼食を取る超人しか立ち寄らずにひっそりとしている公園が、今夜に限っては、多くの人間で埋め尽くされていた。お決まりの制服に身を包んだ彼らは、警察関係者だった。
彼らに囲まれるように、公園の中心部に、頭から血を流して倒れている死体。
 それを見下ろしながら、難しい顔で現場を観察する、古ぼけたトレンチコートを身に纏った、アフロヘアが特徴的な、一人の男が居た。
 秋葉原署捜査一課のY2y。若手のホープと期待されている男だった。
 その脇で、十二人の妹フィギュアストラップ付き携帯をいじりながら、目を通す男――同じく捜査一課新米刑事、葉月弥生が、空いた片方の手で広げたメモを読み上げていく。
「被害者の名前は草紙タバコ。これは、胸ポケットに入っていた免許証で判明しました。死因は、鈍器のようなもので頭部を一撃。凶器は、そこに転がっていたスチール製のPCケース……即死でしょうね」
「……なるほどな。それにしても、目撃者は一人もいないのか? この人通りの多い街中で……」
「人通りが多いって行っても……超人ポスターや、一円でも安いパーツショップしか目に入らない人種が埋め尽くしてる街ですからねえ、目撃者見つけるのなんて、なまら難しいですよ、あにぃ」
 苦笑を浮かべて言う弥生に、Y2yは『確かにな』と、苦笑を浮かべて同意した。
 鑑識による調査が進んでいるが、今のところ、事件解決の手がかりになりそうなものは発見されていない。
 早くもお蔵入りの匂いが漂う現場に、捜査員達の表情は一様に暗かった。
「……とにかく、聞き込みをして、怪しい人間を見なかったか……」
「一般的観点で見ると、この街を歩く人間の95%は怪しいと思うんですけど……」
「……言うな」
 冷静につっこむ弥生の言葉に、Y2yが重いため息をついたときだった。
「ぎゃははっー! 俺の生き様をみろーっ!」
「おっ、おい、こらっ! ときめき、やめろや、ボケ! 洒落になってへんって!」
 やたら賑やかな男の声が、辺りに響いた。
 その声に、捜査員達の視線がいっせいに集中する。
 公園の脇の道を走っていたその声の主を見て……一同は、絶句した。
「クロスアウトッ! ぎゃはは〜っ!」
「はねてんじゃねーっ! ああ、もう俺はしらへん! 勝手に暴走しとけ!」
 意味不明な台詞を吐きながら、『が』行で大笑いしつつ道を爆走する、新○似の男。
 一つ問題なのが、このクソ寒い冬の夜、その男はコートどころか、一糸纏わぬ全裸だったことだ。
「……あにぃ……あれは……」
「この街の常識を考えても……異常だな」
 一呼吸の間を置き、Y2yの号令が辺りにこだました。
「容疑者だ! みんな、あいつを捕まえろ!」
 号令と同時に、弥生を筆頭に、捜査に当たっていた刑事達が、いっせいに飛び出す。
「まてーっ! そこの変態!」
「変態ちゃうわっ! 変態仮面じゃ、ワラ」
 意味不明な応酬を続けながら、深夜の電気街で、生き恥デッドヒートは、その後、数十分に渡って続いたのだった……


                           探偵珍宮寺ときめき
         秋葉原中央公園殺人事件


「……いい加減、吐いたらどうだ?」
「はぁ? 俺はゴッドやアフロと違って、吐くまで飲むなんてアホなことせんわ」
「供述しろって言ってんだよ!」
 不貞腐れ、面倒くさそうに煙草をふかす男に、Y2yは思わず怒声を上げた。
「だから、俺は何もしらん言うてるやろ! ってか、なんでいきなり殺人犯扱いされなあかんねん!」
「秋葉原の街中を全裸でかけるなんて怪しい奴、他にいないからだ!」
「んなん関係あるかっ! ちょっと酔っ払ってはっちゃけただけやないか!」
「やかましい! ここでは俺が法律だ!」
「あの、落ち着いてください、あにぃ」
 エキサイトするY2yを、弥生が慌てて押さえ込んだ。
 その間も、対面に座る全裸男――今は警察で支給されたジャージ姿だが――は、心底面倒くさそうな様子で、煙を吹かすだけだった。
 そのふてぶてしい態度に、Y2yと弥生は厳しい表情で、男を睨み続けた。
 昨夜、秋葉原電気街を一周するほどの大鬼ごっこの末に逮捕した全裸男を、一夜明けて取調べしているのだが、男は自分は無関係を主張し、黙秘を貫いていた。
「せめて、名前くらいは言ったらどうだ」
 気を取り直し、冷静な声で再度問いかけるY2y。
 男は面倒くさそうに舌打ちし、煙草をもみ消しながら、吐き捨てるように言った。
「マゥーサじゃ」
「それはお前のホーリーネームだろうがっ! 俺が聞いてるのは本名だっ!」
「あっ、あにぃ、殴っちゃまずいですよ〜! その、猪木ばりに弓引くナックルの構えはやめてくださいっ!」
 再び取調室が殺伐とした空気に包まれたときだった。
「失礼します」
 部屋に、一人の警官が入ってきた。それは、署の受付担当のDだった。
「うん、何か?」
 第三者の声で我に返ったY2yが尋ねる。
「ええ。その……そこの全裸男の身元引き受け人が……」
 Dが言ったとき、その背中から、まるで北の工作員並みに鋭い目つきをした一人のごつい男が顔を出した。
「あ〜っ、おったおった。おい虎羅、お前、何タイーホされとるんじゃボケ!」
「あん? こら、それはこっちの台詞じゃ! お前が人置いてさっさと一人で帰りやがるからこんな目にあってるんじゃねえか!」
「やかましいんじゃ! 俺は最熱したヴァナ熱で人生燃えたぎっとるねん! お前のしょうもない暴走に付き合ってる時間があったら、さっさと闇の王しばきにいくわっ!」
「てめえ、ふざけんな! そんなんしてる暇があったら、とっとと追憶編の続き書けや!」
「あれは年一更新じゃっ!」
「ふざけんな! てめえ、それでよう人にSS書けSS書けほざけるのう!」
「元々お前のサイトだろうがっ!」
「お前が作れゆうたサイトやろっ!」
 唖然とするY2yや弥生を差し置き、二人の男たちの口汚いののしりあいは、延々と続いたのだった――


「まったく……えらい目にあったわ」
「はははっ、それは災難でしたねえ」
 カウンターでカルーアミルクが入ったグラスを傾けながら愚痴る、マゥーサと名乗ったあの男に、カウンターの中の男が、苦笑を浮かべて答えた。
「自業自得じゃ、お前が昨夜飲みすぎるから……」
 そう言ってとがめるのは、隣で同じくグラスを傾ける、あの工作員風の男。
「お前が止めないからだろがっ!」
「責任転嫁すんなやっ!」
「ああ、お二人とも、落ち着いて落ち着いて。ほら、これでも聞いて、気を静めて下さい」
 そう言って、カウンターの中の男は、CDプレイヤーを操作し始めた。
 やがて、スピーカーから、大音量で店内に音楽が響き渡る。

絵本の中みたいに ステッキひとふりで あっというまに大人になれる魔法があるといいのにな〜
すてきな あなたに 目があうだけでドキドキ クラクラ たおれそう!
大きくなったら何になる? たくさんあって迷っちゃうけど
やっぱりしろいフリルのドレスを着た かわいいおよめにさんになれ〜♪

「「はじるすかよ!」」
 店内に、二人のツッコミが同時に響いた。
「ロリは世界の文化の極みでしょ! ちなみに、人類の文化の極みは眼鏡っ子!」
「生き恥さらしてんじゃねーっ!」
 マゥーサと名乗った男のシャウトが響いた瞬間だった。
 ガチャっと店の扉を開け、二人の男が店内に入ってきた。
「すいません、秋葉原署のものですが……って」
「あっ、アフロ!」
「そういうお前は……」
「ストリートキング!」
店内の二人と、入ってきた二人が、互いに指を差し合って叫んだ。
「刑事さんが何か御用で……って、ときめきさん、シナトラさん、お知り合いなんですか?」
 一人、カウンターの中のマスターだけが、事態が飲み込めず、首を傾げていた……

「改めて自己紹介を……秋葉原署捜査一課のY2yです……それにしても」
 カウンターに腰を落ち着け、警察手帳を差し出しながら言ったY2yは、横に腰掛ける自称マゥーサをチラッと一瞥し、ため息をついた。
「まさか、こんな風に再会するとはな」
「ああ、ほんまにのう。超しょんぼりやわ」
 カルーアミルクをグビグビと飲みながら、男は忌々しそうに舌打ちした。
 そんな、やや険悪な二人と代わって、弥生ともう一人――工作員風の男は、和やかなムードで挨拶を交わしていた。
「ほんま、昼間はこのドキュソがお騒がせしました。改めて挨拶します、俺は会長、そいつはときめき言いますねん、よろしく」
「こちらこそ。捜査一課の弥生で、向こうが僕のあにぃのY2y刑事です」
「虎羅、会長、何にこやかにあいさつしとんねん!」
「うっさいわ、ボケ! お前が酔っ払って調子こいて散々迷惑かけた相手に、俺が代わりに尻拭いしてやっとるんやないか。ほんま、お前、ええ加減にせえや」
「うっさいわ! むしろ、謝って欲しいのはこっちじゃ! 何の罪も無いストリートキングを、殺人犯扱いしやがって」
「「「「ストリートキング自体が犯罪!」」」」
 舌打ちしながら毒づくときめきに、店中の人間の一致団結した声がこだました。
「あ〜っ、笑いのわからん奴らやで、ほんま」
 ぶーたれ始めたときめきを捨て置き、Y2yは改めてカウンター内のマスターの方を向き直り、軽く咳払いをして話を切り出した。
「それで……マスターの……」
「星元です、よろしく」
 言いよどんだY2yに、カウンターの中の男――この店のマスター星元がそう言って自己紹介した。
「それで、捜査一課の刑事さんが、一体うちの店にどのようなご用件で?」
 仕事中なのだろうと気を使い、とりあえずはとお冷を差し出しながら尋ねた星元に、Y2yは会釈でそれを受け取りながら話を切り出した。
「ええ、まあ、もしかしたら、そこの彼から話を聞いていらっしゃるかもしれませんが、昨日、そこの公園で死体が発見されて……まあ、殺人事件として捜査しているんですが、今のところ、目撃者も何の情報もみつからないんですよ、それで、この近辺……秋葉原の超人たちの憩いの場として評判なこの店のマスターである星元さんなら、もしかしたら何か噂でもお聞きになっているんではないかと」
「聞き込みの途中に、何人かの人からそういう話を聞いたんで。いやあ、このお店、超人たちの間ではなまら有名なんですねえ」
 Y2yの言葉を補足して弥生が言った言葉に、隣で聞き耳を立てていたときめきは『なるほど』と肯いた。
 この店――秋葉原の片隅で開業している知る人ぞ知るBar、その名も『Star Origin』は、『ゴッド』の異名を持つ、超超人マスター星元が経営する、超人たちの間では憩いの場として知られている有名店だった。
 そんな、秋葉原の住人達の出入りの激しいこの店ならば、表に出てきていない情報もあるのではないかという期待を持ち、訪れたY2yと弥生だった。
 しかし、そんな期待もむなしく、星元は申し訳なさそうに首を横に振るだけだった。
「すいませんねえ、そういう話はさっぱり……」
「そうですかあ……」
 期待が外れ、Y2yと弥生は揃ってがっくりと肩を落とした。
 ……と、そんな二人に、星元が『そうだ』と思いついたように切り出した。
「私はお役に立てませんが、ときめきさんと会長さんなら、お役に立てるかもしれませんよ?」
「えっ?」
「ちょ、何で俺達に話し振るんっすか、ゴッド〜!」
 驚き横を見る弥生に続き、ときめきは困ったような顔で言った。
「それはどういうことなんです?」
 Y2yが怪訝そうな目で尋ねると、星元は『ええ』と肯きながら答えた。
「ときめきさんと会長さんは、この辺りでは名の知れた探偵ですからねえ」
「「探偵!?」」
 思っても見なかった職種に、Y2yと弥生は目を丸くして二人を見つめた。
「なんやねん、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔で見やがって」
「いや、探偵って……マジで?」
 Y2yは、疑わしい目で見つめながら、話半分の様子だった。
 無理もない。小説やドラマならまだしも、現実の探偵など、はっきりいってパンダやコアラや、秋葉原まで来てメイド喫茶に行かない超人ほどに珍しい存在だ。
 まして、昨晩のときめきの乱行を見た者としては、いわゆる松○優作やらシャーロックホームズなどの探偵のイメージとは結びつかなかった。
 そんな、胡散臭いものを見るような二人の視線に、ときめきはあからさまにむっとしたような表情にかわった。
「おい、虎羅? なんや、その人をパチモンみたいな目で見やがって。ほんまムカツクのう!」
「そりゃ、お前が昨日、あれだけ生き恥さらしたからやろが。……まあ、探偵言うても、たいしたことしてまへんよ、実際。特にこいつなんて、最近は人生ヴァナ一色やし」
「うっさい、お前は黙ってろシナトラ! おう、こうなったらやったろうやないか。その事件、俺にちょっと任せてみろや!」
 会長の冷静なツッコミに言い返しながら、ときめきは大見得を切って叫んだ。
「任せてみろって言われてもなあ」
「実際、情報なんてほとんど無いに等しいですしねえ」
 熱くなるときめきと引き換えに、Y2yと弥生は至極冷静な調子で答えた。
 実際、まだ事件は何一つ情報らしいものも見つからず、捜査をしようにも取っ掛かりすらない段階だったのだ。
「あ〜っ、それでもなんか少しはわかってることあるやろ、とりあえず教えてくれや。見てみろ、俺が超一流の推理ってもんを見せてやらあ!」
 一人温度の違うときめきのシャウトに、Y2yと弥生、さらに会長と星元までもが苦笑交じりのため息をついていた。
 やがて、このまま放置してもどうやら納まりそうにはないとY2yは『仕方がないな』と呟きながら、弥生の方を振り向いて声をかけた。
「おい、弥生、仕方ない、現状でわかってる情報を教えてやれ」
「えっ、いいんですか、あにぃ。部外者にそんなこと……」
「かまわん。どうせ、たいした情報はないんだ」
 あっさりと言い放ったY2yの言葉に、弥生は『それならまあ……』と、曖昧に答えながら、懐から操作メモを取り出して、読み上げ始めた。
「被害者の名前は草紙タバコ。近所のPCショップで、彼が買い物をしていた姿が目撃されているので、おそらく、買い物帰りに休憩しているところを狙われたんでしょう。凶器は、ステンレス製の大きなPCケース。これは、被害者がその直前に、近所のショップで購入したものだとわかってます。ちなみに、凶器からは、被害者の指紋しか見つかってません」
 そこまでで、弥生は一旦、言葉を止める。
 ときめきは、うんうんと肯きながら、目で話の続きを促していた。
 微妙にあっさりとしたその反応に、本当に話を理解しているのかどうか疑問に思いながらも、弥生はメモの続きを読み上げていった。
「被害者の財布には、金銭はほとんど入っていませんでした。これは持ち去られたのか、それとも元からなのか……被害者は、経済的にかなり困窮していたそうなので、後者の可能性の方が高いかと。それで、解剖の結果、死因はやはり頭部への打撲傷……あと、特別見るところと言えば……かなり、栄養失調気味だったことでしょうか」
「栄養失調気味?」
 そこで、初めて、ときめきは何か思い当たったように言葉を挟んで尋ねた。
「ええ。どうも、食事をまともに取っていなかったようで……解剖の結果、胃からは一切食物が検出されていませんしね」
「はあ、飯も食わずに、PCのパーツ購入かいな。……超人の鏡やな」
「人として失格、超人として合格ですねえ」
 会長と星元が、しみじみとした口調で肯きながら言ったときだった。
「へえ、そうか……謎は全てとけた!」
 ときめきの自信に満ちた叫びが、店内に響いた。
「「「「……はっ?」」」」
 これだけで一体何の謎が? というか、今、話した内容の中で謎なんてあったのか?
 きょとんとする四人を他所に、ときめきは、その大胆な推理を口にしていった。
「これは他殺やない、不幸な事故だったんや」
「……は?」
 言葉の意味がわからず、不思議そうに首を捻るY2yに、ときめきは、『まあ、話は最後まで黙ってきいとけや』と抑えると、言葉を続けた。
「つまり……被害者のタバコは、元々栄養失調でふらふらだった。で、そんな体調で無理を押しての聖地巡礼、オマケに重い買い物までしたんや、きっと、ぼろぼろのふらふらやったろうなあ。で、休憩のために、あの公園に立ち寄って、重い荷物……買ったばかりのPCケースを地面に置いたとき……」
「置いたとき……?」
 一同は、先がまったく読めず、ときめきの言葉を息を呑んで待った。
 ときめきは、カルーアミルクで唇を湿らせると、重いため息をついて、最後の言葉を続けた。
「おそらく、そこで眩暈をおこしたんやろ……ふらついて、タバコはその場に崩れ落ちた……そのとき、運が悪いことに、置いておいたPCケースに頭を直撃して……」
「……ってまてや、虎羅? ときめき、まさか、それでシボンヌしたとかいうんやないやろうな?」
「ああ、せや」
 『まさか』という表情で問いかけた会長に、ときめきは平然と返した。
 次の瞬間、
「「「「んな、馬鹿なことがあるかーっ!」」」」
 店内にいた四人の怒声が、いっせいに響き渡った。
「あのなあ、いくらなんでも、そんな突拍子もない推理があるかっ! つか、推理というか、そんなのただのこじ付けじゃねえか!」
 Y2yが、血管をこめかみに浮かべて怒鳴り声を上げたときだった。
 タラララーン、タラララーン……
「消える飛行機雲〜」
「ああ、マスター、いちいち歌わなくていいです」
 思わず星元が歌いだしそうになったのを制しながら、Y2yは『鳥の詩』が着メロという、素敵に超人チックな自分の携帯を取り出した。
「はい、Y2y……ああ、D君か。今、捜査の途中で……えっ……なっ、何〜!」
 その電話の内容に、Y2yは驚愕の表情で凍り付いてしまった。
「あにぃ、どうしたんですか?」
「あの……刑事さん?」
怪訝そうに弥生や星元が見守る中、Y2yの硬直は、当分の間、溶けることがなかった――


「ぎゃははははっ!」
 スターオリジンのカウンターで、ときめきは上機嫌で杯を重ねていた。
「ありえへん……そんなん、ギャグや……」
「ありえない……嘘だ……嘘だといってよ、カヲルくん……」
「……なんま、きっつい話ですよねえ……」
 ときめきと引き換え、ショックで呆然とする会長、Y2y、そして弥生。
 カウンターの中でシェイカーを振る星元は、苦笑を浮かべながら、慰めるように声をかけた。
「まあ、人生色々ってことですよ。こんな、ギャグみたいな話もあるんですねえ」
「ぎゃははっ! ゴッドの言う通りや! あ〜ん何がありえへん話やて〜? ありえへんのはお前の髪型じゃ、ワラ」
「……くっ、この根性ジャイアントババ色があ……」
 調子に乗って吼えるときめきに、Y2yは怒りの表情を浮かべるが、悔しいことに反論は出来ない。
 なぜなら……あの突拍子もないときめきの推理が、事件の真相だと立証されてしまったからだった。
  
 ――先ほどの電話、連絡担当の警官、Dからの報告によると、以下の通りだった。
 別件で、つい先ほど、一人の盗撮魔が逮捕された。
 秋葉原近辺のメイドカフェ店内や、その店員の出勤風景などを盗撮し転売していたその犯人、片瀬稜から応酬したカメラの中に、なんと、昨日の事件発生当時の現場付近を撮影した写真が偶然にも紛れ込んでいた。そしてその中に、貧血を起こしたのかふらつき、そして地面に置いたPCケースに頭を直撃させているタバコの一部始終が連続で写っていたというのだから、偶然もここまでくれば凄いものだった。
「ほんま、金にならない事件のときだけ、神がかり的な勘発揮しやがって……鬱ッ!」
 会長も呆れ顔で、ひたすら自棄酒とばかりに杯を重ねるだけだった。
「ふ〜……ありえん話だが……まあ、事件が無事に解決したんだからよしとするか」
 Y2yは深呼吸で気を取り直し、苦笑を浮かべて、自分の前に置かれたマティーニを煽った。
「はははっ、まあ、刑事さんよ〜、これからもなんか難しい事件あったら、俺のところに相談しにくるとええわ! きっちり金払ってくれれば、いくらでも協力したるわ!」
 調子に乗りまくりで騒ぐときめきを一瞥し、Y2yは『ああ』と小さく肯いた。
 なんとなく……なんとなく曖昧ではあったが、Y2yは予感めいたものを感じていた。
 このお調子者のヴァナ廃人な探偵、そして神の経営するBarが、自分にとってこれからどんどん縁深いものになっていくだろうことを。

 ――後々、いくつもの超人界に起こった事件を解決していく、メンバーは、こうして互いに出会ったのだった。


FIN



あとがき


 毎度〜! 人生がデフォで鬱っ!が合言葉のY2yです(ワラエナイ
 今回、二度と書かないと断言していた珍宮寺シリーズ。魂血苦笑二周年を記念して、その封印を解いて執筆しちゃいました^^;
 簡潔にお送りした、シリーズ第一作、いかがだったでしょうか?
 これからも、まあ、気が向いたら書いていくかも? なんだかんだ、某鬼兵追憶編よりは速いペースで書いてるんですよねえ、良く考えると(笑)
 ……それでいいのか、シナトラ、マゥーサ(つД`)(笑)