愛と幻想のふぁしずむ

カルラ、その愛ゆえに ―その3―

 

こんちきちん♪

こんちきちん♪

喧騒に溢れた市にも関らず

都の鐘の音がどこからともなく聴こえてくる。

ワイワイ

 

『はいよ〜!いらっしゃーい!』

 

『さぁ!トゥスクル名産の暴々茶は如何ぁ〜!?』

 

ガヤガヤ

 

「・・・・ふむ。流石に今日の市は栄えているな。」

 

「あら?そうおっしゃる根拠は何ですの?」

 

「それはな。昨日、クンネカムンから貿易団が来たばかりだからな。」

 

「そうなのですか。道理で市が活気に溢れている訳ですわね。」

 

私とカルラは人混みの中をゆっくりと歩いていた。

まぁ、こうやって定期的に市の様子を見るのも

皇の隠れた政事のうちの一つだ。

時々私は内緒で市などを散歩するのだが、ベナウィが知ったらさぞ五月蝿いだろうな・・・。

 

「あ・・・・。」

 

グイッ

カルラが何かに興味を引かれたらしく

強引に私の袖を引っ張ると、とある小店へと歩みよった。

 

『・・・いらっしゃい。』

 

くたびれた老婆がちょこんと店先に座っているだけで

茣蓙には商品と思わしきものがぶっきらぼうに放置・・・

ではなくて・・・・並べてあった。

よく見てみると、木や実などで作られた民芸品のようだった。

 

「・・・・ん。あぁ、民芸品か・・・珍しいな・・・あまり見かけない型だが?」

 

『・・・・西国の端から苦労して渡ってきた逸品ばかりで御座います。』

 

うむ・・・老婆が言うのもあながち嘘ではなさそうだ。

確かにこの丹精込められた造形からは、なかなかの匠の技を匂わせる。

 

「・・・・綺麗・・・。」

 

「ほぉ、カルラはこういったものに興味があったのか?」

 

するとカルラは少し膨れっ面で

 

「心外ですわ。私はこういった逸品を集める趣向がありますのよ?」

 

「そうか・・・初耳だ。」

 

・・・・・・酒、命!とばかり思っていたが・・・・。(汗)

そもそもいつも私の寝室にやってきては

 

「酒の一滴、血の一滴ィィーーーッ!!」

 

と叫んだ挙句、

 

「酒とあるじ様さえあれば、他に何もいらなくてよ〜!!」

 

と言いながら何故か私の服を脱がそうとしてる姿しか

記憶に御座いませんが・・・・・。

・・・・あ、そういえば先日はたまたま見回りに来たトウカと

喧嘩して寝室をグシャグシャにされたような・・・・。

・・・・・・・・・・もういい、今は考えたくない・・・。

 

「・・・・これも素晴らしいですわ・・・。」

 

うっとりと品物を眺めるカルラ。

・・・・・やれやれ。

 

「では、これとこれを頂けないかな?」

 

『・・・へぇ・・・有難う御座います。』

 

私が代金を払うと老婆はうしゃしゃと笑みをもらす。

 

「えッ!?」

 

キョトンとしたカルラの顔も、また新鮮で風情があるな。ふふふ・・・。

 

「あの、あるじ様?」

 

「あぁ〜、その、なんだ。私の気持ちだ。受け取ってくれるか?」

 

「・・・・・・・あ、有難う御座います。」

 

照れながら恥ずかしそうに顔を赤らめ、急に汐らしくなるカルラ。

・・・・・・う。か、可愛い。

 

「大事に・・・・大事にしますわ。」

 

「・・・・・では、行くか。」

 

ぎゅっ

カルラがらぶもーど全開で胸を私の2の腕に押し当ててくる。

・・・・・・・あぁ・・・・・マロはちょっと幸せでおじゃる。

 

『この浮気者め。』

 

ドキッ!

・・・・・!?

・・・・何か今、クーヤの声が聴こえたような・・・・。(汗)

・・・・空耳かな?

・・・・・・・・・クーヤよ許せ、マロはちょっとだけ浮気性があるでおじゃる。(苦笑)

ガヤガヤ

 

「・・・ところで、そもそもカルラは何を買いに来たのだ?」

 

「・・・うふふ・・・。もう少し行ったところですわ。」

 

そう言いながらヘコヘコとカルラに引っ張られて行った先には・・・

 

『反物屋 −鵜婆紗ー』

 

という暖簾が掲げられたこじんまりとした店だった。

 

「・・・・何て読むのだ?・・・うば・・??」

 

「あるじ様、少しここらで御待ち頂けるかしら?」

 

そう言うとカルラはその店へ入っていった。

 

『いらっしゃいま・・・あぁ、カルラ様。いつも御贔屓に・・・。』

 

店内から主らしき声が聞こえてくる。

 

「反物屋・・・・ね・・・・。」

 

私は何する事もなく、手前の茶屋でぼぉっとしていた。

ふと少し先の店に薬草を調合している店を見つけた。

・・・・・まぁ・・・・エルルゥに何か買っていってあげるとするかな。

腰を上げると薬草屋の軒先をふらふらと見ていた。

 

『へい、いらっしゃいまし♪何かお探しで?』

 

「いや・・・特に探している訳ではないのだが・・・

 何か珍しいものでもと・・・・。」

 

すると店主はニヤァ〜と嫌な笑みを浮かべると

 

『ヒヒヒ・・・旦那、好きですなぁ〜?』

 

「・・・・はい?」

 

『分かってますって、旦那みたいな良い男が薬師御用達のうちに

 来るなんざ、あれしかないってもんですわ。』

 

「・・・いや、その・・・何か勘違いを・・・・

 

『ままま!皆まで言わなくてもよござんす。』

 

「・・・・・・・・。」

 

『これなんか如何で御座いますか?』

 

そう言うと店主がゴソゴソと古びた箱から

干からびた何かを取り出した。

 

「・・・・・何だ、それは?」

 

『ヒヒヒ・・・珍品も珍品!これはかのムティカパのち●ぽを日干しにしたもので・・・

 

「ぶっ!?」

 

『そりゃぁ〜もう森の主なだけあって、精力絶倫スーパーサイヤZで御座います。』

 

「いや、いい!」

 

『まま!そうおっしゃらずに!疑う気持ちは分かりますよ?

 だけど、これが効くんですって!旦那は色男ですから勉強させてもらって・・・・

 

「いらんっちゅーの!」(;´Д`)

 

『う〜ん、やはりち●ぽは抵抗が御座いますか・・・・。

 それならば、こちらなどはどうでしょうか?』

 

「・・・・何だそのくたびれた根っこみたいなものは・・・?」

 

『へぇ・・・驚かないで下さい。なんとこれがかの有名な仙命樹で御座います!』

 

「・・・・・・・・。」

 

『これを煎じて呑めば旦那も今日から強化兵ッ!!

 もう超先生ばりの・・・・・

 

パンッ!パンッ!パーーンッ!←鉄扇三連撃

 

『はくおろ、れべるあっぷ!?』

 

ドサ・・・・・。

・・・ったく何て薬草屋だ・・・。

 

「御待たせしましたわ・・・・。」

 

後ろからカルラの声が聞こえてきた。

 

「待ちわびたぞ、カル・・・・

 

「・・・・・・・・♪」

 

「・・・・ラ?」

 

振り返ってカルラを見た瞬間、私の思考は停止した。

カルラは普段編んでいる髪を下ろし、薄く化粧を施している。

そして身軽だった身形は素晴らしく着飾られていた。

おぉぉぉぉ!?

周囲の男どもが驚嘆の声をあげる。

道行く人々がみな振り返りてカルラを見やった。

・・・・・・・・・・・・。

 

「如何ですか・・・?あるじ様・・・。」

 

上目遣いでカルラが愛の視線を送ってくる。

・・・・・・・・美しい・・・。

 

「・・・・・う、うつく・・・・・。」

 

ハッ!?

いかん、いかん!

突然、こんな演出をしてくるとあれば、きっと何か企んでいるに違いない!

 

「・・・・・・うむ、カルラはやはり綺麗だな。」

 

努めて平静を装ってそう答える。

 

「もう・・・あるじ様ったら、素直じゃありませんわね。」

 

そう言って、何時もとは違った微笑みを浮かべるカルラ・・・・。

ま、まずいでおじゃる!

まろの理性が・・・・やぶぁいでおじゃる!!

反則的なほど可愛いでおじゃる!!

・・・い、今直ぐにでも押し倒したいでおじゃるぅぅぅ!!(血の涙)

既に役満をテンパっている私を他所に

カルラは再び私の腕をとると・・・・。

 

「さぁ・・・行きましょう。あるじ様♪」

 

「あ・・・あぁ。」

 

内心ルンルン気分のまろ。気が付けば

周囲にザマミロヤ。と言わんばかりに大手をきって歩ていた。

 

「カ、カルラ。一体どうしたんだ?」

 

「?」

 

「いや・・・その、いつもはもっとワイルド・ターキーと言うか・・・。」

 

「だって・・・・折角のあるじ様との逢引ですもの・・・。」

 

「ぶっ!?」

 

「・・・・私だって、一介の戦士であると共に、一人の女ですわよ?」

 

「では・・・買い物というのは・・・?」

 

カルラは悪戯っぽく微笑むと

 

「買い物は・・・過程に過ぎませんわ。」

 

チクショーッ!!なんかやばいくらい萌えるんですけど!!

マロの元気玉が・・・・どんどん大きくなるぜ!!

ふわり・・・・・。

甘い芳香が私の鼻をくすぐる。

・・・・甘い・・・。

いい香りでおじゃる・・・・。

なんか・・・・・こう・・・・。

身も心もカルラに・・・・・。

ハッ!?

気が付くと・・・・何故か目の前に一軒の建物が。

 

『愛の宿場 ―ねとられるもの―』

 

・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「あの・・・・・何でおじゃるか?・・・・これ?」

 

「・・・・・・あるじ様・・・・お情けを・・・・。」

 

「ふぁッ!?ちょ、ちょっとカルラ様!?」

 

グイィィッ!

物凄い力でカルラが私を建物の中へ引っ張って・・・否!引きずり込んでいく。

 

「あ、あ、あーーーッ!ちょっと待つでおじゃる!!」 ズルズル

 

「・・・・あるじ様・・・私が嫌いですか・・・?」 グイグイ

 

「いや、そのむしろ好きだけど・・・・ちょっとこりは唐突では!?」 ズルズル

 

「いいじゃないですか・・・一度愛しあった仲でございましょ?」 グイグイ

 

「あ、あれは、そちが一服盛ったっつーか、なんつーか!」 ズルズル

 

・・・・・・突然、目の前がクラリとする。

 

「あ、あれ・・・!?」 ズルズ・・・

 

「・・・・うふふ。」 グイグイ

 

「何だか・・・力が抜けて・・・・。」 ズ・・・

 

「・・・秘香が効いてきたみたいですわね・・・。」 グイグイ

 

「ッ!?し、しまったそうか!!この甘い香り、何処かで嗅いだと思っていたが・・・!」

 

「もう・・・・手遅れで御座いますわよ。」

 

「カ、カルラ・・・お主・・・卑怯ナリヨ!」

 

「・・・・だって、あるじ様、あれっきりなんですもの。」

 

「・・・・あ、あははは・・・・だって、みんなにバレたら殺されるでおじゃろう?」

 

「・・・・昨夜も言いましたわ。愛してるって。」

 

「・・・・そ、それは多分、酒に酔っ・・・・

 

「酔ってぇ?」 ピクッ

 

「いや・・・本音でござそうろう。」

 

もう抵抗する力は私には残っていなかった・・・・。

なすがままにカルラと怪しげな宿場にイザ入らんとしている・・・・。

・・・・・ま、た、たまにはいいか・・・・・な。イヒッ♪

まったり〜まったり〜まったりなぁ〜♪

急がず焦らずぅ〜入ろう〜〜〜かぁ〜〜〜♪

 

「クェーーーーーッ!!!」

 

ドゲシッ!!

 

「CRうたわれッ!?」

 

突然私の脇腹に強烈な横蹴り。

ドンガラガッシャ〜〜〜〜ン!

ピクピク・・・・。

 

「あ、あるじ様ッ!?・・・・ッ!!」

 

ピシュン!

 

刃が風を切ってカルラに襲い掛かる。

 

「クッ!!」

 

紙一重で避けるカルラ、睨みつける視線の矢先には・・・・

愛剣士トウカ、見参ッ!

 

「・・・・・浦島カルラ・・・貴様、斬るッ!」

 

「トウカ・・・!チッ!」

 

萌える乙女、相対する。

そしてここに一人の皇、堕つ。




まだまだ、つづく!!