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愛と幻想のふぁしずむ エピソード2(第15話)

クーヤ・シェイカー ―Vol.5―

 

『・・・大老、こちらで御座います。』

 

「聖上、御準備は宜しいですか?」

 

「うむ・・・余はいつでもいいぞ。」

 

「ク、クーヤ様ぁ〜、くれぐれも御気をつけて下さいぃ〜。」

 

周囲は暗闇に包まれていたが、僅かな月の光で心配そうなサクヤの表情が見える。

 

「心配するでない・・・余にはゲンジマルがついておる。」

 

苦笑しながら余はサクヤを諭す・・・・・。

その夜、余とゲンジマルはこっそりと

皇宮殿から抜け出した。

目的はトゥスクル國の皇に会う為。

このように余がこそこそと人目を忍んでいた訳は簡単だ。

非公式な上に、少しの間とは言え余がこの國を出る。

この行為に当然元老院や執政官どもが黙っているはずがない。

だから余は半ば強引な手でクンネカムンを出國したのだ。

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・。

ガタガタガタガタ・・・・・。

・・・・・・・ガツン、ガタガタガタ・・・・。

竜車で陸路を辿り、一路トゥスクルへ向かう。

幾らここら一帯がクンネカムンの領土とは言え、

夜道は危険極まりないのは十分承知している。

だが、そんな不安を一抹も感じなかったのは、

トゥスクル皇に会うという期待感も然る事ながら

ゲンジマルが傍にいるという事実なのだろう。

エヴェンクルガ族の伝説的な英雄にして、クンネカムンの大老

そして・・・余の育ての親とも言えるゲンジマル。

今年で齢幾つになったのだろうか・・・高齢を感じさせない

その体躯からは威厳と誇りが満ち溢れている。

余はそんなゲンジマルを何よりも誇りに思い、そして尊敬してきた。

それはサクヤやヒエンとて同じ思いなのだろう・・・・。

 

「・・・・・・・。」

 

「・・・?如何致しました?聖上?」

 

荷室の中で向かいに座っていたゲンジマルが訊ねてきた。

 

「えッ?」

 

「いや、某の顔を眺めていらっしゃいましたので・・・・・。」

 

ゲンジマルは苦笑しながらそう言った。

余は慌てて視線を床に向けると

 

「き、気にするな。余は疲れているだけだ・・・・。」

 

「そうですか・・・まだトゥスクルまでは時間がありますゆえ

 聖上は御休み下さいませ。」

 

「分かった・・・ではすまないがそうさせてもらう。」

 

・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

十数時間後、余たち一向はトゥスクル領内に足を踏み入れた。

夜はすっかり明け、まばゆいばかりの陽の御神が余たちを照りつけた。

 

「聖上、あの茂みの向こうに河川が御座います。そちらでおくつろぎ下さい。」

 

「・・・・・・・・。」 ほけ〜

 

「聖上?」

 

「・・・・ゲンジマル、トゥスクルとは美しい國だな・・・・。」

 

「・・・左様で御座いますな。」

 

余は目の前に広がる渓谷を眺めて賞賛した。

 

「聖上、あと半刻もすればトゥスクル皇都の周辺に到着致します。

 ・・・・そこで、夜になるまで休みましょう。」

 

「うむ。・・・・あ、余は皇都に遊びに行っても・・・

 

「いけませんッ!」

 

「あぅ・・・。」

 

「いいですか?聖上、我々は飽く迄非公式でこの國にいるのです。

 目立つ行動は御控え下さい。」

 

「・・・・ケチ。」

 

「何か仰いましたか?」 ジロリ

 

「な、何も言っておらん。」

 

― 一方クンネカムン皇都 ―

ドタドタドタ

 

「ク、クーヤ様は何処へ行ったんだぁ!?」

 

左大将のヒエンが血相を変えて走り回っていた。

 

「お兄・・・左大将様、ちょ、ちょっと・・・。」

 

「んな?ど、どうしたサクヤ・・・?」

 

サクヤがヒエンの袖を引っ張るとこそこそと渡り廊下の陰へと連れ込んだ。

 

「じ、実は・・・そのぉ・・・・クーヤ様の事なんですが・・・・。」

 

サクヤは申し訳無さそうに事の顛末を語りだすと

ヒエンはぷるぷると身体を震わせ始めた。

 

「な、ななな・・・・なんだとぉ〜〜!?」

 

「あぅ!ご、ごめんなさいぃ〜!」

 

「た、大老も大老だ!!何を考えておられる!!

 そんな事みなにバレてみろ・・・お、俺の立場は・・・・ぐわッ!?

 

「お、お兄ちゃん!?」

 

「い、胃が・・・・サ、サクヤ・・・すまぬがきゃべじんを・・・。」 カクカク

 

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

夜が来て、余たち一向がいる森林も暗闇につつまれた。

余が渓谷の先に見えるトゥスクル皇都の夜景を眺めていると

 

「・・・・そろそろですな。」

 

ゲンジマルがふと呟き、突然立ち上がった。

 

「では、行って参りますゆえ。」

 

そう言うと森林の奥深くに消え去った。

いよいよか・・・いよいよトゥスクル皇との対面が・・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・あれ?

・・・・・・・・・・な、なんか変ではないか? (汗)

そ、そもそも何故余は皇都の外れで野営しておるのだ?

堂々と皇都に行けばいいではないか・・・。

いや、それ以前に、ゲンジマル1人で何をしに行ったのだ?

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

ぴこぴこ♪

ぴこぴこ♪

 

「かっはぁぁ!!あ、アツイでおじゃるッ!!」

 

「ハクオロさぁ〜ん?みなさんと一緒にとれたての果物を頂きませんかぁ〜?」

 

階下からエルルゥの声が聞こえてきた。

もう!今いい所でおじゃるのに・・・!

 

「ハクオロさぁ〜ん?」

 

「ちょ、ちょっと待つでおじゃるよ!」

 

「??・・・どうしたんですか〜?」

 

・・・・まずい。

【えぶぁせぶんてぃん】にハマってるなんて言えないでおじゃる・・・・。

 

「ハクオロさぁ〜ん?」

 

「も、もう少し待ってくれ!もう少しでエンディングに・・・

 

「エンディング?」

 

し、しまった・・・・・。(滝汗)

 

「・・・・なにしてるんですか?」

 

聞こえてくるエルルゥの声のトーンが若干下がったような気がした・・・・。

 

「あ、あぁぁぁぁあああ!そ、その今日やり残した政事があってな!」

 

ボソボソと下の方で話し声が聞こえてくる。

 

「・・・・・ハクオロさん、政事でやり残しがあるみたいなんですが。」

 

多分、嘘です。聖上は今日はサボってましたから。」

 

ベナウィ・・・貴様。(血の涙)

 

「ははは。某がお連れしてきますので、みなさんは先に召し上がって下さい。」

 

うげッ!?ト、トウカがやって来るでおじゃる!!

あわわわ・・・・も、もう少しでエンディング(?)なのに!!

 

「聖上?今そちらに伺いますが、宜しいですか?」

 

階下、しかもすぐ近くからトウカの声が聞こえてきた。

 

「ま、待てッ!!ちょ、ちょっと今着替え中だッ!!」

 

「・・・・着替え中で御座いますか?」

 

「そ、そうでおじゃる!!いままろはすっぽんぽんでおじゃるよ!

 だから、しばらくそこで待つでおじゃるよ!!」

 

「着替えでしたら某がお手伝い・・・

 

「いらんッ!!それくらいまろがやるから!!」 ←(半泣き)

 

「はぁ・・・分かりました・・・・。」

 

もう〜〜!!普段は気にもかけないこの読み込みの時間ですら

永遠のように思われるぞ!!くそう〜!

早く、早く!もう少しでおじゃ・・・

 

ブツン。←電源が切れた音。

 

「・・・・・・・・ほえ?」

 

し〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

 

「おっと、これは失敬。」

 

まろの左手、渡り廊下の入口の方から声が聞こえる。

ナニ・・・ナニガ・・・オコッタデ・・・オジャルカ・・・?

トツゼン・・・・ガメンガ・・・ブラックアウト・・・・・。

ブラックアウト・・・・ブラックアウト・・・・・。

震える体で目線を移動させていく。

 

てれび(?)⇒どりかす(?)⇒電源けーぶる⇒抜けた電源けーぶるを踏んでる足

⇒足⇒・・・・見ず知らずのデカイジジイ。

 

まろはそのジジイを見上げ、もう一度視線をてれび(?)へと向ける。

・・・・・・・・電源、落ちた?

・・・・・・・・・・・。

 

【えぶあせぶんてぃん】+電源落ちた= the out of infinity

 

 

「き、貴様ぁ〜〜〜!!!何者ジャアアアア!!!」

 

号泣。

 

「失礼、名乗るのが遅れました。某、ゲンジマルと申します。

 貴方様はトゥスクル國の皇、ハクオロ皇と御見かけいたしますが。」

 

「あぁ!?光GENJIマルだろうが、イングウェイ・ゲンジマルムスティーンだろうが

 どうでもいいでおじゃるよーーー!!

 なんちゅーことしてくれたでおじゃるかぁぁぁッ〜〜!!!」

 

「お、落ち着ついて下さい。」

 

「なにようじゃぁああああ!!」

 

「突然の来訪、誠に失礼致します。

 実は、ハクオロ皇に某の主、アムルリネウルカ・クーヤ様に

 お会いして頂きたく思い、馳せ参上仕りました。」

 

「はぁ?」

 

「聖上ッ!?如何なさいましたか!?今大声で何か・・・・

 

ドタドタドタ

驚くトウカの声が聞こえた後、階段を駆けあげる音が・・・・。

 

「ッ!!・・・失礼!」

 

グワシッ

 

「おわッ!?な、何をするでおじゃるか!?」

 

ゲンジマルとまろをひょいと抱えあげると

すぐさま渡り廊下に駆け出し、そのまま・・・跳躍。

 

「しょ、正気でおじゃるかぁ〜〜!?」

 

思わずまろは悲鳴を上げる。

そりゃそうだろう。渡り廊下の先は何も無く、あるのは数メートル下の地面だけだ。

ひゅううううう。

スターーンッ。

驚いた事にゲンジマルはまろを抱えたまま、何十メートルも先ある

別の建物の上に降り立ったのだ。

 

「申し訳御座いませんが、時間が限られているゆえ、このまま御案内させて頂きます。」

 

ゲンジマルはそう言うや否や、そのままの状態で更に次から次へと

建物の上を跳躍して渡った。

 

「ひぃぃ!!すぱいだーまんごっこなら1人でやってくれぇー!!」

 

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「聖上ッ!!・・・・・ってあら??」

 

ドタドタドタッ!ガッ!ゴロゴロッ!

 

「ど、どうしたんですか?トウカさん!?」

 

「み、みんな!聖上が消えた!!」

 

転げ落ちるように階段から降りてきたトウカは

果物を頬張っていたみんなに叫んだ。

 

「落ち着きなさい、トウカ。

 聖上の事です。・・・どうせやましい事でもしていたんでしょう。」 ずずっ

 

お茶をすすりながらキッパリとベナウィは言い放った。

 

「まぁな、兄者の事だ。そのうち帰ってくるさ。」 もぐもぐ

 

そう言ったオボロの背後にドリィが小走りにやってきて

オボロに耳打ちした。

 

『・・・・たった今、接触しました。』

「・・・そうか。」

『・・・・物凄い速さで北上中です。今グラァが追跡しています。』

「・・・近づき過ぎないようにな。気付かれると厄介だ。」

『はい!』

 

ドリィは再び小走りでその場を去っていった。

横でお茶をすすっていたベナウィは、湯のみを置くと一息ついた。

 

「予想どおりでしたね。」

 

「あぁ、敵ながら天晴れだ。これだけの見張りを難無く潜ってくるとはな。」

 

「後は・・・聖上にお任せしますか。」

 

「・・・クソッ!俺に任せてくれればさっさとふん捕まえてやるのに!」

 

「そう心配しなくてもいいですよ。大丈夫ですから。」

 

苦笑しながらベナウィはオボロを宥めるのであった。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

ひゅぉぉぉ!

・・・・・・・ハァハァ!

 

「・・・・クッ!速いッ!!」

 

必死に私達の後を追跡するグラァ。

ゲンジマルは森林に入ると更に速度を上げた。

・・・・さすがエヴェンクルガの英雄ってとこだな。

ざざざざざ・・・・・

 

「・・・・・ふむ、驚きました。やりますね、ハクオロ皇の部下も。」

 

「ふぇ?」

 

「・・・・・某の足について来れるとは、いやはや・・・・。」

 

・・・・・・ッ!気付かれてたか・・・・。

 

ザザッ・・・。

茂みを抜けた先で、ようやくゲンジマルが足を止めた。

ゲンジマルはその場で私を降ろすと一礼し、

 

「非礼を御許し下さい。謹んで御詫び申し上げます。」

 

「・・・・・・・・で、クンネカムンの皇がまろに何のようだ?」

 

「それは、聖上に御伺い下さい。」

 

そう言うとゲンジマルは踵を返し、

 

「では、只今聖上をお連れしますので、今しばらく御待ち下さい。」

 

と言うと、茂みの中へ消えていった。

私はドカリとその場に腰を降ろし、一息ついた。

・・・・グラァは、撒かれてしまったかな?

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・。

ぽか〜〜〜ん。

余は茂みの中からゲンジマルがトゥスクル皇を

抱えてやってきたのを見て呆然としていた。

 

『聖上、御待たせしました。』 ヒソヒソ

 

『お・・お・・・御待たせしましたではないだろう!

 な、何をしておるのだ!ゲンジマル!!』

 

『?仰せの通り、トゥスクル皇との謁見の場を設けましたが・・・?』

 

『謁見も何も、これでは強制連行ではないかッ!!』

 

『ふぅ・・・これしか方法が御座いませんでしょうに。

 良いですか?國と國との中継も無く、このような個人的な面会を求めるような事は

 事実上は不可能な事ですぞ?幸いにも、ハクオロ皇は快く承諾して下さいましたし、

 些か無粋な手では御座いますが、これで我慢して下さい。』

 

『・・・・あれが快く承諾した者の顔か?』 (汗)

 

明らかに不機嫌そうなトゥスクルの皇・・・・ん?

 

『ゲンジマル・・・・何だ?あの者、なにやら異形な仮面をつけておるではないか?』

 

『・・・・御存知なかったのですか?あれがトゥスクル皇を変人と言わしめる原因の一端で御座います。』

 

『戦隊物の見過ぎか何かか?』

 

『・・・・さぁ、某では判りかねます。』

 

『と、とりあえず待たせても何だから余は行くぞ?』

 

『ま、待たれよッ!聖上!!』

 

『もう〜・・・なんだ?』

 

『これを御忘れですぞ!』 ズイッ

 

そう言って余に差し出してきたのは、外交用のいつもの被り物。

 

『またこれか!これを被ると蒸すのでかなわんッ!』

 

『そう仰らずに・・・残念な事に、見た目で判断されると言うのは世の理で御座いますがゆえに・・・。』

 

『・・・・はぁ・・・分かった。ゲンジマルがそう言うなら致し方あるまい。』

 

そう言うと、余はしぶしぶそれを受け取ると頭から被った。

 

『申し訳御座いませぬ。聖上は美しいゆえ、あの皇が何を申し出すか心配ですので・・・・。』

 

『・・・・バカ。』

 

苦笑しながら余は、留め金をはめた。

・・・パチンッ。

・・・・すぅ・・・・。

一息つくと、茂みの向こう側にいるトゥスクル皇を見つめた。

 

『聖上、では参りますぞ?』

 

『ふふふ・・・・珍しく余は緊張しておるのかな?』

 

・・・・・ザザッ。

 

「御待たせ致しました。ハクオ・・・ロ皇・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「んあ?遅かったでおじゃるな。」

 

ゲンジマルが言葉を詰まらせた。

・・・・何故かと言えば、トゥスクルの皇は・・・ぷりんを食べ、マンガを読んでいたからだ。 (汗)

 

「な、何をしておられる、ハクオロ皇?」

 

「ん?・・・あぁ、遅いから懐に入れてたぷりんを食べているでおじゃる。おっほっほ♪」

 

ふるふる・・・・。

まずい・・・・ゲンジマルの肩がわなわなと震えているのが分かる。 (汗)

武人であり、更には大老でもあるゲンジマルはことこのような礼儀には五月蝿いのだ。

・・・・我慢してくれ、ゲンジマル。

余が咄嗟にゲンジマルの袖を掴むと、ゲンジマルは体裁を整える為、軽く咳払いをする。

 

「えぇ・・・こちらにおわしますのが、我が主君、アムルリネウルカ・クーヤ様で御座います。」

 

狭い視界越しに見える、トゥスクル皇の姿。

トゥスクル皇はゆらりとその場に立ち上がると我々を凝視した。

・・・・若いな・・・・、余とあまり大差無いのではないか。

・・・・ところで先程から感じていたのだが、やはりどう見てもこの者機嫌が悪そうだぞ!(汗)

トゥスクル皇はガリガリと頭を掻くと、溜息を一つつき、口を開いた。

 

「そうか。まろは田中 優美清春香菜だ。じゃあな。」

 

・・・・・・・は?

 

「・・・・ハクオロ皇。」 ビキィ!ビキィッ!

 

「・・・・じょ、冗談でおじゃるよ・・・おっほっほ♪」 (汗)

 

・・・・・・・。

変り者だとは聞いていたが・・・・これほどまでとは・・・・。(汗)

 

「アムルリネウルカ・クーヤだ。」

 

ここで初めて余は口を開いた。

 

「・・・・ハクオロだ。」

 

「?何故不機嫌な顔をしておる?」

 

「・・・・【えぶぁせぶんてぃん】もう少しで、えんでぃんぐだったのに・・・・・。」

 

・・・・・・・・・・・は?

意味が分からん・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

 

「ゲ、ゲンジマル・・・・しばらく席を外してくれぬか?」

 

「ッ!せ、聖上!」

 

「頼む・・・。」

 

「・・・・・・・御意。」

 

ゲンジマルがしぶしぶその場から離れると、余はハクオロに一歩近づいた。

 

「・・・おほん。」

 

ハクオロは咳払いをすると、

 

「お初に御目にかかる。クンネカムン皇。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「いや、正直驚きました。近いうちに会うとは思っていたが、まさかこんなに早く乗り込んでくるとは・・・・。」

 

そう言うとハクオロは苦笑した。

月夜に照らされたハクオロは、仮面でその表情の全ては読み取れぬが、

丹精な顔立ちと思われ、その声はどこか力強く頼れるものを感じ取れた。

 

「初めから、こうなる事を分かっておったと申すのか?」

 

「まぁ・・・ある程度の予想はしてましたね。」

 

・・・・・・・・こやつ、やはりなかなかの曲者だ。

 

「で・・・クンネカムン皇、今回まろに会いに来た訳は?」

 

「クーヤでよい。」

 

「え?」

 

「クンネカムン皇などと堅苦しい呼び方はせず、クーヤと呼んでくれ。

 そのかわり、余もハクオロと呼ばせてもらうぞ。」

 

「そ、そうか。では・・・クーヤ、何故私をこんなところに?」

 

「それは・・・ゲ、ゲンジマルが勝手に・・・・

 

色んな事を話した。

國の事、余の事、ハクオロの事、悩み、馬鹿な話、悲しい話・・・・・。

思えばこのように対等に話し合い、笑いあったのは初めてだったような気がする。

・・・・・気が付けば・・・余は・・・ハクオロに夢中になっていた。

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・パパーーーー。

ピーーポーーピーーポーーー・・・・

・・・・・・遠くの方で様々な音が聞こえてくる。

何故、急にあんな昔の事を思い出したのだろうか?

 

「・・・・・・あれ?」

 

何時の間にか余の目の前に少女が立っており、余を見つめていた。

 

「・・・・・。」 じ〜〜〜

 

「な、何か用か?」

 

「・・・・お姉ちゃん、一人ぼっちなの?」

 

「えっ!?そ、そういう訳では・・・・。

 ・・・・・・いや・・・そうかも知れぬな・・・・。」

 

そう言うと余は自嘲気味に笑った。

よく見ると、その少女の耳はシャクコポルの者とは異なっていた。

 

「あれ?お主・・・・どこの國のものだ?」

 

「ナ・トゥンク。」

 

先日内乱が起きた國か・・・・。

 

「お主、難民か?」

 

「・・・・うん。今、オンヴィ・・・なんとかってところで寝泊りしてる。」

 

少女が指さした方向にはオンヴィタイカヤン記念ホールが見える・・・やはり難民か・・・・。

 

「こんな夜遅くに歩きまわると父親や母親に叱られるぞ?」

 

「父ちゃんも母ちゃんも死んだ。」

 

・・・・・・・あ・・・

・・・・戦災孤児・・・か・・・・!

 

「そ、そうか・・・すまぬな。」

 

「謝らなくてもいいもん。私強く生きるって決めたもん。」

 

虚勢を張る少女。・・・・嘘をつけ、泣きそうではないか。

 

「寂しいか?」

 

「寂しくないもん。おじちゃんもおばちゃんも、みんないるもん。だから寂しくないもん。」

 

「そうか・・・強いな、お主は。」

 

余は優しく少女の頭を撫ぜた。

 

「・・・お姉ちゃんも寂しかったら来たら?」

 

「・・・・余が?」

 

「うん!お姉ちゃんも帰る場所が無いなら一緒にいこうよ。」

 

・・・・・・余の帰る場所か・・・・。

 

「・・・・帰る場所は・・・無いけど、戻らなければいけない場所がある・・・。」

 

「そっか・・・・。」

 

女の子は少し残念そうな顔をすると、鼻をすすった。

 

「さぁ、もうお帰り。夜も遅いし、風邪をひくぞ?」

 

「うん。」

 

・・・・・・・。

 

「あ、あの!」

 

「ふぇ?」

 

「この人形・・・貰ってくれぬか?」

 

「え!?」

 

「折角、買ったのだが、余にはちと子供じみてて困ってたのだ。」

 

苦笑しながら人形を差し出す。

 

「い・・・いいの?」

 

「よい。気にするな。それにこの人形もそなたと遊んでもらった方が幸せだろう。」

 

「ありがとうお姉ちゃん!」

 

少女は人形を受け取ると大喜びで走り去っていった。

・・・・・・・・・これで良いのだ。

・・・・・・・・・お前はその子に大切にしてもらえばいい・・・・。

・・・・・・・・・・。

ザッザッザッザッザ・・・・。

俯いていた余に近づく足音。

 

「いやはや探しましたよ・・・・・聖上。はい。」

 

「・・・・・・・・。」

 

見上げると、目の前には長身の男が佇んでいた。

細身の身体ではあるが、装甲服から見え隠れする肉体からは

あまたの戦闘を潜り抜けてきた凄みが感じられる。

男はその場に膝をついて、静かに口を開いた。

 

「クンネカムン陸戦特殊部隊長、チキナロ。只今戻りました。」

 

「久しいな・・・・いつ戻った?」

 

「本当につい先程です。はい。」

 

「よく余の居場所が分かったな。」

 

「分かったではなくて、探したのですよ。はい。

 困りましたよ、帰國して早々ヒエン様に泣きつかれまして。」

 

苦笑するチキナロ。

 

「そうか、疲れているところ悪かったな。では戻ろう。」

 

「あ、聖上。」

 

「ん?」

 

「・・・・宜しかったので御座いますか?人形をあの少女に渡してしまって・・・。」

 

「よい・・・どうせ、余には似合わない代物だ。」

 

「・・・・・・・・・では、その涙はなんですか?」

 

「・・・・・えッ?」

 

いつの間にか余の頬に一筋の涙が流れていた。

 

「あ、あれ?お、おかしいな!?どうしたというのだ!?

 ・・・・こ、こら見るでないッ!!」

 

慌ててゴシゴシと顔を擦っていると、チキナロは立ち上がり、

 

「暖かい飲み物でも買って参りますので、少しだけその場で御待ち下さい。

 ・・・・・まぁ、もう少しだけゆっくりしても良いでしょう。」

 

そう言うと、ベンチから去っていった。

 

 

「・・・恥ずかしいところ、見られてしまったな・・・・。」

 

ザッザッザッザ

公園の入口にある大きな木の傍までやって来ると、チキナロは立ち止まった。

 

「・・・・そんなところに隠れてないで、出てきたら如何ですか?」

 

「・・・・・・気付いておったか。」

 

スッ

 

木の陰からゲンジマルが現れた。

 

「御疲れ様です。大老。いつ頃帰國したのですか?」

 

「・・・某もつい今しがただ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

無言のまま立ち尽くす2人の武人。

チキナロは先程までの飄々とした表情とは打って変って厳しい面持ちで呟いた。

 

「・・・・・・・・・・・・・貴方にお任せした結果がこれですか・・・・。」

 

「・・・・・・申し訳ない。全て・・・某のせいだ。」

 

ザッザッザッザ・・・・・・。

 

「・・・・・クーヤ様・・・・。」

 

クンネカムンの夜は更けていく・・・・・。

そして、余のハクオロに馳せる思いはより一層強くなっていった。

 

次・回・予・告

遂に姿を現した敵の首領、葵叉丹

そして尽く破られていく帝都の破邪六魔陣。

この強大な敵に勝つ為、私はトゥスクルに向かう。

次回クーヤ大戦、『金魚の恋』

太正櫻に浪漫の嵐ッ!

ハクオロさんッ!私、負けません!