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「・・・・すまん、家を出る事になった。」

 

「・・・・・は?」

 

親父の言葉が唐突過ぎて、最初は意味が分からなかった。

だが家の状況を少なからず理解していた俺は、直ぐに事の重大さに気付いた。

俺だって馬鹿じゃない・・・。

そりゃぁ・・・バブルがはじけて親父が事業に失敗した事で、

多分俺にとばっちりが来るだろうって事は、ある程度予測はしていた・・・・。

・・・・だけど。

 

「じゃあ22時までに要るものだけ集めて用意しといてくれ!」

 

「・・・・ちょ、ちょっと!?父さんっ?」

 

「グス・・・すまないねぇ〜、裕介・・・。」

 

いきなり夜逃げはねぇ〜だろっ!!

 

 

特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM001 長瀬裕介

 

 

バンッ!

ブロロロロ〜!!

 

『やれやれ、今日は大口の引越しがあってただでさえダリィのによ〜。

 よりにもよってY現場(※夜逃げ)付きかよ〜。』

 

『おぃ!よせって・・・・。荷台に家族乗っけてんだからよ・・・・。』

 

・・・・これ見よがしに聞こえてるよ。

暗い荷台の中には慎ましい家財道具と、俺・親父・お袋で構成された長瀬一家が

グリコのおまけよろしく運送されていた。

親父達は性も根も尽き果てた様相で項垂れている。

 

「・・・・こんなはずじゃ・・・・ブツブツ・・・・。」

 

「・・・・・あたし達これからどうなるのかしら・・・・・。」

 

・・・・・・・。

みんな、驚くだろうな・・・・。

そういえば、結局何も挨拶出来なかったな・・・・。

寺島のヤツはきっと大笑いするに決まってる。

あ!阿川に借りてた本、返し忘れてた・・・・。

・・・・・・みんな、悪いな。

・・・・オックスフォードに行くって言ってたけど。

・・・・・・・この調子じゃ無理みたいだ。

・・・・・・・・・。

ブロロロ〜

・・・・・・コンコン。

 

『あぁ?何っすか〜!?』

 

「あの・・・すいません。ちょっと、本を読みたいんですけど。

 荷台の方の照明があれば・・・

 

『あぁ無理無理!荷台には電灯ついてねーっすから。我慢してくださいや。

 ちなみに高速乗ったら2時間後に●▲S・Aに停車しますんで。』

 

「はぁ・・・・。」

 

・・・・ちっ。本すら読めないのか・・・・。

ブロロロ〜

 

「・・・ところでさ、父さん。」

 

「・・・・ブツブツ・・・。」

 

「父さんッ!!」

 

「・・・・ッ!お、おぉ!どうした?裕介・・・・。」

 

「俺のこれからの事って考えてるの?・・・身近な例で言うと、高校とか。」

 

「こ、高校か。そ、それなら・・・心配しなくていい。

 お、お父さんのツテでちゃぁ〜んと用意してやってるから・・・な?母さん?」

 

「・・・・ブツブツ・・・こんなバカな男とそもそも結婚・・・・ブツブツ・・・・。」

 

・・・・・はぁ・・・・。

俺はダンボールに寄りかかって、力無く腰を下ろした。

・・・・・・だっせーの。

・・・・・・・・・。

 

河川塾全国高校模試 2年生の部 優秀者ランキング

1.長瀬 裕介     ナガセ ユウスケ       戸塚夜津徒高校 総合895点
2.柏木 楓       カシワギ カエデ           隆山東高校 総合893点
3.野比 のび太    ノビ  ノビタ                   海星高校 総合892点
4.太田 香奈子    オオタ  カナコ   ゼムリャ・フランツァ・ヨシャファ高校 総合891点
5.藍原 瑞穂     アイハラ ミズホ             南海高校 総合890点
6.磯野 カツオ    イソノ  カツオ   早稲田大学付属高等学校 総合889点

 

『おぃ!長瀬がまたトップだぜっ!!』

 

『マジかよ〜!やり過ぎだってあいつ〜。』

 

『すっげーよ長瀬!まぢでオックスフォード行けるぜ?』

 

「・・・・まぁな。今回はこんなもんだろ。」

 

『カ〜ッ!すっげー嫌味ッ!まぁ、お前がそれを言っても獲て妙だからなぁ〜。』

 

『おいっ!見ろよっ!ギャハハッ!この太田って女?どこだよ?この高校ッ!』

 

『あぁ!そいつな、そいついっつも変な高校名だすんだよ〜。』

 

『そういや前回も(きらめき高校)とか書いてたな、こいつ・・・。』

 

「だけど、何だかんだいっても常に上位にいるって事は相当の実力者じゃないか?」

 

『ま、それはそうだけど。おもしれーよな。こんなふざけたヤツが長瀬と肩を並べるなんてよぉ。』

 

『ッ!!おい、長瀬。またC組の例の子が来てるぞ?』

 

「・・・困ったな・・・。この間ちゃんと断ったのに・・・。」

 

『お前も酷いヤツだなぁ〜。いいじゃん、付き合ってあげたら?』

 

「俺は本を静かに読んでいる方が性に合ってるんだ・・・。」

 

『ったく、お前いつかバチが当たるぞ〜。』

 

ワイワイ・・・・。

・・・・・・・・・。

 

・・・・・ハッ!?

 

ブロロロ〜〜〜〜

プップー!

 

『どけ、虎羅ッ!危ねーだろがっ!!』

 

『ったく、こんな夜中に高速をカップルが走ってんじゃねーっての。』

 

・・・・・何時の間にか寝てしまったのか・・・。

・・・・・・・バチが当たる・・・・・か。

これから行く高校って、どんな高校なんだろう・・・?

レベルが低かったら嫌だなぁ・・・。

ま、もう今の俺にはどうでもいい事だけど・・・。

とりあえず・・・奨学金とかの事、調べておかないとな・・・。

・・・・海外は厳しいし・・・やっぱ東大かな・・・。

なんか、疲れたよ・・・・。

次行く高校で・・・・・ひっそり暮らすのも・・・悪くない・・・・か・な・・・?

・・・・・・・。

・・・・・・・。

 

 

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン

 

 

「おっはよーっ!!」

 

『あ、沙織ちゃんオッハー♪』

 

『さーおりん♪はい、昨日借りてた漫画♪』

 

「あ、どうだった?」

 

『もうサイッコー!!この独善的な親父がステキッ!はやく続き貸してよ〜!』

 

『ダーメダメ!今、あたしが読んでるだから〜。』

 

『あぁ!ねぇねぇ!さおりん知ってるぅ?』

 

「え?何々?」

 

『今日さぁ〜、転校生が来るって話ぃ〜。』

 

「うそっ!聞いてないよ!教えて教えてッ!!」

 

『なんかねぇ昨日なまはげ(※教師のあだ名)に聞いたんだけど、

 うちのクラスに今日、転校生が来るんだって!し・か・も・男ッ!』

 

「ホントッ!?うわ〜気になるぅ〜!いつ?いつ?」

 

ガラララッ

 

『ゲッ、山岡が来たッ!!』

 

虎羅。お前らぁ〜、さっさと席につけよ。ホームルーム始めっぞ?」

 

『じゃね!さおりん』

 

『あ、さおりん今日お弁当?』

 

「ちがうよ。」

 

『じゃあ昼、学食ね?』

 

「うん♪分かった。」

 

「こらっ、早く席につけっての。まったく〜朝から元気がいいな。」

 

『センセー。』

 

「うん?どうした関口?」

 

『今日転校生が来るんですかぁ?』

 

「あん?!・・・ったくそういう情報だけは早いなぁ〜お前ら・・・。」

 

ギャハハハハ

 

「まぁ、いいや。丁度その転校生が今そこにいるんだよ。」

 

ザワザワザワ!

 

「はいはい、落ち着けって。小学生かお前らは〜。今から紹介すっから。

 おーい、君。んじゃ入って来てちょんまげ。」

 

・・・・・・・・・・・。

なんか教室が騒々しい。

ったく、俺は見世物じゃないんだぞ。・・・・って、おや?教師が手招きしてるよ・・・。

やれやれ・・・自己紹介でもさせられるのかな?・・・ハァ・・・。

渋々俺は教室に足を踏み入れた。

教室の中に入ると、まぁ俺と同じ年頃の男女の集団が

物珍しそうな目で俺を凝視している。

 

「えぇ〜、今日からこのクラスに転校してきた。

 長瀬裕介くんだ。聞いて驚くな〜!長瀬くんはぁ〜、親の都合で仕方なく

 あの!戸塚夜津徒高校から転入して来たんだそうだっ!!」

 

・・・ッ!!よ、余計な事言ってんじゃねー!!

おおおおおおーーーーッ!!

教室は一気にどよめき起つ。

 

『聞いた聞いたぁ?戸塚だってぇ〜!』

 

『超スゴ〜イ!名門中の名門でしょう?東大とかバンバン合格してるって・・・』

 

『なんかすっごく頭良さそうに見えてきちゃったぁ〜』

 

『マジかよっ!戸塚ぁ?なんでんなとこから来るんだよ〜!?』

 

『ありがち、親がクビくくったとか。(笑)』

 

『宿題教えてもらおーっと!』

 

「・・・・・・長瀬・・・裕介くんか・・・・。」

 

ワイワイガヤガヤ

 

「こらこら〜!落ち着け〜お前ら〜!」 (汗)

 

・・・・あんたのせいだろ・・・。

・・・・・・。

 

バンッ!!

 

!?

 

し〜〜ん

 

突如机を強打したような音に教室は静まり返った。

 

・・・・・クスクスクス。

 

・・・・!?なんだ?女の子の笑い声?

俺は笑い声の聞こえる方向に目線を向けた・・・・すると!

一人の女性が席を立っていた・・・。

あ、あれ?なんか・・・・ちょっと・・・・。

 

はぁっ!?

 

その女の子は顔中包帯でグルグル巻きだった。

・・・交通事故か何かにでもあったのだろうか?

ちなみに何故か教室にいる誰も彼女と目線を合わそうとしない・・・・。

畏怖・・・・明らかにみんな畏怖しているな。

 

「ど・・・どうした?太田?」

 

ひきつった声で山岡という担任の教師が声をかける。

だが、彼女は教師の言う事などまるで聞いていないかの様に、俺に話しかけ始めた。

 

「ウフフフ・・・長瀬・・・裕介・・・・くん。現実では初めましてかしら?」

 

「・・・ッ!?き、君は?」

 

「あら・・・全国1位の人ってのは下のランクの人間の事なんかどうでもいいみたいね。」

 

「・・・・悪いけど・・・君の言ってる事が理解出来ない。」

 

「フフフフ。私は太田香奈子。貴方と同じ人種よ。」

 

「・・・・・・??」

 

「そのうち分かるわ・・・。ところで、それよりも・・・あなたに質問よ。」

 

「質問・・・?何を?」

 

「簡単な質問よ・・・・・貴方は簡潔に答えてくれればいいわ。」

 

「・・・・分かった。質問を始めてくれ。」

 

「セックス。」

 

「はっ?」

 

「セックスが男女に及ぼすエクスタシーというのは、ひとつの快楽という枠組みに囚われず

 もはや、芸術粋にまで昇華されていると言っても過言ではないわ。

 貴方程の頭脳の持ち主ならこの私の哲学についてどう思う?」

 

・・・・・・・・・。

ここ・・・・確か・・・南海高校だよな・・・?

・・・・で、確か普通の公立高校だよな・・・?

・・・・で、この電波女は一体何なんだろう?


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