特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM002 新城沙織


し〜ん

 

教室中が静まり返り、

クラス全員の視線が俺に向けられていた。

 

「・・・・あ、あの・・・それは質問というよりは・・・・

 

「貴方はただ答えればいいの。今すぐに。

 

すると、突然窓際に座っていた長髪の女の子が立ち上がった。

 

『ちょ・・・さおり!?』

 

『やめなって・・・!』

 

何か周りの女の子が止めに入っているみたいだが、彼女は毅然とした態度で喋りだす。

 

「ちょ、ちょっと太田さん!転校してきたばかりの長瀬くんを

 いきなり困らせて楽しいのっ!?もうやめ・・

 

「新城さん。香奈子ちゃんのやる事に口出ししないで下さい。」

 

・・・っ!?

さらに新城っていう女の子が話している最中にいきなり

太田という女生徒の真横に座っていた女の子が口を挟んだ。

厚めのメガネをかけていて、ここからではよく表情が読み取れないが

明らかに新城さんに対して圧力をかけている。

 

「ふふふふ・・・さぁ、長瀬裕介クン。貴方の考えを述べて頂戴。」

 

・・・・・・・。

 

「・・・・いいよ、じゃ答えるよ。」

 

「ふふふふふ。」

 

「・・・・分からん。」 きっぱり

 

「・・・・・なっ!?」

 

「悪いけど、俺は君ほど人生経験が濃くないんだ。勉強に忙しいんでね。」

 

ザワザワザワ!

教室中がどよめく。

何故か女の子の中には「きゃぁ〜♪」と言って興奮している子もいるけど・・・?

 

「ふ・・・ふふ・・・うふふふふふ。」 わなわな

 

あ、小刻みに震えている・・・・。やはり怒ったのかな?

 

「貴方・・・いいわぁ・・・・気に入ったわ・・・・。」

 

そう言うと、太田という女生徒はそのままスタスタと歩きだし

ガラガラ

何故か教室を出て行ってしまった・・・・。

我に返った担任が慌てて呼び止める。

 

「お、おいっ!太田っ!お前授業は・・・

 

「必要ないわ。時間の無駄よ。」

 

太田さんが出て行くと同時に、先程のメガネをかけた女生徒も

立ち上がり、そそくさと後を追って出て行ってしまった。

 

「こ、こらっ!藍原・・・・お前までっ!」

 

「失礼します。」

 

ガラガラ

 

ピシャッ

 

「あの・・・・すいません。」

 

「あ、あぁどうした?長瀬。」

 

「このクラスって、学級崩壊を起こしているんですか?」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

あ・・・泣いた・・・。(汗)

・・・・・・・・。

結局太田って子のせいで俺の自己紹介がうやむやになってしまったけど

・・・・まぁ、いいか。特に言うべき事も無いしな。

夜逃げして来ました。なんて死んでも言いたくない。

とりあえず自分の席を訪ねると、すでに窓際側に席を設けてもらっていた。

良かった!非常に有難い。廊下側は五月蝿くて嫌いだからな。

心の中で運が良かった。と安堵しながら自分の席の前まで行くと、

 

!?

 

・・・・机の上に花瓶!?

 

しかも花瓶に菊の花が・・・・・。

 

「あ、忘れてた・・・・。」

 

と、言いながら担任がそれを持って出ていった。

・・・・・・・・・。(滝汗)

クスクスクス

 

「気にしないで。あれ先生のいつもの悪戯だから。」

 

・・・・・なんて担任だ・・・。

って、あれ?この子は・・・・

なんと先程俺を庇おうとしてくれた女の子が偶然にも隣の席だった。

 

「あ・・・さっきは・・・どうも。」

 

「あ、私、新城さおりって言うの。よろしくね♪長瀬くん。」

 

そこで担任が教室に戻ってきて声をかけてきた。

 

「あぁ、そうそう。新城?」

 

「はい?」

 

「お前、悪ィけどさ、昼休みにでも長瀬に学校を案内してやってくれないか?」

 

「え・・・・私がですか?」

 

「いや・・あの・・・僕は別に・・・。」

 

「はーい♪分かりましたぁ。・・・・じゃ昼休みに案内してあげるね♪」

 

「は・・・はぁ・・・。」

 

まさに元気一杯の女の子って感じだな・・・。

まぁ・・・戸塚には居なかったよな。こういうタイプの子って。

 

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンデ〜ンパ〜♪

 

休み時間に入るや否や、俺はヒーローインタビューの如くドッと生徒に囲まれた。

 

『すっげ〜よ、お前!あの太田に正面きってタンカきれるなんてよ〜!』

 

『ホント〜格好良かったぁ〜!(はあと)ねぇねぇやっぱ戸塚って・・・・

 

『長瀬ってさ、スポーツ得意?よかったらバスケ部に・・・・

 

『ねぇねぇ!長瀬くんって彼女いないのぉ?』

 

『や・・・ややや・・・やっぱはじいは・・・かかか・・買いだよね〜!?』

 

『あはぁ・・・ん・・・・い・や・・・・ダメ!・・・・そこは・・・・アッ!・・・ 

 

『朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ、非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ・・・・

 

・・・・・何て事だ・・・。

俺は折角、静かな学園生活を過ごそうと思ったのに・・・・。

裏庭の木漏れ日が射す場所で、一人優雅に本を読みたかったのに・・・・。

・・・ま、まぁ、転校生だからちやほやされてるだけで

どうせ3日もすれば誰も見向きもしなくなるさ・・・・。

・・・・・・・・。

 

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンド〜クデ〜ンパ〜♪

 

・・・・よ、ようやく昼休みになった。

南海高校ってこの区域の公立じゃ結構優秀らしいけど・・・・。

・・つ、つまらん・・・はっきりいって授業が簡単すぎて・・・つまらない・・・・。(汗)

みんなには悪いけど・・・・俺には拷問にしか思えない・・・。

と、とりあえず御飯でも食べて・・・・気分を・・・・。

 

「長瀬くん♪」

 

突然横からお声がかかった。この声は・・・

 

「あ、新城さん。」

 

新城さん。な〜んて堅ッ苦しい呼び方しなくていいよぉ♪さおりでいいから。」

 

「えっ!?」

 

し、しまった・・・思わず素っ頓狂な声を上げてしまった!

 

「ほぇ?」

 

新城さんが不思議そうな顔をしている。

 

「い、いや。なんでもないんだ。

 

 じ、じゃあ俺だけなれなれしくても何だから・・・俺も裕介で・・・いいよ。」

 

「そう?じゃあこれから裕くんって呼ぶね♪」

 

「ゆ・・・『裕くん』〜!?」

 

「わわっ!びっくりしたぁ〜。ど、どうしたの!?」

 

「い・・・いや・・・女の子をそう呼ぶのも、

 そういう呼び方をされるのも慣れてない・・・って言うより初めてなんだ・・・。」

 

「えぇ〜?そうなんだぁ!?もう〜裕くんっておちゃめ〜!

 

にこにこしながら新城・・・おっと、沙織ちゃんが

バンバンと俺の肩を叩いてきた。

イテッ!イテテッ!!

ふ、普通の高校の女の子ってみんなこんなノリなのか・・・?

と、とりあえず下手糞な笑顔で媚びてその場を流した・・・。

 

「あ、あはは。で、その・・・何のようかな?」

 

「よかったらお昼御飯を一緒に食べない〜?」

 

「えっ!?」

 

「アハハッ!また変な声出してる!裕くんって、面白いねー♪」

 

「はぁ・・・・そ、そう?」

 

「ここの学食結構美味しいんだよ〜♪ねぇ?行かない?」

 

屈託の無い笑顔で誘ってくる。

・・・まぁ・・・こういうのも悪くないか・・・・。

 

「そう・・・だね・・・。パンばかりってのも、味気ないしね。

 じゃあお言葉に甘えて学生食堂まで案内してくれないかな?」

 

「うん。いいよ♪じゃっ、行こう!」

 

『あーっ!!さおり〜!!』

 

突然、向こうの方から数名の女子がこちらへ来た。

 

『さっそく長瀬くんを誘ってるッ〜!!』

 

『こら〜、長瀬くんはB組のなのよ〜!』

 

・・・・いつのまにか扱いかよ・・・。(汗)

 

『それに、さおりん今日私達といっしょに・・・

 

「おほんっ!あのねっキミたち!私、先生に頼まれたってのもあるけど

 今日は裕くんに色々学校を案内してあ・げ・る・の。

 ってな訳でぇ〜、さっきの約束、ゴメ〜ンだけど許して♪」

 

そういって沙織ちゃんはペロリと舌を出して、

謝ってるのか謝ってないのかよく分からない仕草をした。

 

『・・・!!ゆ、『裕くん』〜!?』

 

『さ・・・・さすがさおりん・・・な、なれなれしいというか・・・・』

 

呆気にとられている女子を尻目に沙織ちゃんは俺の袖を引っ張って

 

「お腹へっちゃったよ〜。行こ行こ♪」

 

「わわわ・・・ちょ、ちょっと・・・まだノート出しっぱなしで・・・!!

 

― 南海高校学生食堂 ―

ワイワイガヤガヤ

食堂は沢山の生徒で埋め尽くされている・・・。

 

「あっちゃ〜・・・やっぱり来るのが遅かったみたい〜。」

 

沙織ちゃんが困った顔で人ごみを眺めている。

 

「毎日こんな感じなの?」

 

「うん。今がピークってとこかな?もう少し早く来たら、

 結構いい場所ゲット出来るんだけど〜。困ったよ〜ん・・・。」

 

・・・・やれやれ、どこの学校でもこの風景は変わらないな。

クククッっと失笑していると、

 

「どうしよう〜裕くん・・・今から並ぶ?」

 

「いや、今から並ぶくらいなら、購買でパンでも買わないかい?」

 

「そうしよっか。ざんね〜ん、せっかく裕くんと食べようと思ったのにぃ・・・。」

 

「いや、だから・・・今からパン食べるだろ・・・?」

 

「あぁ、違うの!南海名物ウバシャライスを教えたかったの♪」

 

「・・・・ウバシャ・・・・・。」

 

・・・・なんだ?その頭が悪くなりそうな食べ物は・・・。

 

「なんでもポリネシアにあるウバシャ共和国の伝統的な・・・・

 

「急ごう沙織ちゃん。パンが売り切れちまう。」

 

「あぁ!もう・・・待ってよ〜!裕くん購買の場所知ってるの!?」

 

スタ・スタ・スタ

 

「さっき、校内見取図の横を通った時、一通り覚えたよ。」

 

「ッ!!すっご〜〜〜い!!さっすが・・・

 

「さ、沙織ちゃんっ!!・・・・そ、その・・・・あまり大声で・・・

 

「えっ?何が・・・?」

 

「いや、だから・・・俺が戸塚から来たっ事は、出来れば知られ・・・・

 

『あぁ〜!いたっ!彼が戸塚からの転校生ねっ!?』

 

『うわ〜!如何にもってかんじぃ〜!』

 

『超賢そうじゃん!』

 

・・・・・・・・・・・。

 

「あ、あの人達って3年生だよ。」

 

「もう他の学年まで知れ渡っていたのか・・・。」

 

まずい・・・廊下にいる生徒の視線が俺に・・・・・!!

 

『何だって?戸塚ぁ!?』

 

『うそうそ?まじぃ?』

 

その時・・・・!!

ワイワイガヤガヤ

突然前方から集団がやって来た。

 

『萌え〜、萌え〜♪』

 

『ミズホたん、ハァハァ』

 

な、なんだ・・・!?・・・このあBない集団は・・・。(汗)

なんだか誰かを囲っているみたいだけど・・・

 

「沙織ちゃん・・・何なの?あの奇妙な集団は?」

 

「あ、あれはね・・・・。」

 

あっ!野郎どものわずかな隙間から少しだけ見えた・・・。

中心に一人の女生徒、あとは全て男子生徒・・・。

待てよ・・・まさかこれ・・・全員その女の取り巻きなのか・・・!?

野郎集団で女子の顔が良く見えない・・・。

 

『ねぇ、藍原さん。今週末暇かなぁ〜?』

 

「・・・いい加減に付いて来ないで下さい!」

 

『頼むよ〜、お茶くらいつきあってよ〜?』

 

「ごめんなさい!・・・そんな暇ないの。」

 

・・・・・あ、あの子って・・・。

 

「あれはね・・・さっき太田さんと一緒に出ていった藍原さんのファンクラブで・・・

 

「ふ、ふぁんくらぶぅ〜!?」

 

「うん。彼女自身は迷惑がってるんだけど・・・・。」

 

萌え〜♪萌え〜♪ガヤガヤ

十数人の男子生徒を引き連れて、俺達の前を通り過ぎて行った。

・・・・・・ま、どうでもいい事だけど。

しかし、公立高校ってのはホント変わっているなぁ・・・・。

 

See you on the other side