特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM009 放課後の誘い(いざない)

 


キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンド〜クデ〜ンパ〜♪

わいわい

がやがや

 

『なぁなぁ、今日寄ってく?』

 

『お、いいね!』

 

『今日は何すんだっけ?』

 

『あぁ、グランドの整備・・・。』

 

『もうええってぇ〜!!』

 

わいわい

がやがや

 

・・・・・ふぅ。

まだ2日目なのにやけに時間が経つのが遅いな・・・。

 

「裕くん♪」

 

沙織ちゃんが鞄を持ってやって来た。

 

「やぁ、お疲れ。」

 

「アハハ!それじゃオジサンだよぉ〜。」

 

「オジサンって・・・・。」

 

「ねぇ裕くん?」

 

「ん?」

 

「お昼ね、太田さんが言ってた事だけど・・・

 

「あぁ・・・待つよ。約束はしてないけど、一応気にはなるし。」

 

「・・・・そうなの・・・。た、多分だけどね?私の予想では・・・・

 

「あら?感心感心。ちゃんと待っててくれたのね。」

 

突然現れる太田さん。何故か今回は右手にいちご牛乳を持っている。

 

「まぁね・・・一応。・・・って言うかさ、5、6限は何処に行ってたんだよ?」 (汗)

 

「うふふ。私ほどの人間になると、食後は休息をとらないと駄目なの。」

 

「・・・それって要するにどっかで寝てたって事かよ!?」

 

「まぁ、私は保健室は顔パスだから。ふふふ。」

 

相も変わらず不敵な面持ちで立ち振る舞う太田女史。

 

「で、一体何の用なんだよ?」

 

「うふふふ・・・さぁいらっしゃい。」

 

「いらっしゃいって・・・おいおい!何処へ行くんだよ!?」

 

「来れば分かるわ。さぁ。」

 

「・・・・しょーがないな。」

 

仕方なく、椅子から腰を上げる。

隣にいた沙織ちゃんは何故か小難しい顔をしている。

 

「あれ?どうしたの沙織ちゃん?」

 

「う〜〜。」

 

「・・・?」

 

「うん、決めた!私も行くよぉ!」

 

「えっ!?だって・・・沙織ちゃんは別に・・・

 

「いいの。何だか心配だし。」

 

「???」

 

よく意味が分からないが、沙織ちゃんと俺は太田さんについていく事になった。

ツカツカツカ

スタスタスタ

トコトコトコ

 

「・・・・・・じぃ〜〜。」

 

「・・・・?どうしたの?裕くん?」

 

「・・・・・いや・・・太田さんって・・・すごくスタイル良いなぁって・・・。」

 

バシッ!

 

イタァッ!!さ、沙織ちゃん・・・今の叩き方、バレーのスパイク!?」

 

「もうっ!裕くんのスケベッ!!」

 

「そ・・・そんなつもりで言ったんじゃないよ!」

 

「どうなんだか・・・?裕くん、太田さんの腰元ばっか見てるじゃない!」

 

「・・・・だ、だって勝手に目が・・・。」

 

ツカツカ

スタスタ

トコトコ

太田さんは無言のまま西校舎、文科系クラブの活動棟に向かっている。

ヒソヒソ

ザワザワ

文科系クラブの生徒達がこちらを見て、様々なリアクションをしている。

こっそり覗いてくる生徒。

仲間同士で何やら囁いている生徒。

化け物でも見たかのように硬直する生徒。

ガタガタとエレクトしている生徒。

何かに祈祷している生徒。

あぐらをかいて、空を飛ぼうとしている生徒。などなど。

たまたま太田さんの前方の扉から出てきた生徒に至っては

 

『おわっ!!』

 

と一声上げて、すぐさま元来た扉の中へ戻ってしまう始末。 (汗)

それでも運悪く廊下ですれ違ったりした生徒なんかは

目線を下にして、まるで不良から逃げるような素振りで、廊下の端からすり抜けていく。

・・・・よほど嫌がられているのか?この太田って子は・・・・。

なんとなく間が痛くなってきたので、たまらず太田さんに声をかけた。

 

「なぁ・・・?ここって文科系クラブの活動拠点じゃ・・・?」

 

「・・・やっぱり・・・裕くんを誘う気なんだ・・・。」

 

「へ?何だって?」

 

その直後、太田さんの歩みが止まると

くるりとこちらに振り返り。

 

「さぁ、ついたわよ。」

 

と言って、不敵な笑みを見せた。

 

「『さぁ、ついたわよ。』って・・・西校舎の端っこじゃんか?」

 

「うふふふ。慌てないでよ。」

 

太田さんは右手で傍にあった部屋の入口らしき扉を小突く。

 

「ここよ。ここ。」 コンコン

 

「こんな端っこの部屋に・・・・ん?」

 

その扉の上には・・・・

『南海高校 哲学部』

古臭い汚れた表札が立て掛けてあった。

 

「なにこれ?・・・哲学部?」

 

「そうよ、ようこそ長瀬裕介くん。ここが南海高校哲学部の部室よ。」

 

「いや、ちょ、ちょっと待ってくれ。クラブガイドには確か哲学部なんて掲載されてなかったぞ?」

 

「あら、そうなの・・・?ま、妨害工作されてるから仕方がないわね。」

 

「ぼ、妨害ぃ?何それ?誰に?」

 

「ふぅ・・・一度に質問しないでくれる?とりあえず中に入りましょう。」

 

そう言って太田さんはガラガラと扉を開ける。

 

「御待たせ。部長。瑞穂。」

 

・・・・ッ!!

なんと部屋の中では月島さんと藍原さんが高そうな椅子に腰掛けてテーブルの上のおやつを食べていた。

 

「えっ!!か、香奈子ちゃん・・・嘘ッ!?今日連れてくるなんて聞いてないッ!!」

 

「あ、わ〜い♪長瀬ちゃんだぁ〜♪」

 

月島さんはニコニコしながらトテトテ〜っと歩み寄ってきた。

 

「つ、月島さんっ!?そ、それに藍原さんも・・・???」

 

「ふふふ・・・部長。さっそく始めてもいいかしら?」

 

「うん♪香奈子ちゃんにまかせるよ。」

 

・・・???

聞いた事もないクラブを紹介されて部屋に入ってみれば

月島さんと藍原さんがいるし・・・・意味が分からない・・・。

 

「さてと・・・。」

 

そういいながら太田さんは椅子に腰掛けると

 

「あ、遠慮なく座って頂戴。」

 

と、俺にくつろぐよう勧めて来る。

・・・・しっかし・・・よくよく部屋の中を眺めると・・・。

なんだこの・・・フランス調の造りは・・・? (汗)

 

「って・・・あら?貴方までどうしているのかしら?」

 

ふと、俺についてきた沙織ちゃんに(今さら)気付いた太田さんが問い掛ける。

 

「わ・・・私は、裕くんの友達だもんっ!裕くんが心配だから・・・・

 

「ふ〜ん・・・・まぁ・・・別にいいわ。そんなところに突っ立ってないで、座れば?」

 

なんだか貴族のような太田さん・・・。

いまいち状況がつかめずにいると、月島さんが俺を見つめてきた。

 

「・・・・じ〜〜。」

 

「な・・何?月島さん・・・・。」

 

「長瀬ちゃん・・・もてるんだ・・・・。」

 

「はぁっ!?」

 

「しょぼ〜ん・・・。」

 

「あ・・・あの・・・・月島さん?」 (汗)

 

パンパン

 

「はいはい。とりあえず話してもいいかしら?」

 

手を打ちながら太田さんが改めて場を鎮めにかかる。

し〜〜ん

ロマネスク調のテーブルに集まった5人。

月島さん、太田さん、藍原さん、沙織ちゃん、そして俺。

・・・・・で、何が何なんだ? (汗)

 

「さて、長瀬裕介くん。ようこそ我が伝統ある哲学部へ。」

 

「は・・はぁ・・。」

 

「今回貴方に来てもらったのは、私達のクラブを知ってもらう為よ。」

 

「そもそも、哲学部って何だい?」

 

「哲学部は南海高校の文科系クラブの中でも特に歴史が長いクラブよ。

 今年で30年目。つまり、現部長の瑠璃子が30代目になるわ。」

 

「そうか!月島さんはここの部長だったのかっ!!」

 

「そうよ。瑠璃子が部長。そしてそこの瑞穂が会計。そして私が執行係ってとこかしら。」

 

「で、さっきの質問だけど・・・なんで学校の案内に掲載されてないんだ?」

 

「その理由は3つあるわ。」

 

「3つもあるのかよっ!!」

 

「ま、それは後でおいおい話すけど・・・とりあえず話しておかなければいけない事があるの。」

 

「はぁ・・・何?」

 

「正直、我がクラブは部員が足りない状況なの。」

 

「・・・という事は・・・まさかこの3人だけかい?」

 

「その通りよ。私達以外に部員がいないの。」

 

「・・・・・・・。」

 

「だから、貴方。このクラブに入部しなさい。」

 

「ふ〜ん・・・・・・・、はぁっ!?

 

「どうしても今週末に部員が5人いなければいけないのよ。」

 

「ちょ、ちょっと待てッ!!話が無茶苦茶なんだがっ!?」

 

「はっきり言っておくわ。私達のクラブは人を選ぶの。

 滅多やたらに・・・簡単に入部はさせないわ。」

 

「い、いやそういう事ではなくて・・・・

 

「貴方は選ばれた人間なの。私の目に狂いがなければ、貴方こそこの部の部員に相応しいわ!」

 

「ひ、人の話を聞けー!!」

 

「・・・何?何か不明な点があったかしら?」

 

「と・・・とりあえず、一つだけ問いたい!」

 

「何かしら?」

 

「哲学部って・・・何をしてるクラブなんだ?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

し〜〜〜〜ん

 

俺の一言によって、突然沈黙に包まれた部屋の中で

月島さんの無邪気な一言が周囲に木霊した・・・・。

 

「あれぇ?そういえば何してるんだっけぇ〜?」




See you on the other side