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特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM035 プロジェクトD

 


ちゅんちゅん・・・・

 

「・・・う・・ん・・・・。」

 

PiPiPi−−−ッ!

『朝だぞ?虎羅。起きようね♪起きないとちーちゃん泣いちゃうぅ〜♪』

・・・うるっさい・・・なぁ・・・・。

だから・・・ちーちゃんって誰だよ・・・・!

うとうと・・・。

ちりちりちり・・・・。

【今日の天気は・・・・午後の降水確率は・・・】

ガバッ!!

 

「な、なんだ・・・・!?」

 

突然脳内にアンプを接続され、音を流されたような衝撃で俺は飛び起きた。

・・・痛ゥ・・・。

えぇっと昨日の放課後突然倒れて、保健室でしばらく休んでから・・・・。

う〜んと・・・・帰宅する途中のあるところまで

瑠璃子さん達に付き添ってもらったのは覚えてるんだけど・・・。

色々と思い出そうとしながら布団から身を起すが、頭は重く、時々痛みが走る。

 

「なんか・・・調子悪いな・・・・。」

 

一瞬学校を休もうかと考えたが、昨日の出来事も気になるので

何とか服を着替えようと寝巻きを脱いだ・・・。

・・・!?

 

「うわぁッ!!」

 

露わになった自分の胸部や腹部を見た俺は叫んだ。

 

『裕介ッ?どうしたのッ!?』

 

「な、なんでもないよ。ちょっと寝ぼけてただけだから!」

 

台所から母さんの声が聞こえてきたので慌てて返答した。

ドクン・・・・ドクン・・・・。

心臓の音が跳ね上げる。

ハァ・・・ハァ・・・・・!!

 

「な・・・なんだこれッ・・・・!!」

 

恐る恐るもう一度身体を見つめる。

ごくりと唾を飲み込んで、今度は立て掛けてあった小さな鏡で再びそれを見た。

驚いた事に、俺の身体には大きな傷痕が出来ていた。

胸部から腹部にかけて、更には腕にも、そして足にもあった。

それは手術で患部を縫合したような跡だが、既に何年も経過したみたいに深く澱んでみえる。

 

「なんで・・・こんな傷跡があるんだよ・・・どうなってんだ・・・・これ・・・!」

 

ドタドタッ!

 

『ゆ、裕介ッ?朝食は・・・・・!?』

 

「い、いらないよ!行ってきますッ!!」

 

慌てて制服を着ると俺は鞄を手にとり、朝食も食べずに家を走り出た。

ちりちりちり・・・・。

【ほんっとお隣の犬、うるさいったらありゃしない・・・叩き殺してやりたいわ・・・!】

【―あ、申し訳御座いません。ちょっと電車が人身事故で遅れまして・・・はい・・・】

【国道777号線では5Kmの自然渋滞で発生しております。なお南海本線から緋月バイパスにかけては・・】

 

【もっしかし〜て♪いま、ふった〜りこ〜いに落ちたの〜〜〜♪】

【死にたく・・・ない・・・・死にたくないよぉ・・・】

な、なんだってんだ・・・・一体・・・!?

まるでラジオ放送のように、頭の中から様々な声や音が聞こえてくる。

 

「お、俺・・・・どうなっちまったんだよッ!!」

 

『・・・受信が始まったの・・・。』

 

!?

 

俺の叫びに呼応するかのように瑠璃子さんの声が聞こえた。

その場に足を止めて、周囲を見渡す。

すると、すぐ脇にあった児童公園で瑠璃子さんが犬と一緒にしゃがんでいた。

 

「・・・・あ・・。」

 

間抜けな声を上げる俺に瑠璃子さんはふと優しい視線を向けると

傍にいた犬を一撫でしてこちらに歩み寄って来た。

 

「・・・・おはよう、長瀬ちゃん。」

 

「る、瑠璃子さん・・・なん・・で、こんなところに・・・?」

 

瑠璃子さんは2、3瞬きした後、にこりと微笑む。

 

「長瀬ちゃんを迎えに来たの。」

 

「俺を・・・?」

 

「うん。」

 

「な・・・なんで?」

 

「なんでって・・・今日も学校に行くでしょ?」

 

彼女はそう言うと、ふわっと綺麗な髪を掻き揚げくすりと笑った、そして

 

「嘘。それだけじゃないの。・・・・長瀬ちゃん怖がると思ったから。」

 

と、内心ギクリとする事を言った。

 

「こわ・・がる・・・・。」

 

「長瀬ちゃん、今怖いんだよね・・・。分かるの。『怖い怖い』っていう電波が届くもの。」

 

「・・・・・ハッ!!る、瑠璃子さんッ!!実は・・・その、起きてから・・・俺ッ!!」

 

ガクガクと膝が震えだす。

足に力が入らなくなって、俺はその場にへたり込んだ。

スッ

 

「あ・・・え・・・・!?」

 

戸惑う子供をあやすかのように、瑠璃子さんは俺の頭を撫ぜ始める。

 

「怖がらないで・・・長瀬ちゃん。電波を感じ始めたの・・・・。」

 

「・・・・・は・・・・?な、何言って・・・・。」

 

「私も・・・初めはそうだったの・・・・怖がらないで・・・・じきになれるから。」

 

「俺・・・そん・・・・な・・・オレ・・・・?」

 

もう何を言えば、何を感じればいいのか分からなくなってきた。

ろれつも回らなくなり、身体中がピリピリする。

ギュッ。

 

「・・・・・あ?」

 

そんな俺の頭を瑠璃子さんは自分の胸に押し当てると、優しく抱きしめた。

 

「怖がらないで・・・長瀬ちゃん。怖がらなくていいよ・・・。」

 

「あ・・・あ・・・・〜〜〜〜ッ!!」

 

もう訳が分からない。

怖い・・・とにかく怖かった。

ありとあらゆる情報、感情、思念が俺の頭へと入り込んでくる。

一方的にだ。俺の承諾もなく、俺の意思は無視して、荒れ狂う濁流のように、ただ一方的に・・・・。

気が付いた時には、俺は瑠璃子さんの胸の中で泣いていた・・・・。

 

「・・・・・・う・・・・く・・・・・。」

 

「怖くないから・・・・・怖くないから・・・・・。」

 

嗚咽を洩らす俺を瑠璃子さんは何度も何度も優しく撫ぜてくれた。

そんな俺達を見て指差す集団登校中の小学生達・・・・。

 

『なにしてんの、あの人達?』

 

『さぁ・・・?若いんじゃないの?』

 

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「つまり・・・俺は突然、電波使いに目覚めたって・・・・事?」

 

「うん。」

 

あの後、落ち着いた俺は瑠璃子さんと一緒に学校へと歩いていた。

 

「ど、どうしてまた急に・・・昨日までは何ともなかったのに。」

 

「多分・・・・長瀬ちゃんは才能があったんだけど、今までそれが眠っていたの。

 それが、何かの拍子で急に表に出てきちゃったと思うの・・・・。」

 

「何かの拍子って・・・・?」

 

「う・・・う〜ん・・・そこまではワタシも・・・・。」

 

「昨日の出来事に関係あるんじゃないの?」

 

「・・・・・そうかも・・・・あ、長瀬ちゃん。受信状態はもう大丈夫?」

 

「え?・・・あぁ。大分マシになったよ!」

 

瑠璃子さんが言うには、俺はどうやら電波使いとしての能力に目覚めたらしい。

そして本来電波を受信するに当たって、能力者は受信量をコントロールするのだが

俺の場合、突然の覚醒で言わば受信のアンテナが全開だったらしく

先程のような恐ろしい量の電波を受信してしまったらしいのだ。

幸い、瑠璃子さんのおかげで気持ちを落ち着かせられた頃

自然に聞こえてくる電波の量も激減した・・・・。

 

「・・・・・・・・。」

 

「長瀬ちゃん。今何か聞こえる?」

 

「・・・・タクシーの無線っぽいやつ。」

 

「えへへ〜♪」

 

ニコニコと上機嫌な表情を浮かべた瑠璃子さんは

俺の腕にしがみついてきた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「何だか嬉しいの♪長瀬ちゃんとワタシ、同じだもん♪」

 

「き、気楽なもんだなぁ〜・・・・俺は精神的に疲れてヘトヘトだよぉ・・・。」

 

「・・・・・あ・・・ご、ごめんね・・・・。」 しょぼ〜ん

 

「あぅ・・・。」 (汗)

 

「そうだよね・・・長瀬ちゃん突然で困ってるもんね・・・。」

 

「あ、いや・・・・その、確かにパニくっちゃったけど、今はもう大丈夫だから!

 いやぁ〜、これで授業は退屈しなくていいなぁ〜。あは・・あはははは・・・・。」

 

「慣れるまでの辛抱だから・・・長瀬ちゃんなら直ぐコントロール出来るから。」

 

「が、頑張ってみるよ。」

 

「うん♪」

 

この時、何故身体に現れた傷跡の事についても瑠璃子さんに相談しなかったのかと後で思ったが

俺自身その事についてあまり触れたくないというのが心のどこかにあったのかもしれない・・・。

コツッ。

・・・・・!?

ポケットにつっこんだ手が何かにつかえる。

 

「・・・・・消しゴム・・・?」

 

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンデ〜ンパ〜トド〜イタ〜?

・・・・・・うるせぇ。 (汗)

正直あんな強気な事言ったが、不規則に流れ込んでくるこの電波、かなりストレスが溜まる。

イライライラ・・・・。

【―こちら2号車、盗難車両と思わしき車を追跡CHU♪どぞー?】

【I am a pen この会話デワ、ジョーンズさんがメリーさんに自己紹介してイマス】

うぜぇぇ〜〜ッ!!

自分で受信できる電波ってのを選べないからたまったもんじゃない。

(FMとか聴けないのか・・・!FMとかぁ〜!!)

ちりちりちり・・・・

【まかぁ〜はんにゃぁ〜しんぎょぉぉ〜〜〜】

 

「なんで般若心境やねんッ!!」

 

ガタンッ!!

はッ!?

し〜〜〜〜〜〜〜ん

ヤベッ・・・!

教室にいる全員の視線が俺に向けられる。

ヒソヒソ・・・・。

 

『長瀬君、急にどうしたんだね・・・・?』

 

数学の教師が怪訝な表情でこちらを睨んでくる。

 

「あ・・・・あの・・・その、すいません・・・・。」

 

ガタン。

真っ赤になりながら俺は席につく。

クスクス・・・・・。

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンエ〜フエ〜ムナ〜ンカ〜イ〜♪

ざわざわ・・・・

今日は土曜なので午前中で授業が終わり、生徒達が教室をぞろぞろと出て行く。

俺は席に座ったまま、今朝見つけた消しゴムを見つめていた。

・・・・なんだろう?この消しゴム・・・・かなり古びてるみたいだけど・・・・。

消しゴム・・・・あれ・・・・!?消しゴム・・・・?

 

「長瀬君。」

 

「うわッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

突然傍から声をかけられ飛び上がり、横を振り向くと藍原さんが驚いた表情を浮かべていた。

 

「あ・・・ご、ごめん。考え事してて・・・・。」

 

「あ・・・・そうだったんですか。クスクス。」

 

笑ってる?あの藍原さんが笑ってる・・・・!?

 

「あの、長瀬くん。今日また哲学部に集合して下さい。」

 

「え?哲学部に?」

 

「はい。重要な会議があるので香奈子ちゃんが緊急召集をかけてます。」

 

「ったく・・・相変わらずこちらの都合はおかまいなしか。」

 

「クスクス・・・ごめんなさいね。」

 

「よっと。」

 

席から立ち上がると軽く背伸びをして隣の席を見た。

隣の席では沙織ちゃんが『ぐてっ』とうつ伏せになっている。

・・・・そう言えば・・・今日一日こんな調子だな。沙織ちゃんは・・・・。

 

「ちょっと私は用事をすませてから行きますので。」

 

そう言いながら教室を出ようとする藍原さんを俺は呼び止めた。

 

「あ・・・!その藍原さん・・・。」

 

「はい?何ですか?」

 

(・・・・この消しゴム・・・・君が・・・・??)

俺は消しゴムの事を訊ねようとしたが・・・・何となく今はまだ聞くのを躊躇った。

 

「・・・・・・・・・・いや、ごめん。何でもない。」

 

「クスクス・・・へんな長瀬くん。じゃあまた後で・・・。」

 

「あぁ・・・。」

 

ガラガラ・・・・ピシャ。

 

「・・・・・笑うと・・・・あんなに可愛いんだな・・・あの子。」

 

ぽつりと呟いた後、俺は死んだように眠りこける沙織ちゃんの肩を揺する。

ゆっさゆっさ

 

「沙織ちゃん・・・・沙織ちゃん。」

 

―哲学部部室―

 

「あぅ〜。」

 

「はは・・沙織ちゃん、すごく疲れてるね。」

 

「寝不足なの・・・・・・。誰かさんが昨日宿題教えてくれないから。」 じろり

 

「う。ぼ、僕のせいで御座いますか・・・・。」

 

ガラッ

部室の扉が開かれ、藍原さんが入ってきた。

 

「まだ香奈子ちゃんは来てませんか?」

 

「あぁ。まだ来てないんだ。」

 

藍原さんは微笑んで

 

「多分、まだ香奈子ちゃん用事があるんです。

 ・・・あ!長瀬くん、そう言えば体調の方は大丈夫ですか?」

 

と優しく話し掛けてきた。

 

「え・・・?あ、あぁ!もう大丈夫だよ。」

 

「そうですか。良かったです。・・・・昨日は御免なさいね。」

 

にっこりとしながら、本棚を整理し始める藍原さん。

・・・やっぱり何か感じが変ったなぁ。

ツンツン

ん?

沙織ちゃんが肘で俺の横腹を小突いてくる。

 

『なんか・・・裕君と藍原さん、仲良くなってない?』

 

そう言った沙織ちゃんの表情は・・・少しだけ怖かった。

 

「エッ!?ソ、ソウカナ・・・・?」

 

『昨日って、何かな・・・?』

 

「え?・・・そのぉ・・・初恋・・・ゲフンッ!

 色々と他愛も無い話をしてただけだよ・・・うん。」

 

『(う〜、何だか藍原さんの裕くんを見る眼が怪しいよぉ・・・・!)』

 

「な、何ぼそぼそ言ってるの・・・沙織ちゃん・・・。」 (汗)

 

ガラガラッ

 

「待たせたわね!愚民どもッ!!」

 

大きめのファイルを抱えて香奈子嬢が入ってきた。

 

「さて・・・・そろそろ帰るか。」 ムクリ

 

「冗談よ・・・・。いちいち子供じみたリアクションは止めなさい。」

 

「クスクス・・・。」

 

「やれやれ・・・で、瑠璃子さんは?」

 

「何言ってるの?瑠璃子ならとっくにいるじゃない。」

 

「へっ?」

 

「長瀬ちゃん、ここだよ。」

 

突然瑠璃子さんの声が背後から聞こえたので、俺は驚いて仰け反った。

 

「うわッ!?」

 

「えへへ。長瀬ちゃんに気付かれなかったよ〜♪」

 

ぎゅうう〜♪

そう言うや否や、俺の首に手をかけて抱きついてくる瑠璃子さん。

 

「わわっ!?ちょ、瑠璃子さん!?」

 

「チョ〜クスリ〜パ〜♪」

 

な、何だか今日の瑠璃子さんはえらいはしゃいでるような・・・・。

ピキーーーンッ。

!?

・・・・沙織ちゃんと藍原さんの目付きが・・・化わった。

 

― 人物配置表 ―
  太田さん
   ●『あらあら、良い御身分ね。』
瑠      
璃 『ヒィッ!』
子●●俺 ←●藍原さん『・・・・・。』
さ   ↑
ん   ●
  沙織ちゃん
  『・・・・・。』

※矢印=目線

 

「はいはい、それじゃ始めるわよ?」

 

太田さんが手を叩くと、みな渋々席につく。

・・・・何だか良く分からなかったけど・・・怖かった。

 

「瑠璃子、今は?」

 

太田さんが真剣な眼差しで瑠璃子さんにそう言うと、

 

「うん。外界の電波はシャットアウト出来てる。大丈夫だよ。」

 

と瑠璃子さんが返した。

 

「じゃぁ、今から言う事は・・・大変な事だからちゃんと聞いて頂戴。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「プロジェクトDの全貌が分かったわ。」

 

「えッ!?」

 

「ほんとっ?」

 

俺も沙織ちゃんも驚く。

 

「な、何だよ?プロジェクトDってのは!?

 やっぱり公道最速理論とかってやつで他府県のチームに

 バトルしかけていくってやつなのかい!?」

 

「んな訳ないでしょう・・・。」

 

太田さんは冷ややかな表情を浮かべるも、すぐに気をとりなおして話を続ける。

 

「D=毒電波のD。

 プロジェクトDとは拓也が学校を隠れ蓑にして、

 裏で進行させていた極秘計画の事よ。」

 

「はぁ・・・それで、その計画で何をするつもりなんだよ?」

 

「日本征服かしら?」

 

「ぶっ!?」

 

「ま、実際のところあいつが何考えてんのか、まだ分からないけど・・・・

 少なくても社会に貢献するような事とはおおよそ掛け離れた内容には違いないわね。」

 

「つまり・・・・。」

 

「貴方もある程度予想してるんじゃないのかしら・・・?

 毒電波を利用した事・・・・洗脳。操作。支配。」

 

「『新しい世界を開く』とか何とか、訳の分からない事言ってたのはこの事か・・・。」

 

「理解して頂けたかしら?」

 

「プロジェクトDの意味はね。で、その全貌ってのは何だよ?」

 

「意外とシンプルなものだったわ。

 ・・・・電波ジャックよ。」

 

「・・・・!」

 

「南海市内の放送局を占拠するようね。

 NHK、民放、ラジオ。メディアを一時的に掌握。」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!そんな事したら警察とか出て大事になるぞ?」

 

「でしょうね・・・。だけど、拓也にとってはほんの一瞬でもメディアを掌握出来たらいいのよ。

 一瞬の毒電波で・・・・この街は拓也の支配下に置かれる。

 下手をすればもっと大きな規模になるかもね・・・。」

 

「そ、そんな馬鹿な事って・・・。」

 

「思うでしょ?だけどね、そこが毒電波の凶悪なところ。

 『名は態を表す』って言うでしょ?普通の電波に乗せて送信するのが最も効果的なのよ。

 一瞬でも毒電波を流されてしまった人間は・・・・・アウト。」

 

「・・・・・・・・。」 ゴクリ

 

「しかも便利な世の中だから、そこら中にメディアの媒体があるから恐ろしいわね。」

 

そう言うと太田さんは部室のラジオを指さした。

 

「・・・私や瑠璃子は毒電波に耐性があるとして・・・貴方達は・・・・。」

 

部室が静まり返る。

 

「長瀬くん、貴方ならどうする?」

 

突然太田さんが質問を投げかけてきた。

俺は少しだけ目線を床に落として一息ついたあと、問いかけに答えた。

 

「・・・・・攻撃は最大の防御なり。って言うか、

 そうなる前に奴らを叩くしかないだろ?」

 

「そうね、言う通りだわ。」

 

「だが・・・可能なのかよ・・・・?毒電波で強化された生徒会員達。

 そして・・・あいつ・・・止められる術があるのか・・・?」

 

「そ、そうだよぉ!もう私たちで何とか出来る範囲じゃないよぉ!」

 

沙織ちゃんも心配そうな顔で相槌を打つ。

 

「とりあえず、あいつらの犯行現場を押さえて警察なりなんなり・・・

 

「無理ね。一瞬で支配下に置かれるわよ。」

 

冷たい一言で話を切られてしまった。

 

「んな事言ったって!無理じゃないかよ!

 事前に警察に『あの男はキティガイエスパーですぅ!テロを企ててるので逮捕して下さい!』って
 

 言って通用するってのか!?」

 

「貴方が止めるのよ。」

 

「は?」

 

「貴方ならあいつを・・・止められる。」

 

・・・・・・何を言ってるんだ・・・・この子?

 

「・・・は?お、俺・・・!?」

 

「そう♪あ・な・た♪」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

し〜〜〜〜ん

 

皆の視線が一同に俺に注がれた。

 

「きょ、今日はもう帰っていいかな?」 ガタッ

 

「待ちなさい。」 むんずッ

 

椅子から立ち上がろうとする俺を太田さんが制止する。

 

「ちょ・・・ちょっと!何で俺なんだよッ!!」

 

「・・・・貴方が拓也を超えた電波使いだって確信したからよ。」

 

「お、俺があのキティより凄い電波使い!?マジで言ってるのかよ!!」

 

「そりゃ覚醒しなければただの宝の持ち腐れだけど。」

 

「だ、大体何の根拠があってそんな・・・・・

 

「貴方、もう既に聞こえてるんでしょ・・・?」

 

ッ!!

 

「る、瑠璃子さん・・・太田さんに喋ったの!?」

 

多分今、俺は情けない表情で瑠璃子さんを見つめているに違いない。

 

「ごめん・・・長瀬ちゃん・・・でも・・・

 

「瑠璃子は悪くないわ。責めるなら問い詰めた私にしなさい。

 それに、もともと私達は貴方が能力者だという事を

 事前に分かってたからこそ哲学部に勧誘したのよ。」

 

「なん・・・だって?俺が・・ただ単に・・・戸塚の生徒だから興味本位で・・・・

 

『初めて会った時から・・・・・ううん。

 長瀬ちゃんがこの学校にくる以前から分かってたの。』

 

頭の中から瑠璃子さんの声が聞こえてくる。

 

「瑠璃子さん・・・ハハ・・・何言って・・・

 

『長瀬ちゃんはきっとお兄ちゃんを止めてくれると信じてた・・・だから!』

 

ちりちりちり

 

『やめろッ!!電波で俺に語りかけないでくれッ!!』

 

「ほら。やはり貴方は特別な人間よ・・・。」

 

・・・・・・えッ・・・・・?

 

「今、電波で瑠璃子に語りかけれたじゃない・・・。」

 

太田さんのその一言で俺は鼓動は一気に跳ね上がった。

瑠璃子さんは呆然とする俺を見つながら少し悲しそうな表情を浮かべて

 

「・・・ほら。使えたでしょ・・・・。」

 

と呟いた。

 

「加速度的に能力が向上してるわね、彼。」

 

ぽんっ。と瑠璃子さんの肩に手をのせる太田さん。

 

「嘘だろ・・・・?」

 

思わず俺はその場に崩れた。

 

「裕くんッ!?」

 

咄嗟に沙織ちゃんが俺の肩を掴むと太田さんたちに非難の声を浴びせた。

 

「ちょ、ちょっとみんな裕くんに何をしたのよぉッ!!」

 

「落ち着いて下さい・・・新城さん・・・。」

 

藍原さんが嗜めるが、沙織ちゃんは聞き入れない。

 

「裕くん一人・・・裕くん一人だけで・・・どうしようもないじゃないッ!!」

 

「やってくれないと、貴方も殺されるのよ・・・・心が。」

 

太田さんが冷たく淡々と言い放つ。

 

「だからって・・・・そんなの・・・そんなの!」

 

・・・・・・・・・。

ちりちりちり

『ヤレヨ。』

『・・・・・・・俺が?無理に決まってる。』

『ムリ?オマエガ・・・?ナニヲイッテルンダ?』

『見てみろよ、俺を。ただ闇雲に電波を受信出来るだけじゃないか。』

『ソウオモイコンデルダケダ。ツカエルクセニ。』

『・・・何を?』

『ドクデンパ。』

『違うッ!!』

『チガワナイ。』

『俺は普通の・・・ふ、普通の・・・』

『フツウジャネエヨ。オマエハ。』

ちりちりちりちり

『長瀬ちゃん・・・・!』

『ッ!?』

『駄目!その声に耳を傾けないで・・・・!』

ハッ!?

気が付くと、目の前で沙織ちゃんと太田さんが罵り合っていた。

 

「他の人を探しなさいよッ!」

 

「無理ね。電波使いがそこら中にゴロゴロしてると思ってるの?」

 

「だからって身近にいる裕くんを巻き込む気ッ!?」

 

「・・・・私だって、私だって力があればやってるわよ・・・!!」

 

「・・・・・やるよ。」

 

「エッ!?ゆ、裕くん!?」

 

「・・・・・・長瀬くん。」

 

「やるよ。」

 

俺のその一言で部室内は静まり返った。

 

「やるよ・・・。俺がやらないと・・・あいつの勝ちなんだろ?」

 

「そうよ。みんな・・・やられるわ。」

 

「やるよ。」

 

そう言うと吹っ切れたように俺は立ち上がった。

 

「まずどうすればいいんだ?」

 

「張り込み。」

 

「張り込み?張り込みってまさか・・・・放送局を!?」

 

太田さんの意外な言葉に俺は目を丸くした。

 

「プロジェクトDが遂行される日取りは大体予想できるの。」

 

「・・・いつだ・・・?」

 

「多分・・・・あさって。」

 

「はぁッ!?」

 

「ちょ、ちょっとまてッ!!急過ぎるぞッ!!」

 

「仕方ないじゃない・・・ここまで情報を掴むのに時間がかかり過ぎたから・・・・。」

 

「そもそもなんで明後日・・・つまり祝日なんだ?」

 

「丁度いいのがあるのよ・・・・。」

 

「・・・・!?」

 

まてよ・・・そう言えば登校途中に・・・そこら中に垂れ幕やら看板が・・・・。

 

「地元のテレビ局がフル稼働し、なおかつ休日でみながみる番組・・・・。」

 

「そうか・・・南海市民マラソンかッ!!」

 

太田さんと藍原さんが頷く。

 

「明日、一斉張り込みを開始するわ・・・!」

 

「彼らは必ず下見などを行うはずです。」

 

「・・・来なければ?」

 

「臨機応変ってとこかしら。」

 

「おぃッ!!」

 

俺が太田さんにツッコミをいれようかと思っていると藍原さんが真剣な表情で一言。

 

「長瀬くん、勝負は時の運ですッ!」

 

「・・・・・・。」 (汗)

 

結局俺達は3チームに分かれて明日張り込みを行う事になった。

 

チームA 月島瑠璃子
チームB 太田香奈子、藍原瑞穂
チームC 長瀬裕介、新城沙織

 

「しかし、よくここまで調べられたね・・・。」

 

俺が根本的な質問をすると、太田さんがニマリと笑う。

 

「それは瑞穂様のおかげよ♪」

 

「か、香奈子ちゃん・・・。」

 

藍原さんは困った表情で太田さんの肩を掴んだ。

 

「藍原さんが?」

 

「そ。瑞穂は巷じゃ有名なハッカーなの。だから生徒会のコンピュータからちょいと資料をね・・・。」

 

「えぇッ!?」

 

「も、もう香奈子ちゃん・・・・そんな事いちいち言わなくても・・・。」

 

藍原さんは恥ずかしそうに俯いてしまった。

そ、そんなシャレた御趣味が御座いましたか・・・・。

 

「な、長瀬くん。私もう今じゃハッカーなんてやってませんから!」

 

「あ、あぁ・・・でも出来れば俺にも教えて欲しいな・・・ハッキング。」

 

「もうッ!駄目ですッ!」

 

むくれてそっぽを向いてしまう藍原さんを見て、またちょっと可愛いななんて思ってしまった。

 

「仲がよろしいござんすね。」

 

ズビシッ!

 

「ぐわっ!?」

 

沙織ちゃんのチョップが脳髄に叩き込まれる。

ちりちりちり

『だっていつも〜、大好き〜♪はぁ〜〜いッ♪』

 

あ・・・FMだ・・・。

 

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