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特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM038 インソムニアック

 


「沙織ちゃん・・・?」

 

彼女は反応しない。

人形のような虚ろな目は最早何処を見ているのかすら分からない。

・・・ギリッ。

 

「・・・・沙織ちゃんに何をした・・・。」

 

「ククク・・・こいつはエサだ・・・・お前という魚を釣る為のな。」

 

「何をしたんだッて聞いてるんだよ!!」

 

毒電波注入してやったに決まってるだろ?バカが。」 ニタァ

 

ッ!!・・・この野郎・・・。

月島に向かって俺は飛びかかろうとするが・・・

ぢりぢりぢりぢりぢりッ!!

 

「がぁッ!!」

 

強烈な頭痛と眩暈、加えて先日から現れ出した謎の古傷に激痛が走る。

更には治ったはずの冷え性や中学時代に患ったギックリ腰まで再発。

ドサッ!

 

「・・・・せ、せっかく・・・薬用養命酒まで飲んで治したのに・・・・。」

 

俺はその場に倒れこんで呻き声を漏らす。

 

「長瀬ちゃんッ!!」

 

瑠璃子さんが慌てて俺を抱きかかえようとするが・・・

ぢりぢりぢりぢりッ!

 

「きゃぁ!!」

 

月島の毒電波が強力過ぎるのか?瑠璃子さんは見えない壁に弾かれその場に尻餅をついた。

 

「瑠璃子ぉぉ・・・お兄ちゃんの邪魔をするんじゃないよぉ?」

 

「お、お兄ちゃん・・・!もうやめてッ!!」

 

キッ。と兄を睨むと、瑠璃子さんは両手の指をこめかみに当て送信体制に入る。

ちりちりちりちりちりちりちり・・・・

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり・・・・・

毒電波を相殺していく瑠璃子さんの電波。

 

「まったく困ったちゃんだねぇ〜。反抗期かしら?クククク。」

 

「・・・う・・・く・・・お兄ちゃん・・・・!」

 

ぢりぢりぢりぢり・・・!!

パァーーンッ!!

ガラス細工が弾けるような音が聞こえると

 

「あッ!」

 

瑠璃子さんはがくんと膝をついて苦しそうに息をする。

 

「あまりお兄ちゃんに手をかけさせないでくれよぉ。瑠璃子ぉ・・・愛しい瑠璃子。」

 

「な、長瀬ちゃ・・・ん・・・。」

 

倒れている俺に手を伸ばそうとする瑠璃子さんを見て、月島の顔色が変わる。

 

「ッ!そのガキに触れんじゃねぇよ!!」

 

パァーンッ!!

再び空間が弾けたような音が聞こえたかと思うと、

俺の体がバネ仕掛けの人形のように飛び跳ねた。

 

「ガハッ!?」  ドサッ

 

「長瀬ちゃん!!」

 

『クスクスクス・・・・。』

 

『ハハハハ・・・・。』

 

月島の周囲を取巻いていた生徒会員達がせせら笑う。

 

「瑠璃子ぉぉ・・・お前は俺だけを見てればいいんだよぉ。ククク・・・。」

 

ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。

ムチャクチャダ・・・カテナイ・・・・!!

激しい頭痛と嘔吐感を我慢しながら、俺は何とかその場に立ち上がる。

 

「さ、沙織ちゃんを・・・放せ・・・・!」

 

月島はそんな俺を、下らないものを見るかのような眼つきで見つめていた。

 

「フン。まぁ、そう急ぐな。長瀬裕介。お前には色々と話したい事があるからな。」

 

「ハァ・・・ハァ・・・くそ・・・!」

 

「・・・お前、どうやって抑えつけているんだ?」

 

「な・・・に・・?」

 

「力をどうやって抑えつけているんだ?って聞いてるんだよ。」

 

「何を言って・・・いるのか、さっぱり分からないぞ・・・。」

 

「とぼけるなよ。ほら、勿体ぶらずに使えよ。毒電波を。」

 

「え・・・!?」

 

何を・・・・言っているんだ・・・こいつは?

月島の言葉に困惑しつつも、俺の心の中では何故か警鐘が鳴り響く。

ダメダ・・・コレイジョウ・・・キイテハイケナイ・・・!!

直後、瑠璃子さんが悲痛な声を上げる。

 

「駄目・・・!お兄ちゃん・・・長瀬ちゃんは・・・知らないッ!!」

 

ぢりぢりぢりぢりぢり・・・・!

 

「ぐぅ!!」

 

再び、月島の毒電波が俺を襲う。

しかし、今度のは苦痛というよりは、

むしろ頭の中をスプーンで抉られるような不快極まりない感覚を覚えた。

 

「や・・・やめ・・・ろ!」

 

「一度お前はじっくりとスキャンしてみたかったんだよ。ククク。

 じっくり。たっぷり。そう、クラスタレベルまでエラーチェック&パリティチェック!

 

・・・・意味がわからねぇ・・・。

不快感は更に増し、たまらず俺はまた床にもんどりうった。

 

「やめろ・・・!やめてく・・・れ・・・!!」

 

「お兄ちゃん!ダメッ!!それ以上・・・・

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり

 

『―いい加減に・・・しろよ?』

 

「ぬッ!?」

 

!?

なんだ・・・誰だ・・・・?

今・・・誰が喋った・・・・・・・?

ぢりぢり・・・

毒電波がようやく収まり、汗でぐっしょりと濡れた胸を押さえつけながら

俺が顔を上げると、月島は嫌らしい笑みを浮かべ、

何かを悟ったかのように自分の顎に指をそえた。

 

「・・・・そうか、そうか・・・そういう事か・・・・。

 ククク・・・・クククク・・・ハァーハハハハハハハハハハッ!!

 

狂人のような笑い声を張り上げると、心の底まで見透かすような視線を俺に投げかける。

 

「お前・・・ククク・・・お前、フェイクか。ククク・・・。」

 

「あぁ・・・?」

 

「今のお前は作り物、偽者なんだよ。

 長瀬裕介という本来の人間に、お前が生きてるだけだよ。

 ま、簡単に言うと2重人格のようなもんだ。ククク・・・。」

 

!?

 

「駄目ッ!長瀬ちゃん・・・・!聞いちゃ駄目ッ!!」

 

「瑠璃子ちゃん!んメッ!

 

ぢりぢりぢりぢり

パァァーン!

 

「きゃぁ!」

 

月島が意味不明なポージングを決めると、瑠璃子さんは見えない何かに突き倒される。

 

「ど、どういう・・・事だよ・・・?」

 

奴の言ってる意味がさっぱり分からない。だが体はガクガクと震えだす。

 

「要するにあれだ、オリジナルとは別の魂がな。

 人為的に、そして意図的に後からのっけられたようなもんだ。

 偽りの魂。お前がそれだ。お前、作りモノ、パチものなんだよ。クククク・・・・!」

 

・・・なんだって・・・?

呆然と立ち尽くす俺に、月島はなお言葉を吐き続ける。

 

「あぁ・・・そうだ。俺は知ってるよ。

 こんな芸当出来る人間なんてそうはいない。

 俺の知ってるやつを除けばな・・・・。」

 

どくん・・・・どくん・・・。

心臓が早鐘を打つ。

 

「俺の母親、月島小百合だけだ。

 お前、俺の母親に会ったんだな?ククク・・・。」

 

ッ!?

 

「訳分かねー事、言ってるんじゃねぇ!!」

 

虚勢を張って言い返すが、既に体の震えは止まらなくなっていた。

嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・・嘘だ・・・・・。

あれは夢だ・・・夢だ・・・・夢だ・・・・夢だ・・・・・。

俺は俺だ。

俺は長瀬裕介だ・・・それ以上でもそれ以下でもない・・・。

だけど・・・どうしてこんなに怖いんだ・・・!!

ギクリ!

月島の表情が昆虫のように冷酷なものへと豹変する。

 

「・・・待てよ、ということは・・・・?

 ・・・・ひょっとしたら・・・・ありえるな・・・・。」

 

ゆらり

月島は初めてその場から立ち上がると、俺に数歩歩みより

自分のこめかみに手をそえた。

――― ヤバイ!・・・ナニカ、ヤバイゾッ!!

どくん・・・どくん・・・・!

――― セッションヲハラレタ

――― クルゾ・・・クルゾクルゾクルゾクルゾクルゾ!

――― ドクデンパガチョクゲキスルゾ

――― ジュシンカイヒセヨ

 

「出てこいよ!オリジナルの長瀬裕介ッ!!」

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり

 

「く、くそぉぉぉッ!!」

 

ちりちりちりちりちりちりッ!!

 

ヒュン!ヒュン!!ヒュン!!!

――― シンニュウ

――― カイヒ

――― カイヒ

――― ヒダン

――― カイヒ

 

「クッ・・・はぁはぁ・・・・!」

 

「驚いた・・・驚いた驚いた驚いたぞ。素晴らしいぞ長瀬裕介!

 短期間でここまで能力を開花させていたとは!ククク・・・ハァーッハハハ!」

 

自分の毒電波を回避された事に驚くどころか、

満足げな笑みを浮かべる月島。

 

「まぁ、オリジナルについては後でもよかろう。

 ククク・・・・・では本題に入ろう。」

 

「はぁ・・・はぁ・・・・!」

 

「俺と手を組め、長瀬裕介。

 お前はここで壊しておくにはもったいない。」

 

以前、瑠璃子さんの両親の墓標を前にして言った言葉を再度俺に投げかけた。

 

「お前は毒電波使いだ。

 俺の野望の為に、手をかせ。」

 

「どく・・・でんぱだって・・・・フフフ・・・そんな力、俺にある訳ないだろう?」

 

「無いと思い込むのは貴様の勝手だがな。」

 

「だいたい・・お前はいったい何を企んでいるんだよ・・・・・。」

 

「クククク・・・・俺は今日から、この国の支配者になるのさ。」

 

「はぁ・・・はぁ・・・それはそうと・・・・いい加減、掲示板にレスを返せよ。」

 

「ククク・・・それとこれとは関係無いだろう?」

 

「そりゃそうだ・・・。で、支配者になってどうするつもりなんだよ!」

 

「俺の夢を・・・実現させるのさ・・・。」

 

「夢・・・だと?」

 

「俺のロォォォマンティィィーーーックな夢を、特別に聞かせてやろう。ククク。」

 

「・・・・・・。」

 

「 この国をッ!

 妹と結婚出来る国に

 

 創り直すッ!! 」

 

・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ひゅぅぅぅうう

こいつ・・・真性だ。 (脱力)

俺はガックリとその場にうな垂れる。

 

「さぁ、長瀬。俺と手を組め。」

 

「・・・・・前も言ったはずだ。断る。」

 

「・・・・・・・・なに?」

 

「お前を凶行を止める。そして・・・本当の瑠璃子さんの兄を解放する。」

 

「・・・・・愚かな野郎だ。」

 

パチンッ。

月島は目を細めると、指をならす。

すると、沙織ちゃんがゆらりと俺の前へとやってきた。

 

「沙織ちゃん・・・!?」

 

「・・・・裕クン・・・。」

 

人形のようにぎこちなく俺の名前を口にする。

 

「オ願イ裕クン・・・・拓也サンニ忠誠ヲ誓ッテ・・・・?」

 

「さ、沙織ちゃん!?」

 

ニィィ・・・。

月島は下品な笑みを浮かべると、沙織ちゃんの肩に手をかけてわざとおどけてみせた。

 

「いい子だよなぁ?長瀬。クククク。こんな可愛い子のいう事は聞いてあげないとなぁ〜?」

 

「て、てめぇ・・・!!」

 

「お兄ちゃん!酷いよ!止めてよぉ!」

 

ちりちりちりちりちり

瑠璃子さんが懸命に電波を送信して沙織ちゃんを解放させようとはするが、

月島の強固な毒電波の前に虚しく分散させられていく。

 

「無駄だよ。瑠璃子ぉ。お前の電波如きでは俺の洗脳は解けない。」

 

「気付いてたか?ククク。こいつ、お前の事好きらしいぞ?」

 

「ッ!!」

 

「そうか、そうか。バレーやりたかったのかぁ?ククク。

 よしよし。かわいそうになぁ〜。

  ん?なに?長瀬に癒してもらいたいか?ククク。そうかそうか!」

 

ツゥー

沙織ちゃんの頬を静かに涙が伝う。

ちりちりちり・・・

 

『タスケテ・・・ユウクン・・・・。』

 

ギリギリギリ・・・。

自分の意志とは関係なく歯軋りをしていた事にようやく気付く。

 

「この最低のゲス野郎め・・・!!」

 

「さぁ?どうする?長瀬ぇ?この女を救いたいんだろう?」

 

「・・・・〜〜〜!!」 グググ

 

どうすればいい・・・。

今、下手に月島を刺激すると・・・沙織ちゃんが危険だ・・・・。

ドクンドクンドクン・・・・

・・・瑠璃子さんに・・・・・。

・・・・・俺が月島を引き付けているうちに・・・・

・・・沙織ちゃんをつれて転送して逃げてもらえば・・・・・・

ちりちりちり・・・・

 

――― 『長瀬ちゃん・・・!』

――― ッ!?瑠璃子さん・・・!

――― 『長瀬ちゃん・・・・聞こえたよ・・・・。』

――― 瑠璃子さん・・・出来るかい?

――― 『・・・・絶対成功してみせるから・・!』

――― これ、アイツには聞こえてるのか?

――― 『・・・・大丈夫・・・この能力に関してはワタシの方が上回っているから・・・。』

――― よし、じゃあ・・・俺が何とかするから!

 

俺は意を決すると、月島に対して交渉を始めた。

 

「・・・・お、俺がお前に従うのなら・・・沙織ちゃんを解放するのか?」

 

「ククク・・・・そうだ。俺に忠誠を誓えばいい。」

 

「その保証はどこある?」

 

「フン。もともとこんな女、どうでもいい。

 俺の目的はお前をしもべにする事なんだからな。」

 

・・・・よし。

 

「分かった・・・・お前の部下に・・・・なる・・・・。

 だから・・・沙織ちゃんを放せ!」

 

「ククククク。最初から素直に俺の言うことを聞けば良いものを。

 よおし・・・ゆっくりとこちらへ来るんだ。」

 

「・・・・・・ギリッ。」

 

俺は月島を睨みつけながら、一歩、また一歩とゆっくりと月島の前へと歩みよった。

 

「さぁ、俺の毒電波を注入してやる。ククク・・・・。」

 

月島はまるで聖職者のように、俯く俺の頭の上に手をのせると

 

「さぁ!エイエソの世界に旅立とうッ!!クハーハハハッ!!」

 

訳の分かんない事を呟いた。

その瞬間!俺は月島の腕を捕まえる。

ガシッ!

 

「な・・・!?」

 

驚く月島に、俺は渾身の電波をダイレクト注入ッ!!

 

「くらえッ!!」

 

ちりちりちりちりッ!!

 

「ぐぬッ!!」

 

流石の月島もこれは効いたようで、3、4歩ヨロヨロと後ろに後退すると

苦しそうに顔をしかめた。

 

「今だッ!!瑠璃子さんッ!!」

 

「うん!!」

 

――― 俺はここで後悔する事になる。

――― 毒電波の恐ろしさをまだ分かっていなかった。

 

『生徒会長ッ!!』

『てめぇ!!』

 

怒り狂った数人の生徒会員が俺に殴りかかってくる。

だが今の俺にはもう戦う力や逃げる力は残っていない・・・。

ガスッ!

ドスッ!

 

「グッ!」

 

俺が殴られているうちに沙織ちゃん達が助かればいい!

視線を瑠璃子さんに移すと、瑠璃子さんは上手い具合に奴らの死角から

沙織ちゃんに近づくと、彼女を腕を掴んで転送体勢に入った。

やったッ!!成功し―

 

ガッ!!

 

「・・・・あ・・・。」

 

自分に起こった事態を理解出来ない表情を浮かべながら、瑠璃子さんがゆっくりと倒れる。

ドサッ

!?

なん・・・で?

沙織ちゃんが転送体勢に入った瑠璃子の無防備な後頭部に強烈な当身を食らわせたのだ。

しゅぅぅぅ・・・

ぢり・・・ぢり・・・・。

 

「・・・・・それが、お前の答えか・・・・。」

 

――― ゾクリ

生徒会員達が素早くその場から退くと、月島が頭を抑えてながら歩み寄ってくる。

 

「バカが。俺の毒電波を甘くみたな・・・・。

 洗脳ってのは・・・こういう事を言うんだよ。」

 

パチンッ。と月島が指を鳴らすと、沙織ちゃんが倒れている瑠璃子さんの襟首を掴む。

グググ・・・・。

 

「あ・・・・か・・は!」

 

物凄い力で瑠璃子さんを締め上げると、そのままスタジオ奥に積み上げられていた

発泡スチロールの山に勢い良く瑠璃子さんを投げつけた。

グシャァァ!

 

「る、瑠璃子さんッ!!」

 

・・・・・こ、これが・・・これが毒電波を受けた人間の力・・・・。ゴクリ。

太田さん―坂上や光岡・・・。

そしてドクデンプァ・シリーズを見てきて肌では体感してきたが、

やはり身近な・・・しかも今まで普通だった女の子がここまで豹変したのを目の当たりにすると、

改めてこの能力の恐ろしさを頭の芯にまで叩き付けられた気分だった。

 

「・・・・つまんねぇーよ。つまんねぇーよ、お前。」

 

月島は一瞬サメの様に真っ黒な瞳を覗かせると、

沙織ちゃんの腕を掴んでゴミでも捨てるかのように突き飛ばす。

 

「こんな馬鹿に惚れたのが運の尽きだな。女。

 ・・・・・恨むんなら長瀬を恨めよ?」

 

そう吐き捨てるとこめかみに手を添え、仮面のように冷たい表情に切り替わった。

!?

ま、まさか・・・・ッ!?

 

「ま、待て・・・ッ!!」

 

――― パァァァン・・・・。

 

ッ!?

 

「嫌ぁぁぁあ!!」

 

瑠璃子さんの悲鳴がスタジオ内に響き渡る。

・・・・その後は、全てがスローモーションで見えた。

嫌な音が聞こえ、沙織ちゃんの体はビクンと大きく跳ねた後、

・・・ダラリと力なく床に肢体を広げていた。

 

「さ・・・・沙織ちゃんッ!!」

 

 

まるで積み上げた積み木を簡単に崩すかのように・・・・・。

 

「沙織ちゃん!沙織ちゃん!!」

 

這うように横たわっている沙織ちゃんに近づくと、そのまま抱き寄せて懸命に呼びかける。

沙織・・・ちゃん・・・・?

 

「さ・・おり・・・ちゃん・・・・・。」

 

沙織ちゃんはぴくりとも動かない・・・・。

 

ガタガタガタガタ・・・・。

カチカチカチカチカチ・・・・。

 

目の瞳孔は大きく見開き、口から唾液を垂れ流している彼女を目の当たりにして、

俺はカチカチと自分の歯を鳴らしながら、震える指で沙織ちゃんの頬に触れた。

 

――― 精神破壊

――― せいしんはかい

――― 沙織ちゃんの心が壊された

――― もう・・・彼女の心は・・・・・。

――― こんなに簡単に・・・あっさり・・・奪われた。

 

――― 『そう?じゃあこれから裕くんって呼ぶね♪』

「はぁ・・・はぁ・・・・・ゲフッ!」

――― 『―えぇっと、私運動苦手だし・・・帰宅部の方が性に合ってるかなぁって。』

「ズッ・・・。そん・・・・な・・・・馬鹿な・・・・・。」

――― 『・・・・・じゃ!おやすみぃ〜長瀬少年!!』

「こんな・・・こんな事・・・・。」

 

狼狽する俺に月島は言い放つ。

 

「次は下にいる連中。

 それでも聞かないようならお前の両親もこうしてやる。」

 

「おまえ・・・何やってんだよ・・・・・。

 何やってんだ・・よ・・・・!!」

 

沙織ちゃん!沙織ちゃん!!沙織ちゃん!!!

 

「ぐ・・・うぅ・・・・守れなかった・・・・・そんな・・・・!!」

 

――― オレハ、ノウナシダ・・・・・・。

涙で曇った視界・・・・。そしてそのまま目の前が真っ暗になった。

ガクンッ。

―ブツッ。

テレビの電源が切れたような音が聞こえた後、もう何も聞こえなくなった。

 

 

カツーン・・・カツーン・・・カツーン・・・・・・。

白い廊下・・・見たくない景色。

嫌いな病院・・・・・そして、嫌いなボク。

手前から呆然と佇む俺に誰かが歩み寄ってくる。

誰だ・・・?誰だろう・・・?でも・・・・誰だか知ってる・・・・。

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『だから言っただろ?キミには無理だってさ。』

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『もう口答えする元気も無くなっちゃったか。』

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『そろそろ交代だよ。もう十分でしょ?』

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『ボクはずっとこの時を待っていた。』

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『お休み・・・偽りのボク。』

 

キィィィ・・・・・。

―バタン。

 

・・・・・・・・・・・・。

 

 

――― 死のう。

――― ボクはもう限界です。

――― 気が狂ってしまわないうちに・・・・。

――― おとうさん・・・おかあさん・・・・・ごめんなさい。

 

ドッ!

 

『きゃぁああああ!』

 

『こ、子供が落ちたぞッ!!』

 

『誰か救急車を!早くッ!!』

 

・・・・・・出来ればボクは、普通の子に生まれたかった・・・・。

 

― 日本中央病院 ―

ボクは・・・・ここであの人に出会いました。

 

『月島先生、お会い出来て光栄です。』

 

カツカツ・・・

 

「こちらこそお会い出来て光栄です。すみません、ロスでの会合が長引きまして。」

 

カツカツ・・・

 

『あの子が例のクランケ(患者)です。』

 

「・・・長瀬裕介5歳・・・建物4階から落下。

 脳挫傷及び、肋骨の骨折・・・・右大腿骨の複雑骨折・・・・。」

 

『あの年齢であれだけの大手術に耐えられるだけでも信じられないのに、

 さらにこの回復力は・・・もはや奇蹟に近いです。』

 

「・・・・・・死にたかったのね。・・・可愛そうに。・・・余程辛かったのね・・・・。

 で、このカルテに書いてある症状、本当に確かなんですか?」

 

『はい、精神科の高砂先生が診断済みです。』

 

「ドクター高砂が・・・そう。では間違いないわね。・・・・・御両親は?」

 

『3週間前、つまりクランケの意識が戻るまでは

 交代で泊り込んでいましたが、ここ数日は落ち着いたみたいで

 泊り込んではいません。今日はもう面会を終えました。』

 

「・・・・・そうですか・・・。」

 

『なにしろこのケースは本当に・・・・、最早我々の手には負えませんので。』

 

「分かりましたわ。後は任せて下さい。」

 

『宜しく御願いします。では後で院長室の方に御越し下さい。』

 

キィィ〜〜〜〜

バタン。

 

「・・・・・・・初めまして、長瀬裕介くん。」

 

「・・・・・・・。」

 

「今日から君の担当の先生になった、月島小百合って言うの。」

 

「・・・・・つきしま・・・?」

 

「うん。よろしくね。」

 

「・・・・・・・。」

 

ちりちりちり・・・・

 

「長瀬くん・・・・無駄よ。」

 

「ッ!?」

 

「先生の心はみんなみたいに読めないわよ。」

 

「・・・どう・・・して?」

 

「・・・そうね・・・多分、先生と長瀬くんは似てるからかしら?」

 

「・・・ボクと・・・おなじ!?」

 

「そう・・・長瀬くんと同じ。」 にこり

 

「せんせいも・・・・・ぼくとおなじびょうきなんだね・・・・?」

 

・・・・・・・。

その2ヵ月後、ボクは小児科病棟に移された。

月島先生はボクのこの病気を治す為にやってきたのだという。

先生はボクのような子を助ける為、世界中を飛び回っていたと言ってた。

今はボクの為に毎日診察に来てくれる。

・・・・先生が来てくれるは嬉しい。ボクを分かってくれている。

だけど、ボクはその反面、やはり自分の病気がとても酷いものだと痛感した。

 

コンコン。

 

「長瀬くん・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「長瀬くん。」

 

「・・・・・・どうしたんですか?せんせい。」

 

「長瀬くんはみんなと遊ばないの?」

 

「・・・・他の入院してる子と、ですか・・・・。」

 

「本を読む事は良い事だと思うけど、

 ず〜っと読んでばかりいないで、たまには遊ばないと元気が出ないわよ?」

 

「・・・・・べつにいいです。」

 

「長瀬くんだって、おもちゃで遊ぶの嫌いじゃないんでしょ?」

 

「ボクは本をよむほうが好きです・・・。

 ロボットやつみ木は、あまり好きじゃないんです。」

 

「・・・・そう・・・・。」

 

「せんせい。」

 

「なに?」

 

「何もかもが、おもしろくないんです。」

 

「・・・・・・。」

 

「みんな、みんな分かってしまうんです。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「ボクは変なんです!ここにいるみんなも・・・・ボクをこわがってるんです。」

 

「そんな事ある訳ないじゃない。」

 

「ボクは頭のびょうきだってみんないってます。」

 

「・・・・・長瀬くん、そんな事ないわよ。」

 

「・・・・みんなの考えが見えちゃうんです。」

 

「・・・・・・・。」

 

「声が・・・・聞こえちゃうんです。」

 

「・・・・長瀬くん、ヒトっていうのはね。

 自分よりもすごく優れているものに対して恐れちゃうような生き物なのよ。

 特に長瀬くんぐらいの年齢はその思いを表に出しちゃうの。

 長瀬くんは素晴らしい力を持ってると思う。

 でも、その力を良い方に使うのも悪い方に使うのも長瀬くん次第なの。

 悪い方へ使えば使うほど、長瀬くんは絶対不幸せになる。

 先生はいつもいつもみんなに幸せになってもらいたいと思っているわ。

 もちろん長瀬くんもそうなって欲しいと思っているの。分かる?」

 

「・・・・・・・うん。全部分かる。」

 

「長瀬くんがみんなから遠ざかれば遠ざかるほど、

 お互いの距離は離れちゃうの。」

 

〜〜〜〜〜ちり

 

『ねぇねぇ、あのこはさそわないの?』

『ヤダ!あいつこわい!』

『きもちわるい。』

『ぼくきいたんだよ。あいつはへんなびょうきなんだよ。』

 

・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・・・せんせい。」

 

「なぁに?」

 

「ボク、せんせいは好きだから死なせないよ。」

 

「・・・・どういう事?」

 

「あとお父さんとお母さんも。」

 

「な、なにを言ってるの・・・!?」

 

「ボクは・・・・バクダンを作るんだ。

 おっきな・・・おーーーっきなバクダンを作るんだ。

 それで、みんな、みーんな!死んじゃうんだよ・・・・。

 ・・・だけど、せんせいは大丈夫だから。」

 

「・・・・・・・・・な、長瀬くん・・・・・。」

 

あの時の月島先生の表情はとても悲しそうだった。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。

カチャ・・・・パタン。

 

「つきしませんせぇは・・・?」

 

『・・・・・。』

 

「ねぇ?つきしませんせぇはどこへいったの?」

 

『長瀬くん・・・月島先生はね、遠くに行ってしまったんだよ。』

 

ちりちり・・・・・

 

「嘘だ。」

 

「え・・・?」

 

「嘘だよ。・・・せんせい、死んじゃったんでしょ!」

 

『な、長瀬くんッ・・・どうして!?』

 

「嘘つきッ!!みんな嘘つきだッ!!

 先生の嘘つきッ!!ボクを治してくれるって言ったじゃないかッ!!」

 

ちりちりちりちりちりちりちりちり

 

『・・・婦長!304号だ!急いで来てくれ!』

 

「ぼくは・・・ぼくは・・・・またひとりぼっちじゃないかーーーッ!!」

 

ちりちりちり・・・ぢりぢりぢりぢり!!!

 

パリーンッ!!

 

ガシャァアアン!!!

 

――― 長瀬くん。どうしても辛くて耐えられなくなった時どうすると思う?

――― ううん。

――― 人っていうのはね。貝のように殻に閉じこもっちゃうの。

――― ふうん。

――― 貝って言っても目に見える貝殻じゃないんだけどね。

――― げんじつとうひっていうやつでしょ?

――― ふふふ。長瀬君は本当に頭がいいわね。じゃあその方法って知ってるかしら?

――― 方法?

――― うん。先生や長瀬くんならそれが自分で簡単に出来てしまうの。

――― へぇ・・・。

――― だけど、これって・・・本当にダメな時にしかやっちゃダメなんだけどね・・・。

――― せんせい。教えてよ!ボク、すごく知りたい!

 

今思えばこれが、月島先生がボクに残していった最期の手段だったんだね。

先生は分かっていたのかもしれない。

自分が死ぬかもしれない時期を・・・・・・・。

ふふふ・・・本当に先生はひどい人だ。

ボクの中に時限爆弾を置いていったんだから。

・・・・ボクが暴走したら・・・・作動するように・・・・。

カチ・・・・カチ・・・・・カチ・・・・・・・カチリ。

 

「ふふ・・・ふふふ・・・・くくくくくく。」

 

だけどね・・・先生。一つだけ誤算だったね?

ボクは貴方が想像していたよりも遥かに恐ろしい能力者だったんだから。

 

リンゴーン・・・リンゴーン・・・・リンゴーン。

 

 

 

 

 

 

――― ミンナ、ソンナメデ

       ボクヲミルナ・・・・ ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

ちりちりちりちりちりちり・・・ぢりぢりぢりぢり!!

 

『きゃぁあ!?』

『イタイイタイイタイイタイッ!!』

 

月島の周りに取り巻いていた生徒会員達が悲鳴を上げながら次々と倒れ始める。

 

「はは・・・あははははは!!」

 

あはははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

ははははははははははははははははははははははは

 

 

「長瀬ちゃん!駄目ッ!!」

 

「・・・残念だね。」

 

「な、長瀬ちゃ・・・

 

「もう、あの長瀬裕介はいないよ?お姉ちゃん。」

 

「―ッ!?」

 

ボクがニタリと笑いながらそう呟くと、

お姉ちゃんはポロポロと涙を流しながらその場にへたり込む。

 

「彼の精神に歪みがでた。ボクはそのお陰で出てこれた。」

 

「・・・・うれしい。ボクはやっと出てこられた。

 お姉ちゃんのママが作った時限爆弾のせいで出られなかったんだ。

 ボクを置き去りにした憎い憎い月島先生が。だけど、もう僕は自由だぞ!」

 

「ク・・・ククク!す、素晴らしいぞッ!!

 素晴らC〜ッ!!これが、これがオリジナルかッ!!」

 

向こうで馬鹿笑いしている月島を見てボクは一言。

 

「悪いけどお姉ちゃん。あいつ殺すよ?」

 

「ハハハ・・・・ハ?」

 

月島はボクのこの言葉を聞くと、ピタリと笑うのを止めた。

 

「な、長瀬ちゃん・・・。」

 

「お姉ちゃん、あいつ助けたかったみたいだけど、ボクはあいつ嫌いだから。」

 

そういってボクは無邪気に微笑んだ後、月島を指差した。

 

「この世に毒電波使いなど二人もいらないよ。さっさと死んでよ。」

 

「・・・・・・言葉遣いが悪いようだな。このオリジナルは。」

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢり

流石に月島の態度は一変し、遠慮なくボクに毒電波をあびせてきた。

しかし、その程度の毒電波がボクに効く訳ないでしょう?

だって・・・ボクは選ばれた人間なんだから・・・・。

 

「・・・・ッ!?俺の毒電波が・・・・!!」

 

なに?その脆弱な電波。

 

 なにそれ?それがキミの意思?その程度とは、馬鹿にしてるよ。」

 

「なめるなよ!ガキがぁ!!」

 

ぢりぢりぢりぢり

怒りに顔を歪ませると、更に強力な毒電波をあびせかけてきた。

 

「貴様なぞ、所詮俺の道具に過ぎないんだよ!

 黙って俺の言う事を聞けッ!!クズがッ!!」

 

「フフ・・・。」

 

ちりちりちりちりちり・・・・。

 

「ば・・・馬鹿なッ!!吸収して・・・やがる・・・!?

 俺の毒電波を吸収してやがるッ!!」

 

「つまらない人間だね。キミは。」

 

「何なんだよ!こいつは・・・!!何なんだよぉーッ!!」

 

余裕の表情で調子に乗っていた月島が、あの月島が。

今は怯えている。あんなに怯えているよ?このボクに・・・。

アハ・・・アハハハハハハハ。

本当、なんて情けない生き物。

なに?あの顔?見てよ。あの表情。最高に面白いよ。

 

「ちょうどいいや。ボクの爆弾の餌食になってもらおう。

 燃え尽きてしまえ。鬱陶しい。消えてよ。」

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり!!

 

ズズズズズズズズズズズズズズズズズズズ

空間が歪み、空気が渦巻く。

スタジオ内の照明が激しく震え始め、点いたり消えたりと点滅する。

いつのまにか建物全体が揺れ始めているようだ。

これが・・・・ボクの力。

忘れていたボクの力。

すばらしいよ・・・すばらしいよ!



 

『っでさー、そこでね〜!

「おい綾香ぁ・・・もう2時間以上も経ってんだけどさぁ・・・。」

『な、なによぉ!これからが面白くなるのよぉ!』

「面白いも何も・・・俺は明日用事があるんだけど・・・。」

『用事ってなによぉ!』

「明日は朝から葵ちゃ・・・・

『あおい?』

・・・・・(し、しまったッ!!)

『・・・浩之・・・・今、何て言ったの?』

「あー!その、なんだ!ちょっと雅史と用事があるんだよ!」

『・・・ふ〜ん。・・・セリオ。』

『―はい。浩之さんの音声の波長及び起伏から感情を分析した結果。

 97%の確立で嘘をおっしゃってると思われます。』

『だそうよ?浩之・・・・。』

「・・・・・・・・・・うぐぅ。」


『さぁ、正直に話してもら・・・ザー!あれ?!・・・ちょ!』

ザー・・・ジリジリ・・・「おい!?・・・綾香?もしもし?」

―ブツン。

「な、なんだ!?携帯の電波が悪いのか?・・・って、圏外ィ〜!?」



 

 

――― 関東甲信越一帯で大規模な電波障害が発生 ―――

「・・・・・臨時ニュースのテロップが流れてる・・・。」

「ん?どれどれ・・・って、ほんとだ!耕一に電話出来るのかな?」

「るんらら〜♪」 とてとて〜

「あ?虎羅ッ!初音ッ!!」

「・・・・ぬけがけする鬼?」

「フンッ!こんなもんは早いもん勝ちじゃ!

 おねぇ達はテレビ見とけっての!」

 

うばっしゃ〜!!

 

「・・・・おほほ、浅ましい姉妹だこと。

 (うっふっふ〜。こんな時、会社の携帯持ってるのって便利よね〜♪)」

 

ピッポッパ♪

 

『――― 現在おつなぎ出来ません。』

「あらあら。本当につながらないわね?」

「あッ!!姉鬼ッ!汚ねーぞッ!!」

 

「おだまりッ!!」

 


 

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

―ボクノバクダンヲ、クラエ!―

 

「ひ、ひぃぃッ!!」

 

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


「やめて!長瀬ちゃん!!そんなのを送信したら・・・・中のお兄ちゃんまで!!」

 

「・・・・そんなのボクは知らないよ。」

 

「待っ・・・・!!

 

――― ボクは毒電波という名の爆弾を容赦なく月島の精神に投下した。

 

どぉぉぉぉぉぉぉぉぉん

 

ぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢりぢり

 

「ぎゃぁああああああああ!!」

 

パリィィーーンッ!!

 

ガシャァァン!

 

放送局内の照明や鏡、窓などがそこら中で割れる音が響き渡る。

――― 死の炎

――― 襲いくる衝撃波

多分、月島拓也の脳内では地獄絵図が展開されているんだろう。

悲鳴を上げ続けて床にのたうち回る。

 

「いやぁあああ!!助けてママーーーッ!!」

 

ゴキジェットの直撃噴射を喰らったゴキブリの様に激しく痙攣する月島を見て、

心の底からボクは笑った。

 

「想像を絶する苦痛を味わって死んでよ。アハハハハハ!!」

 

もうボクは眠らない。眠る必要はない。

ボクには毒電波がある。

素晴らしい力が!

全てを手にいれる事が出来る!

なんて清々しいんだろう!

今なら分かる。これはボクに与えられた特権なんだ。

ボクにはその資格があるんだ。

ボクみたいな人間が人を支配するべきなんだよ。

そうだよね?先生。

いいよね?月島先生?

アハハ・・・・ハァーーハハハハハハハハハッ!!!

気に入ったよ。この新型爆弾。

また使おう。そうだ。この子に名前をつけてあげよう。

・・・『インソムニアック』なんてどうかな?

うん。いいかもしれない。

よし、この名前でいこう。

ボクの『インソムニアック』・・・世界を焼き尽くす爆弾。

フフ・・・・フフフフフ・・・・・・!

 

 

See you on the other side



※Insomniac=不眠(症)の(人)