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鬼兵般家長


                                                           
DIE22話 そのと鬼、歴史は動いた。 〜隆山の戦い〜

 



何故、由美子さんがこんなところに居るんだ?

お、落ち着け、とりあえず落ち着こう。

 

「お〜い、柏木青年。どうしたのかな?」

 

由美子さんがにこにこしながら俺を覗き込んで来た。

 

「いや・・・まぁ、はははは・・・。」

 

「えへへへ。」

 

「はははは・・・・・で、何してんの?」 わなわな

 

「え?何って・・・私は温泉でまったりしてんの♪」

 

「そ、そうじゃなくって、どうして隆山なんだよ!?」

 

「ど、どうしてって・・・だって、有名な温泉街じゃない。」

 

「うぐぅ。だってさ、他に熱海とか伊豆とか・・・・。」

 

「私、一度来てみたかったんだぁ。日本有数の温泉地だもんね。

 ・・・・・・・・それに・・・・・・。」

 

「・・・・それに?」

 

「ひ、ひょっとしたら耕一くんとばったり会ったら驚くかな・・・・って・・・・。」

 

「・・・・・驚くも何も・・・・・。」

 

泣きそうだ。

 

え?何がだって・・・?

君だけは、こんなデンジャーゾーンに近寄って欲しくなかった。

今の俺は確実に地雷原なのだから・・・・。

由美子さんは、俺の浮かないリアクションに気を損ねたのか、

 

「もう、もう少し気の利いたリアクションしてよ。」

 

ぷ〜っと頬を膨らませた。

ごめんなさい・・・・。鬼の効いたリアクションしか出来ません。

 

「とりあえず・・・。私はここ気に入っちゃったから・・・・1週間くらい居ようかな?」

 

「1週間だって?!それって正月終わっちゃうじゃん!」

 

「別にいいよ。特に予定ないし・・・。それに、私・・・・。」

 

・・・・・・あ・・・・。

・・・そうだったな。

彼女は幼い頃両親を事故で亡くしたらしく、ずっと祖母に育てられてきたらしい。

その祖母も由美子さんが大学に入る前に他界したって話を以前聞いたな・・・・・。

今の彼女は事実上の一人身という事になる。

 

「・・・・・・悪ぃ。」

 

「あ、そんなつもりで言った訳じゃないよ!

 ・・・・正月を旅館で過ごすのもいいかなって思って・・・・。」

 

「・・・ほんと、変わってるよ。由美子さんは。」 にこっ

 

「えへへ。ところで耕一くんはここで何してたの?」

 

はっ!!

 

そうだ・・・・・すっかり忘れていた。

ここは敵の領域内だった!

 

「あ、あぁ俺はさ。さっき親戚とここで昼メシ食ってたんだよ。」

 

「そうなんだ。耕一くんは年末年始はずっと親戚の家に居るの?」

 

「ん?あぁ・・・・・か、帰りたいのはやまやまなんだけど・・・・。」

 

「そっか・・・・・・・あ、ねぇ?明日は時間空いてる?」

 

「明日・・・?ははは。明日どころかずっと暇してるよ。」

 

「あはは。・・・じゃあ、明日色々案内してくれないかな・・・?」

 

「案内って、隆山の?」

 

「うん。郷土史記念館とか、遺跡とか、あと美味しいお店とか教えてよ♪」

 

「御安い御用さ。これでもこことの付き合いは長い方さ!まっかせなさい♪」

 

「頼りにしてますよ。耕一教授♪じゃあ、明日の9時にここのロビーで・・・」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

「?」

 

「つ、鶴来屋は・・・マズイんで・・・駅前にしないかい?」

 

「・・・マズイって、・・・え?どういう事?」

 

「と、兎に角。今週の『関東ウォーカーZ』の占いで、俺の運勢調べたら

 この方角は鬼門だって書いてあったんだよ。は、はははは!」

 

「くすくす・・・・変な耕一くん。分かったわ。じゃあ駅前で待ち合わせって事で。」

 

「あぁ、了解。駅前に喫茶店があるから、そこにしよう。」

 

クシュン

 

由美子さんがくしゃみを一回。

 

「あは、ごめんごめん。」

 

「!悪い。立ち話し過ぎちゃったな。さっきまで温泉入ってたんだろ?」

 

「いいよ。私もこんな軽装で出てきちゃったんだから。」

 

俺はとっさに自分が着てたジャンパーを由美子さんの肩にかけてあげた。

 

「その・・・・まぁ何だ。湯冷めしちゃマズイっしょ。」

 

「あ・・・・ありがと。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「そ、そろそろ中に入ろう。」

 

「うん。そうだね。」

 

ちょっと小恥ずかしくなって焦っていたのが失敗だった・・・・。

・・・・・・すっかり4死舞の存在を忘れていたのだ。

庭園から旅館内に戻り、ロビーに向かう渡り廊下で

 

「・・・・耕一?」

 

「ッ!!!」

 

体がカチマッタ。

 

「ヤ、ヤハァ。アズサ・・・・。」

 

「・・・・ったく何処行ってたんだよ?」

 

ロビー側の方から梓が向かってきた。

 

ホーリーシット!!

 

梓は俺の3メートル前まで近づき、しゃべりかけてきた。

 

「そろそろ帰ろうぜ?もう姉貴達もお腹いっぱ・・・・・・・。」

 

途中で言葉を止めると

梓は俺のとなりの由美子さんに気が付いた。

俺と由美子さんを交互に見つめ、目をパチパチさせた後・・・・。

さらに目を白黒させて、逆回転3ひねり。

 

「・・・・・・・・・・・。」 (滝汗)

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・耕一くん。この方は?」

 

・・・・・・・・・・。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり

沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理を現す

奢れる者も久しからず 唯春の夜の夢の如し

猛き者も遂には滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ


(ひいふぅ)