鬼兵般家長


                                                           
DIE25話  おっす!メタルユー鬼だぜっ!



翌朝、俺は少し早めに起きて今日の由美子さんとの予定を考えていた。

どういったルートを周ろうか?

どうすれば4姉妹遭遇を回避出来るか?

などといったエスピオナージ(潜伏)・ミッションを構想していた。

だがそれ以前に最も厄介なファクターが存在していた。

それは・・・・どう誤魔化して外出するかだ。

「ちょっと散歩」って言って出掛けて、何時間も帰ってこなければ

明らかに疑われるし、「郷土史館に行く」って言っても

姉妹の誰かがついて来る怖れが十二分にある。

そうなれば確実にアウトだ。

兎に角、朝食の前後が正念場だな・・・。

 

「お兄ちゃ〜ん、御飯だよぉ〜♪」

 

初音ちゃんの声が聞こえて来た。

よし、行くぜっ!

 

「おはようございますっ!」

 

「あ、耕一さん。おはようございますぅ♪」

 

「・・・・・・モーニン。」

 

「オッス!おら初音。」

 

「・・・・・・・・。」 ジロッ

 

居間へ到着すると、今日の献立をチェックしてみた。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

梓の機嫌はまだ直っていないらしい。

相変わらず『耕一専用』と書かれた場所に

一杯の銀シャリと・・・シーチキンの缶詰一個。

お?少しレベルアップしてるぞ♪

ちょっとは機嫌直してくれたのかな?

当の梓本人は先に朝食を食べており、味噌汁をすすっていた。

俺は文句の一つでも言ってやりたいのを我慢して、食卓のシーチキンの缶詰を開けようとすると

ふと缶蓋に記載されている賞味期限が目に入った。

・・・・・賞味期限、昭和63年。

す、すわっ!?

な、なんじゃぁ!?こりゃぁーー!!

しょ、昭和だとぉ!?10年以上も前の缶詰じゃないっすかぁ!!

 

「あ、梓っ!!て、てめぇ〜!随分とレトロな朝食じゃねーか?!」

 

ジュラシックな気分が味わえていいんじゃないの?」

 

「ア、アホかっ!こんなもの食ったらO157になるだろがっ!」

 

「バーカ。あんたの鉄の胃袋ならなんともないっての。」

 

クッ!こ、こいつ・・・・。

そんなに由美子さんの事が気に入らないってのかよっ!

バンッ!

突然、楓ちゃんが食卓を両手で叩くと

 

「・・・・・梓姉さん、いい加減にしてよ!」

 

か、楓ちゃん!?

 

「・・・どういう意味だよ?楓。」

 

「・・・・・何があったか知らないけど、耕一さんにちゃんとエサを与えてよっ!」

 

エ・・・エサぁ・・・。

 

「うるさいなぁ、ちゃんと作ってるだろ。」

 

「・・・・・このねこまんまが?馬鹿にしてるの?

 ・・・・いい?姉さん。耕一さんにはしっかり食べてもらわないと

 ・・・・・・これからの子作りに支障が出ちゃうでしょ!」

 

「はぁ!?な、何じゃそりゃっ!!」(汗)

 

「・・・・・・・・・。」

 

「梓っ!お前も何故黙るっ!!」(汗)

 

ここで突然、初音ちゃんが口を開いた。

 

「別に嫌なら作んなくていいんじゃない?」

 

「・・・・初音!」

 

「何だと?初音。」

 

「は、初音ちゃ〜ん!」

 

『・・・ちーちゃん・・・なんか仲間外れ。』ぐっすん

 

初音ちゃんはくせっ毛をツンツンといじりながら一言。

 

「次からお兄ちゃんの御飯だけ、私が作るから♪」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

『・・・・・・・・・・ちーちゃん。会話に乗り遅れたの。』

 

し〜ん

 

「今度から私がお兄ちゃんの御部屋に御飯持っていくね♪

 二人っきりで楽しく食べよう♪」 にっこにこ

 

 

『オラッ!』

 

チッ

 

何かWith任意の拳が初音ちゃんの髪の毛をかする。

 

「・・・・・・初音、はりきってんじゃねー。」

 

「そうだ初音・・・。これ以上話をややこしくすんじゃねー。」

 

「あ?何ほざいてやがる!一人はまともに作んねーし、

 もう一人はまともに作れねーじゃねーかっ!」

 

ウガァァァ!!

 

・・・・皿が飛ぶ。

・・・・茶碗が飛ぶ。

・・・・瞬く間に居間はPRIDEのリングと化した。

ってイカン。とばっちりを喰らう前に避難しなければ・・・。

っ!!

待てよ。これはチャンスではないだろうか?

このままうやむやに外出してしまえば、行き先を尋問されずに済みそうだぞ。

俺はメーガス3姉妹がしばき合っている間をぬって

こそこそと玄関へ向かった。

靴を履いて、玄関の戸に手をかけた直後。

 

「耕一さん♪何処かへ出かけるんですか?」

 

・・・・・そういや千鶴さんが居たな。

 

「あ、あははは〜!!い、いやぁ〜ちょっと漫画喫茶にでも行こうかと。」

 

「そうですか、今日は半日で仕事を切り上げますので。」

 

・・・・マズイ。って事は早く帰ってこいと・・・?

 

「そ、そうなんですか?それはまたどうして?」

 

「あら?言ってなかったかしら。今日で一先ず年末の御仕事は終了なんです♪」

 

ペロリと可愛らしく舌を出してはにかむ、千鶴女史(23歳)。

 

「へ、へぇ〜。それは良かったじゃないですくわ〜。お疲れ様っす〜。」

 

「と言う事ですので、早く帰って来て下さいね♪」

 

ダム・ユー!(ちくしょう)

 

「ね♪耕一さん。早く帰って来て下さいね。分かったか?

 

「・・・・・はひ。」(涙)

 

・・・・・・・・・・・・・・。

時刻は8時40分を回っていた。

駅前に着いた俺は、ロータリーの奥にある喫茶店「YUKI」に入った。

・・・まだ由美子さんは来ていないみたいだな。

ホットコーヒーを頼み、朝刊を読みながらしばらく待っていると・・・。

 

「・・・おまたせ♪」

 

新聞越しに見える女性。

・・・・・・・。

・・・・・誰?(汗)

目の前には美人のねーちゃんが立っている。

しばらく俺は無言のまま見つめた。

 

じ〜〜〜〜〜〜。

 

「こ、耕一くん?ど、どうしたの?」

 

「は・・・・?はいっ!?ゆ、由美子さん?」

 

「も、もう!今頃分かったの?」

 

「い、いや・・・だって、メガネしてないからっ!」

 

由美子さんはメガネをかけていなかったので、一瞬誰だか分からなかった。

って言うか、メガネはずしたとこってみた事無いから・・・。

俺が呆気に取られていると、由美子さんは少し顔を赤くして俯きながら

 

「そ、その。たまにはコンタクトも悪くないかな?って思って・・・・。」

 

「由美子さんコンタクト持ってたの!?」

 

「う、うん。滅多につけないけど。スキーとか運動する時くらいかな?」

 

「・・・・・・ほへぇ。」

 

「・・・・あの、変かな?」

 

「いやいやっ!!全然っ!!見慣れてないから驚いたんだよ。」

 

「ふ〜ん、誰か分からなかったんだ。」

 

「すっごくいいよ。似合うよ。」

 

「あ、ありがと。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「・・・・んじゃ行こうか?」

 

「・・・・うん。」

 

俺は照れくささを隠すように、急いで席を立つと

喫茶店を出て駅前を後にした。


 

(Knock'n on the heaven's door)