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鬼兵般家長


                                                           
DIE26話 鬼みが世は、千代に八千代ムセンに・・・。



「ここが、俺いきつけの和風茶房なんだよ。」

 

「ふ〜ん、何が美味しいの?」

 

「そうだな。たい焼きも上手いけどさ、やっぱぜんざいも捨て難いなぁ。」

 

「あ、ホントだ。そこで実際に作ってるね。美味しそう〜♪」

 

「あとで寄ろうよ。」

 

「うん。そうだね。」

 

俺と由美子さんは駅前を離れて、温泉街の通りをゆっくりと歩いていた。

とりあえず、この通りを真直ぐ抜けた先にある「隆山郷土史博物館」に行く予定なのだ。

そのついでと言ってはなんだが、色々とおすすめの店を紹介してあげていた。

 

「あ、それでここが俺の愛する定食屋なんだよ♪」

 

と、言いながら俺は「鵜婆紗」を指さした。

 

「う・・?なんて読むの?」

 

「(うばしゃ)って読むのさ。」

 

「・・・へ、へぇ〜、変わった名前のお店だね。」

 

「あ、由美子さん今馬鹿にしてない?見かけに騙されちゃいけないな。

 ここの定食はグルメ雑誌に紹介こそされてはいなけど、

 知る人ぞ知る、名店なんだぜ?」

 

「じゃあ、どうして耕一くんはここを知ってるの?」

 

「ふふふ、俺はガキの頃、ここの地元の親戚のおじさんに教えてもらったのだ♪」

 

「そうなんだぁ。地元の人が言うんだから信用出来るね。」

 

「あ、なんなら後で食べようよ。」

 

「クスクス。」

 

「・・・?どうしたの。急に笑って?」

 

「だって・・・耕一くん。さっきから食べ物系ばっかり紹介するんだもん。」

 

「えっ!?お、女の子ってこんなの好きじゃなかったっけ?」

 

「もちろん、好きだけど、民芸品とかも良かったら紹介してよ♪」

 

「ははは。はいはい。じゃああっちの店だけど・・・・。」

 

いやぁ〜、楽スィーなぁ・・・。

やっと4姉妹に監禁された生活から解放された気分だよ〜♪

 

ルンルン♪気分のまま、ようやく「隆山郷土史記念館」に到着した。

ここ、「隆山郷土史記念館」は開館50周年を誇る歴史ある地方博物館で、

隆山の自治体が巨額の費用を投資して、4年前にリニューアルしたばかりだ。

まぁ、ぶっちゃけ隆山の歴史や、温泉博物館、郷土博物館などが混合された

歴史資料館みたいなもんだ。

意外に館内はバラエティーに富んでいるし、面積も広いのから

結構遊べるところなので、旅行のガイドマップには必ずといっていいほど記載されている。

今日は年末で家族連れも結構いるなぁ。

由美子さんはさっそく郷土館に向かっていった。

 

「耕一くん、早くぅ!」

 

「あぁ、ちょ、ちょっとまって子供が邪魔で・・・!」

 

どっかの子供会の遠足だろうか?やたら子供の団体が入口付近を占拠していた。

どんっ!

足元に近寄ってきた小学生らしき子供に思わずぶつかってしまった。

 

「あ、ご、ごめんねっ!!」

 

慌てて黄色い帽子をかぶった女の子に謝ると、俺は先を急いだ。

 

ガー

『・・・・・・・・・1番通過。』

 

郷土館に着いてから、由美子さんは真剣な表情で色々とメモをとっていた。

一応、規定の場所での写真撮影は可能なので、デジカメで色々と撮って

レポートの材料を集めているようだ。

う〜ん。なんか横から見ていると、ほんと才女みたいだな。(笑)

俺が見つめているのがバレたらしく、「う〜」と考え事をしていた。

由美子さんがこちらに振り返って顔を赤くした。

 

「も、もう!なんなの〜耕一くん。」

 

「い、いやぁははは!なんかどっかの教授みたいだなぁ〜って。」

 

「お世辞になってないよぉ!集中出来ないじゃない〜。」

 

「だって暇なんだもーん。」

 

「あ、ご、ごめんなさい!あはは!興味深い展示品ばかりですっかり魅入っちゃった♪」

 

「冗談冗談!ごめん。大体今日はその為にここに来たんだからな。

 いいよ、じっくり見ててよ、俺ちょっとジュースでも買ってくるからさ。」

 

「ごめんね。もう少し見させてね。」

 

「ういっす。」

 

俺はジュースの自動販売機がある休憩コーナーに向かって歩きだした。

・・・・ん?

ふと何かが目に入って足を止めてみると。

『隆山の雨月山伝説 〜鬼の伝承〜』

というコーナーがひっそりとあった。

「・・・・・・。」

何となく気になってそのコーナーに近づいて見てみた。

『古来より、ここ隆山の北西に位置する雨月山には鬼に関する伝承があり・・・・』

・・・・鬼ね。

・・・・・・複雑な心境だな。ふっ。

自嘲気味にそのコーナーの説明プレートを読んでいると

ふと右の方の絵が気になった。

 

「ん?なんだろ・・・この絵?」

 

かなり昔に、何百年前に描かれたであろう絵があり、

その絵には4人の女の鬼らしき物の怪が描かれていた。

さらにその4人の鬼女に囲まれ、死にそうな顔をした一人の男性。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

更に目線を下にやると、この絵の説明文らしいプレートがあり、

 

『雨月山の鬼に連れ去られそうになっている、若い男性の絵。』

(この絵は1500年代に描かれたと推測されています。

 作者は不明ですが、当時の言伝えでは雨月山の鬼は、ちゃんと男女に分かれており、

 女の鬼は特に若い男性を好んで食べていたと言われています。

 この構図から分かるように、今まさに男性を連れ去ろうとしているのでしょう。)

 

・・・・・グランブルー状態。

 

なんか・・・どっかで見たような構図だね・・・。

多分・・・今、俺の顔って、ドブ川で死んで浮いてるフナみないな顔してんだろうな。

 

「・・・耕一くん?」

 

「・・・はっ!!」

 

「耕一くん?どうしたのこんなところにボ〜って立ってたけど。」

 

「あ、あぁ、ちょ、ちょっとね。あ、それよりどう?」

 

「うん。ばっちりだよ♪レポートの資料はこれで完璧だよ。」

 

「そうか、よかった。じゃあどっかでお昼御飯でも食べようか?」

 

「うん。そうだね♪」

 

とりあえず、館内を出たところで、ショボイ自転車が目に止まった。

そのちゃちなチャリの荷台には大きなボックスがついており、

さらにボックスから上に立てられた旗にはこう書いてあった。

 

『隆山名物あいすくりん』

 

・・・・っ!!

こ、このクソ寒いのに・・・ア、アイスだと・・・!!

くっ!くそぉぉ〜〜!!た、食べたいぜぇぇっ!!!

寒いからこそアイス、冷たい体に冷たいアイス。

・・・そう。俺はアイスを愛すもの。

なんてヤツだっ!こ、この俺のツボを見事についてきやがって・・・!

ふらふらふら〜♪

 

「こ、耕一くん!?どこへ行くの?」

 

「ゆ、由美子さん・・・・アイス食べない?」

 

「え、えぇっ!ア、アイスって・・・あのアイス?」

 

「うん。ほら、そこにアイスの屋台があるじゃん。」

 

「で、でも耕一くん。今は12月下旬だよぉ・・・。」

 

「違うんだって!寒い時に食べるアイスって格別なんだって!

 由美子さんいらない?俺おごるからさ?」

 

「う・・・うん・・・そこまで言うのなら・・・。」

 

俺はアイスの移動販売をしているチャリンコに近寄り、

傍にいた人に声をかけた。

 

「すいませーん、2つ下さい。」

 

「・・・・・はい、まいど。」

 

・・・・?

俺の声を聞いて、こっちを振り返った人は

帽子をかぶって、サングラスとマスクをした怪しい人だった。

・・・・・・。

 

「・・・・・2つで200円です。」

 

・・・・・・女の子・・・だよな・・・?

・・・・・・風邪ひいてんの!?

 

「あ、はい。200円。」

 

不審な女の子はボックスからコーンを取り出すと、

しどろもどろにアイスクリンを専用カップにすくってコーンにのせようとした。

その矢先・・・。

 

べちゃっ。

 

アイスがコーンからずり落ちて、地面に落下・・・。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・・あ、あのぉ・・・。」

 

「・・・・・うぉんちゅ。」

 

「は?」

 

「・・・・・すいません。今すぐ、作りなおります。」

 

そそくさと、もうひとつコーンを出すと、またアイスをすくう女の子。

・・・・・・・なに?ひょっとして素人?

なんとか一つ目のアイスを作り終え、2つ目を作りにとりかかると

 

「・・・・・・・かわいい彼女ですね。」

 

ぼそっと女の子が訊ねてきた。

 

「えっ!?い、いやぁ〜ハハハ!そ、そう見えますぅ?」

 

「・・・・・・・否定せんのかい。」 ぼそっ

 

「はっ?何か言いましたか?」

 

「・・・・・・・いえ、別に。はいどうぞ。」

 

2つ目のアイスを受け取ると、俺は200円を手渡した。

 

「・・・・・・・まいどあり。」 わなわな

・・・・何故か、お金を受け取る時、その女の子は肩を震わせていた。

う〜ん、そんなにひどい風邪なら仕事休めばいいのに・・・。

俺はアイスクリンをもって、由美子さんのところへ戻った。

 

「耕一くん、さっきの人って、なんか格好がおかしくなかった?」

 

「うん、なんか下手な変装してるみたいだよ。ははは。

 多分・・・風邪かなんかじゃないかな?あ、はいアイス。」

 

「あ。ありがとう。ふうん、大変だね。外、結構寒いのに・・・・。」

 

「んじゃ、昼メシ食べに行こうぜ。」

 

「うん♪」


 

ピッ

ガー

「・・・・・2番通過。」 グシャッ!

 

(渇いた瞳でぇ、誰か泣いてくれぇ)