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石川県隆山市。

古くからの街並みが残る情緒溢れる温泉街であり、

観光名所としても名高く、日々観光客の足が絶えない。

賑やかな市内から少し南東に下ると県立隆山東高等学校が見えてくる。

県内随一の進学率を誇り、大正時代に設立された由緒正しき名門高校である。

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

「じゃねー。」

「おーい。ヤック寄ってこうぜー。」

 

ワイワイガヤガヤ

6時間目が終了し、放課後で賑わう校舎。

部活に向かう生徒や、そのまま友人達と帰宅する生徒。

また、まだ教室に残り雑談や自習に勤しむ生徒もいる。

そんな中で彼女。柏木楓は自分のロッカーへと向かっていると、

廊下の先から体操服姿の女子2人が歩いてくる。

彼女達はすれ違いざま楓に爽やかな笑顔を向けた。

 

「あれ。楓ちゃん、帰るの?」

 

「・・・・・・・・。」 こくん

 

「珍しいよね?いつもは図書室で自習してるのに。」

「ははぁ〜ん。さてはオトコが出来てたりして〜?」

 

・・・・・ニヤリ。

 

「「う”ッ!?」」

 

「・・・・・・・・じゃあ・・・また明日。」 スタスタ

 

「え・・・あ・・・じゃあ、また明日ね。」 (汗

「バ、バーイ。」

 

同級生の女子達と一言二言挨拶を交わした後、

楓はスタスタと廊下を後にする。

 

「・・・・ねぇ、見た?楓ちゃん笑ってなかった?w」

「うん・・・珍しいというか・・・気持ち悪いww」

 

校内入口前に広々と設けられたロッカールームに辿り着くと、

すこし強めの風が校庭から吹き込んできた。

ニャーw

どこからまぎれたのか、黒猫が前を通り過ぎる。

風で乱れた髪を軽くかきあげ、楓はロッカーを開けた・・・・。

「・・・・・・・・?」

ロッカー内にきちんと置かれた靴。その上に置かれたに見覚えの無い便箋。

きょろきょろと周りを見回した後、改めてロッカーに記載された名前を確認する。

間違いなく楓のロッカーだ。

便箋を手に取って見ると、何やら手書きの文字が書いてあった。


− 柏木 楓 様 −

 

「・・・・・・・私?」

おもむろに便箋の中にある手紙を広げて見てみると・・・・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

隆山東高校の裏庭の隅は小高い丘陵があり、

その真ん中には伝説の木と呼ばれるものがある。

古くからその木の下で異性が告白すると、願いが叶うという迷信が存在していた。

そんな木の下に楓がやって来ると、

どこかで見覚えのある男子が緊張した面持ちで佇んでいる。

 

「・・・・・・・あなたは・・隣のクラスの・・・・。」

「に、2年B組の・・・蒼竹です!」

 

「・・・・・一体、何の用ですか?」

「あの・・・それは・・・その・・・つまり!!」

 

上ずった声で話す男子生徒。挙動がかなりアヤシイ。

 

「・・・・・・・・?」

「・・・・リアルな・・・リアリティと言うか!その・・・」

(((ククク・・・!)))

 

裏庭の向こう側から数人の男子が

こちらを覗き見して興奮を抑えているのが楓の目に入った。

 

(チキソめ!早く言えよバーカ!)

(言えなかったらアフロだぞ!)

 

小声でそんな事を口々に言っている。

それを聞いて男子は半分ヤケっぱちに口を開く。

 

「楓さん!す、好きです!俺と付き合って下さいッ!!」

「・・・・・・・・・・・。」

(うぉぉ!?マジで言いやがった!!)

(神ッ!!)

 

「・・・・ごめんなさい・・・・私、もう結婚してるんです。」 (ぽッ

 

!?

ひゅぉぉぉ・・・・・・・・。

チャチャチャ、チャララララ♪

チャチャチャ〜ンララ♪
(女性の瞳の中に蝉丸が映し出される。)

チャチャチャ、チャララララ♪

チャチャチャ〜ンララ♪
(女性が瞬きすると、蝉丸は消える。)

チャチャチャ、チャララララ♪
(黄昏に染まった海。波間が映し出される。)

チャチャチャ、チャララララ♪
(素っ裸の少女が海に向かって立ち尽くしている。ズーム、パンの繰り返し。)

チャチャチャ、チャララララ♪

チャチャチャ〜ン・・・・チャチャ、チャチャ、チャ♪
(波間模様に映し出される少女の表情。)

「誰彼の荒野に〜か〜なしき、あ〜した〜を感じてもぉぉ〜♪」

 

髪が真っ白になった蒼竹少年は虚ろな瞳でその場を駆け出して行った・・・・。

 

(あ、蒼竹ッ!?)

(どうすればいいんだ!?)

 

隠れていた男子生徒が慌てて彼を追いかけていく・・・。

 

(だから柏木は止めとけって言ったのに・・・・。)

「俺の感じている感情は精神疾患の一種だ!そうだ!そうなんだ!ワハハハーッ!!」


し・・・・ん・・・・。

 

「・・・・えっと・・・。」

 

一人取り残された楓が困った表情を浮かべて佇む。

 

「ふっふっふっふw」

 

!?

突如背後からの笑い声。

慌てて振り返ると、ものすごくイヤらしい表情の初音がニヤニヤとしながら、

何故か縦笛を取り出し、チャルメラを吹き始めた。

 

「・・・・・は、初音・・・・・どうしてここに・・・・・。」

「だって今日は学校終わったら一緒に夕食の食材買いに行くって約束してたじゃん。」

「・・・・・・・・。」 (汗)

 

「やったね、楓お姉ちゃん。これで今年3回目の告白だね〜。」 (゚ー^)ъグッ!

「・・・・・・。」

 

「この間は野球部の奴だっけ?その前は〜確か・・・・

 そうそう!生徒会の!あの人結構イケメンだったのに。」

「・・・・・・。」

 

「楓姉ぇちゃん。モテモテなんだから、さっさと耕一お兄ちゃんを狙うのは諦めてさ〜。」

「・・・・・・・・・・・・。」 ツカツカ

 

「さっきの男と付き合えばいいじゃん。あの頃のときめき〜♪」

『オラァッ!!』

 

ドバキャッ!!

 

「聖衣★ちゃんねるッ!?」

 

「・・・・・耕一さんにチクッたら殺す。」

「まだだ・・・まだ終わらんよ・・・・。」 ガクッ


 

鬼兵般家長
REVOLUTIONS


 

「メンチカツと・・・あー、おばちゃん。あとコロッケも。」

「はいよ〜。」

 

枯葉大学から少し南東にある商店街で、俺は夕飯の惣菜を物色していた。

 

「はい。173円のお釣りね。明日から大学はお休みかい?」

「うん。試験も終わったし、しばらく休みだよ。」

 

「そうかい。旅行とかもう予定してるの?」

「いや〜、行きたいけど俺は貧乏だから。」

 

行き着けの惣菜屋のおばちゃんと雑談した後、家路に向かう。

びゅうう!

真冬の冷たい風が吹き付け、思わず軽く身震いしてしまった。

 

「うぅ・・・寒ッ。早く家に帰ってコタツに入りてぇー。」

『むぅわいにち〜むぅわいにち〜ぶぉくらは鉄板のぉ〜♪』

 

!?

突然背後から懐かしいやら怪しいやら、よく分からない歌が聞こえる。

 

『う〜うぇ〜でや〜か〜れて、やになっちゃうよぉ〜♪』

「おわッ!!」

 

反射的に振り向くと、大型スピーカーを搭載した黒塗りのプレジデントが

ゆっくりゆっくりと俺の背後へ徐行してきていたではないか!

大音響で垂れ流されるイタイ歌に、商店街付近が騒然とする。

そのプレジのナンバープレートには見覚えのある地名が・・・。

隆山 69 で 19-19

「ひぃぃぃぃーーーッ!!!」

ドサドサッと買い物のビニール袋をその場に手落として

慌てて俺はその場から全力疾走で逃げる。

 

『は〜じ〜めて〜お〜よ〜いだ〜海のそくぉ〜♪』

「た、助けてーーー!」

『とぅぉっても気持ちがいい〜もんだ〜♪』

 

俺が走り出すと同時に、プレジも速度を上げて俺の背後から追跡してくる。

鬼の力を使って逃げれば良いが、こんな人気が多いところでやる訳にもいかない。

やがて、ブィーーン。と後部座席の窓(パワーウィンド)が、下がっていくと、

中から手がニュッ!と俺の方へと伸びてきた。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

 

グワシッ!

あっさりと襟首を掴まれ、そのまま窓から車内へと引きずり込まれる俺。

 

「たーすーけーてーーー。」

 

ブィーーーーン。 ←窓が閉まる音。

パタン。 ←窓が閉まり終わる音。

ブロロロロ・・・・・・。

 

「なにあれ?拉致?」  ざわざわ

「警察呼ばなくていいのかしら?」

「・・・・いいんでないかな?」

・・・・。

・・・・・・・。

 


『Kouichi!準備はいいか!?』

「おう!いつでもいいぜ!」

 

禍々しい光彩を放つ魔方陣を前に、俺たちは意気揚々と足踏みを揃える。

 

『今から戦おうとしている敵はこれまでとは段違いだ!気を引き締めるぞ!』

 

人の容姿とは少し異なる長身の青年が檄を飛ばした。

 

『これが・・・バーニングサークル!魔の巣窟・・・・。』

 

何故か頭からネコミミを生やした女の子が息を呑む。

 

「おじけることなんてないぜ!みんな俺に続け!」

 

俺はそう叫び背負った剣を引き抜くと、いの一番にその魔方陣へと飛び込んだ。

パーーーパパパーーーー♪チャーーーーラララーーー♪

!?

俺の目の前に待ち構えていたのは、何故か大きな甲羅を背負った千鶴さん6人www

カシャーン・・・。 ←剣を手落した音

呆気にとられる俺を尻目に先程までやる気満々だった仲間たちは、

次々と魔法を唱えてその場からエスケープしていく。

 

「お、おい!お前たち何処へ!?」

『す、すまん。Kouichi・・・あれは無理ぽwww』

 

ギュ〜〜〜ンw

そう言い残して離脱する最後の仲間の一人・・・。

 

「は、歯なしにならねぇぇーーーー!!」

 

慌てて俺も逃げ出そうとするが、いつの間にか千鶴さん達に囲まれていた。

 

「ひぃぃぃぃッ!」

『こ〜いちさん。ようこそ。』 ニタ〜

「/shout Help!助けて!

 

ガバッ!!

コチコチコチコチ・・・・ボーン・・・・ボーン・・・ボーン。

夢・・・どうやら夢を見ていたらしい。

見覚えのある古時計を背に、まだ寝ぼけている頭を軽く振った後、再び畳に倒れこんだ。

 

「鬱ッ!」

 

見飽きた和室の天井を見上げながら、俺は満面の鬱を浮かべる。

 

「なんで大学が休みに入る毎に拉致られにゃならんの・・・・。」

 

そう。車で連れ去られ、気が付けばいつもの如く柏木邸www

 

「耕一さぁ〜ん♪」 (ガラッ

 

突然、千鶴さんが俺とは正反対の満面の笑みを浮かべて部屋の障子を開けて入ってきた。

 

「はい・・・何すか?」

「お風呂が焚けましたので、夕食前に頂いて下さい。^^」

「・・・じゃあお言葉に甘えて・・・。」

 

よっこらせっという感じで立ち上がると、俺はヨタヨタと風呂場へ向かった。

カッポーン♪

湯煙がもうもうと立ち込める浴室に服も脱がずに入るや否や、

俺は急いで換気用の小窓をガラリと開ける。

 

「うげッ!?」

 

あわよくばそこから脱出しよう思っていたが、考えが甘かった。

小窓には有刺鉄線がびっしりと張り巡らされ、

『電流注意』と書かれたドクロマークの赤シールが貼り付けられている。

 

「・・・・・・超しょんぼりww」

 

がっくりと項垂れる俺。浴槽の檜のほのかな香りがより一層哀愁を漂わせた。

ガララッ!

 

「ただいま〜今帰ったよ。」

 

遠くの方から梓の声が聞こえてくる。

 

「お帰りなさい。梓。」

「姉貴、ちゃんと耕一拉致ってきた?」

「おほほ。まかせてちょんまげ♪」

 

・・・・なんつー会話だ・・・w

湯冷めしないうちにジャージを着て居間に足を運ぶと、

エプロン姿の梓が鍋の準備をしていた。

短髪の時とは異なる、甘栗色のサラサラした長髪に一瞬ドキッとしてしまう。

(そうか・・・こいつ髪伸ばしてたんだっけ・・・。)

夕飯を支度している何気ない梓の姿に、

幼い頃亡くした母の面影を見たような気がして、しばらく眺めていた。

すると、俺の視線に気付いたのか、梓が髪をかきあげながらこちらに振り向く。

 

「ん・・・・・・?あぁ、耕一。久しぶり。」

「よ、よう。」

 

「もうちょっと待ってね。今準備してるところだから・・・。

 ったく、楓も初音もどこほっつき歩いて・・アチッ!」

 

鍋の熱い部分を持ってしまったのか、梓は咄嗟に手を引っ込めると、耳たぶをつまんで顔をしかめた。

 

「火傷したのか!?」

「いや、ちょっと触れちゃっただけだよ。」

 

「見せてみろよ。」

「あ、いいって!」

 

「いいから。」

「・・・・あ。」

 

梓の手を取り、火傷したと思わしき場所を確かめるが、どうやら本当に大した事ないみたいだ。

 

「大丈夫みたいだな。」

「だから・・・そう言ったじゃん。」

 

いつもと違う弱々しい梓の声に違和感を感じて振り向くと、

梓は何故か頬を真っ赤に染めて俯いていた。

 

「な、何照れてんだよ。お前?」 (汗

「べ、別に照れてなんか!・・・バーカ。」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・。」

 

コトコトコト・・・・♪←鍋の音

 

「か、髪。また伸びたな。」

「うん・・・・最初はあんまりしっくりこなかったけど、今は悪くないなって・・・。」

「・・・・そっか。」

「・・・・・耕一の好みっぽくなった?」

「バ、バカやろッ。」

「へへ・・・。」

 

俺は恥ずかしくなって思わず視線を逸らす。

梓は梓で、エプロンの裾を握って照れていた。

「おい。」 ←エコー

ビクッ!?

闇の底から響き渡るようなドス黒い声に思わずその場から仰け反る。

千鶴さんが腕を組み大黒柱に背もたれて、佇んでおわしました。

 

「静かで・・・いい夜だな。オイ。」

「あ、姉鬼・・・。」

「千鶴さん。べ、別に俺達は何も・・・・

 

『鬼ング・クリム損ッ!』

 

!?

 

いつの間にか目の前にいたはずの千鶴さんが、俺の背後で梓の胸倉を掴んでいた。

ヒー!スタ○ド!

 

「・・・・梓ちゃ〜ん。ちょ〜っとイメチェンしたくらいで余〜り図に乗らない方がいいわよ?」 にっこり

負けじと梓も襟首を掴んでいた千鶴さんの手を握りしめる。

 

「フン。悔しければ姉鬼もイメチェンの一つや二つくらいやれば?

 まぁ〜イモイ人間に言うだけ酷か。(ワラ」 ググググ

「こ、こ、こ、このガキィィィ。」 ワナワナ

 

ひィィィ〜〜!

非常にマズイ事態になってきたので、思わずその場から匍匐前進で逃げ出す俺。

ガラガラ・・・。

 

「・・・・・・ただいま。」

 

玄関から楓ちゃんの声が聞こえたかと思うと、すぐに居間の方に楓ちゃんがやって来た。

 

「・・・・・・耕一さん・・・・何してるんですか?」

 

渡り廊下にうつ伏せている俺を見るなり、楓ちゃんは不思議がって首をかしげる。

 

「やあ楓ちゃん・・・チ、チャオ。」

「あら、楓お帰りなさい。」

「おっせーぞ。楓。・・・・って、あれ?」

 

振り返った千鶴さんと梓は何故か楓ちゃんの肩に担がれた初音ちゃんを見て怪訝な表情を浮かべた。

 

「楓。どうして初音を担いで・・・・。」

 

「・・・・・・・Zの鼓動が聞こえるとき、初音は刻の涙を見たんです。」

 

千鶴さんの質問に、訳の分かんない返答をすると、

楓ちゃんはぐったりとする初音ちゃんを下ろして、買い物袋を梓に手渡した。

俺が初音ちゃんを抱き起こすと、彼女は焦点の合わない瞳で

ガクガクとエレクトしながら意味不明な事を言っている。

 

「あ!?大きな星が点いたり消えたりしている。はははは、大きい。彗星かなあ。

 いや、違うなあ。彗星はもっと、バーっと動くもんな。」

 

・・・打ち所が悪かったと見える。(汗

・・・・。

・・・・・・・・。

 

「じゃあ。いただきま〜す。」

「ほほ。頂きます。」

「頂くぜ。」

「・・・・・ゲッツ。」

「暑っ苦しいなあ、ここ。ふう、出られないかなあ。おーい、出してくださいよ、ねえ。」

(※誰がどの台詞か当ててみましょうw)

 

冬の醍醐味である鍋料理を前にして、思わず顔がニヤケてしまう。

一人暮らししてたら鍋なんて面倒くさくて作らないもんな〜♪

コトコト煮立った目の前の鍋には海の幸、山の幸。

そして今となっては珍しい猪の肉がふんだんに盛り込まれていた。

 

「へ〜!猪か〜。そういえば何年ぶりだろう。」

「・・・・・沢山買ってきたから、どんどん食べて下さい・・・・はい。ダーリン。あーん。」

 

そう言いながら、早速俺にラブラブモード発動させてくる楓ちゃん。

 

「・・・・・・・・・・。」 (汗

「・・・・はい。あーん。」

 

!?

 

「あ”−−−ん。」

 

バキィ!

俺と楓ちゃんの間から、いきなりホホジロザメのように、

ガバッと千鶴さんが現れて楓ちゃんの箸に摘まれた肉を箸ごと喰いちぎっていった。

 

「・・・・・・姉さん。何のつもり?」

「バリバリ・・・・ごくん。楓ちゃん。誰の許しを得てハネた事してるの?」 にっこり

「・・・・妻が夫に食べさせて何が悪いの?」

「誰がおどれの夫じゃ?汚羅!」

「・・・・・耕一さん。」 (ぽっ

 

・・・・・もう知らん。

俺はもくもくと肉をついばみながら、シカトを決め込み鍋をつつく。

 

「いや〜ほんとこの鍋美味いよ。」

「だろ?アタシ特製のダシを入れてるからね。」

「ダシ?・・・まさか超がつくのは入って・・・

「入ってる訳ないだろ!」

 

梓との下らないやりとりをしながら、再び鍋から肉を取り出そうとすると・・・・

ゴリ。

ご、ごり??

なんか箸に変なものがひっかかった・・・・。

 

「ん?なんだこりゃ?」

 

そう言いながら、箸に当たったものをついばんでみると、

!?

マロニーの絡まった『ユニバG』とラベルが貼られた空き瓶が出てきた・・・・。

 

「うわぁぁぁッ!!」

 

思わず箸を落っことして悲鳴を上げる俺。

 

「な、なんでこんなもんが入ってるんだよ!?姉鬼ィー!!」

「なに?梓。」

 

楓ちゃんといがみ合っていた千鶴さんが振り向くと、

梓が怒りながらテーブルに転がったを指差す。

 

「これ、姉貴が入れただろ!」

 

それをしげしげと見つめた後、千鶴さんは照れながら一言。

 

「いいダシ使ってるでしょ?」 にっこり

「アホか!!」

 

ピンポーン。

その時、玄関の方から呼び出し音が聞こえた。

 

「あら・・・?誰かしら?」

「まいどーごめんくださーい。ヴァナ運輸ですー。柏木さーん荷物ですー。」

 

配達員の声が聞こえたので、千鶴さんが立ち上がり玄関の方へと向う。

しばらくして、千鶴さんが居間に荷物を抱えて戻ってきた。

 

「姉貴、誰から?」

「今度新しく就任された隆山温泉協会の副会長さんからお歳暮が届いたみたい。」

(※ちなみに千鶴さんが会長です。・・・・一応。)

 

そう言いながら千鶴さんが長方形の荷物の包装紙を丁寧に剥がすと、

寒気御見舞と書かれた紙が目に入った。

千鶴さんが同封されていた手紙に目を通し、微笑む。

 

「新潟に御住まいの御親族の方が酒造業を営んでいらっしゃるそうで、わざわざ贈って来て下さったんだわ。」

「へ〜。日本酒かー。」

 

梓はそう言いながら箱から一升瓶を取り出した。

 

「おぉ〜!これって有名な地酒じゃん!」

「そうなのか?梓。」

 

俺も興味が沸いて梓が手に取る酒瓶を眺めた。

 

「何て名前の酒なんだ。なになに・・・・う、卯葉者(うばしゃ)・・・?」 (汗)

「あぁ。卯葉者って新潟の地酒だよ。耕一、聞いたことない?」

「さ、さぁ・・・・同じ様な名前の喫茶店とかなら知ってるが・・・w」

 

俺が頭を掻きながら返答に困っていると、それまで黙々と夕飯を食べていた楓ちゃんがボソッと呟く。

 

「・・・・・魚沼産コシヒカリをベースに通常の酒造工程より

 4ヶ月も長い伝統的な特殊技法から精製される高級地酒。

 江戸時代末期、天保2年が発祥と言われ、生産本数は少なく、市場でも高値で取引されています・・・・・。」

「そ、そうか・・・結構・・・有名な酒なんだね・・・。」

 

知識貧困ボトムランナーの自分にちょっぴり悲しくなりつつも相槌を打つ。

 

「じゃあさっそく〜♪」

 

ニコニコ顔の千鶴さんが酒瓶の栓を開けると、持ってきた枡になみなみと注いだ。

・・・・・高い酒なのに・・・w

ゾクッ!?

一瞬得体の知れない不安感に襲われた。

なんだ・・・・よく分からないが・・・・ニュータイプ的に・・・・・何かがやばい!!!

兎に角、第6感が16連射並みに警鐘を叩き鳴らしだしたのだ。

千鶴さんが日本酒を枡に注ぎ終わった直後、

コップに入っていた麦茶をグッと一気に飲み干した梓が、今度は日本酒をコップに注ぎ始める。

それを見て千鶴さんがすかさず梓の手に強烈なしっぺを御見舞いした。

ベシッ!

 

「痛ッ!!な、なにすんだよ!!」

「梓・・・・貴方まだ未成年でしょう。」

 

冷ややかな視線を梓に向ける千鶴さん。

 

「う”・・・・い、いいじゃんか。ちょっとくらい。」

「ダーメ。お酒は二十歳からです。さ、耕一さんも御一緒に♪」

 

千鶴さんが空いていたグラスに酒を注いで俺に手渡す。

 

「え?お、俺は・・・お酒は余り・・・^^;」

「え〜?いいぢゃないですか。折角ですし、軽く♪」

 

遠慮する俺に千鶴さんはウリンウリンとぶりっ子しながら酒を勧めてきた。

・・・・・キモw

 

「いや・・・でも俺あんまり強くないんすよ。」

 

実際に俺は大学のゼミの呑み会でもほとんど酒を口にしなくて有名だった。

しかし・・・千鶴専務はそんな俺の態度がお気に召さないようだ。

そっと俺の首に腕を絡めると、耳元でそっと囁く。

 

「・・・・・・・私の注いだ酒が呑めないって言うんですか?虎羅。」

「の、呑みます!呑みます!!」

 

脅迫ですか・・・・。(;´_ゝ`)

仕方なく、1杯だけ呑んで許して貰おうと思いコップを手に持つと

対面に座っている梓が面白くなさそうな眼差しを向けている事に気付いた。

 

「あの・・・千鶴さん。梓にも1杯くらい呑ませてあげたらどうですか?」

「え〜?だって梓はまだ未成年ですよ?」

「まぁ、2人だけで呑むのも・・・何ですし。」

 

苦笑しながら俺が諭すと、千鶴さんもしぶしぶ承諾する。

 

「やった!耕一サンキュー♪」

 

喜んで梓もコップに注いでいざ3人で乾杯。

・・・・・・。

・・・・・・・・・これが全ての間違いだった。_| ̄|○

クーッと一気に半分くらい飲み干すと、俺はプハーと息をつく。

 

「すごいな〜これ。なんかとってもフルーティで日本酒っていうよりは名水飲んでるみたいだ!」

 

そう賞賛した俺が再び酒を口に運ぶと、ちらりと横目で変なものが見えた。

 

「ブーッ!!!」

 

隣に座っていた千鶴さんが、何故か上着を脱いでブラジャーだけになっていたのだ。

 

「ゲホッ!ゴホッ!・・・・ち、ち、ち、千鶴さんッ!?な、何をッ!!!」

「え?何って?・・・・子作りに決まってるじゃーない。」

「はぁーッ!?」

「そーれ!ハッスルハッスルーッ!」

 

呆気に取られる俺を尻目に、千鶴さんは更に酒を枡に注ぎ足すと、

グッと一気に飲み干し、ブラのホックに手をかけようとした。

 

「ワッ!ワーッ!!梓ッ!!止めてくれッ!!」

!?

「・・・・・・・・・・・。」 カァァァ

 

耳まで真っ赤に染めた梓は、俯いたまま喋ろうとしない。

 

「梓?」

「・・・・・・・。」 ビクッ!

 

俺の問いかけに一瞬肩を震わした後、やがておずおずと上目使いにゆっくり俺の方へと目線を上げる。

 

「ど、どうしたんだよ!?」

「・・・・・・はい・・・なんでしょうか?耕一さん。」

は?

「あ・・・梓さん・・・・?」 (汗

「・・・・・・・・・・・・。」 カァァァ

 

再び目線を下に落とす梓。少し間をおくと、やがて口を開く。

 

「・・・・・耕一さん。・・・・む、胸の大きい女性と・・・小さい女性・・・ど、どちらが好みですか?」

「はぁぁ!?」

 

意味不明というか突拍子もない梓の質問に、俺は目を白黒させながら返答に困っていると、

梓はそっと立ち上がってしずしずと俺の隣へとやって来て座った。

 

「ちょっ!何ボケかましてるんだよ!ホ、ホラッ!早く千鶴さんを止めてくれって!」

 

俺の頼みなど御構いなしで、ぎゅっと俺の手を掴むとやがて自分の胸押し当てる梓。

ぽにゅ♪

 

「のわーッ!?」

 

硬直する俺に梓は瞳をウルウルと潤ませながら殺し文句を一言・・・・。

 

「・・・・・・・・耕一さん。・・・・・私を・・・貰って下さい・・・・。」

「ぎゃーーーーす!!」

 

余りにも現実からかけ離れた出来事に思わず卒倒しそうになる。

ハッ!?

そ、そう言えば・・・・俺、この死舞が酒を呑んでるのって見た事ない・・・・・。

そもそもこの家に酒自体置いてあるのを見た事ない・・・・・。

もしかして・・・こいつら・・・。(カクカク

左側の視界の隅には今にもブラを外そうとする千鶴さんの姿がチラリと見える。

必死に目をそむける俺。

やばい・・・千鶴さんの俺を見つめる視線が、どんどん肉食動物のようになっていく。


・・・・・食われる。

「ねぇ〜ん。耕一さぁ〜ん。どうしてこっちを見てくれないの〜?」

「・・・・・いや・・・あの・・・・その・・・。」

 

悲しいかな、右手はすっかり梓の胸に吸い付いたまま離れず、

ブラジャー姿の千鶴さんをちらちらと横目で見てしまう俺。

これが・・・・若さか・・・・・。

ハッ!?いかんいかーんッ!!

 

「ちーちゃんの事。キライ?」 きゃるるん♪

「・・・・・・・・どちらかと言うとキライです。」 (ボソッ

「今なんっつった?汚羅ァッ!?」

ゴシャアッ!

千鶴さんがテーブルをグーで叩き割る!

 

「ビッグイシューッ!?」

「きゃ!」

 

衝撃でその場に伏せる梓。あ・・・・胸が・・・・・もう少しあのままが良かったな・・・・。(´_ゝ`)

・・・・あ、千鶴さんピンクのブラだったのか・・・・。

 

「・・・・調子のんな。洗濯板。」

 

ひゅぉぉぉぉぉぉぉ。

物凄い発言に思わず凍りつく。

・・・・今の発言、誰だ・・・。って、どう聞いても楓ちゃんの声だわな・・・・w

 

「か、楓ちゃ・・・って、楓ちゃんも呑んでるぅぅぅぅーーーッ!!!!」

 

ほんのりと頬を赤らめ&目の据わった楓ちゃんが

冷ややかな視線もといガンを千鶴さんにタレているのを見て泣きそうになる。

        イノキ★ボンバイエ対戦カード

               壁
---------------------------------------------
                    初音さん(放置中)
          ____         ○「ララァ・・・私を導いてくれ。」
千鶴大先生○ |テーブル| ○楓たん 
「殺すぞ汚羅?」  ̄ ̄ ̄ ̄   「・・・・かかってこいや。」
            ○○梓御前
           耕一   「・・・・・・耕一さん。」
         「ヒィィィッ!」
---------------------------------------------
             渡り廊下
---------------------------------------------
               庭

 

「か、楓ぇ・・・・わりゃあ御姉様に向かって何て事をぬかすんじゃ・・・・!」

「・・・・あぁ?うるせぇ貧乳。人の夫を誘惑すんな。メス豚!」

 

うわぁぁぁぁ!!

唯でさえ口の悪い死舞が、余計に悪くなってるぅぅぅ!(((;゚Д゚)))

楓ちゃんの辛辣なツッコミに、千鶴さんの髪の毛がワシャワシャと

ニュートンの万有引力を無視して踊り始める。

今にもファンネルの様に本体を離れて楓ちゃんを攻撃し始めそうだ。

 

「・・・・耕一さん、姉も妹も怖いですぅ・・・!」

 

そう言いながら俺の腕にしがみ付いて小さく震える梓。

おまいも充分怖い!

 

「千鶴さんも楓ちゃんも、いい加減にしないか。酔っ払って暴れたら御近所にもめいわ・・・

 

俺は立ち上がって千鶴さんをなだめようとすると、逆にドギツイ右ストレートが飛んできた!

 

「五月蝿いッ!ちーちゃんは酔ってなんかねーもん!そんな事言う耕一さんは・・・・修正してやる!」

 

ドバキャアッ!!

 

「貴様は俺のぉぉぉーーーッ!!」

 

謎の断末魔を上げながら吹っ飛んでいく俺・・・・。

こいつら超酒癖悪ィィーーーッ!!

バシャーン。

錐もみ状態で庭の池にダイヴ。

これで・・・やっと・・・・ララァの元へ逝ける・・・・・。

って、違うだろ!!(ザブァ!

慌てて池から這い上がると、既に楓ちゃんの手からは鎖が具現化され、

千鶴さんの背後には鬼ング・クリム損がユラユラと浮かび上がっていた。

 

「こ、こらーッ!こんなところで暴れたら家が潰れるッ!」

 

慌てて止めに入ろうとするが、アルコールによってイマンシペイションされた2人には詮無き事。

!?

突然目の前に夕飯の鍋が物凄い速度で吹っ飛んでくる。

 

「すわッ!?」

 

必死にマトリックスばりの体勢でそれを避ける俺。

 

「楓ぇ・・・・おめぇは少々・・・勉強に偏りすぎているようだ。」

「・・・・たまたま一番先に生まれたからって・・・すぐ年上面しやがって・・・・うざい・・・・逝け。」

 

うばっしゃあああああ

 

空爆が始まってしまった・・・・。

 

「耕一さん、怖いです・・・!」

 

よよよと梓が俺の胸元に飛び込んできて、ぎゅ〜♪と俺を抱きしめる。

 

「うへwww勘弁してくれ!」

 

瞬く間に破壊される柏木家。

障子や硝子、酷い場合は屋根を鎖や拳?が突き破っていく。

そんな状況を庭で呆然と眺める俺。

すりつけられる梓の胸の感触に酔いしれながら、最早打つ手なしと諦めに入る。

ピンポーン♪

ゲッ!?誰か来たッ!

もしかしたらこの騒音を聞きつけて御近所の人が来てしまったのかもしれない。

これで警察なんて呼ばれたら後々俺が厄介な目に合ってしまうではないか。

 

「梓、ちょッ!ちょっと離れてくれよ!」

「いやー!1人にしないで下さい!」

 

慌てて梓を引っぺがそうとするが、梓は俺から離れまいと必死に力を込めてくる。

ってか、鬼の手が痛いんだッつーの!!!!

梓の掴む俺の二の腕がミシミシと嫌な音を立て始める。

きゃー!wパワージューサーッ!!

 

「ごめんください。社長・・・じゃなかった。ちーちゃん。いるかい?」

 

玄関口の方から鶴来屋の専務、足立さんの声が聞こえた。

 

「あ、足立さん!?」

 

足立さんなら幼い頃から死舞を知ってるから何とかしてくれるかもしれない!

天の助けと是幸いに、俺は梓をひょいと肩に担いで玄関へダッシュ!

 

「あぁ・・・・耕一さん・・・・駆け落ちですね。」 ポッ

こいつ(梓)も、もうダメぽ・・・(´_ゝ`)

「あ、あ、足立さんッ!」

 

玄関に佇んでいた足立さんを目にし、俺は半泣きになりながら滑り込むように駆け寄った。

 

「おや、耕一君じゃないか。来てたんだね。」

 

風呂敷に包まれた手荷物を持って足立さんがにっこりと微笑んだ。

 

「先程、旅行から帰ってきたもので・・・御土産を

「足立さん!助けてぇッ!!」

「ど、どうしたんだね?そんな死にそうな顔して・・・。」

「じ、実は・・・・

「う”るぁッ!ぶっ殺すぞッ!引き篭もりィィッ!!!!」

「・・・・武装錬金ッ!!」

どんがらがしゃーんッ!

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

「あん・・・耕一さん・・・早く私を食べてくださいぃ〜。」 ポッ

 

足立さんは神妙な面持ちになると、カタカタと小刻みに震えた手でポケットからハンカチを取り出し、

額に滲んだ汗を拭い取る・・・・。

そして、軽く咳払いした後、口を開いた。

 

「・・・・・酒を呑ませたのかね?」 (汗

「いや、俺が呑ませたんじゃないんすよ・・・勝手にアイツらが・・・。」

ポフッ。

「北海道の土産だ。あと、妻からの言伝でよろしくとw」

 

サッと俺に手荷物を手渡すと、じりじりとムーンウォークのように後退していく足立専務。

 

「ちょ、ちょっと!」

「じゃあ、そう言う事で。」

 

ガララッ!

ピシャッ!

扉の前までつくと、後はとんでもない速さでその場を走り去って行った。

 

「あぁ〜!に、逃げた〜!!」 Σ(゚Д゚;)

 

ガックリと項垂れながら、べったりと引っ付く梓を引きずって居間へと戻ると、

既にそこは一年戦争の舞台と化していた・・・・。

ビグザム(千鶴さん)とジオング(楓ちゃん)の容赦ない火力で居間はメタクタ。

壊れた屋根から差し込む月光が、何とも幻想的でアドベントチルドレン。

 

「・・・・お前の分まで生きていこう・・・・そう決めたんだけどな。」

 

と、気付けばそんな言葉をボソリと呟いていた。

ドギャーンッ!!

!?

凄い異音と共に、壁を突き抜けて楓ちゃんが吹っ飛んできた。

 

「か、楓ちゃ〜ん!」

「・・・・・・・痛ッ・・・馬鹿力が。」

「名優だな。楓。」

 

ツカツカと千鶴さんが鬼ング・クリム損を揺らめかせながら、

隣の部屋から空いた穴を潜ってこちらへと向かってくる。

楓ちゃんはヨロヨロと立ち上がると、再び千鶴さんを睨み付ける。

ジャキンッ!ジャキーンッ!

千手観音のように背中から得体の知れない金属の武器を何本も生やす?楓ちゃん。

・・・・・・・また変な能力を身に付けてる。。。

このまま放っておくと、本気で殺し合いに発展しそうだ。

酒の席の無礼講では笑えなくなる。いや、俺はもう笑えないがw

 

「ちょっと千鶴さん!楓ちゃん!止めないか!」

「耕一さん。」

 

ジロリと千鶴さんが俺に舐めるような視線を向ける。

 

「は・・・はひ。」

「この際、楓にハッキリと思い知らせてあげてくださいな。耕一さんは私と楓、結婚するならどっちですか?」

「は??」

「・・・・千鶴・・・その質問、ナイス。」

 

俺は唐突な質問に絶句。背中にヒヤッとしたものが流れた。

 

「い、いや・・・いきなりそんな事聞かれても俺は・・・。」

 

『千鶴さん』と答えたらバルキリースカート?に臓物をブチ撒けられそうだし、

『楓ちゃん』と答えたら鬼ング・クリム損で、絶命するまで叩きのめされそうだし、

ましてや『どっちも嫌い』だなんて答えた日にはこの体をオシャカにされかねない。

 

「どっちなんですか?答えてん♪(勿論私だよな、虎羅?)」 にっこり

「・・・・・・・ダーリン。・・・・ファイナルアンサー。」

「りょ、両方とも好きでふwww」

「「遊びでやってんじゃないんだよッ!!!!」」

ドゴォッ!!!

千鶴さんの拳が俺の左頬スレスレをかすめて背後の壁を突き破る。

楓ちゃんのバルキリースカート?が右頬スレスレをかすめて背後の壁を突き破る。

 

「スーパーフリーッ!?」

 

襲い来る千鶴サンマジックの恐怖で失禁しそうになる。

 

「あ、梓ぁ〜!助けちくり〜!」

 

そう叫んでさっきまで傍にいたはずの梓を呼ぶが、

梓は空爆の巻き添えにあったのか、畳に伏せてグッタリしている。

ったくこいつらはいつもいつも・・・!

 

「2人ともッ・・・・!
「・・・・・いい加減にして下さい・・・!」


!?

俺が怒鳴りかけてたところに、突然別の人間の怒声が響き渡る。

ビクゥッ!

それを聞いた途端、千鶴さんも楓ちゃんも血相を変えて硬直する。

2人がぎこちなく後ろに振り返ると、背後には腕組して怒った表情を浮かべる初音ちゃんがいた。

 

「リ、リネット・・・・。」

「・・・・あわわ。」

 

千鶴さんと楓ちゃんの態度が急変し、何かに怯えているようだ。

 

「え?あれ?は、初音ちゃん・・・だよね?・・・・ん!?」

 

違うッ!初音ちゃんじゃない!

初音ちゃんには違いないが、彼女とは違う人格である事を、何故か俺は本能的に悟った。

いつもよりも大人びた仕草、そして凛とした声で初音ちゃんは2人を諭し始める。

 

「姉さん達・・・・・・いつまで経っても変わりませんね。」

 

溜息をついた後、初音ちゃんは再び2人を睨みつける。

 

「いつもいつもいつも・・・周りの事を考えずに無茶苦茶ばかり・・・。私の苦労も少しは考えて下さい!」

「あぅ!だ、だって・・・リネット!エディフェルが姉である私に対して・・・!」

「・・・・リズエルが悪いのよ・・・・彼女の悪い癖、我慢出来なくて・・・・。」

 

おどおどとする2人も、自分が何を言っているのか分からず困惑する。

 

「あれ?私・・・一体何を喋って・・・・

「・・・・・ごめん。リネット・・・・ちょっと大人げなかった・・・・

 

そう言い残してすぐ2人ともふぅと気を失って畳に倒れこんだ。

 

「お、おい!2人ともどうしたんだ!?」

 

慌てて駆け寄る俺に初音ちゃんが近寄ると、深々と頭を下げる。

 

「・・・・姉達がいつも御迷惑を御掛けし、申し訳御座いません。」

「き、君は一体・・・・!?」

 

ぎゅっ。

いきなり俺を抱きしめると、初音ちゃんは耳元で囁く。

 

「・・・・さようなら次郎衛門様・・・・・。」

「!?」

 

は?誰それ?www

そう言い残すと、初音ちゃんも急に体から力が抜け俺に倒れこんできた。

『い〜しや〜〜きいも〜〜〜♪』

静まり返った柏木家。遠くの方で焼き芋屋の宣伝が聞こえてくる・・・。

しばらく呆然と部屋を眺めた後、ボリボリと頭をかいて溜息をつく。

 

「・・・・さて、どうしよう・・・・。」

 

ボロボロに欠損した壁、もはや原型を留めていない障子や襖。

雨でないのが不幸中の幸いか、ぼっかり穴のあいた天井を見上げていると、

 

「・・・ん、んー・・・。」

 

初音ちゃんの口から吐息が漏れ、やがて意識が戻りゆっくりと目を開いた。

 

「やあ・・・初音ちゃん。」

「あれ・・・?耕一お兄ちゃん・・・・・私・・・あれあれ?」

 

目をパチクリさせた後、突然思い出したかのように怒り始める初音ちゃん。

 

「あーそうだ!楓の野郎ォォ!あんにゃろ!思いっきりしばきやがって〜!」

「・・・・・・・^^;」

 

ガバリと起き上がると周囲を見回して声を荒げた。

 

ゴルァ!楓ぇー!何処じゃオラー!って・・・・・な、なんじゃこりゃぁぁぁーーーーッ!!!!

 

荒廃した家を見て絶叫する初音ちゃん。まぁ・・・そりゃ驚くわな・・・・・w

 

「うぅ・・・・ん・・・うるっさいわねー・・・初音。ちーちゃん怒るよ〜・・・?」

「・・・・初音・・・五月蝿い。」

 

初音ちゃんの叫びに連動して千鶴さん達をムクリと起き上がると、

家の惨状を目の当たりにして硬直した。

 

「キャーーーッ!!ちょっと何なのよこれぇーーッ!?」

「・・・・・・・・・・。」

 

いや、あんたらが壊したんですがw

千鶴さんが発狂しそうな勢いでそこらじゅうを見回り、

破損した場所をハケーンしてはプラトーンのようなポーズをとる。

楓ちゃんと初音ちゃんは、そんな姉の近くで御互いガンのくれあい飛ばしあい。

 

「あ・・・そう言えば梓!」

 

俺は奥の方で倒れている梓を抱き起こすと、ぺしぺしと頬を叩いた。

 

「おい?梓?生きてるか?」

「・・・う。うーん・・・・。」

「しっかりしろ?正気の戻ったか?」

「・・・耕一・・・・。」

「おう。良かった・・・元に戻ったみたいだな。」

「・・・・・気持ち悪い。」

「あ?」

ゲロゲロゲロ〜〜〜

「ぎゃああああああ!」

 

・・・・・。

・・・・・・・・・・。

そして翌朝。

 

「うーん・・・うーん・・・・気持ち悪いw」

「馬鹿じゃない?酒弱いクセに呑んじゃってさ。世話する方の身にもなれっての!」

 

ベットで呻き声を上げる梓に初音ちゃんはアイスノンを叩きつけると溜息をつく。

そこへコンコンと部屋の扉をノックして、千鶴さんがひょっこりと顔を覗かせた。

 

「梓まだダメっぽい?」

「てんでダメ。すっかり二日酔いだよ。」

「まったく・・・・困った子ね・・・。あ、初音。耕一さんは何処に出かけたか知ってる?」

「耕一お兄ちゃん?・・・うーんと、散歩に行くって言ってたよ?」

「そう・・・楓もいないんだけど。」

「楓姉ぇがフラッといなくなるのはいつもの事じゃんw」

「ま、そりゃそうだけど。」

 

チュンチュン・・・・。

俺は雨月山の麓にある雨月寺へと足を運んでいた。

子供の頃によくここら辺で遊んだ記憶があり、早朝の少し霞がかったここの風景が気に入っていたのだ。

 

「・・・・うーん。」

 

大きく背伸びをして寺の石段に腰掛けると、鳥のさえずりを聞いて心を和ませた。

 

「やっぱここはいつ来ても静かでいいや。ったく・・・昨夜は散々だったぜ。」

 

そんな事を愚痴りながら、清々しい空気を吸ってのほほんとしていると、

ふと雑木林の陰に見覚えのある姿を見かけた。

 

「・・・・・楓ちゃん?」

「・・・・あ。」

 

驚いて俺は立ち上がると、一輪の花を手に持った彼女の方へと歩み寄る。

 

「こんなところで何してんの?」

「・・・・・・ちょっと。」

「?」

「・・・・・・耕一さん。」

「ん?」

「・・・・・・折角ですし、ついてきて貰えませんか?」

 

よく分からないが楓ちゃんに頼まれて俺は彼女と共に寺の境内へと足を進める。

やがて彼女が入って行った先には、大きな木々に囲まれてひっそりと佇む墓があった。

 

「・・・これは・・・。」

「・・・・次郎衛門の墓です。」

「次郎衛門・・・・?・・・・あッ・・・思い出した。確か雨月山の鬼伝説に出てくる・・・・。」

「・・・・・・・。」 コクン

「そうか、実在の人物だったね。確か。」

 

楓ちゃんはゆっくりと墓の前にしゃがみこみ、持っていた花を添えてそっと手を合わせた。

・・・・チュンチュン。

俺は傍にあった大きな切り株に腰を下ろして、ふと疑問に思った事を聞いてみる。

 

「で、何で楓ちゃんがこの人の墓参りなんかしてるの?w」

「・・・・・・・・・・ひみつ。」

「あっそ・・・(´_ゝ`)」

 

しばらくして楓ちゃんが立ち上がると俺の隣へと座り、俺に体を預けてきた。

・・・・ぽふ。

 

「楓ちゃん・・・・?」

「・・・・しばらく、このままでいさせて下さい。」

「・・・・・・。」 ポリポリ

 

少し肌寒く湿った空気が何とも心地良い。

俺は気恥ずかしくて頭をかきながら苦笑する。

・・・・ま、いいか。

「静かで・・・いい朝だな・・・オイ。」

!?

慌てて後ろを振り向くと狛犬に腰を下ろし、足を組みながらこっちを睨んでいる千鶴大先生のお姿ぐぁ!

 

「ひぃッ!ち、千鶴さん!!」

「朝っぱらから、見せ付けてくれますのぉ虎羅?」

 

きゃー!w

 

「―!耕一お兄ちゃん?」

「うぅ・・・初音・・・・水頂戴・・・・。」

 

梓の傍で漫画を読んでいた初音ちゃんが、ふと窓の外を眺めて物思いにふけった。

 

「気のせい・・・・だね。・・・・でも・・・・。」

 

そう呟くと漫画を閉じ、首にぶらさげていた宝石をギュと握りしめて頬を染めた。

 

「あれって・・・夢だよね。うん・・・。」

「今日と言う今日は・・・・!一緒に死んでやるぅぅーッ!!!」 殺しません!死ぬまではぁ!!

「ぎゃあああ!無理心中かYOッ!!!」

 

包丁を片手に狂おしいまでに襲い掛かる千鶴先生。

朝の雨月山に、俺の悲鳴が響き渡ったのは言うまでもなひ。



鬼兵REVOLUTION  完ッ!