愛と幻想のふぁしずむ
カルラ、その愛ゆえに
―常春の国 トゥスクル―
ちゅちゅん・・・ちゅん。
「ふぁ〜あ・・・・。」
私は寝床に横になったまま、大きなあくびをかく。
やれやれ・・・昨夜も遅くまで政事をやっていた
もとい、やらされていたのでまだ眠い。
・・・・・ん?
やけに今日は布団が温かい・・・と言うか、
・・・・・何か私の右側に明らかに人型の膨らみが・・・・。
・・・・・・・だ、誰だ!?
咄嗟的に掛布団をひっぺがす。
すると・・・・そこには一糸纏わぬカルラの御姿が!?
「アヒャッ!?」
「・・・・う・・・ん。」
ようやくお目覚めになったカルラがまだ呆けた顔で
私の顔を見つめる。
「・・・・あら、あるじ様。お目覚め?」
そう言うとカルラはすっぽんぽんのまま私の目の前で立ち上がる。
「ハァァァーーー!?神々しい御姿ぁぁぁ〜〜!?」
寝起きからの強烈なビジュアルショックで私の愚息(ムティカパ砲)は
既にウィツァルネミテアの高みへと・・・・。
「カ、カ、カ、カルラ・・・こ、ここで・・・なんばしょっと!?」
私が問うとカルラは一瞬キョトンとした後、
イヤァ〜な笑みを浮かべて
「何をって・・・・嫌だわ・・・あるじ様。
ナニに決まってるじゃないですか♪」 (ぽっ)
「へっ!?」
「もう、昨夜のあるじ様ったら・・・とってもゴイス〜でしたわ♪」
と言いながら突然私の懐にしなだれてくるカルラ。
「な、な、な!?ちょ、ちょっと待ってくれ!!私は・・・そんな
・・・・ハッ!?
そ、そう言えば昨夜の記憶が・・・全く無い。 (汗)
確かカルラが夜遅く私の寝室に酒を持ってきて・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・お、思い出せないでおじゃる〜!!
『ハクオロさぁ〜ん?』
ハッ!?
突如、入口の方からエルルゥ(自称、正妻)の声が聞こえて来る・・・・。
『ハクオロさぁ〜ん、そろそろ朝食ですよ〜?』
い、嫌ぁぁーーーーッ!!
こ、こんな状況を見られたらエルンガァ(カンチョウ)100発じゃ
済まされねぇぇーー!!
「カ、カルラッ!すぐに服をッ!!」
「う〜ん♪」 ゴロゴロ
カルラは私から一向に離れない。
『ハクオロさん?入りますよ?』
「ちょ、ちょっと待っておくんなましッ!!」
シャァァ〜〜〜♪←簾を開ける音
うぎゃぁ!?
「もうハクオロさん、みんな待って・・・・
寝室に入ってきたエルルゥは私達の姿を見ると
目を真ん丸にしたまま硬直する・・・・。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「さぁ、あるじ様♪・・・・もう1ラウンド♪」 ぎゅ♪
ユカウラ
・・・・・・・・・・もう一度、あの子守唄を謡ってくれ・・・・。
「ハ、ハ、ハ・・・ハクオロさんッ!!」
瞬く間にエルルゥの顔が凄まじい形相に変貌する!
「ひ、ひぃ!?ムティカパ様ッ!?」
「何してるんですかーーッ!!」
ドバキャッ!!
エルルゥのコークスクリューパンチが私の顔面に炸裂した。
「死んだでおじゃるッ!!」
錐もみ状態で吹っ飛ぶ自分。
ベシャ。
「あががが!?あ、顎が・・・顎が!?」
ガクガクと振るえる私に更にエルルゥは追い撃ち。
「不潔ッ!!鬼畜ッ!!このジゴロッ!!」
ドコッ!ドガッ!ゲシッ!
「ま、待ってくらはい!!麿は・・・麿は無実でおじゃる!!」
必死に無実を訴える自分を尻目に、なんとカルラが信じられない一言を!
「ひ、酷いわ!あるじ様・・・!昨夜はあんなに激しく御寵愛を・・・!」
「ッ!?お、お前は私に何ぞ恨みでもあるのくぁー!!」
・・・・ハッ!?
ビキッ!ビキッ!
エルルゥ(ムティカパ様)が怒りで身を震わせている・・・・。
「あ、あの・・・エルルゥ様?」
「ハ、ハクオロさん・・・・・私は一体・・・・・
「ひっ!?」
「貴方の何なんですかぁーーーッ!!!」
どぐわしゃ!
「いい国作ろうトゥスクル幕府!?」
私はエルルゥにシバキ上げられ、藁葺き屋根を突き破って
遥か天空へと昇天・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あん?兄者・・・・その怪我はどうしたんだ?」 もぐもぐ
「・・・・・聞くな。」
山盛りの飯を頬張りながらオボロ(舎弟)が不思議そうに訊ねてくる。
「聖上の事です。どうせエルルゥ殿にシバキ上げられたんでしょう。」
侍大将のベナウィ(イケメン)が御新香をかじりながら
冷ややかな視線を向けてくる。
・・・・う・・・鋭い・・・。
「ハハハッ!兄者、痴話喧嘩もほどほどにしと・・・はぶしッ!?」
膨れっ面のエルルゥがしゃもじをオボロの顔面に叩きつけた・・・。 (汗)
私は体中痛くて飯なぞ食べる気にもならない。
「・・・ったく私は、皇(オゥルォ)なんだぞ・・・少しは労わりっつーものを・・・・。」
ぶつぶつと私が一人愚痴っていると
「・・・・何か言いましたか?」 ジロリッ
「い、いえ。何も御座いませぬ!!」
はぁ・・・今日はエルルゥの御機嫌とりで終わりそうだな・・・・とほほ。
飯も食わずにトボトボと内殿の方へ歩いていると
事の元凶、カルラが酒瓶片手にヘコヘコやって来た。
・・・クッ!もとはといえばこやつが!
「あら、あるじ様。もう朝食は済みましたの?」
「朝食も何も、体中痛くて食べる気にもならんわ。」
「あらあら、それはおいたわしい。」
「・・・朝っぱらから呑んでると体に悪いぞ。」
「うふふ・・・これが私の朝食ですわ♪」
そう言うとゴキュゴキュと酒を呑むカルラ・・・・。
・・・・・・・一体何万ガロン呑んだら気が済むのだろうか?
「あ、ねぇんあるじ様ぁ?」
急に猫なで声を出してカルラが肩によりそってくる。
「何だ。私はこれから朝の政事があるので急いでるんだ。」
「もう、イ・ケ・ズゥ〜。」
「・・・・・・。」
「今日は、午後からお暇なんですってね?」
「そんな事は無い、午後は一杯一杯だ。」
「嘘おっしゃい。ベナウィに聞いたら何も予定が無いっておっしゃってたわよ?」
「・・・・・・。」
「ねぇねぇ〜、お暇なんでしょ?」
「悪いが、マロは今日一日プリンを食べるでおじゃる。」
ドゴッ!
「げぼあッ!?」
私の肝臓にカルラの激シイ、レバーブローが炸裂。
「お暇なんでしょぉぉ?」 ゴゴゴゴゴ
「は、はひ。・・・ぽっくんとっても暇ぶぁい。」 ガクガク
屁と涙と鼻水を垂らしながら、カルラに引き摺られる私。
「聖上!」
ドタドタドタ・・・・。
そこへ良いタイミングでトウカ(ちょっと頭がたりない娘)がやって来た。
「うむ、おはようトウカ。」
「おはようございます!聖上。」
「あら?トウカさん、何の御用かしら?今あるじ様は忙しくってよ。」
面白くなさそうな顔でカルラが横槍を入れる。
「・・・いや、全く忙しくな・・・・
ドグォッ!
「へぶんがっ!?」
「・・・・?聖上、如何なされましたか?」
「い・・・いや・・・なんにもあらせんて・・・。」 ヒクヒク
「はぁ・・・?しかし、顔色が悪う御座いますが・・・?」
「そんな事は・・・ないぞ?・・・して、どうした?」
「は!そうで御座いました!じ、実は聖上に伺いたい事が・・・・。」
「うん?どうしたんだ?」
するとトウカは頬を赤らませ、ぼそりと一言・・・・。
「・・・せ、聖上は・・・今日は・・・お暇で御座いましょうか?」
「へ?」
「・・・そ、その・・・・もし・・・よろしければ某と・・・。」
そこに突然カルラが割って入ってきた。
「おーほほほ!残念ですわねトウカさん。
あるじ様は今日は政事で御忙しい身で御座いますの。」
「ふぁ?」
「え・・・?し、しかし某はベナウィ殿から今日は聖上の政事は午前中だけだと・・・
「予定が変りましてよ!ね?あるじ様?」
カルラがトウカには見えない角度から物凄い視線を送ってくる。
(・・・・YESと言わなければ、捻り潰す)と言わんばかりだ・・・。
「・・・・・・・ま、まろは忙しいで・・・おじゃる。」
「・・・・・・・・・左様で・・・御座いますか。」
トウカは寂しそうな顔をしてしょんぼりしている。
・・・・・あぁ・・・・何だか可愛いぞ?魂血苦笑!
「いや、あの?・・・トウカ?何か用事が・・・
「せ、聖上がお忙しいと言うのに・・・大変失礼致しました!!」
がっかりしたような顔をしながらトウカが踵を返して去っていく・・・・。
「ト、トウカ!?待っ・・・グエッ!?」
トウカを追いかけようとした矢先、カルラに鵜飼の鵜のように
首をひっつかまえられる。
「あるじ様?何をするおつもりであらせて?」
「は、離してたもろ〜!ま、まろは・・・まろはトウカを抱きしめてあげたいのじゃ!」
「ふ〜ん。・・・・・・今の台詞、エルルゥに言いつけてさしあげても良くってよ?」
「はわわ!?そ、それは困るでおじゃる!!」
「じゃあ追いかけるのはやめて下さいな。漢は諦めが肝心ですわよ♪」
「・・・・・超しょんぼり。」
どうやら今日は観念してカルラの我侭に付き合う他無さそうだな。
「分かった分かった。では一体何の用だ?」
私は渋々そう訊ねると、
「ふふふ・・・・今日は私と買い物に付き合って下さらないかしら?」
カルラは微笑みながらそう言った。
「買い物ぉ?」
「えぇ、ちょっと欲しいものがあるんです。」
「酒以外に何が欲しいと言うのだ?そもそもカルラの生活サイクルは
酒⇒食う⇒寝る⇒酒⇒食う⇒寝る
のエンドレスレインではないのか?」
「・・・・・あるじ様、早死にしたいの?」
「・・・・・・いえ。」
・・・・・・・・・・・。
仕方なく、私は午前の政事を早々に切り上げ、カルラの部屋に向かうのだった。
(つづく)