愛と幻想のふぁしずむ
カルラ、その愛ゆえに ―その4―
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
余程全力疾走で走ってきたのだろうか?
ジャパンアクションクラブ
肩で息をしながらも、その構えには一分の隙も無いトウカ。(JAC所属)
そして向い合うは、美しい肢体から萌えひろがる色香の中に
ほのかに殺気を漂わせる、カルラ。(ナクァン・カルラゥアツゥレイ・ジム所属)
その選手2人の傍らで横たわっている恥部も隙も丸出しの私。(能を広める会所属)
「・・・・トウカ、突然何を血迷ったのかしら?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・カルラッ!よくも某を謀ってくれたなッ!」
「何をおっしゃるってるのか分からないですわ。」
「き、貴様・・・ぜぇぜぇ・・・某に聖上は政事で忙しいなどと嘘を申したであろう!
・・・・あまつさえ・・・ぜぇぜぇ・・・・聖上を誘惑して・・・・
「・・・?見ての通りですわ。あるじ様は政事で忙しいじゃない。」
「キーーーッ!たった今その破廉恥な宿場に入ろうとしてたクセに!」
「おほほほ。何の事かしら?私にはさっぱり・・・・
飽くまでシラを切るカルラに目の前に向かって、
痺れを切らしたトウカは懐から一冊の書物を取り出した。
「貴様、これを見てもまだそのようなシラを切るつもりか?」
その書物は・・・・オボロがカルラの部屋から持ち出した例の「愛の家計簿」である。
「・・・・・・・!」
カルラの表情から余裕の笑みが消え去った・・・・と同時に・・・・
「トウカ・・・・それ、何処から持ってきたのかしら?」
先ほどとは打って変わり、冷たく重い口調。
「ふん。知った事か!なぁ〜にが愛の家計簿だ?こんな哀の火刑母など晒しに・・・
ビュンッ!
突如物凄い速度で腰を屈めたカルラが襲い掛かる!
「返しなさいッ!!」
「断る!」
サッ
冷静にカルラの手刀を避けると、再び書物を懐にしまう。
「さすがのそなたも、その服装ではいつもの素早さでは動けまい。」
「クッ・・・トウカさん・・?貴女、やっていい事と悪い事とがあるのよ?」
「だまれ!・・・せ、聖上を独り占めしようとしたその罪重いッ!
この書物は重要な証拠として、皇都大弐啓示板に提出してやるぅ!」
そのトウカの一言でカルラが動揺する。
「だ、大弐啓示板ですってッ!?」
―教えて!空弥せんせい―
クーヤ 「よきに計らえ。余がクンネカムン皇、アムルリネウルカ・ク−ヤぞ。」
サクヤ 「ク、クーヤさま・・・・その態度は御止めになった方が・・・・。」
クーヤ 「何故じゃ?余がものを教える方ぞ?当然ではないのか・・・?」
サクヤ 「だ、駄目ですよぉ〜!読者の皆さんの方が、この世界では・・・・。」
クーヤ 「・・・・解せぬぞ、サクヤ。」 ぷぅ!
サクヤ 「あぅぅ・・・申し訳ありませぇぇん・・・。」
クーヤ 「まぁ・・・良い。分かったからそんな顔をするでない。」
サクヤ 「はい♪」
クーヤ 「では、ふぁしずむ記念すべき第一回のテーマは・・・・皇都大弐啓示板である。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
サクヤ 「・・・・・?・・・あの、クーヤ様?」
クーヤ 「・・・・何故余が他国の内政的な事について解説せねばならぬのだ?」 ぷぅ!
サクヤ 「ク、クーヤさまぁ〜!変なところでヘソを曲げないで下さいよぉ〜!」
クーヤ 「む〜〜〜、ハクオロの頼みであるし、致し方あるまいか・・・。
よいか、皇都大弐啓示板とは、通称「ニチヤンネル」と呼ばれている
巨大な国民通達所みたいなところだ。ハクオロの意見はもちろん
様々な民衆の意見などが日々交わされている所だな。」
サクヤ 「はい♪他にも大壱、大参啓示板なども御座います。」
クーヤ 「その中でも大弐啓示板は、ごしっぷ的な要素が多く、すぐに国民に知れ渡るらしいな。」
サクヤ 「流石のカルラさんでも、そんな恥ずかしめを受けたらたまりませんね・・・・。」
クーヤ 「以上、説明終わりだ。」
サクヤ 「お疲れ様です♪」
クーヤ 「して、サクヤ。」
サクヤ 「はい!」
クーヤ 「余の出番はまだ来ぬのか?」
サクヤ 「・・・・・あ、あははは。」
―授業終了。―
「ふ、ふふふふ・・・・如何致すカルラ?」
「ほ・・・ほほほ、阿呆の割には無い知恵絞ったじゃないの・・・・トウカさん?」 わなわな
ますます険悪な雰囲気の中、ようやく私が意識を取り戻した。
「うぅ・・・・う〜ん・・・ゲホッ?」
「せ、聖上ッ!」
我に返ったトウカが慌ててこちらに駆け寄る。
「ト、トウカか?・・・あれ・・・私は一体・・・?」
「聖上、御無事で何よりです。」
「ちょっと、貴女、何よその御無事ってのは・・・。」
「下がれッ下郎!」 チャキ
近づいてくるカルラに向かってトウカは刀の鍔に手をかける。
「おわっ!?ちょ!トウカ、どうしたんだ一体?」
「あら・・・あるじ様も分かってらっしゃるくせに・・・。」
カルラが淋しげな微笑を浮かべる。
「妬いているのですわ。・・・そこのエヴェンクルガの女は。」
「・・・・・・・。」
「ななっ!?」 かぁぁぁ〜〜〜!
トウカの顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
・・・・・まったく以って愛いヤツよ・・・オッホッホッホ♪
「そうか・・・すまなかったな、トウカ。」
「せ、せせ、聖上まで何をおっしゃられますか!
そ、某は聖上の御身を日々御守りする為に・・・・。」 しどろもどろ
いや、さっき思いっきり蹴ってこなかったかしら?(汗)
・・・・・ずり・・・・・。
・・・・・・・・ずり・・・。
「な、何だこの音は・・・って、おわッ!?」
トウカが下手糞な笑顔で何とか誤魔化そうとしている間に
なんとカルラがどこからともなく巨大な石柱を引きずって来ていた。
その異様な音に気付き、振向いた私とトウカの表情が強張る。
「なぁ?トウカ・・・カルラに何かしたのか?」
「はい。先程から少しばかり取り混んでおりまして・・・・。」
ズゥン!
自分の背丈ほどある石柱を難なくその場に突き立てると、
カルラは嫌な笑みを浮かべ口を開いた。
「で、トウカさん・・・・さっきの御話だけど?」
「・・・・あの書物は返さぬぞ?」
・・・し〜〜ん。
・・・・うむ。まろにはサッパリ分からぬ。オッホッホッホ♪(汗)
「・・・・殺しますわよ?」 ゴゴゴゴゴ
「面白い、某もここらへんで白黒つけようではないかと考えていたぞ。」 ザザザザザ
ひぃっ!?こ、こんなところにいたらまろが死んでしまうでおじゃる!!
ヒュゥゥゥゥ
ドスゥッ!!
その時、空から1本の大きな戦槍が飛んできて、地面に突き刺さった。
・・・・この槍は・・・・。
「双方!静まれ!!聖上の御前であらせられるぞ!」
「・・・・・グルルルル。」
「・・・・・シャガガガ。」
ようやくベナウィがこの場へ辿り着いたようだ。
ウォプタル(騎竜)に跨ったベナウィの後には猛ダッシュで追いかけて来たのだろうか?
死にそうな顔のオボロと・・・・そしてオボロにおんぶしてもらっているエルルゥがいた。 (汗)
「聖上・・・・こんな街中で何をしておられますか・・・?」
ベナウィが冷たい視線を放ちながら問い詰めてくる。
まずい・・・明らかに怒っている・・・・。
「いやぁ・・・そのぉ・・・なんでしゅか?
皇として、民衆の生活の営みをだなぁ・・・
「皇なら、皇らしく行動を自重して下さい・・・・!」 ギンッ!
「は・・・はひ。」
「・・・・兄者。」
「いいですか?そもそも皇はもう少しこの国を支えていかなくてはならないという自覚をですね・・・・
「はひ・・・分かっておりますがな。」
「・・・兄者〜?」
「そこが歴史というものであり、真の政事の為には・・・」 クドクド
「だからすまんかったって・・・・堪忍したってやぁ・・・・。」
「ですから、民を思い、国を思い・・・・そういう心構えがあってこそ・・・」 クドクド
「グ〜〜、スピ〜〜〜〜♪」
「兄者ッ!!」
「五月蝿いですよッ!!オボロッ!今私が皇に話しているんです!!」
「・・・・ほにゃ?」 ウトウト
「いや、んな事言ったって、トウカとカルラが・・・・。」
何と私がベナウィにクドクド怒られている間に既に2人の戦いは始まってしまっていたらしい。
ドォォン!
キィィン!
「おぉぉぉぉぉ!!!」
「らぁぁぁぁぁ!!!」
そこら辺を駆け抜け、跳躍し、火花を散らし、剣舞を酔いしれ、猪鹿蝶、
酒を盗み、食い逃げし、家を壊し、誰彼を買い、何人か民衆を巻き込んでいた。
「ちょ、ちょっとトウカさんもカルラさんも止めてくださぁーいッ!!」
必死にエルルゥが後を追ってやめさせようとしているが、
あの2人にはまったく声が届いていない。
「・・・・・・・・・。」←ベナウィ
「・・・・・・・・・。」←私
「・・・・・・聖上、お任せします。」
「えぇッ!?わ、わちが止めるのぉぉ!?」
「もうああなってしまった以上、聖上以外に誰が止めれますか?」
「兄者ぁ・・・早くしないと死人が出るぞ?」
「・・・・・能。(No)」
「せ、聖上!」
「兄者ッ!」
「ま、まろはまだ死にたくないでおじゃる〜!!」
遠くの方からエルルゥの怒声が聞こえてきた。
『ハクオロさん!!早く止めて下さいッ!!』
あぅぅ・・・・・。
やれやれ・・・・仕方がないでおじゃる・・・・・。
ひょこひょこと2人の近くまで歩みよろうとするが・・・・
「あぁぁぁ!!」 ぶんっ!
「ハァァッ!!」 ビュン!
あっという間にその場から別の場へ戦いの場を移してしまうのだ。
そりゃぁ・・・あんな戦闘民族がガチンコ勝負したら
こんな狭い街道の1つの場所なんかに留まっていられまいて・・・。
2人の後をヘコヘコと追いかけては、また場所を移され
追いかけては場所を移され・・・・追いかけては・・・・・。
「はぁぁ〜〜〜。もうまろ、疲れたでおじゃる。」 ヘロヘロ〜
「ハクオロさん・・・・いい加減にしないと・・・本気で怒りますよ?」 にっこり
「申し訳御座いません、エルルゥ様。」 シャキーン!
あぁ・・・何だか最近のエルルゥは怖い・・・。
昔はあんなに可愛らしかったのになぁ・・・・・。
・・・・・・・・・・・ようやく2人の戦闘領域に侵入したのはいいが、
「あぁ・・・お二人とも、止めなされ。」
ドガァ!
キキンッ!
・・・・トウカとカルラ、全く無視。
「助さん!格さんッ!お止めなしゃれッ!!」
・・・・素無視。
・・・・まろは・・・本当に皇でおじゃるのか?
ムッ!?
「・・・・あッ!」 ズリッ
普段着慣れていないのが災いしたのか?
カルラが己の衣服で体勢を崩す。
そこへ・・・
「もらったッ!!」
トウカの容赦無い一撃が襲いかかった!
「・・・・しまっ!!」
キィィィィン!!
咄嗟の判断だった。
私はカルラを左腕で庇うように抱きかかえると、
鉄扇でトウカの打ち下ろしを側面から力一杯叩きつける事で
何とか刃の軌道を変える事に成功したのだった・・・・。
「せ、聖上・・・何故ッ!?」
「あ、あるじ様!?」
「双方・・・それまでだ・・・・。」
ビリビリと今でも右腕に衝撃が伝わってくる。
無茶をしたもんだ・・・女といえどもエヴェンクルガ族であるトウカの
必殺の太刀を捌こうなんて、そうそう出来るものではないのだからな・・・・。
・・・・・少しだけう●こが出てしもうた。
「あるじ様ぁ〜〜♪」 ぎゅぅぅぅ!
「ぬわッ!?」
後からカルラが飛びついてきた。
「やっぱり私が危険だと思って助けに来て下さいましたのね!?
嬉しいですわぁ〜♪」
するとトウカが怒声を上げる。
「き、貴様何を言うか!さっきはわざと躓いた振りをするから何かと思えば・・・!」
・・・え?わ、わざとだったの・・・・!?
「あら・・・トウカさん、嫉妬かしら?ふふふ・・・。
残念ね・・・あるじ様は貴女より、私の方が大事みたいですわよ?」
「ちょ、ちょっと待て、2人ともいい加減に・・・はぁっ!?」
気付けば・・・トウカたんの目に涙が溜まって・・・・。
「〜〜〜〜〜〜。」 ぷるぷる
「あ、あの・・・トウカたん?」
「せ、聖上は・・・やはりカルラ殿が・・・・。」
「いや・・・今のはね、危なかったでしょ?」 (汗)
「そ、某は・・・某は・・・・・。」
「お〜い?ちょっと聞いてるかなぁ?」
「聖上のぶわかぁッ!!」
どばきゃ!!
「My Merry Mayッ!?」
強烈な愛憎ぱんち炸裂で・・・おじゃる。
「わ〜〜〜〜ん!!」
そのまま何処かへ走り去ろうとするトウカ・・・。
「ひょ、ひょっとまひゅでおひゃる・・・・ッ!!」
ガクガク震える足で追いかけようと頑張る私。
そこへようやくベナウィ、オボロ、エルルゥがこちらへやって来た。
「ト、トウカ、どちらへ・・・?」
「ん?お前泣いてんの(ドスゥ!)←ボデーブロー・・・・ゲボアッ!?」
「ト、トウカさん!?」
「お、おまいら・・・とうくぁをとめひぇくれぇ〜!!」
ピタリ。
・・・・へ?止まった?
急にトウカは走るのを止め、しばらくその場の佇んでいたが・・・
「・・・・・・う!?」
突然顔色が土気色になったと思いきや
途端に口に手を添えて、どこかの店内に駆け込んでいった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」←ベナウィ
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」←オボロ
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」←エルルゥ
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」←カルラ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」 (滝汗)
・・・なんだ・・・?今の妙な行動は・・・・・??
やばいぞハクオロ?次回、修羅場必至ッ!?