愛と幻想のふぁしずむ

カルラ、その愛ゆえに ―その5―

 

 

ズドドドド!

真っ青な顔をしたトウカが物凄い勢いで

団子屋に駆け込んだ。

 

『ちょ、ちょっとお客さんッ!?』

 

「すま・・・ぬッ!厠を・・・貸して・・・!!」

 

バタンッ!

 

『う・・・・・〜〜〜〜〜。』 エレエレ〜

 

し〜〜〜〜ん。

 

一同 「・・・・・・・・・・・。」

 

みなただ呆然と突っ立っていたが、

すぐにカルラがツカツカと団子屋の中へと入っていく。

すると横で団子屋の主人が困り果てた様子で突っ掛かってきた。

 

『あ、あんた、あの酔っ払いの連れかい?

 こ、困るよぉ!うちは清潔モット・・・・

 

「退いてくださる?」

 

ドンッ!

 

『はぶしッ!?』

 

どんがらがしゃ〜ん。

 

団子屋の主人を非情にもつっぱねる無表情のカルラ。

彼女はトウカが入った厠の前に立つと、

トントン。と扉を叩く。

 

「・・・・・・・・トウカさん?」

 

トントン

 

『〜〜〜〜〜はぅぅぅ。』

 

「・・・・・・何をしていらっしゃるの?」

 

『・・・・・・・・・。』

 

「・・・・・・・もしかして、御気分でも悪いのかしら?」

 

『・・・・・・うぷ!』

 

微妙にカルラの肩が、わなわなと震えているのは気のせいだろうか? (汗)

・・・・・・・じゃぁ〜〜〜♪←水洗?

・・・バタン。

暫らくしてトウカが厠から出てきた。

妙に顔に陰りのあるトウカと、妙に顔が青ざめているカルラ。

両雄対面したまま、一歩も動かず・・・・。

しかし、射すような視線を向けるカルラとは対象に

トウカは、視線を下に向け俯き、

カルラが舐めるようにガンを飛ばすが、

ことごとく逃げるように目を合わせない。

 

「ジ〜〜〜〜〜〜。」

 

「・・・・・・。(滝汗)」

 

「トウカさん・・・・どうなさったのかしら?」

 

「べ、別に・・・そ、某は・・・少々気分が御悪くなっただけで御座います。」

 

言葉遣いがちくはぐなだけに、その動揺が見て取れる。

 

「・・・・・ふふ。」

 

突然カルラが鼻で笑い始めた。

 

「ト、トウカさんの事ですものね・・・・どうせ変なものでも

 拾い食いなさったんでしょう?」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「な、なんとか言ったらどうですのッ!?」 わなわな

 

「は・・・はは・・・そ、某も・・・そう思いますです・・・。」

 

先程からの2人の奇妙なやり取りに、他の者達は

『な、何なの?』と言った様な顔をしている。

・・・・・・・・・私1人を除いて・・・・・・・。

 

―ハクオロさんの頭の中―

「な、なんでしか!?今のアヤシさ爆発の行動は?

 まさか、そんな馬鹿な事は超ありえないよねぇ〜。

 でも、ありえないとは言い切れないなぁ。

 DAKARAだんだん気になる〜、気になる〜、気になる〜。

 まてよ、まさかね、まさかそんな事は無いでごわすよ。

 だってそりゃまぁトウカとは結構一緒にいる時間が長かったし

 別にこっちが望んだ訳じゃないんですよ!?

 いつもいつもトウカが勝手に聖上の命をお守りするのが

 わたがし・・・いや某の勤めで御座いますって言うから

 こちらも嫌とは言えないじゃないの。能(No)とか言ったら

 また某が無能だらどうとか言ってセプークしようとするんだから

 しょうがないじゃないか。でしょう?でしょう?

 んでセブンやイレブンどころか24時間365日ATMってな

 感じで風呂だろうが、メシだろうが、寝床だろうが

 見張られてちゃかなわんっちゅーのよ。ダメダコリャ〜。っての。

 んでもってちょっと頭が弱いってのが男にとっちゃポイント高いっちゅーか

 もうこいつぅ〜!ハニャ〜ン♪って感じになっちまんだべ。

 寝床で見張ってたクセにこっちが気が付いたらグーグー寝てる寝顔なんてのを

 見た晩にゃ「うぉぉ!夜の御世話もしてちょんまげー!!」ってな気になっちゃうでしょう!?

 んで勝手に起きて勝手に後悔して勝手に泣いて某が到らなくて申し訳御座いません。って

 メソメソされたら萌えるぜ、コンチクショー! 

 なんだかんだいってもいたいけなナオン(女)ってな訳でこっちがミーノ(呑み)してる時も

 傍にいる訳、んで暇だから彼女にも呑ませるじゃん? 

 するとまた大虎なんだよコイツが、聖上は某に魅力を感じませんか?とか

 いって誘ってくるの!だから その、なんだついつい悪い虫が出てきちゃって・・・・

 ちょっとえ〜い♪ってな感じであっちでワオ、こっちでワオ

 やっちゃったような気がせんでもないが、いや事実したんだけど・・・。

 男っつーのは美味しんぼなのよ、仕方ないじゃない!

 だけど、そんなのまろの思い違いでおじゃるよね?

 そうだよね、そんなのなった日にゃ骨を残らないくらいOverKillちゅーか、

 カルラなんて羅生門の鬼みたいに・・・ってカルラも怖いけど

 エルルゥに何て言い訳したら・・・っていうか、言い訳なんて不可能じゃん。あははは。」

 

・・・頼む、実は拾い食いしました。というオチで笑わせてくれ。(涙)

しばらくカルラのガンたれから逃げるようにうつむいていたトウカが頭を上げると、

ちらり。

私と視線が合う・・・・その途端。

 

「・・・・あ・・・。」 かぁぁぁああああ

 

・・・・耳まで真っ赤っか。

 

「・・・トウカさん、何?そのリアクションは・・・・。」 ビキッ!ビキィッ!!

 

ジ〜〜〜〜〜。

 

皆様の視線がウルトラバイオレット・シャワーの如く私に降り注ぐ・・・。

 

「んっ!?な・・・何だ・・・まろが何か?」 (汗)

 

カルラが何かを感じ取ったらしく・・・否、多分彼女はもう気付いているだろう。

 

「ト・・・トウカさん、貴方まさか・・・・

 

「いやぁ〜、マロはそろそろ帰ってぷりんを食べる時間でおじゃる。」

 

大声でみなの注意をひきつけようとして、苦し紛れの演技をかます私。

 

「これにて一件落着でおじゃる。さてぷりんを買って帰るで・・・

 

ゴキン。

 

「オJALッ!?」

 

何時の間にか背後に立っていたエルルゥが私の首を曲げてはいけない方向に・・・。

 

「ハクオロさん♪ちょっとここで待っていて下さいね♪」

 

とっても愛らしくて恐ろしいエルルゥたんが

なにやらいつも持ち歩いている袋から、熟れていない甘露樹の実を取り出した。

それを見てベナウィがハッと気付く。


「エルルゥ殿、それは・・・・。」

 

「はい。先程トウカさんとベナウィさんがいらっしゃった広間に転がっていました。

 知ってます?これってすごくすっぱいんですよぉ。」

 

「存じております・・・。」

 

「でも・・・・・・・・。」

 

何かを言いかけて、エルルゥは甘露樹の実を持ったまま

トウカの前に歩みより、それを彼女に差し出す。

 

「何ですの、その果物みたいなのは?」

 

「これは、甘露樹の実というとても甘い果物なんですが・・・・。

 その反面、熟れていないときは物凄くすっぱいんです。」

 

「ふぅん。何だか私みたいですわね♪」

 

カルラと2、3言葉を交わした後、エルルゥは真剣な表情でトウカに訊ねた。

 

「・・・・・・・ゴクッ!」

 

「トウカさん・・・・・・今、とてもこれが食べたいんじゃないですか?」

 

「べ、別にッ!?そ、某はそのようなすっぱいものは食べられませぬ!」

 

とは言うものの、目が泳ぎまくっているし、微妙に口から涎が・・・・。 (汗)

 

―ハクオロの頭の中―

「ま、まじっすかぁ〜!?そりゃないぜ!ベイベーッ!!

 い、いつだ!?いつの時だ!?

 あの時くぁ!?あの魚釣りの時かしら!?

 そう言えば、二人っきりで釣りいって結局釣れなくて

 どうしよう!?超しょんぼり〜。っていうかぁ〜、

 超やばくない〜?って、だってさ、

 あんだけハッタリかましててエルルゥに晩飯のおかず無いって言ったら

 オレの命が危ないとかなんとか言って苦笑しながら

 日が暮れるまでとりあえず頑張ってみようとかいっちゃってさ。

 若いね、オレも。んで女房・・じゃなかったトウカともう一度人生やりなおそうって

 感じで大物釣ろうか?って息巻いてたんだよ。

 で、そん時だよ。竿がビンビンにひいてさ。

 おぉ、これだよ。これがオレの求めていたヤツだよ。ってな具合に

 オレとトウカ、真剣に引いたね。するとね、出たんだよ。とんでもねぇビッグな魚が。

 もうあれもんのこれもんでバチバチよ。

 これで晩飯のおかずが出来て、ヨロシクよ。ってな訳で。

 そしたらトウカが傍にいないの。どこいったの?って探したらね、釣り上げた反動で

 川に落っこちてたのよ。しょうがねぇなぁって事で苦笑いしながらオレ、手を差し出したの。

 顔を赤らめながらトウカが申し訳御座いませぬ。って手を握ったの。

 ところがよ、オレも足滑らしちゃって、結局ふたりともドボンよ。

 もうね、2人とも大笑いよ。そしたらね、何だかいい雰囲気になっちゃうのよ不思議と。

 トウカはなんかトローンとしたような顔で目を閉じるし、オレはオレでこいつ可愛いな。

 ってな訳で、何だかんだ言ってもコイツが傍にいるとピーハツ(Happy)だなってね。」

 

(あわわわ・・・・ど、どうしよう!どうしよう!!) カクカク

カルラとエルルゥに囲まれ、観念の色が見え始めたトウカ・・・

非常にマズイで御座います。

 

「せ、聖上・・・・そ、某・・・某は・・・・・。」

 

トウカ・・・・誤魔化せ・・・・誤魔化して下さい。

今は・・・駄目で御座います。

後で・・後でゆっくり話し合いましょう。

 

「某・・・・できちゃいました。」 ぽっ

 

だから今言うなっちゅーのッ!! 

(血の涙)

 

ひゅぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜。

 

「さて・・・そろそろお米を研ぎに帰らなくては・・・・。」

 

ベナウィはウォプタルの手綱を握りなおす。

 

「ずっ、ずるいぞベナウィ!!」

 

「あ、兄者ーーーーッ!!」

 

オボロ、咆哮。

 

「お、落ち着け、オボロ!こ、こりは何かの間違いでおじゃる!!」

 

「ユズハは・・・ユズハはどうなるんだ!?

 兄者の・・・・兄者の大馬鹿野郎ぉ・・・・・。」

 

何故か号泣するオボロ。

 

「・・・・さて、んじゃまろもぷりんを食べに戻ると・・・

 

じゃり・・・・。

 

!?

 

目の前に、ムティカパを超える何かと化したエルルゥとカルラが立ちふさがる。

 

「はうあッ!?」

 

「・・・ハクオロさん・・・・。」

 

「・・・あるじ様・・・・・・。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!わ、私の話を聞いてく・・・

 

「だ・ま・れ♪」

 

「貴様に発言権は無い。」

 

ハァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜!?

 

チャ〜〜〜〜〜チャ〜〜〜〜〜〜チャ〜〜〜〜〜〜♪

チャッチャ♪チャッチャ♪チャチャッ♪

BGM 「戦鼓 〜イクサマヌイ〜」

 

 

 

 



©Leaf「うたわれるもの」 転載しちゃ駄目です。

 

「ま・・・まろはジク(塾)があるので・・・・。」

 

「あるじ様、逃げられるとお思い?」

 

ムゥ・・・。退路は絶たれ最早籠の中の鳥。

 

「あるじ様・・・・・こればかりは・・・・許せませんわ。」

 

「ハクオロさんッ!!鬼畜過ぎますッ!!」

 

「いや・・・あの・・・・いきなり決め付けるのは・・・・。」

 

するとトウカが驚いた声をあげる。

 

「せ、聖上あんまりです!某は聖上以外の殿方とはッ!!」

 

・・・頼む、焼け石に水な事はこれ以上言わないでくれ・・・・。(号泣)

 

「いや、そういう事を言っているのではなくて・・・・

 本当に子を宿しているのかどうかと言う事をだな・・・・。」

 

「おめでとう御座います。聖上。御世継ぎの御誕生で御座いますね。」

 

・・・・・・ベナウィ・・・貴様・・・。

 

「うわぁぁぁぁ〜〜〜んッ!!」

 

ビクッ!

エルルゥが突然号泣。

 

「私が・・・私が一番大切だって言ってくれたのに!!」

 

・・・・・あぁ・・・泥沼・・・・。

泣き叫ぶエルルゥを胸に抱き寄せてカルラが慰める。

 

「はいはい、よしよし。酷い人ね・・・あるじ様って。」 ジロリ

 

・・・・・やはり一方的に私が悪者か・・・。

 

「ハクオロさんなんて、人でなし過ぎますぅー!!

 もう、今度から題名変更ですぅぅ!!」

 

愛と幻想のふぁしずむ

改め

 

 

鬼畜王 ハクオロ

 

 

「こ、こら!勝手に題名を変えるな!!」

 


「兄者ぁ〜!!ユズハにも子を授けてやってくれ〜〜!!」

 

「たのむ、オボロ。お前だけは黙っててくれ・・・・。」

 

ユラリ。

は!?

カルラが愛憎に満ち溢れた顔でこちらへ迫ってくる。

 

「あわわわ。カルラ・・・・待ってくり〜!!」

 

「あるじ様・・・・・私よりもあの阿呆女を選びましたのね・・・。」

 

寂しげな笑顔を見せる・・・。

 

「いや、その、つい魔がさしたと言うか、息抜きと言うか・・・・。」

 

「・・・・サハリエ ナトゥリタ。」

 

ズガァァーーーーンッ。

 

必殺技炸裂。

 

「ほげ〜〜〜!?」

 

・・・・・死んだでおじゃるか・・・・?

 

ポワーーー♪

!?

体から痛みが引き、何故か元気に・・・・。

どうやらエルルゥが傷を回復させてくれたみたいだ。

 

「エ、エルルゥ・・・信じてくれるのか・・・・!」

 

にっこりとエルルゥが微笑む。

 

「さぁ、カルラさん♪気が済むまでしばきあげちゃって下さい♪」

 

「エルンガァァァァッ!?」

 

「・・・・サハリエ ナトゥリタ。」

 

ズガァァーーーーンッ。

 

「キス・オブ・ザ・ドラゴンッ!?」

 

ポワーーー♪

ズガァァーーーーンッ。

ポワーーー♪

ズガァァーーーーンッ。

 

「・・・・聖上・・・・・おいたわしい。」

 

「ベナウィ〜〜!!助けろ馬鹿ぁ〜〜〜!!」



次回ッ!逆転裁判・痛ッ!!ハクオロの明日はどっちだ!?

「異議ありッ!!」

 

※今回はLeaf/Aquaplus(株)の画像を一部加工・使用させて頂きました。