鬼畜王 ハクオロ

 

イケイケガールは、すき焼で堕とせッ! ―その6―

 

 

「だから、題名を変えるなっちゅーのッ!!」

 

「うるさいです!」 ゲシッ!!

 

「ア・バオア・クーッ!?」

 

 ―トゥスクル殿前―

 

「ク、クーヤ様ぁ〜!駄目ですよぅ!やめましょうよ〜!」

 

茶色に輝くセミロングの髪をなびかせた女性がオロオロとしながら

傍で腕まくりをしている金色の髪の女性を説得していた。

 

「何故だ?余がここまで来たのはハクオロに会う為ではないか。」

 

「で、ですけど、大老【タゥロ】に黙って来るなんて聞いてませんよ〜!」

 

「たわけ、ゲンジマルなんかに話した日には止められるに決まっておろう。」

 

「で、ですが黙って出るなんてのはもっと悪いですよぉ〜!!」

 

「サクヤ、別にそなたが嫌ならばついて来ずともよい。

 無理強いはせぬ・・・全ては余が勝手にしている事だ。」

 

「あぅぅ〜!それが出来たら苦労しませんよ〜!!」

 

サクヤが半泣きになりながら地団駄を踏む。

 

「そもそも貿易団と一緒に入國したのは、この國の内情を見聞するというのが

 建前ですし、だからこそ大老もクーヤ様の御同行を・・・・。」

 

「サクヤ・・・少しだけでよい。余はハクオロと久しく会っておらぬ。

 ・・・・・余は・・・これだけが・・・楽しみなのだ。」

 

「・・・クーヤ様・・・。」

 

「では、参るぞ、サクヤ。」

 

「えぇ!ちょ・・・!この塀を登るんですか〜!?」

 

「当たり前ぞ。身分を偽り特使として会うとなれば色々と時間がかかるし問題も多い。

 何よりハクオロとゆっくり話せぬではないか!」

 

「だ、だからって!これじゃあ不法侵入ですよ〜!!」

 

「よいからそなたの肩を貸せ!責任は余がとる。」

 

「はうぅ〜・・・・責任も何もこれがバレたら國交問題に〜!!」

 

ふわっ・・・・

スタン。

 

「何だ・・・意外と簡単に乗り越えられるな。ほらサクヤ、手を伸ばせ。」

 

「あぅぅ・・・御爺様・・・御免なさ〜い・・・!」

 

 

 

愛と幻想のふぁしずむ

カルラ、その愛ゆえに ―その6―

 

 

 


―トゥスクル内裏―

 

し〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

玉座の間には皆が一同に集まっていた。

トゥスクル歩兵衆隊長のオボロ。

侍大将【オムツィケル】のベナウィ。

騎兵衆【ラクシャライ】副長のクロウ。

オンカミヤムカイ國の特使であり、

賢大僧正【オルヤンクル】であるウルトリィ。

ウルトリィの妹であり、國師【ヨモル】補佐のカミュ。

オボロの妹ユズハ。

エルルゥの妹である皇女アルルゥ。

オボロの側近であり、弓衆【ペリエライ】蒼組隊長のドリィ。

そのドリィの双子で同じくオボロ側近の弓衆【ペリエライ】朱組隊長のグラァ。

それぞれが様々な表情を浮かべ、時を待つ。

重苦しい空気の中、ウルトリィが口を開いた。

 

「・・・・あの。一体何があったのですか?」

 

みなの視線がベナウィに向けられる。

ベナウィは髪を掻き揚げ、溜息をつく・・・。

 

「その・・・・申し訳御座いません。

 私の口からは御教えする事が出来ません。事の全ては聖上から直々に・・・・。」

 

「・・・おと〜さんとお姉ちゃん、まだ?」

 

「おじ様はすぐに来るわよ・・・。」

 

アルルゥとカミュがこそこそと話している横で

ユズハがオボロの袖を握って話し掛ける。

 

「兄さま・・・ハクオロ様の身に何かあったのですか?」

 

「う・・・いや・・・兄者に何かあったのでは・・・・

 ・・・・こういう場合・・・なんて言うか・・・。」

 

「兄さまッ・・・!兄さまの鼓動で分かりますッ!

 きっと・・・きっとよからぬ事があったのですねッ!!

 

「お、落ち着いてくれ、ユズハ。兄者は・・・その・・・元気だから・・・・。

 ・・・・多分、まだ生きてると思うし・・・。」 (汗)

 

「兄(あに)ちゃまッ!」

 

「ハ、ハイッ!!」ビクッ!

 

不安を抑えきれないユズハがオボロの袖を激しく揺さぶる。

 

「兄ちゃまッ!なんで教えてくれへんのッ!

 うち心配で心配でたまらんっゆうてるやんかぁ!!」

 

「わわわ!落ち着いてくれマイ・シスターッ!兄者は大丈夫だから!」

 

「嘘やッ!こない緊迫した雰囲気なんてあらへんかったやんかぁ!

 絶対何かヤな事あったんやわーッ!!」

 

ビリビリッ♪

オボロの袖はユズハに掴まれ、引っ張られ、もうボロボロ。

慌ててカミュとアルルゥが抑えに来る。

 

「ユ、ユズっち〜落ち着いてよ〜!」

 

「ユズち〜・・・・言葉遣いが素になってる・・・。」

 

「兄ちゃまのアホーッ!」

 

が〜〜〜〜〜んッ!!←オボロ

 

「ユ、ユズハ・・・どうちて・・・そんな事を言うんだ!?」 カクカク

 

ユズハの一声でオボロの髪が白くなっていく・・・。

 

「若様ッ!?」

 

「お気を確かにッ!!」

 

ドリィとグラァがその場に崩れ落ちるオボロを抱き起こす。

・・・・ぎゃぁぎゃぁわいわい!

 

「なぁ、大将。よほど大事なのかよ?」

 

クロウがそっとベナウィに耳打ちする。

 

「えぇ、大事も何も・・・喜ばしき事なのですが・・・。ただ・・・・。」

 

「ただ?」

 

「クロウ・・・この國も、今日で終わりかもしれません。」

 

「はぁ!?」

 

『ハクオロ皇、入殿ッ〜!!』

 

バァンッ!!

 

「ッ!!」

 

扉の重々しくも荘厳な音が聞こえ、

瞬時に周囲は静けさを取り戻した。

 

「・・・・ゴク。」

 

ずり・・・ずり・・・・。

ゴツンッ!

 

「痛いでおじゃるッ!もっと優しくひっぱってくれッ!!」

 

ずりずりずりーー!

 

「イデデデデ!ダッシュするなッ〜!!」

 

「黙って下さいッ!みなさん待ってるんですからッ!」

 

「ゆ、許してたもれ〜ッ!!」

 

「うるさいですッ!」 ゲシッ!

 

「ぐわッ!?」

 

!?

 

エルルゥに引っ張られて床を引き摺られながら

皆の前に晒しあげられた全身簀巻きの私。

 

「ハ、ハクオロ皇ッ!?」

 

ウルトリィがぎょっとする。

 

「・・・・國の面目・・・丸潰れ・・・!」

 

ベナウィが額に手をあてて苦悶の表情を浮かべる。

私が引き摺られて来たすぐ後から、ふてくされたカルラと

すごすごと内股歩きのトウカがやって来た。

 

「・・・おと〜さん?」

 

キョトンとしたアルルゥを見やると私はいつもの皇スマイルで

 

「やぁ、アルルゥ。メシ食ったか?」 にっこり

 

「・・・おと〜さん・・・蓑虫ごっこ?」

 

「う〜ん、遠からず近からずってところかな?ハハハ。」

 

するとアルルゥがとてとて〜♪と私の傍までやってきて

 

ドスゥ!

 

「ぐぇ!?」

 

突然簀巻きにされた私の上に圧し掛かって

 

「・・・・むふぅ〜♪」

 

楽しそうに転がりまくっている・・・・・。

 

「あの〜アルルゥ・・・大変重いんだが・・・。」

 

「アルルゥ、自分の席に戻りなさいッ!」

 

エルルゥが厳しい口調でアルルゥを諭す。

 

「ヤ〜ッ!おと〜さんと遊ぶのッ!」

 

「アルルゥ・・・・しばくぞ♪」 ニコーリ

 

「・・・・ビクゥッ!!」

 

アルルゥは、とててて〜♪と元いた場所に戻ると

 

「・・・・今日のエルンガァ(※禍日神【ヌグゥイソムカミ】の一種・トイレで浣腸してくる)

 ・・・・・・怖い!」

 

と言いながらユズハの陰に隠れてしまった。

 

「あの・・・これは一体どういう事でしょうか?」

 

ウルトリィが理解不能です。と言わんばかりの顔つきで質問する。

 

「・・・今から説明します。」

 

「ウルト〜!助けてたもれ〜!」

 

「あるじ様・・・おだまり。」 ドゲシッ!

 

「PRINッ!?」

 

エルルゥは決心したような顔つきになると、大きく息を吸い込んだ。

し〜〜〜〜〜ん。

 

「じ・・・実は・・・今日、みなさんにお集まり頂いたのは重大な発表があるからです。」

 

「・・・・重大な発表?」

 

「なんだそりゃ?」

 

ざわざわ・・・・。

 

「その・・・わが皇、ハクオロさんの・・・・・その・・・トウカさ・・・ん・・・その・・・。」

 

異様に上擦った声で話すエルルゥ・・・。

 

「うにゅ〜?おじ様とトウカさん?」

 

「何やの?何やのッ!?ハクオロ様とトウカはんがどないしたんよ〜!?」

 

「お、落ち着け!ユズハッ!!」 (汗)

 

カルラがそっと私に耳打ちしてくる。

 

「エルルゥにとっては辛いでしょうねぇ〜・・・・。」

 

・・・・・・・・・・・。

 

「そのッ!トウカさんはぁ!ハクオロさんのぉ・・・のぉ・・・・・・・〜〜〜〜〜〜

 

・・・・ゲッ!?

 

「い、言える訳ないじゃないですかぁッ!!」

 

ゴスッ!

 

「ぐわっ!?」

 

エルルゥは私の顔面にマイク←?を叩きつけて退場。

し〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。(一同、汗)

 

「カルラ、この簀巻きを解いてくれ。」

 

「・・・あるじ様。」

 

「私が・・・みなに説明しよう・・・!」

 

まろが立つッ!!

男を見せるでおじゃるよ!

 

お前が感じている感情は精神疾患の一種だ。

俺なら責任がとれるッ!俺に任せろ!

(感感俺俺)

 

パササッ・・・・。

ムクリ。

 

「・・・・どっこいしょ。」

 

私は立ち上がると端でしゃがみ込んでいるエルルゥの傍に歩みよった。

 

「・・・・エルルゥ。」

 

「ぐすっ!・・・ひっく。」

 

ぽふっ

エルルゥの頭に手を置くと

髪を優しく撫でながら優しく囁く。

 

「辛い思いをさせたな・・・・。」

 

「な・・・何今更格好つけてるんですかーッ!!」

 

ドバキッ!!

 

「グフ・・・いいパンチだ・・・・。」 ガクガク

 

私はふらつく足取りで王座に腰掛けると、咳払いを一つ。

 

「・・・・おほん。

 ・・・・え〜、みんな、よく聞いてくれ。」

 

一同の視線が私に注がれる。

 

「ト、トウカを・・・・私の正室にする事になった。」

 

し〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

 

「話が飛躍し過ぎなんですよッ!!」

 

エルルゥの蹴りが後頭部に炸裂。

 

ドグワシャッ!!

 

「俺はビッグ!?」

 

あまりの衝撃で仮面が顔からずれ落ちたが、それを拾って再度顔に付ける。

 

「兄者、取れるんかい・・・それ。」

 

オボロ・・・ツッコミサンキュー。

ざわざわッ!!

 

「ハ、ハクオロ皇・・・・、それ、どういう意味ですか?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

ウルトリィが天使のような微笑みを浮かべながら訊ねてくるが、

彼女の周辺の空気の流れは地獄の業火の如く激シク渦巻いている。

 

「ハクオロ様ッ!!うちは・・・うちはどないなるのッ!?

 あんたぁーーー!!あ、あたいに飽きたんかぁーーー!?

 

「た、頼む!落ち着いてくれユズハッ!病気が悪化する!」

 

オボロが必死にユズハを抑える。

 

・・・・非常に困った・・・。

何とキリ出せばいいのやら・・・できちゃった結婚なんて言った日には

・・・・私は間違いなく火あぶりに・・・・。

 

「そ、某が説明いたすッ!!」

 

それまで沈黙を守っていたトウカが立ち上がった。

ざわざわ・・・・・。

トウカは一瞬間を置いてから口を開いた。

 

「某のお腹に、・・・聖上の御子が出来ちゃいました♪」 ぽっ

 

ロイヤルストレートフラッシュッ!?(血の涙)

 

「えーーーッ!?」←カミュ

 

「・・・・・・!」←アルルゥ

 

「ブーーーッ!?」←クロウ

 

「・・・・・・嘘・・・。」←ウルト

 

えぇいッ!こうなったらなるようになるしかないッ!

 

「トウカの言ったとおりだ。トウカは・・・・私の子を宿したらしい。

 左様なれば、トウカを私の正室に迎えるのは世の理である。」

 

やばい・・・周囲から恐ろしいほどの殺気が渦巻いているのが分かる・・・。

・・・・ほら!そこ!!っていうか肉眼で見れるくらい具現化してるでおじゃる!

 

「・・・・ま、まろは・・・まろは・・・トウカを正室にするでおじゃるッ!!」

 

ヤケクソ。

 

怒涛の一挙2話更新ッ!!

ちゃん様びっくりあるよーッ!!(笑)