特級ッ!難解電哲 【ラピードα】
FM013 実態と嘆願・・・そして
「で、どういった用件ですか?」
ホームルーム終了後、職員室の隣にある給湯室で
俺は担任と向き合って座っていた。
『あ・・あのなぁ長瀬・・・・
なかなか言い出せないのだろうか?
間の置いた口調で担任が言葉を区切った。
「はい。なんですか?」
『昨日・・・お前と新城が哲学部の部室に入っていったという話を
聞いたんだが・・・それは本当か?』
・・・・・やはりその事か・・・。
まぁ、考えるまでもなく分かるけどな。
「えぇ、事実です。太田さんから入部して欲しいと頼まれました。」
『・・・ッ!・・・・。』 (ごくり)
「・・・・・それが何か?」
『・・・・入部するつもりか?』
「しません。」 (きっぱり)
『そ、そうか!?だ・・・だよなぁ〜、ア、アハハハ!』
「先生・・・僕もお聞きしたいのですが、一体あのクラブは何なんですか?」
ぴたり。
担任が硬直した。
「哲学部の存在自体も疑問ですが、むしろこの高校の生徒会の方が興味深いです。
・・・・その事について詳しく御話して頂けませんか?」
『な・・・長瀬。・・・忠告しておくぞ。』
「は?」
『いいか・・・哲学部もそうだが、生徒会には関らない方がいい!』
「・・・・みなさん、口を揃えてそう言いますね。」
『ここだけの話だぞ?・・・・この学校の教師どもは生徒会の言いなりだ・・・!
・・・・無論、校長、教頭も含めて全てな・・・!』
「・・・ッ!?」
『・・・・・・・。』
「・・・つまり、この高校の実権は生徒会が握っているという事ですか?」
『そういう事だ。いずれ分かる・・・。』
「有難う御座いました。・・・では失礼します。」
ガララッ
ピシャ
・・・・・・・
ツカツカ・・・・・・。
なるほど、何となく話が読めてきたぞ・・・。
俺は今までの事を整理し、色々と考察しながら廊下を歩いていた・・・。
・・・・すると廊下の先に人影が。
「・・・・!?」
その人影は太田さんだった。
太田さんはこちらを見つめている。
「・・・・また君か・・・授業サボってばかりだな。」
「貴方を待っていたのよ。さっきは私も少し卑屈になってたし。・・・・・・・それで、返事の事についてだけど。」
「・・・・悪いが俺は君達のクラブには興味がない。」
「そう言うと思ってたわ・・・。貴方、臆病ですものね。」
「・・・ッ!?・・・・なんだって?」
「臆病よね。貴方って。この先ずっと、他人と極力関らないで生きていくつもりかしら?
一人で本を読む事で適当な逃げ口上を作っておいてね・・・・。」
「・・・・勝手にそう思えばいい。2度と俺を巻き込もうとするな。」
「・・・・・ホント・・・男ってつまらない生き物ね・・・・。」
「君の価値観なんてどうでもいい。それよりもいい加減包帯をとれよ。」
話にならないので俺は彼女を無視して通り過ぎようとした。
・・・すると。
ガシィッ!!
突然彼女は俺の手首を掴んできた。
「なッ!?」
グググ・・・
物凄い握力だ・・・。
「何すんだよッ!」
俺は振りほどこうとしたが・・・出来ないッ!?
「・・・・御願い。」 (ぼそっ)
「何ぃ?」
「・・・・男に・・・・こんなに頼み込むは初めてなの・・・・御願い・・・・。
・・・・・・私達を・・・・瑠璃子を・・・・助けて・・・・・・!」
・・・・!
太田さんはいつもの人を嘲るような瞳ではなく、
訴えるような瞳で俺を見つめていた。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「裕くんッ!!」
突然、前方から大声が聞こえた。
沙織ちゃんだろう。
パッ
太田さんは掴んでいた俺の手を放し
「・・・・放課後、もう一度返事を聞くから・・・・。」
と言うと、踵を返して歩いていった。
・・・・・・・。
「裕くん!」
タタタ
沙織ちゃんが俺のもとにやって来た。
「やあ、沙織ちゃん。」
「裕くん・・・太田さんと何を話してたの・・・?」
「別に・・・哲学部に入れって勧誘されてただけだよ。」
「入るのッ!?」
突然大声を上げる沙織ちゃん。
「な、何だよ大きな声出して・・・は、入らないつもりだよ。」
「そ、そっか・・・ごめんね。興奮しちゃって・・・・。」
「・・・・・いいよ別に。」
「あ、あのね・・・裕くん・・・・。」
「ん?何?」
「・・・・もう太田さん達には関らないで・・・。」
「・・・!?どうして沙織ちゃんまでそんな事言うんだい?」
「え!?え・・・えっとぉ・・・・やっぱり彼女達って
・・・・少し浮いてる存在だし・・・・
「確かに彼女達は少しへ・・・いや、だいぶん変だけど。
俺は特に嫌いではないし、あからさまに無視するのは趣味じゃない。」
「だ、だけど・・・このままだと裕くんまで・・・・!」
少し沙織ちゃんは涙目になってしまった・・・。
・・・・・今日の朝みたいな事が続く・・・・ってか・・・・。
「ごめん、沙織ちゃん。余計な心配かけたね。」
「う、ううん!私こそ・・・おしつけがましいよね・・・・。」
・・・・・・・・・気不味い雰囲気が流れる。
「あ・・・俺・・・ちょっと用事があるから・・・・。」
「そ、そうなんだぁ・・・アハハ・・・じゃまた後でね♪」
沙織ちゃんと別れ、俺は右手の階段を駆け上がり、屋上に向かった。
・・・特に理由はなかったが、何となく屋上に行きたかった。
・・・・・・・・ひゅぅぅ・・・・。
「・・・・・はぁ・・・・。」
溜息をついて、俺はフェンスにもたれながら風景を眺めていた。
・・・・俺らしくないよな・・・・・。
戸塚の時はもっと・・・・クレバーに物事をやってのけていけたのに・・・。
この高校は・・・なんか、調子狂っちまうよ・・・・。
「・・・・長瀬ちゃん。」
「おわっ!?」
突然横から声が聞こえたので驚いて仰け反ってしまった。
改めて横に視線を移すと、月島さんが俺のすぐ真横に立っていたのだ。
「つ、月島さん・・・・。き、奇遇だね・・・。」
俺が冷静に取り繕いながら喋ると
「奇遇じゃないよ。長瀬ちゃん。」
にこりと軽く微笑みながら月島さんが更に顔を近づけてくる。
「き、奇遇じゃないんだ・・・・じゃ、じゃあ何だい?」
「長瀬ちゃんがここに来るって分かってたから、待ってたの♪」
上目遣いで俺を見つめながら、月島さんはそう言った。
「分かってた・・・?ど、どうして?」
「長瀬ちゃんの電波からそう感じたの。」
「・・・・・・・・・。」
「ニコッ♪」
・・・・・・解からん。 (汗)
そもそも・・・太田さんといい、月島さんといい、
沙織ちゃんまでも・・・・。
どうしてここの学校の生徒は・・・・・
まともに授業を受けないんだろう?
See you on the other side