特級ッ!難解電哲 【ラピードα】
FM023 千ノナイフガ尻ヲ刺ス
―放課後―
【哲学部】
カッカッ
太田さんが小気味よい音を立てながら
黒板になにかを板書している。
俺と沙織ちゃん、月島さんと藍原さんがそれを眺めていた。
書き終わったのか?太田さんが急にこちらを振り返ると
「さて、みんな揃ったみたいね。」
「そ、揃ったも何も、もともと5人しかいないだろ?」
「そうね。じゃあ談合を始めるわ。」
「はぁ・・・で議題は?」
「これを見て頂戴。」
そう言って太田さんが横へ一歩立ち退くと、黒板が一望出来るようになった。
なにやら色々図とか文字が書かれているが・・・。
「何だ?これ?」
「これが、今の南海高校の勢力分布図よ。」
「せ、勢力分布図も何も・・・・ほとんど生徒会しか書いてないじゃん。」
「その通りよ。見てのとおり、この高校の実権は生徒会
つまり拓也のヴォケに握られいるの。」
「どうしてこれほどまでに生徒会が権力を握っているんだ?」
「それは、拓也の・・・つまり瑠璃子の父親がこの町で相当顔が聞く事が1つ。
更に市の教育施設やこの高校に多額の寄付を行っているからよ。」
「・・・あんな人・・・!父親じゃないよッ!!」
突然、瑠璃子さんが強い口調で口を挟んだ。
「・・・あ、御免なさい・・・瑠璃子・・・。」
「な、なぁに・・・月島さんは父親と仲が悪いの?」
沙織ちゃんが訊ねると、藍原さんが答えた。
「部長の・・・瑠璃子ちゃんの父親は・・・義父なんです。」
・・・・・・・・。
なんだか気不味〜い空気が部室内を包む・・・。
「と、とりあえず、そういう理由がある事と・・・問題は拓也自身。」
「・・・・ひょっとして。」
「そう、毒電波。」
「それについて詳しく聞きたかったんだよ。
一体、その毒電波って何だよ?」
―シッテルクセニ―
ッ!?
「・・・どうしたの?長瀬ちゃん?」
「裕くん?」
「い、いや、何でもない。毒電波について教えてくれよ。」
「正直に言うわ。拓也・・・・いえ、月島兄妹は超能力者よ。」
「は?」
「だから、特殊能力保有者って事。ESPとか知ってるでしょ?」
「・・・・・・。」
「何黙ってるの?」
「・・・・ぶっ・・・!
「??」
「ぶわっはははははははッ!!!」
「貴方、何か変なものでも拾い食いしたの・・・?」
「ま、待ってくれよ〜!言うに事かいて、君の口から超能力なんて
言葉が出てくるなんて思わなかったよ!ははははははは!!
太田さんはどう見ても極度のリアリストだと思ってたからね!」
バキャッ!
「おわっ!?」
太田さんが俺の目の前で激しいチョップをテーブルに叩きつけた。
・・・・・テーブルに大きな亀裂が・・・・・。
「か、香奈子ちゃん!このテーブル高いんですから〜!」
藍原さんが血相を変えて太田さんを諭す。
「リアリストだからこそ・・・・現状を正確に把握していると
言って頂けないかしら?」 ビキビキ
「は・・・はい。ごめんなさい。」 (汗)
俺はしげしげと瑠璃子さんを見つめながら
記憶を整理すると・・・なるほど・・・・
確かに・・・・超能力らしきものは見たかもしれない・・・現に先日屋上で・・・・・
瑠璃子さんは俺の目線に気付いたらしく
「な、なぁに・・・長瀬ちゃん。」 もじもじ
と言って照れくさそうに俯いた。
ちょ、ちょっと、何だい?そのリアクションは?(汗)
うおッ!隣に座っている沙織ちゃんの方から
嫌なオーラを感じてしまうんですが・・・・・!!
「コホン、御免なさい。取り乱してしまったわ。
話を戻しましょう。」
「そうして下さい・・・・。」
「毒電波とは単純に解釈すると、精神波みたいなもので他人を操るの。」
「は、はぁ・・・マインドコントロールってやつかい?」
「そんな生易しいものじゃないわ。人の人格を無視してしまうの。」
「・・・・つまり、自由に、自分の思うがままに相手を操れるってのか!?」
「簡単に言えばそうだけど、実はそれだけじゃないの。」
「・・・・って言うと?」
「相手の人格を破壊出来る。」
「えッ!?破壊って・・・その・・・つまりは・・・・。」
「よくて精神錯乱。悪ければ植物状態ね。」
「そ、そんな馬鹿なッ!?そんな事って・・・・
「記憶操作なんて拓也にとっては朝飯前かしら。」
・・・・そうか・・・だから俺の経歴も・・・・。
「まるでラジコンだな。28号も真っ青だ。」
「・・・・・更に・・・・。」
「まだ・・・あるの?」
沙織ちゃんが不安そうに訊ねる。
「・・・・・・多分これは私のカンだけど、拓也はまだ能力を隠しているわ。」
「切り札があるって事か・・・。」
「そういう事ね。」
し〜〜〜〜〜ん。
・・・ちょっと待ってくれ。
何だかあまりにも現実感が無さ過ぎて・・・・。
・・・・・月島さんは・・・?
「あ、あのさ、月島さんは・・・・
「ワタシは・・・そんな力ないよ。」
「・・・・そ、そうか。」
「ワタシは・・・・電波を受信したり、そのまま送り届けてあげるだけ・・・・。」
「でも以前俺には月島さんが目の前から消えたような・・・
「あれは電波転送と同じような原理です。
ですが、部長の身体にとっては負荷がかかって本来は危険なんです!」
ちょ、ちょっと待ってくれ・・・・
頭がこんがらがってきた・・・。(汗)
コンコンコン
突如誰かが部室の扉を叩いた。
「?はい、どうぞ?」
キィ〜
入ってきたのは見知らぬ女生徒だった。
「何のようかしら?」
「あ、あのぉ〜、長瀬裕介くんっていますか?」
「っ?俺だけど。」
「あ、あの。私、山岡先生に伝言頼まれて来たんですが、
長瀬くんの親から学校に電話がかかってきてるみたいなんです。」
「ッ!?俺の親から?」
「は、はい。そうらしいです。至急職員室まで来るようにって。」
「分かった。有難う。」
パタン。
「・・・・ちょっと悪いけど、行ってくるよ。」
そう言って俺が席を立つと
「丁度いいわ。私もちょっと職員室に用があったの。」
太田さんが急にそんな事を言い出した。
「えっ!?まぢで?」
「えぇ。御一緒するわ。」 にっこり
「そ、そっか・・・。じゃあ月島さん。悪いけど・・・
「うん。待ってるよ。」
キィ〜
「ごめん、すぐ戻るよ。」
パタン
・・・・・・・。
ツカツカ・・・・・。
俺と太田さんは横にならんで、中庭を歩いていた。
丁度日没にさしかかり、やさしい夕日が中庭を射している。
「なぁ、太田さんの用事って・・・?」
「・・・・・・・そんなの無いわ。」
「はっ!?」
「ちょっとひっかかってね。」
「どういう事だよ?」
太田さんは無言のまま、校舎の側壁に備え付けられていた
【消火器】と書かれている赤いボックスをあけると、
何を考えているのか中に入っている消火器を取り出した。
「お、おい、何を・・・・
ザザザザザザザザ
!?
何時の間にか俺達は囲まれていた。
気味の悪い仮面をつけた訳の分からない集団に・・・・・。
に、人数は・・・・・・・多い・・・・!
ざっと20人は・・・いる。
手にはバットや、ナイフ、何故か「うたわれるもの」を持っている。
「な、何だよ・・・こいつらッ!!」
「・・・・ふぅ。拓也の考えそうな事だわ。」
深い溜息をついて大田さんが前へ歩みでる。
「ま、まさかこいつらって・・・・。」
「その通りよ。」
太田さんは冷たく微笑んだ。
「長瀬裕介暗殺部隊ってとこかしら。」
「鬱だ。」
See you on the other side