特級ッ!難解電哲 【ラピードα】

FM028 彼女が包帯を巻いた訳 −その2−

 

 

「クククク・・・・。」

 

他人の墓石に腰を下ろすと、何時、誰が供えたか分からない

花をムシャムシャと口にするキティ・・・・。

 

「い、一体こんなところへ・・・何の用よッ!!」

 

太田さんが珍しく動揺した声をあげながら月島兄を睨む。

 

「何の用だって・・・・?クククク・・・・・。

 自分の両親の墓参りに来て何が悪い?」

 

「墓参りですって・・・!?よ、よくもぬけぬけと・・・・・。」

 

ニヤニヤと不快な笑みを浮かべながら、月島兄は彼女を見つめて一言・・・・

 

「・・・・・拓也に・・・会いたいか?」

 

「ッ!!」

 

えっ・・・・?

 

「クククククッ・・・・!」

 

月島兄のその意味不明な一言で太田さんの顔付きが豹変した・・・。

 

「・・・・拓也は・・・・まだ生きてるの・・・・?」

 

ギリギリ・・・・・。

・・・・ッ!?

太田さんから・・・・歯軋りの音が聞こえてくる。

 

「ぶぉくちん、元気だよ〜〜〜♪」

 

「アンタの事じゃないわよッ!!」

 

ビリビリビリッ・・・!!

彼女の強烈な怒声に周囲の空気が震える!

 

「ちょ、ちょっと・・・一体・・・どういう事だ・・・・!?」

 

「クーククク!生きてても俺が出す訳ねーだろ?クァーーーカカカカッ!!」

 

「このクズ野郎・・・・!」

 

訳が分からない・・・・。

月島拓也との会話に『拓也に会いたいか?』とか『拓也は生きてるのか?』とか

全然意味が分からない・・・・・。(汗)

呆気にとられている俺を、ニヤニヤしながら月島兄は一瞥し、

 

「何も分からないだろう?長瀬裕介・・・。

 ククク・・・・分かるまい。

 知りたいだろう・・・・?」

 

「やめてッ!彼にはまだ・・・・・!

 

「五月蝿いよ。お前。」

 

サッと月島兄が手で合図を送ると・・・・

ガサガサッ!

ガサガサガサッ!

先日、俺達に襲いかかってきた仮面集団が・・・以前の倍以上の数で

突如様々なところから現れ、彼女の周囲を囲む。

 

「ククク・・・・その数じゃあ流石に動けまい。」

 

「・・・〜〜!」

 

太田さんは悔しさに顔を歪ませる・・・・。

 

「あー、さてと・・・長瀬裕介、先ほどの話の続きだ。」

 

「・・・・・。」

 

「気に食わない目付きだな。それが人の話を聞く態度か?あぁ!?」

 

ぢりぢりぢり!

 

「うぐッ!!」

 

「拓也ッ!!やめなさいッ!!」

 

「いいか、小僧ッ!貴様は俺の掌で生かされてんだよ!」

 

ぢりぢりぢり・・・・・・

 

「ハァッハァッ・・・!」

 

クソ・・・・!この毒電波・・・・・なんとかならないのか・・・!

 

「ククク・・・・まぁいい・・・話を続けよう。」

 

「・・・・・。」

 

「以前、ある男が居た。月島拓也という男だ。

 そいつは両親を幼くして亡くし、瑠璃子という妹と共に

 叔父の家に引き取られた。ククク・・・・やすい3文芝居みたいな話だな。」

 

何を言ってるんだ・・・・?コイツは・・・・?

 

「さてさて、その叔父というのはとんでもない色ボケでな。

 金と権力を使って毎晩毎晩・・・・女を貪り食っていましたとさ。」

 

「・・・・・・。」

 

「御蔭で拓也と瑠璃子はすっかり人間不信さ。ククク・・・・。

 毎晩毎晩、よがり狂う女の声と汚らしい叔父の声を脳みそに

 垂れ流されてるんだ。そりゃそうなっても可笑しくないわな。」

 

・・・・・瑠璃子さん・・・・。

 

「ある時、月島拓也は気が付いた。

 自分と瑠璃子に隠された素晴らしい力にな。」

 

・・・・!?

 

「そう。電波だよ電波。ククククク・・・・・!

 電波と言っても様々な能力がある。

 そして、月島拓也が神より与えられた能力は・・・・毒電波さ。」

 

毒電波・・・・。

 

「よりにもよって、この世でもっと恐ろしい能力の1つを持っている事に

 月島拓也は気付いてしまったんだよ。ククク・・・・。

 まぁ、毒電波の素晴らしさは御存知の通り♪」

 

・・・・・・・。

 

「だが、月島拓也はその能力を使おうとしなかった。何故だか分かるか?」

 

は!?使いまくってるだろが・・・・。

 

「月島拓也は腰抜けの甘ちゃんだからだよ!

 愛する女性にすらこの能力を隠してたんだからな!ククク。」

 

そう言うと月島兄はニヤニヤと太田さんを見つめるが、

太田さんは俯いたまま何も喋ろうとしない・・・・。

 

「と〜こ〜ろ〜が、ある日。

 何をトチ狂ったのか・・・・

 うす汚ねぇ色ボケの叔父が瑠璃子に手をだそうとしやがった!!」

 

「なッ・・・!?」

 

「そこで・・・・あらあら、拓也ちゃんは・・・・・殺してしまいました♪

 

「ッ!?こ、殺・・・!?」

 

「怒り狂った拓也ちゃんはついに毒電波を使って叔父の心を破壊したのさ。クククク。

 ここからが大事なポイントだぜ?

 ・・・・・・毒電波は最強の超能力だ。少なくとも俺はそう自負している。

 ただ、一つだけ欠点があるんだよ。

 毒電波を使う反動で、その人間の心の闇の部分が理性を蝕むんだよ。」

 

「ッ!!なんだと!?」

 

「結果、月島拓也は闇の部分に負けてしまい・・・・・・

 の誕生って訳さ、ハーハハハハッ!!」

 

・・・・そうか・・・・そういう事か・・・・・!

月島兄はそこまでベラベラ喋ると、急に顔付きが変え

冷たく、残酷な表情で・・・・

供えられていた花を手にとり、クルクル手の中で廻しながら、

 

「まず叔父には毒電波の破壊力を試させてもらった。

 そして次は、そこの太田香奈子を・・・・・・・

 

グシャ。

花を握り潰し、一言。 

 

 ・・・・肉体強化の実験台にしてやったのさ。」

 

ッ!!!!

 

「最高だろ?月島拓也が唯一愛した女性に対してこの仕打ち!

 ハーハハハハ!!たまらないぜ!!

 イエスッ!ユニバ自慰ッ!!」

 

・・・・・・・・・・。

 

「ただ、俺の誤算だったのは、

 この女、俺の毒電波に屈服しやがらなかった。

 それだけが心残りだよ。素晴らしい戦闘能力を持ってるからなぁ・・・・。」

 

・・・・・・・こいつ・・・・

 

「さて、昔話は御終いだ。

 本題に入ろう。今日はお前に話があって来た。」

 

「・・・・・・・何だと?」

 

「香奈子は何を企んでいるのか分からんが、

 どうやら、俺を殺して月島拓也を助けようとしてるらしい。」

 

「え!?」

 

「俺の精神が死ねば、月島拓也が戻ってくると信じてるらしいな。ククク・・・。

 でだ、あんなしょうも無い組織を作り上げて、ことごとく俺の邪魔をしやがる!

 今回は長瀬、お前を引き入れ、組織の存続を謀った。

 ・・・・何故だか分かるか?」

 

「・・・・??」

 

「お前が電波使いだからだよ。」

 

「なッ!?」

 

「『馬鹿なッ』って顔してるな?ククク・・・。

 お前が気付かないのも無理はない。

 この能力を持つ人間ってのはそうそう自覚がないからな。」

 

・・・・馬鹿な・・・俺が・・・・・!?

 

「貴様の電波がどのような特質を持っているのかは、俺にも分からん。

 だが・・・・興味深いのは確かだ・・・・。

 ・・・・・・そこでだ・・・・・・長瀬裕介。

 ・・・・・俺に手を貸さないか?」

 

「ッ!?」

 

「俺に忠誠を誓うなら、お前の潜在的能力を開花させる事だって出来る。

 親の借金も俺がチャラにしてやろう。クククク。

 女も金も地位も名誉も、お前の望むままだ。」

 

・・・・!!

 

「俺は、瑠璃子と新たな世界を築きあげる!

 お前も手を貸せ!長瀬裕介!

 どうせこのまま生きてもつまらん人生だ。

 悪くない話だろう?」

 

「・・・・・・太田さん。」

 

「・・・・・・・・。」

 

彼女は無言のままだ。

 

「聞こえてるんだろ?別に無理に喋んなくてもいいからさ、聞いてくれ。」

 

「・・・・・・・あん?こら。お前は俺と話してればいいんだよ!」

 

俺は月島兄を一瞥すると、一言。

 

「こいつは最低のクズ野郎だ。」

 

「・・・・・!」

 

「こ、このガキッ!!」

 

「君がなかなか全てを話してくれなかったのは仕方が無いと思う。

 もしも・・・・俺にそんな力が・・・・本当にあるのならば・・・・・

 君や、瑠璃子さんを・・・・助ける!」

 

「何を言ってるのか分かってるのか小僧!!

 調子に乗るのもいい加減に・・・・

 

「俺はあんたに手を貸す気なんて毛頭無いッ!

 俺は俺だ!!あんたの訳の分からない野望なんて知るかッ!!」

 

「・・・・・ありがとう・・・長瀬君。」

 

メリメリメリッ!!

 

もの凄い音が聞こえたかと思うと、

なんと太田さんが墓石を引き抜いていた・・・・!

 

「き、貴様らぁぁぁーーーーッ!!」

 

「拓也・・・ぶっ殺すッ!!」

 

うばしゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!!!

 

・・・・さぁ、反撃開始だ。

レッツ、罰当たりロックンロール。

 

See you on the other side