特級ッ!難解電哲 【ラピードα】
FM034 セッション・タイムアウト
「・・・・・。」
「・・・・・。」
し〜〜〜ん。
いつもよりも広く感じられる部室で、
俺と藍原さんは、瑠璃子さんと太田さんが戻ってくるを待っていた。
し〜〜〜ん。
もうどれくらい時間が経ったのだろう?
お互いダンマリのまま時が流れていく。
俺はつい藍原さんが出て行こうとするのを引き止めちゃったけど・・・。
ちらりと、時計を見るがまだ10分しか経っていない事実に愕然とする。(汗)
・・・・・・・・。
『ちょ、ちょっと帰るのッ!?』
『・・・・何か用ですか?』 ジロッ
『いや・・・太田さん達に用があったんだろ?
太田さんはすぐここに戻ってくるよ?』
『・・・・・・。』 ジ〜〜
『あ・・・さっきまで俺一緒だったんだよ。あはは・・・・。』
『・・・・・・。』 ジ〜〜
『・・はは・・・は。』 (汗)
『・・・・そうですね、探し回っても仕方がないですよね。』
『そ、その通りだと思うよ。はは・・は・・。』
『じゃあ、しばらくここで待ちます。』 ガタン
・・・・・。
結局、藍原さんは俺が声をかけなければ
本気でこの場を去っていたんだろうな。
まいった・・・なんでこんなに嫌われてるんだろう・・・。
俺は苦笑しながら、チラリと視線を藍原さんに向ける。
藍原さんは不機嫌そうな顔をしながらも、持参してきた文庫を黙々と読んでいた。
・・・・う〜ん・・・・やっぱり美人だよ・・な・・・。
分厚い眼鏡が邪魔だけど、才女で美女で眼鏡ッ子ね。
こりゃ以前のような、えっと親衛隊だっけ?
あんな奴らがついても可笑しくないかもなぁ。
しげしげと俺が見つめていると、
コクンッ・・・・コクンッ・・・・
「・・・おや?」
うつろうつろ・・・・・
「・・・プッ。」
驚いた事に藍原さんはその場で居眠りし始めたのだ。
「・・・・・結構疲れてたのかな?」
「・・・・・すぅーすぅー・・・。」
「・・・・・こうして黙っていれば可愛い子なのにな。」
・・・・・・・・だけど、藍原さんの横顔って
何故か心にひっかかる・・・・・どうしてなんだろう・・・・?
・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
あの子は・・・・誰・・・・?
・・・・・そっか、あの子は私だね。バカみたい・・・。
どうして子供の頃の記憶って、夢の中では
こんなにも鮮明なんだろうね・・・・?
『みずほちゃーん、きょうよしえちゃんたちとあそばない〜?』
「ご・・・ごめん・・・きょうはピアノのおけいこがあるの。」
『えぇ〜?だって、みずほちゃん。きのうはじゅくだったよぉ?』
「ごめんね・・・・ママにおこられちゃうから・・・・。」
『じゃあ・・・またこんどね?』
「・・・ごめんね。」
タッタッタッタ
『どうだった?あいはらさんくるって?』
『ううん、きょうはおけいこがあるんだって。』
『ほら、だからあのこはこないっていったじゃん。』
『うんうん!さそってもぜんぜんこないしぃ〜!』
・・・・・・・・・。
・・・・・・私は子供の頃から一日中
スケジュールという鎖で雁字搦めにさせられていた・・・。
私のパパもママも一流大学を卒業し、世間一般でいう『勝組』の人間。
その為か、2人とも私の教育には五月蝿く、
仕事で忙しいパパは、珍しく家で会ったと思えば一言二言めには
勉強の事しか話してこなかった。
ママはママで完全に私の生活を管理し、
まだ幼かった私に行き過ぎた日々を強要した。
それは英才教育という名のただの牢獄・・・・。
気がついた時には、私の周りには既に友達と呼べる子が居なかった。
ただ一言、二言交わすだけの・・・薄っぺらな関係。
楽しく語り合う友達なんて・・・誰1人も・・・・・。
何時の間にか私はただ、勉強して良い点数をとって、
パパやママに誉めてもらう為だけに日々を過ごすようになっていたの。
だけど・・・・
『瑞穂ッ!なんだこのザマはッ!!』
「ご、ごめんなさい・・・。」
『あれだけ勉強して、たったこの程度の点数しかとれてないじゃないか!』
「・・・・めんなさい。」
『見ろ!この成績ランク表を・・・・・
また長瀬裕介という男子が1位じゃないか!
お前と同じ年代なのに、ずっと成績トップをキープしているぞ。
少しは瑞穂も見習いなさい!』
・・・・・・私だって、一生懸命勉強したのに・・・・・。
・・・・・・・・ドウシテ、スグヒトトヒカクシタガルノ?
・・・・ナガセユウスケッテコヲ、カネアイニダスノハヤメテヨ・・・・。
『だいたい、お前は瑞穂をちゃんと管理しているのか!?』
『なッ!?あ、貴方こそ、私1人のせいにするのはやめて下さらないッ?』
『私は仕事が忙しいんだ!普段の瑞穂の生活は君が管理すべきじゃないか!!』
『・・・・!!』
『・・・〜〜〜!・・・!!』
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・もう沢山・・・・。
・・・もううんざりだよ。
だけど、私にはそれしかなかったの。
だけど・・・だけど・・・いつも一番にはなれなかったの。
あんなに勉強したのに・・・・。
いつも一番上にある長瀬裕介って子が羨ましかったの。
羨ましくて悔しくて・・・見ず知らずの子に嫉妬しちゃった・・・。
だけど、小学校6年の冬・・・
・・・・・・・・・ドンッ。
全国模試会場で、私は珍しく人とぶつかった。
前日、夜遅くまで勉強して寝不足だったからかな・・・。
「・・・きゃ!」
バサバサ
カシャーン
鞄の中に入れていた参考書やカンペンケースが落ちる音。
「あ!ご、ごめん。大丈夫!?」
「・・・・・・!」 ビクッ
・・・・男の子だった。
普段同性の子ともまともに接していない私は、体を強張らせた。
「あ・・・あぁ〜あ!ごめんね!」
そう言うと男の子はすぐに散らばった私の本やらノートを拾い始めた。
「あ・・・あの・・・。」
「ごめん!僕も、ちょっと考えごとしてて・・・。あ!あ〜あ!」
落ちた衝撃の私のカンペンケースは開き、そこら中に鉛筆が転がりはじめる。
慌ててその鉛筆を拾う男の子。
「あの・・・いいです。自分で拾いますから。」
おずおずと話かける私に男の子は明るく微笑みながら
「いいよ。僕が悪いんだし、気にしないで。」
そう言うと、拾った鉛筆をケースに戻し始める。
・・・・最後に人に優しくされたのっていつだろう・・・。
何気なくケースの中身を眺めていた私はそこである事に気が付いた。
「・・・・あ!」
「ん?どうしたの?」
「・・・消しゴム・・・・!」
「消しゴム?」
私はおろおろしながら鞄の底を弄ったが、家の机に置いてきてしまった事を
思い出し、がっくりと項垂れた。
「なに、消しゴムが無いの?」
「・・・・・。」 こくり
うなずいた私を見て今度は男の子が自分の鞄を弄りだす。
「・・・・・・あ、あの?」
「ちょっと待っててね。」
ゴソゴソ・・・・。
「あ、あったあった。・・・はい。」
そう言うと男の子は自分の消しゴムを出して私に手渡した。
ひらり・・・・。
同時に一枚の紙が男の子の鞄から落ちたので、
今度は私が屈んでその紙を拾い上げる。
「・・・・あ!」
それは今日の模試の受験票。そしてそこに記載されている名前を見て私は小さく声をあげた。
『長瀬 裕介』
コノコガ・・・ナガセユウスケ・・・。
努めて平静を装いながら、私は受験票を彼に手渡した。
彼はふと微笑みながら、その場を立ち去ろうとする。
「あ、あの・・・・消しゴム!」
「あぁ、いいよ。あげるから。僕、他にも持ってるし。」
「で、でも!そんなの悪いです!!」
思わず大声で出した後で真っ赤になった私を見て、彼は苦笑すると
「・・・じゃあ、試験が終わったらここで待ってるよ。」
「え?」
「その時僕に消しゴムを返す。それでいいだろ?」 にこっ
「う・・・うん。」
・・・試験中全く集中できなかったよ。
・・・・・だってずっとあの男の子の事ばかり考えてたんだもん。
・・・・・・・・・ずるいよ、あんな子だなんて聞いてないよぉ・・・・・・・・・・・。
試験が終わったら私すぐにあの場所へ向かった。
手に消しゴムを握って、彼が来るのをずっと待ってた。
待ってるだけなんだけど、すごく楽しかった。
生まれて初めてどきどきしてたの。
おかしいね。長瀬裕介なんて名前、見たくもないし聞きたくもなかったのに。
・・・・すごく会いたかったの。
・・・・・・だけど、だけど・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「ッ!!」 ガバッ
「・・・やあ。」
横の本棚にもたれかけて爆睡していた藍原さんが目を覚ました。
「・・・・・・・私、寝てたの?」
彼女はまだ寝起きでぼぉっとした眼でそう訊ねてきた。
俺は目の前のラジオを叩いて苦笑しながら答えた。
「う〜ん。そうだな。1時間くらい寝てたよ。」
「・・・・・そうですか。・・・って1時間ッ!?」
「う、うん。そうだけど・・・。」
「香奈子ちゃん達、すぐに来るって言ったじゃないですか・・・!」 ジロッ
「あ・・・あはは・・・すぐ戻るっぽかったんだけどなぁ・・・・。」
「も、もう!帰りますッ!!」 ガタッ
はらり・・・。
そう言いながら藍原さんが席から立ち上がろうとすると、
彼女にかけられていた部室のタオルケットが床に落ちる。
「・・・・これ・・・・。」
「えぇっと・・・まぁ・・・あのまま寝てたらなんだから・・・そのぉ・・・・。」
まずい・・・かえって怒るかもしれないなぁ・・・。(汗)
「ごめん。余計な事したかな・・・ハハハ。」
「・・・・・りがと・・・。」
「はい?」
「・・・・・ありがと・・・・。」
「・・・・・・・ど、どういたしまして。」
・・・・・・・・・今、彼女、『ありがとう』って言った?
キョトンとしている俺を尻目に、藍原さんは床におちたタオルケットを拾い、
折り畳んで机に置くと、再び席についた。
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
し〜〜〜ん。
「・・・・・・・・電波ッ・・・来い、電波ッ!!」 ←投げやり
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・おっかし〜なぁ、さっき確かに聞こえたんだけどなぁ・・・・。」
「・・・・長瀬くん。」
「は、はいッ!?」
「・・・・・・・初恋の時って覚えてますか?」
「・・・・・・は?」 (汗)
「長瀬くんの初恋っていつなんですか?」
「な、何を藪から棒に・・・・
「御願いです・・・・教えて下さい・・・・!!」
突然の藍原さんの質問に俺の思考は珍しく止まった。
何かの冗談かと思い軽く流そうとしたが、藍原さんの真剣な表情を見て
少し考えた後、俺はラジオの電源を切って静かに口を開いた。
「しょ、小学校6年くらいの時だったかな。」
「・・・・そう・・・ですか・・・。クラスメートの子ですか?」
「いや、違うよ。」
「じゃあ・・・・別のクラスの子だったんですね・・・。」
「ハハハ・・・。同じ学校の子じゃないんだよ。」
「ひょっとして年上の人ですか?・・・それとも・・・もっと年下?」
「ち、違う違う。」 (汗)
「・・・・・・・・。」
「実は名前とか全然知らないんだよ・・・・。」
俺は何だか小恥ずかしい気持ちで苦笑しながらそう答えた。
「・・・・・え?」
「ひ、一目惚れってやつかな。ははは・・・。
確か冬季全国模試ってやつが東京であったから、泊りがけで参加したんだ。
生意気だろ?小学生のガキがだぜ?」
「・・・・・・・・・!!」
「そこで、ある女の子とぶつかったんだ。漫画みたいに・・・。」
「・・・・・・女の子・・・ですか・・・・・。」
淡々と喋る俺の話を、藍原さんは俯き加減で黙って聞いている。
藍原さんの表情は俺の角度からは微妙に見る事が出来なかったが、
何故か少し震えているように見える・・・?
「その子、凄く大人びてて綺麗な長い髪だった。
なんて言うかな・・・その試験会場には似合わない存在だった・・・って変な言い方だね!
俺・・・・その子に生まれて初めて、一目惚れってやつをしちゃったんだよ。
はは・・・今じゃあんまり顔も覚えてないのに、何言ってんだか。
ま、これが・・・俺の初恋かな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
何だか人に自分の昔話をする機会があまりなかったので
俺は調子にのって話を続けた。
「でさ、そのぶつかった子、消しゴムを忘れてきたらしくておろおろしてたよ。
またさ、それがすげー可愛くて。
変に大人びて見えるくせに急に俺よりも幼く見えるんだよ。
それで俺も格好つけちゃってさ、1つしかない消しゴムその子にあげちゃったんだ。
おっかげでその後俺は大変。マークシートもあったから解答を記入ミスしないように必死だったよ。」
「・・・・・・・・・・・・ッ!!」
「その子、すごく真面目な子で『貰うのは嫌だ。』みたいな事を言うんだ。
だから俺は『同じ場所で待ち合わせしようぜ?』なんて事を格好つけて言っちゃったよ。
内心とても嬉しかったなぁ・・・・。またこの子に会えるんだってね・・・・。」
そう言い終わると、俺は自嘲気味に言葉を吐いた。
「だけど、俺・・・・その約束してすごく後悔したよ。」
「・・・・・どう・・・・して・・。」
「あの後俺、試験途中でぶっ倒れたんだ。」
「!!」
「ガキの頃、滅茶苦茶貧弱だったらしんだよ。
その日も貧血・・・・だったっけ?いや、そんなんじゃなかったよなぁ・・・?
兎に角、倒れちゃってそのまま病院へ直行。
気が付いたら夜になってたんだ・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・死ぬほど後悔したよ。
なんであんな約束したんだろう。とか、なんであの時名前を聞いておかなかったんだろう。って。
きっとあの子、試験終わってから待っててくれたんだと思う。
だけど俺は行けなかった。情けない話だろ?最低だよ・・・・俺って。」
そう吐き捨て、俺は藍原さんの方へ苦笑しながら振り返ると。
「・・・・・・・〜〜〜〜〜〜〜。」
!?
な、何か彼女の様子がおかしいッ!?
「あ、藍原さん!?」
俯いたまま小刻みに震えている藍原さん。
慌てて俺は彼女の傍にかけより、肩を軽くゆすった。
「大丈夫かい!?ど、どうしたんだよ!?」
面を上げた彼女は、眼から大粒の涙をぼろぼろ溢してした。
「えぇッ!?」
「〜〜〜〜グスッ・・・ひっ・・・・」
「ちょ、ちょっと!?」
「〜〜〜〜・・・ひっく・・・わ・・・わたし・・・・。」
「あわわわ!?ぼ、僕何か余計な事を言いましたか!?」 (パニック
いつも俺の前では憮然な態度をとっていた藍原さんが
恥じる事もなく、ひたすら泣きじゃくっている。
・・・・何がなんやらさっぱり・・・・。
お、俺の話に感動したのかな・・・・?んな訳ないか・・・。
ちりッ
『長瀬くん・・・・好きです。』
!?
えッ!?
目の前にいる藍原さんの声が、何故か突然背後から聞こえてきた。
『好き・・・・大好き・・・・!』
振り返って部室中を見回すが、誰もいない。
向き返して藍原さんを見るが、彼女は泣きじゃくったままだ。
『どうして・・・・来てくれなかったの!?』
『私・・・ずっと待って・・・・。』
『ひどいよ。』
やはり部屋の何処かから声が聞こえる!!
俺は焦りながらも、もう一度部屋中を見渡すと共に、耳に神経を傾けた。
・・・・すると、声のする方向には・・・・あのラジオが・・・・。
「ラジオ・・・・電源は切ったはず・・・だよな?」
俺がゆっくりとラジオに近づき、すぐ前まで来た時だった。
ガガァァァーーーーーーー
ピィィーーーーーーー
・・・ジジ・・・ジ
『なんで体が弱かったか知ってるか?』
!?
『ククク・・・・お前が何で貧弱だったか知ってるのかって聞いてるんだよ。』
突然ラジオから不快な声が発せられた。
『あ?何嫌がってるんだよ!これはお前の声だぜ?』
馬鹿な・・・・ありえない!
ラジオの電源は切れている・・・・なのに何故ラジオから音が・・・・。
『お前の体が弱かったのはなぁ、
お前自身の体が毒電波の負荷に耐えられなかったからだよ!』
「!?」
『ち、この貧弱野郎が。今の今までユウスケの事を忘れやがって
・・・・早く俺達を出しやがれ!!』
「な・・・なな・・・・!」
恐怖で足がすくむ・・・・・・体中が警鐘を発する。
コノラジオハキケンダ・・・・・・!
イマスグニハカイシナイト・・・・・!!
『また僕をKILLするのかい?』
!?
『・・・・僕じゃないとアイツは殺せないよ?』
ヤバイ・・・・トテツモナクヤバイ・・・・・・!
『早く・・・僕を・・・・・。』
ガチャ。
「み、瑞穂ッ!?」
突然背後から太田さんの声が聞こえてきた。
「瑞穂ちゃん・・・どうしたの?」
「〜〜〜〜ぐすっ・・・・ひっく。」
「な、長瀬くんッ!!貴方瑞穂に何したのッ!!」
・・・・あぁ・・・・助かった・・・・。
俺は糸が切れた人形みたいに、その場にダラリと膝をついた。
「何してんのよ!貴方は!!」
「・・・ぐす・・・か、香奈子ちゃん・・・・いいの!長瀬くんのせいじゃないの・・・・。」
「何言ってんのよ?現に今泣いてるじゃない・・・・。」
困った顔をしている太田さんの横で瑠璃子さんは俺の様子ずっと見つめていた。
「香奈子ちゃん・・・・長瀬ちゃんの様子がおかしいよ・・・!」
瑠璃子さんは急いで俺の傍に駆け寄ると、
「長瀬ちゃん・・・・?長瀬ちゃん!!」
ゆさゆさと俺の肩をゆするが、俺はその場に倒れこんでしまった。
「長瀬ちゃん!?」
ジジ・・・ガ・・・・
ちりちり・・・・・・・。
「・・・・!?」
ジジ・・・・・・・・。
「瑠璃子、彼、どうしたの?」
「・・・・・電波のコリジョン(衝突)・・・!!」
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
俺の目の前に、女の子が立っていた。
その子は時計を見る度に悲しそうな表情になっていく。
・・・あぁ・・・そうだ・・・・この子だ・・・・・・。
物憂げな瞳が一層綺麗に思える・・・。
・・・俺は彼女の顔を見て微笑んだ。
『・・・・俺、間に合ったよ。』
『・・・・・・・・。』
だけど、彼女は目の前の俺に気付いていない。
再び時計を見ると、その場にしゃがみこんでしまった。
『ねぇ・・・ちょっと、俺が見えてないの!?』
『・・・・・・。』
彼女はそのまま・・・・泣いていた。
何で今頃こんな夢を・・・・・・・・!
・・・・・・・・・・・。
「・・・・目が覚めましたか・・・・?」
夕陽が室内を照りつけ、俺は目を細めた。
どうやら・・・保健室のベッドらしい。
「突然倒れちゃったんですよ?」
俺の傍から藍原さんの声が聞こえてきた。
「あ・・・俺?・・・・そうなんだ。」
光のせいで一瞬顔がよく見えなかったが、
眼鏡を外した藍原さんが微笑んでいた。
・・・・・・・!!
あぁ・・・・そうか・・・・やっと分かった・・・・。
この子・・・・似てるんだ・・・・・俺の・・・・初恋の子に・・・・・。
・・・・スゥ。
再び俺は眠りに落ちた。
「長瀬くん・・・・?」
「・・・・・スゥ・・・・。」
「・・・・・・・・また寝ちゃった?」
「・・・・・・・・・・。」
藍原さんは鞄の中から小さな巾着を出すと、
中から古びた消しゴムを取り出した。
その消しゴムをそっと裕介の傍に置くと
「これ、返すね・・・・長瀬くん・・・・。」
そう呟いて優しく微笑んだ・・・。
保健室を出ると入口前で太田さんが待っていた。
「仲直りは出来たかしら?」
「えへへ。どう・・・かな?」
にこにこしながら藍原さんは持ってた巾着をいじる。
「さっさと告っちゃえばいいのに。」
「も、もう!私は香奈子ちゃんみたいにストレートじゃないです!」
「あ〜ぁ、瑞穂が告ったら、瑠璃子・新城さんとで面白い事になったのになぁ〜。」
「わ、私はちっとも面白くないです・・・・。」 (汗)
「さ・て・と、まぁ冗談はここらへんにして・・・・。
最強のハッカー、ZOO様は何を見つけたのかしら・・・・?」
太田さんがそう言うと、藍原さんは鞄の中からファイルを取り出し無言でそれを手渡す。
「この資料です。」
「・・・・・・・これは?」
「生徒会のサーバにハッキングして、それを見つけました。
・・・・・これで大体の見当はつくでしょう?」
資料に目を通す度に太田さんの表情が険しくなる。
「そう・・・・これが、プロジェクトDね・・・・!!」 ギリッ
― 難解高校屋上 ―
ひゅおぉぉ・・・・。
「・・・・・・・・・・・。」
ちりちりちり
「・・・・ッ!?長瀬ちゃん??」
『半分当たり・・・・。』
慌てて振り返った瑠璃子さんが驚く。
ぼやけた視界の先には、小学生低学年くらいの男の子が佇んでいた。
それはどこかで会ったような・・・・だが恐ろしく冷たい瞳の男の子。
「あ・・・あなた・・・だれ?」
『長瀬ユウスケ。』
「ッ!!」
『どうして驚いているの?貴方が僕を呼んだんじゃないか。』
「ち、違うッ!ワタシは・・・!」
『もう手遅れだよ・・・・僕は誰にも止められない。』
ちりちりちりちり・・・・・・。
「ッ!!」
ほんの一瞬瑠璃子さんが目を離すと、すでに男の子はいなくなっていた。
「・・・・・どうしたらいいの・・・・母さん・・・・!」
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