鬼兵般家長特別変


                                                           
コートの鬼 〜アタック21〜

 

 

「はい、お兄ちゃん♪」

 

「ありがとう。」

 

初音ちゃんから御飯の盛られた茶碗を受け取り、

 

「いただきまぁ〜っす♪」

 

「めしあがれ。」

 

梓がすっと傍に漬物を置いてくれた。

・・・・・柏木家の朝食。

今朝は珍しく平和かつ静かなので俺は嬉しい限りだ。

相変わらず梓の作るメシは上手い。

あまり他所で御飯を頂いた事はないが、

多分梓ぐらいの腕前だったら、きっと料亭とかでやっていけるのにな。

 

「耕一ぃ、何ニヤニヤしてんだよ?」

 

「んあっ?あぁ、ちょっとな。」

 

千鶴さんが朝食を済ませ、立ち上がった。

 

「梓、ごちそう様。」

 

「お粗末さん。あれ?姉貴どっか行くのかい?」

 

「ちょっと、書斎に行くだけよ。」

 

千鶴さんが居間を出て行くと直ぐ、誰かが後ろから抱き付いてきた。

 

ガバッ

 

「お、おわっ!?」

 

「お兄ちゃぁ〜ん♪」 ゴロゴロ〜♪

 

「は、初音ちゃん・・・ど、どしたの?」

 

「今日は私と遊ぼうよぉ〜?」

 

「は、ははは・・・・。」

 

ビュン

 

!?

 

対面で味噌汁をすすっていた楓ちゃんが

すぐさまお箸を投げ付けて来た・・・・。

それを紙一重で避ける初音ちゃん。

カカッ

お箸が柱に突き刺さる・・・・。

 

「・・・・・初音、図に乗るな。

 

あん?てめぇは先日映画に連れてってもらったじゃん!」

 

「・・・・・妻の特権です。」

 

「んじゃ第2夫人の私にも特権ってものがあるだろ?」

 

「・・・・・前世では上手く後釜になったけど、

 ・・・・・今はいけると思ってるの?」

 

「前世みたく、とっとと逝けっての。

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

「こ、こらっ!だから勝手に前世の話を持ち出すなっての!

 そんな事言ってたってしょうがないだろ?」

 

「・・・・・・・・ひどい、ダーリン」 うるうる

 

「あ、あんなに愛し合ったのに!」 よよよ

 

・・・・はいっ!?

いきなり新必殺技っすかっ!?

しかも痛ゥープラトンっすかっ!!

二人はいきなりしおらしくなり、ヨヨヨと泣く振りをしている。

ったくなんて姉妹だ。

 

「ねぇ〜ねぇ〜、『突き姫』見よ〜よ〜?」

 

「えぇっ!もういいよ・・アレは・・・面白くなかったし・・・・。」

 

「・・・・・・そうですか?私は面白かったですが・・・。」

 

あんたが好きでも俺は嫌いだっ!(涙)

・・・・・・・・・。

結局、仕方が無いので渋々みんなでどこかへ遊びに行く事にした。

さっそく梓や千鶴さんを誘おうと思い、声をかけると

 

「出かけんの?・・・でも、今日午後から雨降るぜ?」

 

「えっ?マジかよ!」

 

「あぁ、降水確率90%だってさ。だからあまり遠出しない方がいいよ。」

 

「う〜む、それじゃ電車乗って行くのはしんどいな・・・。」

 

「なんか候補地あった?」

 

「・・・・楓ちゃんのリクエストはカシオペア座だって・・・・。」

 

「・・・・・・・・・ふうん・・・で、初音は?」

 

遊園地を御希望です。」

 

「小学生かっつーの・・・。」

 

「かく言う梓、お前はなんかいい案はないの?」

 

「うーん。あんまり遠出して、雨にあたるのも嫌だしねぇ・・・。」

 

「って、事は・・・やっぱ近場か?」

 

「そういや、鶴来屋の少し手前のところに、室内テニスコートがあるぜ?」

 

「テ、テニスゥ!?・・・・。」

 

「な、なんだよ。ダメかよ?」

 

「ま、まぁ梓らしいっていや梓らしいんだが・・・・。」

 

「はいはい、どうせアタシは筋肉少女帯ですよ。」

 

「ひ、卑屈になるなよ。そっか、ま、まぁ俺はいいんだが・・・。」

 

チラリと後ろの居間を一瞥・・・。

 

「テニスだってよ〜、コートにかけろ!ってかぁ〜?」 だらだら

 

「・・・・汗臭い。しんどい。意味が無い。」 しれっ

 

・・・・・・・・・・・やっぱり。

てっきり梓は怒ると思いきや、不敵な微笑を浮かべて

 

「じゃあさ、こうしたらどうかな?アタシにテニスで勝ちゃ耕一とデート出来るってのは?」

 

「ッ!お、おいっ梓っ!なんじゃそりゃっ!!」

 

俺が驚いて止めに入ろうとすると

 

「なんだとぉっ!うぉぉーー!!まじかよっ!!」

 

「・・・・・・・・・・・アツイ。」

 

すでに殺る気満々のお二人・・・・。

 

「お、おい・・・どうすんだよぉ〜?」

 

「大丈夫だって♪アタシに勝てる訳ないじゃん。」

 

自信たっぷりに梓がふふんっと鼻を鳴らす。

・・・・・・・・まいったなぁ・・・。

 

「その話。女に二言は無いわね?」

 

突然、渡り廊下から声。

振り返ると、スコート姿の千鶴さんが・・・・。

 

「ち、千鶴さんッ!!・・・ま、まさか千鶴さんも?」

 

「ほほほ♪こうみえても私、隆山の御蝶夫人と言われてたんですよ♪」

 

「何言ってんだか・・・・汚蝶夫人の間違いだろ?」

 

すかさず梓が毒を吐く。

 

「あ?虎羅ッ!筋肉番付が図に乗らないで頂戴。」

 

「面白れぇ・・・んじゃさっそく行こうじゃない。」

 

「・・・・あ、あの・・・俺はしててもいい?」

 

『オラッ!』

 

バキャ

 

「ハジルスッ!?」

 

・・・・・・・・・・・。

【隆山素呆痛童夢】

大きめの室内ドーム型の建物を目の前に

ドドンっと勢ぞろいの柏木4死舞。

う〜ん、みんな殺る気満々だなぁ・・・。

ちなみに右手には、しょぼくれた看板が立てかけてあり

 

『休日はスポーツ!家族でワッショイ♪大乱闘棲魔手ブラザーズ!!

 あの手この手で、親兄弟をブチ殺せッ!!

 

というフレーズと共に、なんか病める御方が描かれたような

生理的嫌悪感を覚えるイラストが描かれている。

・・・・とんでもない看板だなぁ・・・。

 

「・・・・隆山にこんなのあったっけ?」

 

「あれ、知んない?今年出来たんだぜ。」

 

「あらあら♪ちーちゃん腕がなるわ〜♪」

 

「ふふふ、デート・・デート!」

 

「・・・・・どす恋。」

 

ロッカー室でラフな服装に着替え、ガラガラの室内コートに出ると。

すでに梓はウォームアップを始めていた。

彼女らしいラフでボーイッシュなスタイルだな。

靴紐を結び直していると、突如照明が消され、豪快なBGMが・・・。

ジャジャジャジャーン♪

ジャジャジャジャーン♪

どこかで聞いた交響曲の1フレーズが流れた後、

突如としてヘヴィーでメタルな音楽がコート内に響き渡った。

そしてドスの聞いた嫌な声で

 

『DIEッ!DIEッ!!A・ZU・SA・DIEッ!』

 

『人の恋路を邪魔する奴はぁっ!』

 

『・・・・・ミミズに蹴られて死んじまえっ・・・!』

 

『DIEッ!DIEッ!!CHI・ZU・RUもDIEッ!』

 

『毒素入れるな、そりゃカレー!』

 

『・・・・・いい歳こいてブリるなッ・・・!』

 

『『大往生ッ!!』』

 

唖然。

・・・・あの二人って、こういう時は息が合うね。

となりの梓を見やると・・・

ビキッ!ビキィッ!!

既に御怒りだな。(^^;)

 

「ふん、今のうちにせいぜいでしゃばれいいさ!」

 

「って言うかさ、梓。お前ら姉妹でテニスした事あるの?」

 

「いや、ないよ。さっきの家でのリアクションみたら分かるだろ?」

 

「って事は、やっぱ懸賞(俺)の存在が大きいって事かよ・・・。」

 

「まぁまぁ心配しなさんなって♪」

 

「あらあら♪みんな元気ですね♪」

 

「って、千鶴さんっ!何くつろいでるんすか?」

 

何故か、コートの横にあるラウンジでケーキを食べている千鶴さん。

 

「ほほほ、取り合えず初音と楓の出来具合をここで見させてもらいます♪」

 

「あ、姉貴ッ!ずるいぞっ!自分だけ優雅におやつかよっ!」

 

「だってぇ〜、私はプロよ。プ・ロ♪シード選手でもいいんじゃない?」

 

「ケッ!茶でもしばいて、ほざいてろや。どうせ勝つのは私じゃ!」 ぺっ

 

「・・・・・・たまには本気で体を動かそうかしら。」 ボキボキッ!

 

「あ、あのぅ・・・ぼ、ボクはどうしたら?」

 

「あ、耕一はとりあえず審判。」

 

「えぇっ!!何だよそれぇ〜!!」

 

「いいじゃん。取り合えずアタシはあそこの血気盛んな妹達をイワさないと。」

 

渋々、審判を引き受け、席につくと。

梓が右手のコートに入り、屈伸運動。

対する左手のコートには、楓ちゃんと初音ちゃん。

・・・・・え?

これってシングルだよな?

 

「ちょ、ちょっと待って!!あんた達、どういうつもりだよッ!!」

 

なんと、二人がかりで梓に立ち向かうスーパー魔裏汚ブロス

驚きを隠せない梓の声を嘲笑するかのように

 

「どうもこうも、二人がかりが駄目なんて言わなかったじゃん♪」

 

「・・・・・それだけ自信があるんでしょ?」

 

「アホッ!シングルVSダブルスなんてあるかっ!!」

 

「ケッ!口だけ野郎が!いいか?こりゃ戦いなんだよっ!」

 

「・・・・・戦いに卑怯もクソもありません。」

 

「クッ・・・こ、こいつら・・・!」

 

どこまで腐ってるんだろう・・・・・。(汗)

 

「お〜い、梓、どうするんだよ〜?」

 

俺が訊ねると、若干戸惑っていた梓は、落ち着きを払って

 

「フンッ!いいさ、やってやろうじゃない。2人まとめて面倒みてやるさ。」

 

「って言うか、お前まぢで勝てんのかよ〜!」

 

「餓鬼が2人そろったとこで所詮は餓鬼さ。一括払いで丁度いいんじゃない?」

 

「まぁ・・・お前がそういうんなら・・・。」

 

「えへへ♪厄介な梓を先に叩いておかなくちゃね♪」

 

「・・・・・・先手必勝。」

 

試合まえから既に殺気立つ姉妹たち。

 

「で・・・では・・・今から死合を・・・・。」

 

「いいから、さっとと始めて。耕一っ。」

 

「わ、分かったよ・・・。」

 

「あ、それと、試合は変則マッチ。さきに2セット取った方が勝者となるからね。」

 

「はぁ?そ、そんな・・・無茶苦茶短縮してないか・・・?」

 

「いいからぁ!ゴチャゴチャ言うなよ。これが柏木家式テニスなんだから!」

 

「プ・プレイゲームッ!」

 

ボールは楓・初音チームからとなった。

先行は初音ちゃん。

クワッ!

 

「おりゃぁぁ!!死ねやコラァァッ!!」

 

バカンッ!

 

凄まじい音が鳴り響くッ!

と、同時に凄まじい速度のボールが梓のコー・・・

ヒュン

へ!?

・・・・ら、らけっと!?

信じられない事に、ボールを打った直後にラケットまで

投げ付けていた初音ちゃん。無茶苦茶だ・・・。

すぐさま、ボールを打ち返す梓。

だがそこには凶器(ラケット)が飛んでくるッ!

 

「小賢しいッ!!」

 

ボールを打った反動で体を捻ると、ローリングソバット気味に

飛んできたラケットをヒステリックに蹴り砕くッ!!

テニスボールはっ!?

上手いッ!コートの隅ギリギリ、まさにライン上に返されたッ!

そこから楓ちゃんまでの距離は3M以上も離れている。

さらに、ボールは既に楓ちゃんよりも後ろだっ・・・・

 

『オラッ!!』

 

パコーンッ!

 

ラケットを持った何かWith任意が勝手に打ち返す。

・・・・やっぱり。

打ち返されたボールがセンターコートにさしかかった瞬間・・・!

待ち構えていた初音ちゃんが

 

「俺が世界1だぁっ!!」

 

バキャッ!!

 

オーバーヘッドキックで更にボールに加速をかけるっ!

って、待てやっ!テニスとちゃうやんけっ!!

信じられないスピードでボールは梓のコートに突き刺さった!

 

し〜ん

 

「フィ・・フィフティーン・・・ラブ・・・。」 (15−0)

 

「おっしゃーっ!ざまみさらせヴォケがっ!」

 

「・・・・・極上。」

 

「チッ!なかなかやるじゃねーかっ!」

 

これでいいのか!?

 

「ま、待ちたまえ君達・・・・。」

 

思わず声をかけてしまった。

 

「ん?どうした?」

 

「ほえ?」

 

「・・・・?」

 

「あ、あのさ・・・何か間違ってないかい!?っていうか

 もう一度確認するけど、これってテニスだよね・・・?」(汗)

 

「何言ってんだよ。・・・テニスってのはこうだろ?」

 

「お兄ちゃん、まさか知らないの?」

 

「・・・・・・・さぁ、続きを始めましょう。」

 

・・・・・。

この子達はスポーツを熱血高校の某倶楽部か何かと勘違いしているのだろうか?

って言うかさ、こんなGガン●ムなノリが実際出来るのって

世界でもこの姉妹だけじゃなかろうか・・・・?

 

「おっほほほ。さすが私の妹達。やるじゃない♪」

 

・・・・・姉さん、あんたもそうか。

 

「さぁさぁお兄ちゃん!早くぅ!」

 

「ゲームプレイ・・・・。」

 

今度は楓ちゃんがボールを打つのか・・・。

最早既存のダブルスのルールは全く無視されている。

って、初音ちゃん・・・君のラケット、無いんすけど・・・。

 

『オラッ!!』

 

バキャッ!!

 

「阿呆ぅっ!」

 

なっ!?既に梓は限界まで前に詰め寄って構えていた。

迫り来る高速のボールをなんなくそのまま下に叩きつけるっ!

ゴッ!

ひゅ〜〜〜〜〜〜

上に高ぁ〜〜〜く上がったボールはそのまま2階のアリーナに向かう。

このままいけば、楓ちゃんたちは打つことが出来ず、梓のリターンエース・・・だよな?

・・・・って、初音ちゃんが飛んでるっ!?

何かWith任意に放り投げられた初音ちゃんが

ボールの高さまで飛びついた・・・・。

 

「ボケッ!甘いんじゃっ!!」

 

どかぁっ!

 

再び、蹴り。

あのなぁ・・・セパタクローじゃねーんだけど!

しかし・・・・今度は梓もボールを見逃さない。

何故かバッターの構えで

 

「巨人の真・4番はワシやっ!!」

 

・・・・は?

バキャッ!

ボールをしばき上げた。

番長のホームランボールが落下中の無防備状態の初音ちゃんを襲うっ!

 

「初音ッ!往生せいやっ!!」

 

「ゲッ!?やばっ!!」

 

ボスッ!!

 

脇腹に直撃。

 

「ぐえっ!?」

 

きりもみ状態で落下する初音ちゃん!

 

「ま、まずいっ!!」

 

俺は審判席を飛び降り、落下する初音ちゃんを間一髪ダイビング・キャッチッ!!

 

「ハァッ!ハァッ!あ、危なかった・・・・・。」

 

「・・・・ダーリン。そのまま死なせてあげるのが武士の情け。」

 

冗談じゃない。テニスで死にましたはシャレにならん。

 

「きゅ〜・・・。」

 

ぐったり状態の初音ちゃん。リタイアだな・・・・。

 

「あらあら♪オホーツクに消ゆ。ね♪」

 

意味不明なコメントをおっしゃる千鶴さん。

相も変わらずくつろいでいる・・・。

 

「は〜い♪まずは一人目ぇ〜。」

 

梓が勝ち誇った顔でふふんと鼻をならす。

 

「・・・・チッ。やれやれだぜ。」

 

「ちょ、ちょっと俺、医務室に連れて行くから。」

 

「・・・・そのままエッチシーンに突入したら殺しますよ。」

 

「だ、誰がするかっ!!」

 

・・・・・・。

初音ちゃん亡き後、形勢はどうみても楓ちゃんの不利。

 

「楓ぇ〜、素直に負けを認めな。あんたの(何か)じゃ勝てないよ。」

 

「・・・・・外道め、3つ数えてやる。」

 

どこかで聞いたような台詞を言いつつ

ボールを持つとサーブの構えをとる楓ちゃん。

 

「ぞ、続行ッ・・・。」

 

『オラッ!!』

 

バキッ

鋭いサーブを繰り出す楓ちゃん。

って・・・あれ?ボールが・・・・3つッ!?

3つのボールがバラバラに梓のコートに叩き込まれる!

 

「チッ!なかなか考えたじゃないかっ!」

 

「・・・・・3兎を追う者は1兎を得ず。」

 

それよりもアルカノイドのパクリじゃないの?そのサーブ・・・・。

右側に打たれた2球にまずは飛びつく梓。

ギリギリ足で1球、左手に持ち替えたラケットでもう1球を返す!

す・・・すげぇっ!!だけど・・もう1球は・・・!

最後の1球は左のコートのライン上に叩き込まれた。

そこからじゃどうやっても無理だ・・・・。

・・・・しかし・・・。

 

「チャーシューメンッ!!」

 

梓は気合の入った掛け声?と共に、なんとラケットを投げ付けた。

・・・・・ところでその掛け声って、そういう場面で使うんだっけ?

ガッ!

見事に投げたラケットはボールを弾き飛ばし・・・

ポーン・・・ポンポン

楓ちゃんのコートに力無く跳ねた。

 

「・・・・・・嘘。」

 

呆然とする楓ちゃん。

まさかサーブを全て返されるとは思ってもみなかったであろう楓ちゃんは、

突っ立ったままで動こうともしなかった。

 

「フィフティーン・サーティ!」 (15−30)

 

すげぇ・・・無茶苦茶だけど・・・すげぇよ梓。

 

「どうしたぁ!?楓ぇ、そこまでかい?」

 

「・・・・・・・クッ!」

魔球?を破られたのが精神的にショックだったのか?

あっさり1セット取られ、引き続き次もセットも

楓ちゃんの惨敗という結果に終わった。

 

「ゲームセット!マッチ・ウォン・バイ、梓ッ!」

 

「よっしゃっ!どうだコラ!」

 

「・・・・・・・そ、そんなバカな。」

 

さすがと言うか、梓は強かった。

・・・・あくまでこのテニスでだけど。

 

「さぁ、姉貴ッ!今度は貴様の番だ!」

 

「にやり。」

 

足を組んでイスに座っていた千鶴さんが不敵な笑みを浮かべる。

その時・・・

 

「・・・・もう一度・・・!もう一度よっ!」

 

珍しく楓ちゃんが大きめの声で主張しだした。

 

「は?何言ってんのよ。あんた?もう試合は終わったわよ?」

 

「・・・・まだよっ!今度は私とサシで勝負しなさいっ!」

 

サシって言っても・・・実質初音ちゃんは直ぐダウンしたから

ほとんど楓ちゃんと梓とのタイマンだったんだけどなぁ・・・・。

 

「・・・・・認めないっ!今の死合は無しよっ!!」

 

「えぇ〜〜!ズルいぞ楓ぇ・・・っていうか、アタシにも体力ってのが・・・・。」

 

「・・・・・・嫌ッ!耕一さんをこんな事で渡したくないっ!」

 

「か・・・楓ちゃん・・・・な、なんか勘違いを・・・・。」

 

すると・・・・。

 

「こぅの、未熟者がぁぁーーッ!!!」

 

バキャッ!!

 

!?

 

何時の間にか楓ちゃんの背後に回っていた

千鶴さんが、楓ちゃんに一喝!

姉さんッ!

それじゃまるで某独善的パパじゃないっすかっ!!

 

「きゃあっ!」

 

不意を突かれた楓ちゃんはそのまま水平に吹っ飛ぶっ!

 

「わわわっ!だから暴力はだめだっつーのっ!!」

 

壁に激突寸前のところで俺はどうにか楓ちゃんをキャッチ。

 

「大丈夫かい?楓ちゃん!」

 

「・・・・こ、こういちさん・・・に、逃げて・・・。」

 

ガクッ

 

は?逃げる?

気を失った楓ちゃんを同じく、医務室に運びコートに戻ると

とうとう千鶴さんが、降臨。

えいっ♪えいっ♪ってな具合に

準備運動を行っていた。

 

「ふふふ・・・やはり・・妹達では・・・役不足だった・・・みたいね。」 グイグイ

 

「姉貴には・・・そういや以前借りがあったな。」

 

「えっ!?お、おい梓。お前さっき姉妹とした事ないって・・・・。」

 

「ん?あぁ、実は姉貴とは以前やった事あるんだよ。」

 

「そうそう♪あの時は梓もまだ子供で、私が色々と指導してあげましたの。」 ポキポキ

 

「テニスは、姉貴に教えてもらったのさ。」

 

「おほほ♪言わば師匠って事ですわね!」 す〜は〜 す〜は〜

 

あんたかいっ!バトルテニスを考案したのはっ!!

師匠っていうか、しっかり梓のテニス観に支障をきたしているじゃねーか。

 

「ハハハ・・・はぁ〜。んじゃとっとと始めて下さい。」

 

「うふっ♪耕一さん、梓をちょちょ〜いとシメたら、

 もしもしピエロでデートしましょうね(はあと)

 

「ッ!!あ・ああああずさぁっ!絶対勝てよなっ!!」

 

あん♪耕一さん冷た〜い♪」

 

「あぁ・・・絶対勝ってみせる!」

 

きゅっ。と唇を噛み締める梓。

・・・・へっ!?

何か・・・言い方が変じゃないか?

 

「ちょ、ちょい待ち!お、お前まさか・・・・。」

 

「心配すんな。昔は一度も勝てなかったが、今は違うから!」

 

やっぱり〜〜〜!!(号泣)

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

不敵な笑みを絶やさない千鶴さん。

なんとマイラケットを持参していたらしく、カバーをはずしていた。

・・・・・て、あれ?

 

「ち、千鶴さん・・・な、なんすか?それ・・・・?」

 

「え?ラケットですけど。」

 

「それって・・・世間一般では羽子板っていうんですけど。」

 

「いえいえ、これは私専用のラケット。獲苦棲狩婆(エクスカリバー)です。」

 

と言いながら、鉄板を貼り付けたイカツイ羽子板を取り出した。

持ち手の部分には「ちーちゃん専用」という掘り込みが・・・・。

違う・・・何かが違う。

 

「お・・・重いでしょ?それ・・・。」

 

「えぇ♪ざっと10Kgほどありますから♪」

 

どっからどう見ても、『ドラゴン殺し』にしか見えない

鉄の塊を難なくスイングしている千鶴さん・・・。

 

「・・・・・。」

 

もう嫌。この人達・・・・。

 

「さぁ、準備はいいか?姉貴ぃ〜。」

 

「えぇ、いいわよ。サーブ権はそっちにあげるわ♪」

 

「フンッ!余裕しゃくしゃくって感じだな!」

 

「で、では・・・プレイゲームッ!」

 

「だりゃぁぁーーっ!!」

 

バカンッ!

全力でサーブを打つ梓。

しかし・・・・。

 

「えいっ♪」

 

パカンッ。

 

!?

 

あっさりこれを返す千鶴さん・・・で、出来るっ!!

しかも、鉄の塊で打ち返したボールは

すさまじい勢いで梓に向かって襲い掛かるッ!

 

「クッ!!」

 

ガッ!

 

ボールを捉えたガットがミシミシと嫌な音を立てる。

 

「おおおおおりゃぁぁぁ〜〜〜!!!」

 

気合でボールを打ち返したっ!

 

「はいっ♪」

 

ポカンッ

これまたあっさり打ち返した千鶴さん。

梓が懸命に返そうとしたが・・・・

バツンッ!!

・・・・ガットが負荷に耐え切れず、とうとうブチ切れてしまった。

 

「あ・・・・ラ、ラケットが・・・・。」

 

ほ〜〜〜ほほほっ!御姉様に勝とうなんて、10年早いんだよ!

 

などと、一昔前にゲーセンで流行ったような台詞をのたまう千鶴さん。

 

「〜〜〜〜クソッ!!」

 

「はわわ、梓ぁ〜〜!やばいっすよ〜〜!!」

 

「耕一・・・どうしよう!普通のラケットじゃ歯が起たないよ・・・!」

 

確かに・・・・ありゃ犯罪だ・・・・。

どうしよう・・・・普通のラケットじゃ・・・・。

・・・・・・まてよ?

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

そう言い残して俺は、外へ出て行った。

そして、入口付近にあった例の嫌な看板をしげしげと見つめ・・・

 

「よ〜し、これだっ!」

 

ベキッベキッ!!

・・・・・・・・・。

 

「ったく耕一さん、何処行ったのかしら・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「もしかして、逃げたのかしらっ!?」

 

「・・・・・・・まさか。」

 

「御待たせッ!!」

 

「耕一さん♪」

 

「ッ!!耕一!何してたんだよ!」

 

「おぉ!悪りぃ、これを使えよ!」

 

そして差し出したのは・・・。

千鶴さんと同じような鉄の塊。

 

「・・・・耕一・・・これって・・・・。」

 

「・・・・うん・・・外の看板・・・・。」

 

俺は鬼の力を使って外にあった鉄製の看板を

力任せにプレスして無理矢理ラケットにしてしまったのだ。

 

「ぷっ・・・くくく。あんた・・・最近、姉貴に似てきたな。」

 

「はぁっ!?やめろよそんなブラックジョークは!!」

 

虎羅っ。何2人でいちゃいちゃしてんのよ?

 耕一さん!貴方は審判なんだから、贔屓しないで下さいッ!!」

 

「いや・・・その、審判だからこそ、平等な試合環境を・・・・・。」

 

「もうっ!!いいですっ!梓、さぁ打って来なさい!!」

 

「へへへ。姉貴、これで五分五分だな!」

 

そう叫ぶと、サーブの構えに入る梓。

 

「おりゃぁ〜!!」

 

バチコーンッ!

ビュンッ!

ボールを叩き込むッ!

 

「梓ばっかりズルイ!」

ぱかんっ♪

 

「くたばれっ!」

バコンッ!

 

「ちーちゃんも耕一ブランドが欲しいっ!」

ぽこんっ♪

 

「アホかっ!」

ドコッ!

 

「しつこいわねっ!」

ぺこんっ♪

 

「これでどうだぁっ!」

スパァーーンッ!!

 

「っあ!!」

 

「フィフティーン・オールッ!!」 (15−15)

 

ニューラケットを手に入れた梓が逆襲を開始。

・・・・バシッ!

 

「ゲームオーヴァ!1セット、梓ッ!」

 

「っしゃっ!!」

 

なんと、1セット目は梓が勝ったのだ。

 

「ふぅ〜・・・・助かった。そのままあと1セットとっちまえよ!」

 

「まかせとけって!もうアタシの方が強くなってたよ。」

 

にっこりとガッツポーズをとる梓。それに対して千鶴さんは

 

「・・・ほほほ。さて♪準備運動はここまでよ。

 

と飽く迄余裕の素振りを絶やさない。

 

「ふん。なに言ってんだか。」

 

梓が呆れた口調で言葉を返すと、千鶴さんは履いていたシューズを

何故か脱ぎだし、ラケットをしまい出した。

 

「あ、あら?千鶴さん。何してんすか?」

 

「ちょっと待って下さいね♪よっと・・・。」

 

ゴスッ

・・・・ゴスッ?

千鶴さんが脱ぎ捨てたシューズが地面に落下すると、嫌な音を立てた。

 

「・・・・ま・・・まさか・・・。」

 

恐る恐るそのシューズを持ってみると・・・・。

 

「ゲッ!!お、重ッ!!」

 

「そうですね♪いつもはそれを履いて運動してますから♪」

 

・・・あんたはヤツか?緑色のヤツなのか!?(汗)

そして愛用ラケットを専用バッグにしまうと、

中からもう一本、普通のラケットをとりだしたのだ。

しかし、ガットの部分が妙だ・・・・。

 

「千鶴さん・・・そのラケットのガット部分・・・材料は何すか?」

 

「ピアノ線です♪」

 

オーマイガット!!

 

トータルすると、コシヒカリ一袋分くらいの錘をはずしたソルジャー千鶴さん。

タンタンと軽い足取りでフットワークと素振りを始める。

ブオッ!

ブォッ!!

ものすごい風が巻き起こる。

・・・・ヤ、ヤバイぞ梓・・・こりゃホンモノだ・・・。(滝汗)

 

「さて、じゃあ始めますか♪」 にっこり

 

「プレイゲームッ!」

 

千鶴さんがサーブを打つ・・・。

 

「ぬんっ!」

 

スパンッ

 

「えっ!?」

 

スターンッ!

 

「は、早ッ!!フィ・・・フィフティーン・ラブ。」

 

恐ろしい速度のサーブで思わず俺も梓を見逃してしまった。

 

「ほっほっほ。これぞ家長の実力よ♪」

 

「あんにゃろ・・・やってくれるじゃん!」 ビキィッビキィッ

 

強がりを言ってはいるものの

千鶴さんの未知の力に戸惑いを隠せない梓。

 

「おほほ♪ぬりゃ!

 

スパァーッ

ビュンッ!

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「ゲ・・・ゲームオーヴァ・・・・。1セット・・・千鶴さん・・・。」

 

2セット目は梓の惨敗に終わった・・・。

 

「ほ〜ほほほッ!このまま耕一さんをゲットゲットよ♪」

 

「クッ・・・1セット目を取って完全に油断してたよ・・・!」

 

「私の実力が分かったでしょ?分かったらさっさと耕一さんを譲りなさい。」

 

「いや、あの千鶴さん・・・譲るも何も僕の意思は・・・・

 

「フンッ!油断したって言ってるだろが!次はこうはいかねーよ。」

 

・・・・・・無視ですか。

いよいよ第3ラウンドが始まった。

QOH的に言えば、ファイナルラウンドと言えよう。←?

サーブは再び梓にうつる。

って、言うか負けんじゃねーぞ!?頼むからっ!

 

「コンチクショーッ!!」

バコンッ!

 

「えいっ・・・て、あ、あら?」

チッ

・・・・むっ!?珍しく千鶴さんがミートし損なった!

ひゅ〜〜〜

ボールはセンターの上空に飛んでいってしまった。

次の瞬間

!?

 

「シャァァッ!!」

 

「アタァーッ!!」

 

北斗と南斗の熾烈なボールの奪い合いが展開・・・。

上空で激しい攻防を繰り広げるダブルドラゴン。

パンチ、キック、凶器攻撃の応酬・・・もう見てられない。

 

「クッ!妹なんだから御姉様に譲りなさいッ!!」

 

「ア、アホッか!耕一の人生が懸かってるんだッ!」

 

・・・・やっぱ懸かってるの?(汗)

鬼の爪で梓に切りかかる千鶴さん!

シュッ!梓の頬に切り傷が・・・

 

「クッ!このクソ姉貴ッ!」

 

「ほほほほ♪く・た・ば・れ♪」

 

千鶴さんがすかさず2撃目を繰り出そうとした矢先、

ガッ

梓が千鶴さんのラケットのガットを右手で掴み、にやりと笑った。

 

「ッ!!し、しまったっ!?」

 

「ふふふ。姉貴、甘いぜ?」

 

ブチィッ!!

梓御自慢の『粉砕する右手』が炸裂ッ!!

千鶴さんのラケットのガットは見事にバラバラ。

 

「あぁぁ!!な、なんて事するのっ!!高いのよッコレッ!!」

 

「知るかバカッ!おりゃッ!!

 

さらに、左手で落下してきたボールを掴むと、千鶴さんのコートにシュート!

・・・・って、ハンドじゃねーかよッ!!

スパーンッ!

 

「フィ・・・フィフティーン・・・ラブ・・・。」

 

「おっしゃーっ!!」

 

「おっしゃーじゃねーっ!!虎羅!!」

 

突然、千鶴さんの飛び蹴りが梓を襲うッ!

 

「うおっ!な、何しやがるッ!!」

 

「ラケット壊すなんて、卑怯でしょうがっ!どうすんのよっ!

 試合が出来ないじゃないっ!!」

 

「あら、そうかい♪じゃあこの勝負は姉貴の負けって事だね。」

 

「またんかい虎羅。仕切り直しじゃダボがッ!!」

 

「・・・・・・・・チッ!もうやめだやめだっ!テニスなんて堅ッ苦しい事なんてやめて・・・・

 

「あら♪私も同感だわ♪」

 

「拳で決着つけようじゃねーかっ!!」

 

「上等じゃ虎羅。」

 

うばしゃ〜〜〜!!

 

「死ね、バカ姉貴ッ!!」

 

「生意気なのよっ!あ・な・た・はッ!!」

 

・・・・・・ピタ。

 

「・・・・耕一さんは何処に行ったの?」

 

「・・・・そういえば・・・・いねぇ・・・。」

 

・・・・・・・・・。

 

・・・・・・・・・やってしまった・・・・。

・・・・・逃げてきてしまった。

ひゅううう〜〜〜

何時の間にか隆山の岬まで来てしまった俺・・・。

そろそろ日も暮れかけ、ほんのり夕日が海面を赤く染め始めていた。

そんな海を見ながら佇んでいると・・・。

誰かが横からスッとダバコを差し出してきた。

 

「・・・・吸うかい?」

 

「・・・・あ、こりゃどうも・・・。」

 

俺と同じ年頃で、見るからに旅行者らしき男がタバコをくれた。

普段は吸わないが・・・なんか今は無性に吸いたい・・・。

シュボ・・・

フ〜〜

 

「女で悩んでるっぽいな?」

 

「ッ!!どうして分かったんだ!?」

 

「フッ・・・顔を見れば分かる・・・・。」

 

「そうか・・・アンタもそのクチかい?」

 

「まぁな・・・・。」

 

「何処から来たんだい?」

 

「俺は・・・・

 

『冬弥くぅぅ〜〜〜〜ん』

 

どこからともなく女性の声が聞こえて来た。

その途端、その男の顔色が一変し、

 

「す、すまない!そろそろ行かなくては・・・・。」

 

「そうか・・・達者でな。」

 

「あぁ・・・じゃなっ!」

 

軽い別れの挨拶を交わした後、男は必死の形相で走っていった。

それから2分も経たないうちに、黒髪と茶髪の2人の女性がやって来て

 

「チッ!!ここにもいないわっ!!」

 

「遅かったのね・・・!ホント逃げ足の早い人ッ!!」

 

と、心底悔しそうな顔をして、辺りを見回していた。

およよ!よく見たら・・・・・物凄い美人だぞ・・・!

・・・・あれっ?この2人って・・・どこかで見たような・・・・

 

「どうしよう、理奈?一度駅に戻ってみる?」

 

「・・・・ッ!!待って、由綺!その人の足元ッ!」

 

ふと、茶髪の方の美人が俺の足元に目線を落とした跡、

ツカツカと歩みよって来て、地面に落ちている数本のタバコを見つめた後、

さっきもらったタバコをまだ吸っている俺を睨みつけ、

突如・・・・・

カチャ

 

「へっ?」

 

!?

 

なんと・・・!腰からパイソンらしき拳銃を出したと思うと

いきなりそれを俺の眉間に突きつけたっ!!

 

「はわっ!はわわっ!?ちょ、ちょっと・・・チャカッ!?」

 

「いい?貴方。死にたくなかったら私の質問に正〜直に答えなさい。」

 

「わ、分かった分かたあるよっ!話せば分かるっ!!」

 

・・・うぐぅ。厄介な事に巻き込まれなければいいのだが・・・・。

 

「貴方の吸ってるそのタバコ・・・貴方のなの?」

 

「こ、これっすか!?こ、こりはさっき知らない男にもらったんですぅ〜!」

 

「ちょ、ちょっと理奈。堅気の人間だよ・・・!」

 

「いいからっ!任せて。・・・・・で、貴方、その男は何処に行ったの?」

 

「い、いや・・・・ほんのさっき凄い勢いで逃げていったよ・・・。」

 

すると、茶髪美人は俺の瞳の奥を覗き込むように見つめた後、

しばらくして銃をしまい、

 

「ありがと。脅かして御免なさい。」

 

ちゅ

 

俺の頬に軽くキスをすると、もう一人の黒髪美人と相槌を打ち

物凄い速さで走って去っていった。

 

「チッ!冬弥のヤツ・・・殺すッ!!」

 

「あの傷じゃそんなに遠くにはいけないわ・・・」

 

・・・・・・・。

・・・・・・・・なんだったんだろう・・・・今のダーティペアは・・・・。(汗)

 

ヴォンヴォヴォヴォンヴォヴォンヴォン!

 

パパパパパパパパパパパパー♪

(↑おなじみゴットファーザー)

 

!?

 

後ろを振り向くと、イカしたバイクに跨った女性2人組み・・・・。

2人とも一昔前の学生運動みたいな格好をして

片手には木刀を持ってこちらを見据えている。

 

おっ?虎羅。こんなところで何してんだ?あ?」 ビキッ!ビキッッ!!

 

何バックレてんだ?虎羅?誰が帰っていいって言った?あ?」 ビキィ!ビキキッ!!

 

ひ、ひぃぃーーーーーっ!!!!

 

アフゥ〜♪

 

柏木族に追い立てられ、今日も隆山海岸には俺の悲鳴がこだましていた。

 

兎に角もう、隆山や家には・・・帰りたくないぃぃ〜〜♪

 

 

 

( すれ違う 毎日が 増えて逝くけれど お互いの 鬼喪恥はいつも 傍にいるよ・・・・ )