鬼兵般家長



DIE10話 鬼ちがひ娘参上。 〜羅侮・羅侮・羅侮〜

 

温泉街を抜けると、海に続く県道にさしかかる。

俺はそのままブラブラと県道を道なりに歩いた。

通る車もまばらで、何処からともなく潮風も吹いてくる。

やがて道は海岸沿いになり、眼下には海と砂浜が広がった。

海岸におりて、俺は腰を下ろした。

サザ〜〜〜〜ン・・・・←波音

・・・・・・・♪

やはり海はいいぜ。

波音に心を和ませながら、鼻歌まじりで御機嫌な俺。

ふと、そこで初めて誰かが後ろの方に居る事に気付いた。

・・・・・!

俺、ひょっとしてつけられてた?

しまった・・・すっかり柏木姉妹の存在を忘れていた!

楓ちゃんあたりなら、いつ後ろにいてもおかしくないよな。

恐る恐る後ろに振り返ると、20メートルほど離れたところに

女の子が立っていてこちらを睨んでいた。

ザザ〜〜〜〜・・・・

・・・・・・・・・はて?誰だっけ?

背丈は楓ちゃんよりも少し高いくらい、髪は肩まで伸ばしており、

顔は・・・う〜、逆光でよく見えないが、まぁ、かわいいと思う。

見た目から察するに高校生あたりではないだろうか?

まぁ、それはともかく明らかにこちらにガンを飛ばしているし、

立ち姿も腰に手をあてて、仁王立ち状態だ。

・・・・いつ頃からつけられてたんだ?俺もまだまだだな。

自嘲気味に笑ってはいたが、肝心な事を忘れるとこだった。

・・・・・で、誰だこの子?

この土地で恨みを買うような事はしてないが・・・。

強いて言うなら、とある姉妹には付狙われてはいるが。

と、色々馬鹿みたいな事を考えているうちに

例の女の子はこちらへ向かって歩み寄り始めた。

ザザ〜〜〜〜〜ン・・・・・

ざっ・ざっ・ざっ

・・・・・・・・・やれやれ。

俺に近づくにつれ、逆光で見えなかったその子の顔が見えてきた。

 

「・・・・・・・・・・あ。」

 

この子って確か・・・どっかで見たような・・・!?

 

「・・・・・・・柏木・・・・耕一さんですよね?」

 

「・・・・・・・・そうだけど・・・君は・・・・?」

 

「以前、お会いしてるはずですけど、ひょっとして覚えてませんか?」

 

「あっ!!」

 

そうだ・・・・思い出した・・・・。

 

「・・・・・日吉かおりさんだっけ?」

 

「そうです。」

 

ザザァ〜〜〜〜・・・・

そうだ、この子は「日吉かおり」と言って、梓と同じ高校の子だ。

梓は実は陸上部に所属しており、この子は確かその部のマネージャーかなんかだった。

そういや俺が居た時に、何度か柏木家に来た事があったな・・・。

・・・・・・・・で、その子が俺になんの用?って言うか、何故にメンチ切ってる?

 

「あの・・・・それで、俺に何か?」

 

「ええ、さっき温泉街で見かけましたのでついてきました。」

 

「はぁ・・・・んで、何故に?」

 

「耕一さんは、何故ここにいるんですか?」

 

「は?何故と言われても困るが・・・・いや、年末は柏木家で過ごそうかと思ってね。」

 

・・・・・まぁ、ぶっちゃけ拉致されて来たようなもんだ。

 

「帰って下さい。」

 

「はい?」

 

ザッブ〜〜〜〜〜ン・・・・・・

何?今、帰れって言ったの?

・・・・・・意味が分からん!

 

「ですから、今すぐ帰って下さい。星に。

 

「ちょ、ちょっと待つぼっくり!なんだいきなり!訳が分からないんだけど!」

 

「あなたが居ると、梓先輩がどんどんダメになっちゃうんです!だから、今すぐ帰ってっ!」

 

「い、意味が分かんね〜〜っ!!!」(;´Д`)

 

・・・・・・嫌々、連れて来られた上、JIS規格外の料理を食わされかけ、

風呂で水着アタック、寝床でも添い寝アタック

たった一日で既に精神はボロボロ状態なのに、

その上、大して親しくもない女子高生にいきなり「帰れ」コール。

もうアメリカに行って肉体改造でもしたくなった。

ザザ〜〜〜ン・・・・・・

 

「俺がここに居たら、梓がダメになると?だから帰れと?」

 

「そうです!」キッパリ

 

「梓がダメになるって、どう、何がダメになるの???」

 

「あなたがここに居ると、梓先輩がどんどん弱くなっちゃうんです。」

 

「弱くなるって・・・何が?」

 

「何でもいいんですっ!とにかく困るんですっ!」

 

「あの・・・・・俺と梓と君と・・・一体なんの関係が??」

 

「そんな事、言う必要ありませんっ!!」

 

「はぁっ!?無茶苦茶やんけっそれ!!」

 

「もうっ!帰れっ!あんたなんか大ッキライなのっ!!」

 

「うぐぅ。ひ、ひどい・・・。」

 

「キライッ!キライッ!大ッキライッ!!」

 

「パッ・・・・パクリやんけっそれっ!」

 

(このやろ〜〜)っというような具合で俺に砂を投げつけてくる。

ダメだ、この子、少し頭のネジが緩んでいるに違いないっ!

こういうのは相手にしない方がいいな・・・。

俺は砂をかぶらないように避けつつ、撤退体制に入った。

 

「逃げる気なのっ!卑怯よっ!」

 

「お兄さんはネジッ子を相手にしてる暇はないのっ!バイブリ〜〜♪

 

「かえせっ!先輩をかえせっ!!」

 

「は?返せ?なんのこっちゃ・・・。」

 

「先輩はあたしのモノなのー!!あんたになんか渡さないんだからぁ〜〜!!」

 

ゲッ!?

 

 

流石に俺も何となく状況がつかめてきた・・・・きたが・・・・。

まさか・・・・この子・・・・・レーズンパンですか・・??

 

「あのさぁ・・・かおりちゃんってまさか・・・梓ラブって言うか・・・。」

 

「悪いのぉ!?好きなんだもんっ!

 

 しょうがないもんっ!」

 

はい、撤退。

 

俺は脱兎の如くその場から離脱。

砂浜ではあの子がわめき散らしている。っていうか何故号泣している・・・。(汗)

まぁ・・・その・・・梓は姉御肌だからなぁ・・・・。

あの子が来た時、なんとなく梓が嫌がってたような気がしたのはこの為か・・・・。

・・・・・砂浜でかおりちゃんが泣き崩れていた・・・・。

・・・・・・何か可哀想になってきた。

 

 

(つづく!)