鬼兵般家長



DIE12話 とお鬼落日 〜アッコにおまかせ〜!?

 

気が付くと、俺は駅前のクレープ店でクレープを片手に呆けていた。

となりでは楓ちゃんが美味しそうにクレープを食べている。

・・・・・あれ?ついさっきまで、確かかおりちゃんと茶屋に居たような・・・?

訳が分からん・・・・。兎に角思い出せない・・・・。

 

「・・・・・おいしいね・・・耕一さん。」 にこにこ

 

「はぁ・・・・楓ちゃん、俺・・今まで何してたかな?」

 

「・・・・私と・・・デート・・・。」 ポッ

 

・・・・嘘だ。

 

それはまず在り得ないな。・・・・にしても、後頭部が痛い・・・・・。

 

「な、なぁ楓ちゃん・・・。」

 

「・・・・・はい?」

 

「あのさ、日吉かおりって子を知ってるかな?」

 

「・・・・・知ってるも何も、となりのクラスの子です。」

 

「えっ!?そうなんだ。ふ〜ん・・・・・。」

 

「・・・・・・・・はもはも。」

 

「あ、あのさぁ、その子って、何か変な噂とか聞いてないかな?た、例えば・・・・。」

 

・・・・・・聞きづれぇ・・・・。

 

『レズっぽいとか聞いた事ない?』なんて、ぶっちゃけ聞けないよな・・・・。

 

「・・・・・・あの子、レズですよ・・・・。」 しれっ

 

「・・ぶっ!!」

 

思わずかじり掛けのクレープを吹き出してしまった。

 

「あ、あはは。なんだ、有名なのか・・・・。」

 

「・・・・いえ、一部の人間しか知らないと思います。

 ・・・例えば梓姉さんの部活の数名の部員、それと私達姉妹、

 ・・・・あとは本人の友人でしょうか・・・・。」

 

「そうか・・・・。まぁ、梓にとっては大迷惑だな。ははは。」

 

「・・・・・以前それに気付いた初音が大爆笑して、学校で言いふらそうとしましたが、

 ・・・・・・・・梓姉さんにボコにされてました。」

 

「・・・・・・・・・・・ほんと仲悪いね。君達姉妹って・・・・。」

 

「・・・・・耕一さん、早く私をあの羅刹の家から連れ出してほしいなぁ・・・・。」 もじもじ

 

「さ、さてと、そ・・・・そろそろ出ようか?」

 

「・・・・・・・・・・・・・シカトかよ。」 ぼそっ

 

とりあえずクレープ店を出た俺達は駅前を後にした。

商店街を歩いている頃には日も暮れかかり、空は夕焼け空になりつつあった。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

・・・・ずっと無言のまま歩いてきたけど・・・気まずい・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・耕一さん。」

 

「ッ!は、はひ。」

 

「・・・・・・・こうやって二人っきりで歩くのも・・・・久しぶりですね・・・・。」

 

「うん?あ、ああ、そうだな。昔いっしょにお祭りの夜店に行った時以来かな?」

 

「・・・・・・・クスッ、違いますよ。耕一さん。あの時は初音もいましたよ。」

 

「あれ?そうだっけ?二人っきりって、そう言えば思い当たらないなぁ〜。」

 

「・・・・・あの頃はここも平原で何もなかったけど、月はとても綺麗でしたね・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・はい?」

 

「・・・・・・クス・・・・なつかしいなぁ・・・・一体何百年経つんだろう・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

・・・・・・また前世の話ですか。

 

しまった・・・。そう言えば家でたまたま二人きりになった時は

必ず前世の話を振られていたよな・・・・。迂闊!

まさかここで振ってくるとは・・・。

で、俺はどうコメントすればいいんだ?

はぁ・・・・・・全く・・・・・。

この子にも困ったもんだ・・・・・・黙っていれば可愛いのに・・・・。

 

ぎゅっ

 

!?

 

突然油断しているところで、楓ちゃんが手を握ってきた。

クッ!前世の話で油断させておいて、ス鬼ン死ッ腐攻撃かっ!

またこう言う時に限って、初音ちゃんあたりが出てきそうなんだよなぁ・・・。

なんとか楓ちゃんの手を振り解きたかったのだが、

俺の背後に立つ楓ちゃんの何かWith任意がそうさせてくれなかった。

・・・・・すると、アーケードの向こうの方で見覚えのある姿が見えた。

 

「・・・・・・あれ、梓じゃないか?」

 

「・・・・・・・姉さんですね。」

 

買い物の帰りだろうか?野菜が頭を出したビニール袋を手に下げて、

梓が歩いていたのだ。

・・・・・て、あれっ!?

よく見ると、その梓の横に女の子がベタベタと付きまとっていた。

 

「・・・・・・・・・・・なぁ、あの子って・・・・。」

 

「・・・・・・・日吉さんですね。」

 

昼頃、あんなに泣き叫んで、たい焼きをしこたま食ってくれた

女子高生がもうケロッとして、梓にぞっこんラブCHU。

・・・・・たくましい子だな・・・。

梓を見ると、ほんと〜〜〜〜〜に嫌そうな顔をしていた。

どうやらまだこちらに気付いていないらしく、

お互い声が聞こえてくる距離まで近づきつつあった。

 

せんぷぁ〜〜い♪だからぁ〜、あさって映画見に行きましょうよぉ〜?」

 

「あ、あのな・・・日吉、悪いけどちょっとここ数日は忙しくてね。」

 

「えぇ〜、どうしてですかぁ〜?かおりつまんなぁ〜い!」 

 

「ほ、ほらぁ、年末だから色々とやるべき家事があるし、受験の対策もあるから・・・・。

 ・・・・ちょ、聞いてるのか?ちょ、ちょっともう少し離れてくれよ〜!

 

「嫌ですぅ〜〜〜♪映画行くって言うまで離れませんよ〜だ。」

 

うわぁ・・・・・。

 

イタイ・・・イタ過ぎる・・・・。

俺も柏木姉妹から毎度毎度ガチンコアタックを喰らってはいるが

あれはあれで、ある意味一番嫌なアプローチ方法かも知れない。

 

「も、もう!日吉ぃ、歩きづらいだろぉ〜!」

 

「ねぇ〜、ねぇ〜♪せんぷぁ〜い、行きましょうよぉ〜?」

 

ど、どうしたんだ!?梓っ!

いつもの猛々しいお前は何処へ!?

『やかましいっ!失せろっカスッ!』 バキィッ!

ってな具合で追い払うんじゃないのか?

 

「・・・・・・流石の梓姉さんも苦戦してますね。クスクス・・・・。」

 

楓ちゃんは他人の不幸は蜜の味と言わんばかりの笑みをこぼしている・・・・。

おや?

ようやく梓がこちらに気付いたようだ。

 

「・・・・・ッ!?こ、こ、こ、耕一ッ!?」

 

(チッ・・・・・邪魔が入った・・・。)←かおり

 

素っ頓狂な声を上げて梓が驚いた。

 

 

「・・・・よ、よう梓。買い物か?」

 

「・・・・・・あ、ああ。今から帰るところだよ。」

 

案の定、梓は瞳で俺に訴えてきた。

(ハヤクタスケロッ!ハヤクタスケロッ!)

う〜む、ここはどうしようか?

ちらっと、だっこちゃん人形のようなかおりちゃんを見ると

親の仇でも見るような目で俺を睨んでいる。

うぐぅ。困った・・・。

無理に引き剥がそうとすると、この場で号泣されるかも知れないし

おまけに噛み付かれるかもしれないし・・・・。

 

『か、楓ちゃん、ちょっと手伝ってくれないかな?』 ぼそぼそ

 

『・・・・・・・・・ええ〜。』

 

『・・・・今度遊びに連れて行ってあげるからさ・・・。』

 

『オラ』

 

とすっ

 

「うっ!?」

 

ガクッ

 

かおりちゃんはその場に崩れるように倒れた。

俺は気絶したかおりちゃんを近くのベンチに寝かせた。

 

「ちょ、ちょっと耕一ぃ、それはやり過ぎなんじゃ・・・。」

 

「俺はこれが手っ取り早くていいと思ったんだが・・・・。」

 

「・・・・・・・当て身。」

 

・・・・・・・。

 

「・・・・ずらかるか?」

 

「だな。」

 

「・・・・・こくこく。」

 

しゅびどぅびどぅ〜♪しゅびどぅびどぅ〜♪

 

かおりちゃんは寝言を言っていた。

 

 

「あぁ〜ん、せんぷぁ〜い・・・。」

 

・・・・・映画のような・・・・夢を・・・・・。

 

(つづく)