鬼兵般家長



DIE18話 素て鬼ぃ〜だぁ〜ねぇ 〜ウティ鬼様〜

 

急いで柏木家に向って走る俺達3人。

次の曲がり角を右に曲がれば・・・・・。

 

「おわっ!?」

 

柏木邸の門前は、瓦の破片や門の木の破片、さらに松の枝などが散乱していた。

塀にいたっては赤スプレーで

 

「耕一、KILL YOU」

 

「このツィキン野郎っ!」

 

「セクシィマザァふぁっかぁ」

 

などと、どこぞのゾッキーの落書きのようなものから

 

「柏木耕一、逝ってよし。」

 

「耕一、氏ね!」

 

「チーチャン、激シク泣イタ。」

 

「(゚д゚)」

 

などといった、アングラちっくなもの。

 

「ルントー、皿返せ。」

 

「ツモッ!・・・ハヤシマスミ。」

 

「補導ビームとチクリーアタック」

 

「早くザナルカンドへ帰りたい。」

 

「酒飲んで頭の回転を速めるんだよ・・・・。」

 

・・・・・・意味が全く分からないものまで

様々な心の叫び(シャウト)が乱れ書きされていた。

 

・・・・・・・・・。

 

「お、おいぃ・・・・なんだよこれぇ・・・・これじゃキ●ガイの家だよ・・・・。」

 

「な、なにぃ?これぇ・・・こんなの私が家を出た時はなかったのにぃ・・・。」

 

「・・・・・・・・はずかしい姉だこと・・。」

 

だが、そんなこじゃれた邸宅からは、身も凍るような殺気が溢れているのが

離れているここまで感じ取れてしまう。

 

「ち、ちょっと俺、様子を見てくるから・・・。」

 

「お、お兄ちゃん、踏み込み過ぎないようにね・・・!」

 

コク

 

俺は忍よろしく、じりじりと塀づたいに門を目指した。

門に近づくにつれ、動悸が激しくなる。

 

「・・・・・ゴク。」

 

・・・・・・門に着いた。

俺は門のわずかな隙間から邸宅内を覗いた。

門の正面には丁度、中庭と玄関があるからだ。

ドクンドクンドクン・・・・。

中庭は意外にも被害がないようだ・・・・。

俺は徐々に目線を玄関に移すと・・・・・・・。

 

『ヒッ!!』

 

いた。

 

玄関の前で、かの不動明王仁王立ちしていらっしゃる。

怒り疲れたのだろうか?目は虚ろで立つ姿は力無く見えるが、

・・・・明らかに俺の帰りを待ち構えてるのが分かる。

千鶴さんから発せられる捕食獣みたいなオーラが、はっきり感じられるからだ。

俺は心底恐怖を感じ、膝が大爆笑して止まらなくなった。

このままここで覗いていれば見つかってしまうので、

とりあえず、激震する膝にムチ打ってその場から緊急避難。

・・・・ズリズリ。

・・・・頼む!もう少し静かに歩いてくれ!俺よっ!

心の中でそう叫びながら、なんとか楓ちゃんと初音ちゃんのところまで避難した。

 

「ハァッ!ハァッ!」

 

ガクン

 

「お、お兄ちゃん・・・!ど、どうだったの!?」

 

「・・・・・・・・やはり、居た?」

 

俺は額の冷や汗をぬぐい

 

「駄目だ・・・・・今入ったら確実に殺される・・・・。」

 

「そ、そんな・・・お兄ちゃん・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・。」

 

「どうしたらいいんだぁ〜!あんな人型決戦兵器を止めるなんて不可能だよ〜!」

 

「お兄ちゃん・・・・・・ヨークに乗って、私と一緒にどこか遠くに逃げよう?ねぇ?」

 

「・・・・・・・・・・初音、だまりなさい。」

 

俺が体育座りでガタガタ震えていると・・・・

スッ

傍でしゃがんでいた楓ちゃんが急に立ち上がった。

 

「か、楓ちゃん・・・?」

 

「・・・・・・・・耕一さん。私が行きます。」

 

「はぁっ!?行くって・・・まさか中へ?」

 

「おねーちゃん、それって自殺行為だよ!今の千鶴はまぢでやばいよ!」

 

「・・・・・・・・いづれ、決着をつけなければと思ってたの。

 ・・・・・・・・・・今が丁度いい機会だと思うの。」

 

「楓ちゃん!なにも事を荒げる必要は・・・・」

 

「耕一さん。」

 

「はい?」

 

「・・・・・・・私、千鶴を倒します。必ず倒します・・・・!」

 

か、楓ちゃん・・・・あんた・・・素敵だぜ・・・!

ツカツカツカ

楓ちゃんは堂々と邸宅正面に立つと、

 

『オラッ!』

 

バガンッ

 

と、勢いよく門をしばき開け、中へ突入していった・・・・・。

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・ゴクリ。」

 

「お兄ちゃん・・・・・。」 ぎゅっ〜

 

固唾を飲んで俺と初音ちゃんが見守っていると・・・・。

 

「うがぁぁぁ〜〜〜!!!」

 

『オラオラオラオラオラオラッ!!』

 

ドガガガガガッ

ミシィッ

ベキィッ

ズズ〜〜〜ン

・・・・・・・・・・・・・。

し〜ん

 

「・・・・ど、どうなったんだ・・・?」

 

「・・・・・・何も聞こえないよぉ・・・。」

 

突然静寂が訪れ、俺達が戸惑っていると突然!

 

バッグォォーーーーン

 

!?

 

目の前の塀が崩れ落ち、何かが吹っ飛んで来た。

吹っ飛んで来た何かは・・・・・俺に直撃。

 

ドスゥッ!

 

「ひぃでぶっ!?」

 

俺もふっとびそのまま向かいの家の塀に直撃。

 

「お、お、お兄ちゃん!」

 

「グワバッ!えんずいが、えんずいがぁぁ〜〜〜!?」

 

苦痛でゴロゴロ転げまわっていると、初音ちゃんの悲鳴が聞こえてきた。

 

「か、か、楓おねえっ!?」

 

「あうぅぅ・・・!えっ!?何だって!?」

 

なんと、塀から飛び出した物体は楓ちゃんだった。

痛くて死にそうな体を引きずりながら、俺は倒れて動かない楓ちゃんに近づく

・・・・どうやら完全に気絶しているようだ。

 

「か、楓ちゃん・・・・・ダメじゃん。」 しくしく

 

「お、お、お、お、お兄ちゃん・・・・・・。」

 

「え?」

 

初音ちゃんの引きつった声を聞いて、振り返ろうとしたが・・・・。

俺は背後からの凍るような視線に、思考が停止した。

しまった油断していた・・・・。

次の瞬間、俺はすぐに悟った。

後ろに・・・・・・・・立っている。

 

「フー!フー!フー!シャァァァァ・・・・・・・。」

 

ハァァァァ・・・・・・・・ッ!!!!

 

究極召還獣がぁ・・・・・

 

俺の後ろに立っているよぉ〜〜〜!!!!

 

 

(ファイヤー火の玉!本能寺ィッ!!)