鬼兵般家長
DIE20話 この鬼なんの鬼? 〜鬼になる鬼〜
「痛っ!いたたたっ!」
「ちょっと、動くなよ耕一!薬が上手く塗れないじゃないか。」
「あ、梓ぁ〜。もう少し優しく手当てしてくれぇ〜。」
「ったく、情けないなぁ・・・。」
俺は居間にて、先程千鶴さんにやられた痕を梓に手当てしてもらっていた。
さすが「オニ」の血を継いでいるだけあり、治りも早い・・・。
改めて自分がヒトとは少し違うと再認識させられ、少し物悲しくなった・・・。
やはり、柏木家の人間は表の世界へ出るべきじゃないかもしれない・・・。
「はい、もうちょっと右肩を上げて。」
「うぐぅ!脇腹が・・・激しく痛い!」
「う〜ん・・・あぁ、大丈夫。折れた骨が接合しかかってるよ。」
「・・・・・・・。」
「・・・・ったく。困った姉貴だな・・・。もう少し手加減ってものを・・・。」
「な、なあ梓。」
「ん?なに?」
「楓ちゃんは、どうだった?」
「あぁ、楓なら心配ないよ。脳震盪を起こして気を失ってるだけだから。」
「そうか。・・・・・梓は医者になったらどうだ?」
「ばぁーか。あたしなんかが医者になれたら、耕一は総理大臣になれるよ。」
「いや、まぢ冗談抜きで。梓の成績だったら医大目指しても・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
ギュッ←包帯を絞る音
「うぎゃっ!?」
「はい、治療おしまい。」
「だ、だからもっとやさしくぅ〜・・・。」
「耕一。」
「なんだい?」
「しっかりしろよな・・・・。あんたお人好し過ぎるから。
はっきり言いたい事言わないと、姉貴だって妹達だって黙ってるだけじゃ分かってくんないよ。」
「・・・・・・・は、はぁ・・・・。」
「それと、いっつも自分は人間不信だみたいな事言ってるけど・・・・別に大してそれっぽくない。」
「・・・・そうか?そりゃ一応梓達は親戚なんだし、あまり露骨に・・・・。」
「それってカッコ悪い事だし、早いうちに治さないと、知らないぞ。」
「ったく、時々梓って、おふくろみたいな口調になるよな。」
「・・・・・ばか。」
梓は俺の手当てを終えると、
すぐその場を立ち柏木姉妹に召集をかけた。
「ちょっと〜、全員居間に集合〜。」
「はーい。」
「はいはい。」
千鶴さんと初音ちゃんが居間にやって来て、俺と梓で計4人が集合した。
全員が円卓のちゃぶ台に座ると、梓が話を切り出した。
「んで、今回のテロの原因は一体何?」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・ははは・・・・。」
し〜ん。
「先に言っとくけど、黙秘権は通用しないよ。さっさとゲロしな。」
「・・・・・実は千鶴ねーちゃ・・・。」
「初音ちゃん♪・・・・黙ってろや虎羅。」
「姉貴、脅すなッ!何なんだい?」
「・・・・・・いや、俺から言うよ梓。」
「えッ!?」
「ッ!?こ、耕一さん!!」
突如口を開いた俺に周囲は驚いた。
「じゃ耕一、話してよ。」
「・・・・実は今日足立さんから、鶴来屋次期社長就任の要請を受けたんだ。」
「ッ!マジで?」
「あぁ、それで今後の身の振り方とかを色々話されているうちに・・・・
なんだか・・・その・・・こんがらがっちまって・・・その場から逃げてしまったんだよ。」
「はぁ?それでなんで姉貴が怒るんだよ?」
「・・・・・・・。」←千鶴 ガタガタ
「・・・・・・・。」←初音 わなわな
「そ、それは、やっぱ千鶴さんにも面子があって・・・・足立さんの目の前で俺が逃げちまったから・・・・
ま、まぁ柏木本家に泥を塗るような真似をしちゃったし・・・・。」
「耕一・・・・嘘つくならもうすこしマシな嘘つけよ。」
「・・・・・・・へ?」
「そんな事で姉貴が怒るわけねーだろ。しかも宮大工に修理を頼んで大枚飛ぶような
こんな破壊活動行うなんて、よっぽど感情的じゃないとしないよ?」
・・・・・・確かに。
そう、中庭からみえる柏木邸周辺は、前衛的なモダンアートへと変貌している。
「ま、大体姉貴がこんなヒス起こすのって、耕一がらみなんだけね。」
「・・・・・・・・・しゅん。」←千鶴
「・・・・・・・・ジロッ。」←初音
「あ、あはは・・・・・こりゃ参ったな・・・。」
「・・・・・・・・・耕一さんは甘いですね。」
いつの間にか楓ちゃんが渡り廊下に姿を現していた。
「か、楓ちゃん!」
「あらら、もう目が覚めた?」
「・・・・・・・ビクッ!」
「・・・・・・にやにや。」
「・・・・・・・千鶴姉さん。」
「な、なに?」
「・・・・分家の人間から、何を吹き込まれたのかは知らないけど・・・・・
・・・・・・そう言った戦略的な結婚なら、命懸けで妨害しますから。」
「ッ!!」
それを聞いて、梓はあっちゃ〜とした顔をして
「なんだよ・・・姉貴またそそのかされたのかよ〜!?
・・・・ったく、幾らなんでも自分で適齢期だって焦ってたら分家の思う壺だぜ?」
「・・・・・・・う・・・ぐっすん。」
「へ?お、おい梓、どういう事なんだ?」
「いいか?柏木の分家の中には自分達が権力を握りたいって輩も少なくない。
今現在、鶴来屋の最高権力者は姉貴なんだけど、要は姉貴に体よく社長を辞めてもらいたいんだ。
その為に一番手っ取り早いのが、どっかの嫁にしちまうって事なんだよ。
しかも、本家の血を受け継ぐ耕一という厄介な男児もいたもんだから
場合によっては2人をくっつけちゃったら、上手くいけば鶴来屋を乗っ取れるって事だよ。
耕一は生まれも育ちも隆山の人間じゃないし、鶴来屋に興味もないから、
後は鶴来屋の社長を分家からうまく後釜にしちゃえばいいって事。」
「えっ!?だ、だって足立さんは、俺に社長になれって・・・。」
「足立さんは、分家の考えなんてお見通しだよ。だから耕一を社長にさせれば問題ないじゃないか。」
「ほへぇ・・・複雑なんだな。柏木家の人間関係って・・・・。」
「姉貴ぃ〜、どうせ、この間の法要で分家の人間から結婚話とか持ち出されたんじゃないの?」
「・・・・・・・ごめんさい。」 しくしく
「あーあ、困ったねーちゃんだ事。こっちの身にもなってもらいたいよ。」
「まぁまぁ、初音。そういうなって。」
「・・・・・罰ゲームね。」
・・・・・・・・・。
千鶴さんは晩御飯中もしょんぼりしていたので、流石に可哀想になった。
晩御飯が終わると、梓、楓ちゃん、初音ちゃんが何やら折りたたんだ紙切れを
それぞれ5枚づつ千鶴さんに差し出した。
「・・・あれ、何なんだ?その紙。」
「えへへ〜、柏木家伝統罰げいむだよぉ♪」
「・・・・・・・ふふふ。」
「ば・・・罰げいむぅ・・・・?」
「あれ、耕一知らなかったっけ?あたし達が一人5づつなんか罰ゲーム書いた紙を用意すんの。
んでもってその中から1枚づつ引いていって、それに書いてある罰ゲームするの。
まぁ、今回は姉貴が1人で3つやるって事かな?あ、よかったら耕一も書くぅ?」
「・・・・・・・・。」 ぷるぷる←千鶴さん
「・・・・いや、今回は遠慮しとくよ・・・。」 (汗)
俺が罰ゲームを考えるとしたら
「俺の周り半径42、195k以内に近寄るな。」
とか、真剣に書きそうだからな・・・。
「さぁさぁ♪姉ぇ〜、どれをとるぅ〜♪」 うりぃ〜うりぃ〜
「・・・・・・・・・・当たりが出たらもう一本。」 にやそ
「まぁ、今回はある程度勘弁してやってるから。」 くっくっくっ
主役の千鶴さんは屈辱の為だろうか?プルプルと怒りで体を震わしている。
「くっ・・・・!分かったわよ・・・・引けばいいんでしょ。」
千鶴さんは渋々3人から1枚づつ引いたあと、それを開いて中身を見た。
俺も、好奇心で千鶴さんの背後から覗いてみた。
・・・・・・・・・すると。
「・・・・・コマネチ1万回。」
「胸板で洗濯。」
「2000HIT記念のTOP絵を即変更。」
↑
誰が書いたか予想してみよう♪
・・・・・・・・ブッ!
思わず内容を見て噴出してしまった。
「こ、こ、耕一さんっ!全然おかしくありませんっ!!」
わなわな
「ご、ごめんごめんっ!よ、よかったじゃないですか。意外にまともで。」
ちなみに俺の予想してた罰ゲームは
「・・・・・死ね。」
「スペランカーをノーミスでクリア。」
「タリバン入れ。」
とか思ってしまった。
「み、みんなあんまりだわっ!特に最後のTOP絵変更って、今日出来たばかりじゃないっ!」
「そんなの知らないぴょ〜ん♪」
「・・・・・・クスクス・・・胸板で洗濯・・・・クスクス。」←ツボにハマッたらしい
「さ・て・と♪姉貴には早速やってもらおうかな〜?」
「こ、耕一さぁ〜ん!みんながちーちゃんを虐めるぅ〜!」
「お、俺にふらないで下さいよっ!」
ギャーギャー
ワイワイ
本当にやかましい賑やかな家族だね。
・・・・まぁ、俺としては千鶴さんに・・・
殴った分だけ殴らさせて頂きたいが。(笑)
(All I want ヤーヤーヤーヤーヤ!)