鬼兵般家長
うた
DIE21話 鬼みの名は・・・ 〜鬼けっ!わだつみの声〜
翌朝、千鶴さんは朝食の席でこう切り出した。
「あの、よかったら今日、鶴来屋のレストランでみんなでランチでも食べない?」
「はぁ?なんだよ姉貴突然・・・。」
「・・・・・・・もぐもぐ。」
「おねーちゃん、それって鶴来屋の下の高級レストランの事?」
・・・昨日散々大騒ぎしたので、その御詫びだろうか?
まぁ、鶴来屋でランチなら千鶴さんも仕事の合間に来れるだろうからな。
「耕一さん、どうです?」
「あぁ、俺はいいっすよ。でも鶴来屋のレストランって結構高いんじゃぁ?」
「ふふふ、それは心配しなくてもいいですよ♪
ね?梓。たまにはみんなでお昼を食べましょうよぉ。」
「ま、アタシは別にいいけど・・・。」
すると楓&初音ちゃんのスーパー魔裏汚ブラザーズが・・・・・。
「そういえばぁ〜、この間、南隆山に出来たフランス料理店って超人気なんだよぉ〜。」
「・・・・・・・・・・駅前のイタリア料理店の『コスタ・デル・ウバシァ』もいいかも・・・・。」
「鶴来屋の古臭いレストランなんかやめて、4人で行かないぃ〜?」
「・・・・・・そうね、4人で行きましょうか。」
・・・・・この二人は・・・・。
「あ、あ、あ、あんた達っ!なによっ!
そのあからさまな態度はぁ〜!」
ダンッ!
ちゃぶ台をしばく怒りのちーちゃん。
「あ、姉貴、朝から怒るな・・・!
・・・いいじゃん、2人とも。せっかく姉貴が提案してんだし。」
「だってぇ〜〜、ねぇ〜〜〜〜?」
「・・・・・あからさまに御機嫌伺ってるし・・・・。」
ま、まずい・・・千鶴さんがわなわなと振るえている。
と、とにかくフォローと入れないと・・・またとばっちりが!
「お、俺は是非行きますよっ!鶴来屋の高級レストランはここ何年も行ってませんから!」
「あら♪そうですか!分かりました。じゃあ3名で予約入れときますね♪」
「まてや、ゴルァ!」
「・・・・異議あり。」
「・・・何?貴方達はフランス料理なりイタリア料理なり
2人で食べにいくんでしょ?」
千鶴さんが冷たく言い放つ。
「お兄ちゃんが行くんなら、私も行くも〜ん♪」 ぺぺろろ〜
「・・・・・・・当然の帰結。」 しれっ
飽く迄冷静に切り返すスーパー魔裏汚ブロス。
う〜ん、将来が恐ろしい・・・。
結局、12:30に鶴来屋のロビーで待ち合わせという事になった。
約束の時間の20分前に着いてしまった俺達は、待ち合わせ時刻まで時間を潰していた。
楓ちゃんはロビーのソファに座り、何やら雑誌を読んでいる。
何を読んでるのか聞こうとしたが、ちらりと「ムー」とかいう名前が見えたので放置。
初音ちゃんは・・・・何故ベビールームで遊んでるんだ・・・・?(汗)
梓はどっから持って来たのか?レストランの御品書の値段を見て青ざめている。
・・・・ホントにそこらの主婦と一緒だ。
俺は特にする事もないので、そこらをぶらぶらしていた。
・・・・・・・・・ふ〜ん。
・・・・・・・・・・相変わらず繁盛してるな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あれ?
ふと、ある女性の後姿が目に入った。
ッ!!
俺は急いで今見えた女性に向かった。
だが、すぐ奥にエレベーターがあり、丁度扉が閉まったところだった。
既にそこには誰もいない。
「あれっ!?さっきの女の人って・・・・。」
「おーい、耕一!来たぞー!」
「あ、あぁ今行く!」
仕方なくロビーに戻ると、千鶴さんが来ていた。
「御待たせしました♪さ、行きましょ♪」
・・・・・・・・・ま、いいか。
俺は4姉妹と一緒にレストランに入った。
昼のレストランはバイキング方式になっており、高級食材をふんだんに盛り込んだ
とてもゴージャスな内容だった。
・・・・・・・が。
「耕一さん♪ローストビーフは如何ですか?」
「お兄ちゃん♪このサーモンマリネすっごく美味しいよ〜。」
「・・・・・・・・はい耕一さん、あーん。」
「耕一ぃ、何がいい?取ってくっから。」
・・・・・・・・。
待て。
これって、確かバイキングだったよな?
俺は柏木バイキング(海賊)に優雅な昼食を略奪されてる気分で一杯だった。
・・・・って言うか、好きに食わせてくれっ!!
他の客の視線が激しく痛いのも、恥ずかしい事この上ない。
散々あれこれ皿に盛られた上、さらにデザートまでこの勢いでいきそうだったので
たまらず俺は撤退。
4姉妹は・・・さすが女の子って言うか、デザートは別腹なんだな。
・・・・・・・・・ケーキを奪い合いしている・・・。
うがぁぁ〜〜!!
ガルルルル!
恥ずかしくて情けなくて・・・・恨っんだっ夜ぅ〜♪
俺は鶴来屋の庭園に一人で佇んでいた。
ザザ〜ン
近くの海から波音が聞こえて来る。
・・・カッコーン
庭園の獅子おどしの音が聞こえる。
・・・・ふっ
俺の視界が急に暗くなると・・・・って、えっ!?何だっ!?
「だ〜れだ♪」
「は、はぁ!?えっ!嘘っ!?」
「ふふふ。さて、私は誰でしょう?」
「いや、・・・そりゃ声で分かるけどさっ!でも・・なんで?」
「ぶぶー。柏木耕一くん時間切れで〜す。」
ぱっ
視界が明るくなる。
塞がれていた両目が自由になったので、改めて背後の人物へと振り返る。
・・・・・・・どきどきどき。
さっきまで温泉に入っていたのだろうか?浴衣を着ている女性。
曇っているメガネを少しずらしてかけているが
とても知性的で優しそうな笑顔。
俺の見知っている女性そのものだった。
「やっほ〜♪」
「ゆ、ゆ、ゆ、由美子さんっ!!
・・・・は、はぁっ!?な、なんでっ??」
(I Only Want to See You Laughing In The Purple Rain)