鬼兵般家長
DIE24話 萌える!鬼いさん
夜になっても梓のモンキーパンチをもらったお腹が痛かった。
う〜ん・・・イタイよぉ〜・・・。
客間にあるソファに座り、お腹をさすっていると、
初音ちゃんがトテトテと、こちらへやって来た。
「お兄ちゃん、そろそろ晩御飯だよ〜♪」
「ふぁ〜〜い。」
お腹が痛くても、ハラは減るんだよね〜。
俺はもそもそと居間に向かった。
居間へ着くと、食卓の上にはいつものように食事が並べられており、
それを囲むように千鶴さん達が・・・・
・・ってあれ?なんか皆さん戸惑っていらっしゃるが・・・。
俺をみんなの目線の先を追ってみると・・・。
「ほわっ!?」
目線の先は食卓の一角へと向けられていたが、
そこには『耕一専用』とぶっきらぼうに書かれた紙と
茶碗に盛られた一杯の御飯と・・・・梅干オンリー。
「コ・・・コレッテ・・・ドユコト?」
「ちょ、ちょっと梓?どうして耕一さんの御飯がこれなの?」
千鶴さんが台所にいる梓に訊ねる。
すると、台所から無表情の梓さんが『ヌッ』っという具合に出てくると
「どうしたもこうしたも、それが耕一の御飯だよ。」
と、冷たく言い放つ。
「お、おいっ!どういうつもりだよ!いきなり、めしと梅干だけなんて
こんな素敵なバリューセット出されても喜ばねーっつーのっ!!」
「・・・・ふん。あんたはこれで十分だよ。」
「はぁ!?」
いきなりエンゲル係数が反転した俺の食事。
・・・・・これってまさか・・・・。
「・・・・・・・・いやがらせ?」 ぼそっ
横から楓ちゃんのストレートな一言。
・・・・・やっぱり、そうっすよね。
「梓、どうして耕一さんにこんな意地悪するの?」
千鶴さんが年長者らしく?静かに問い掛けると
相も変わらず無表情な梓が
「何故かって?聞きたいの?」
ッ!!
いやっ!聞いちゃいや〜〜〜〜!!
「あああああああ、あののの、そ、そりはですねぇぇ〜〜!!!」
とっさに俺が話に割り込んだ。
「たたた多分、僕ががが、そののの・・・・」
「?こ、耕一さん?」 (汗)
「・・・・・とにかく、ちょっと今、耕一と喧嘩してるから
姉貴達は口を挟まないで頂戴。」
そこでようやく上手く話せるようになった俺が、
「あ、梓っ!いくらなんでもこりゃねーだろ!
生命活動の基本である、食う!寝る!出す!を逆手にとるのは卑怯だぞっ!」
「・・・・・ふん。嫌なら食べなければ?」
ムッ!
「あぁ!そうかよ!いいさ。俺には『鵜婆紗』が待ってるよ〜だ!」
俺は腹が立ったので、居間を出ようとすると
「待ちな。」
ムンズッ
と肩を梓さんに掴まれた。
「・・・・耕一、黙って食わねーと・・・喋るぞ。」 ぼそっ
ぎゅゅゅ〜〜〜♪
掴まれた肩が悲鳴を上げる・・・。
「そ、そんなぁぁ〜〜〜!!!・・・・ぐっすん。」
ウグゥゥ〜〜〜♪←ハラの虫
「・・・・・うぐぅ。ひもじいよ〜・・・。」
夕食後、部屋でのたれ死んじていると。
コンコン
誰かが障子を叩いてきた。
「?ふぁ〜い、どうぞ〜・・・。」
スゥ〜〜〜
「耕一さん♪入りますよ〜♪」
千鶴さんが入ってきた。
「うぐぅ・・・何すか?」
「耕一さん、ひょっとしてお腹減ってます?」
「そりゃそうですよ・・・あんな日の丸弁当だけじゃ・・・。」
「うふふふ。そうですよね。あれだけじゃ足りませんよね♪」
・・・っ!!
やばい!なんかマズイ状況に・・・っ!!
「あ、あの・・・千鶴さん?」(汗)
「はい、耕一さん♪これでも召し上がって下さい。」
と言いながら千鶴さんが何かを後ろから出そうとした。
しまったぁぁぁ〜〜〜〜!!!!
ちーちゃん特製夜食とかぬかして、夜処苦を作って来たに違いないっ!!
終わったーーーっ!!
今更「すいません、お腹一杯です♪」なんて言えねー!
スッ
・・・・・・ほへ?
意外にも千鶴さんが出したものはカップラーメンだった。
「てへっ。こっそり台所から持ってきちゃった♪
ポットにお湯を入れて来たので、食べて下さい。」
た、た、助かったぁ・・・・。
「ほんとは私が何か作りたかったのですが・・・。」
いや、それは結構です!
さっそくカップラーメン『大盛り!ブタキムチ』にお湯を入れようとすると、
ガラッ
「・・・・・チャオ。」
突然、楓ちゃんが乱入。
「おわっ!か、楓ちゃん。どうしたの?」
「・・・・・・ダーリン・・・夜食♪」 ぽっ
「や、夜食?そ、それは嬉しいなぁ〜。」
「・・・・・・ホカホカ肉まんで押しくら饅頭。・・・・これで夫婦もおしどり夫婦♪」 にやそ
・・・・また訳の分からん事を・・・。
楓ちゃんは手にホカホカの肉まんが入った袋をぶら下げていた。
・・・・が、すぐにとなりで殺気だっている千鶴さんに気付くと
「・・・・・・姉さん。何してるの?」
「う〜〜、何してるのじゃないでしょ!残念でしたぁ♪
もう耕一さんには私が差し入れしてますよ。あなたの出番は無いの!」
楓ちゃんは目線を俺の手元にあるカップラーメンに移した。
「・・・・・・・・くすっ。」
「な、なによっ!その勝ち誇った顔はっ!!」
「・・・・・・・カップラーメンを差し入れ。いいセンスね。姉さん。」
「に、肉まん如きで偉そうにしてんじゃないわよっ!!」
・・・・また始まった。
しかもレベルが低すぎる・・・・。
すると更に追い撃ちをかけるかの如く
ガラッ
「お兄〜ちゃん♪夜食作って来たよ〜♪」
上機嫌の初音ちゃんが御盆を片手に乱入。
3姉妹の乱入で、最早俺の部屋はキング・オブ・ファイターズ2002状態。
最後の来訪者である初音ちゃんは、すぐ他の2人に気付き
それぞれの持参品を確認するや否や、
「うわぁ・・・カップラーメンとコンビニの肉まん・・・。最悪ぅ〜。」
「な、なんですって〜!」
「・・・・・なんだコノヤロー。」
「お兄ちゃん♪私が特製鍋焼きうどん作ったから食べてね♪」
「は、はははは・・・・あ、有難う初音ちゃん・・・。」
「耕一さん・・・・私の喝腐ラーメンがいいですよね?」
「・・・・・・・・冬は憎まんが王道ですよ。」
「そこのアホ二人はほっといて、熱いうちに召し上がれ♪」
・・・・・・・。(滝汗)
ひっ!!
いつの間にか後ろの方に梓がいるぅ〜!!
「・・・・いいじゃん。食べれば?」
はぁぁ〜〜〜!!地獄っ!!
・・・・・・・・・。
結局3人の差し入れを無理矢理詰め込んで、お引取り願った。
「うぅぅ・・・今度はハラ一杯でしんどい〜。」
「バーカ。断ればいいのに、無理して全部食べるからだよ。」
「あ、あのなぁ・・・なんでそんなに怒ってるんだよ!」
「っ!怒ってないねっ!」
怒っとるがな・・・・。
バンッ
梓は荒々しく部屋を出て行ってしまった。
「ふんっ!ったく。しょうがない男。」
「素直じゃないね。」
「っ!!初音!あんたいつの間に・・・!」
「ねーちゃん。何があったの?教えてよ。」
「・・・別にぃ。ちょっと耕一に気合を入れてやってるだけさ。」
「そう?どうみても嫉妬して怒ってるようにしか見えないんだけど。」
「うっさい!お子様は早く寝ろっ!」
「自分だって、子供じゃない。」
「チッ!口ばっか達者なんだから!」
ドスドス
「・・・・梓姉ぇも・・・結局それって訳か・・・。」
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
「チッ・・・イライラする。なんで昼間のことしか考えられないんだ?」
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
『渡さない!初音達にも、あの子にもっ!!』
( The Other End Of Time )