鬼兵般家長


                                                           
DIE30話 ボクハ ヨシ鬼ノ ガッ鬼デス・・・。

 


ゆ、由美子さんは・・・何処へ行ったんだ!?

4姉妹に囲まれて身動きがとれずにいた俺は、

今、この場に由美子さんがいない事にようやく気が付いた。

ちょ・・・みんなどいてくれっ!!

ワイ

ワイ

ギャーギャー

や・・・・・

 

「やかましいっ!!」

 

し〜〜ん

ゆ、由美子さんは・・・・!?

ダッ!

 

「無駄だ。耕一くん、彼女には御引取り願った!」

 

足立さんが厳しい口調で叫んだ。

 

「はぁ?・・・ど、どういう事なんですかっ!!」

 

「彼女には今日にもチェックアウトしてもらう事を
 

 御願いしてたのだ。理由はついさっき君に言うまで話していなかったが、
 

 鶴来屋代表として、失礼の無い様に取り計らわせて頂いたつもり・・・

 

「そんな事はどうでもいいっ!!勝手な事すんなっ!!」

 

バンッ!

急いで従業員階段から下へ降り、ロビーに向かおうとすると、梓が先回りして待ち構えていた。

 

「どけよ、梓!」

 

「イヤだっ!どかないっ!!」

 

「邪魔すんなっ!!」

 

「なんで追うんだよっ!やっぱり好きなんだろっ!?」

 

「・・・・・・・。」

 

「姉貴や妹達の求愛行為なら・・・アタシだって多少は我慢出来た・・・。

 だけど・・・・他の女は我慢出来ないっ!!

 

「好・き・と・か・・・嫌いとか・・・最初に言い出したのは、誰なのだろうっ!!」

 

「さあねっ!誰なのかしらっ!?

 

「梓、俺は・・・・柏木家の行く末なんて興味が無ぇ!」

 

「そんなのアタシだって無いよっ!!ただ、アンタだけは誰にも渡さないっ!!

 

「ハ、ハハハッ!!最高だぜっ!!お前のその病的な恋愛感は嫌いじゃないぜっ!

 ・・・・・だけど、それとこれとは別だっ!!」

 

強行突破を図る俺を迎え撃つ、柏木本家3女。

既に梓は鬼の力を解放した右手で俺の進路を塞ぎにかかる。

正直なところ、こいつの右手は厄介だ。

掴まれたら最後、物凄い握力で粉砕される!

・・・・まぁ、そこまではしないだろうが・・・・今はするかも。(汗)

 

「クッ!!駆け抜けて逝〜く〜!!」

 

「ワ・タ・シ・の・・・メモリアルッ!!」

 

凄まじい勢いで迫り来る右腕を紙一重で避けると、

俺は梓の脇下を通り抜け様と水平に跳躍する。

だが、梓は狙い済ましたかの様に、蹴りを垂直に放ってきた。

・・・・やっべぇ!

こんなのまともにくらったらライフスペース行きは免れないぞ!

とっさに俺は体をひねると、背面飛びの様な状態で

梓の蹴りを避けようとした。

 

「ちゃんとメシ食ってんのかぁ〜〜!?ああんっ?」←梓

 

「大ッ嫌いだぁっ!!」←耕一

 

ガッ!!

 

梓のジェクトシュートはギリギリ俺の靴のカカトを

かすっただけで、空振りに終わった。

・・・・助かったっ!!

俺は両手を使い、着地と共に反転すると、そのまま出口に向かって走った。

・・・・一般人に見られなかったのが不幸中の幸いだ。

まぁ、見られたら見られたで、映画の撮影ですって誤魔化しゃいいが。

 

「耕一ィッ!!今更無駄だよっ!!」

 

「無駄だろうが何だろうが、知らねーよ!」

 

「耕一ッ!戻って私を抱きなさい!」

 

「お前、それ。なんかの映画で見たぞっ!!」

 

他の3死舞が追ってこなくて、ホント助かった・・・・・・。

・・・鶴来屋を脱出した俺は、温泉街を抜け・・・

ハァ・・・ハァ・・・・!

どこだっ!?どこへ行ったんだっ!?

・・・・!?

待てよっ!?御取引願ったって・・・まさか・・・!

俺は駅へ向かって全力疾走。

ハァ・・・ハァ・・・。

・・・・考えたら・・・タクシー使えよ。

ようやく駅に着くと、俺は改札口を飛び越え駅構内に侵入。

 

「ちょ、ちょっと御客さんっ!?」

 

「届け物ですっ!!直ぐ戻りますからっ!!」

 

上の電光掲示板に掲載されているダイヤを見ると

番 17:30 特急たかやま 隆山発 東京行き 本日最終

・・・こ、これだっ!

時刻は17:27分を回っている。

まずいっ!!

俺は急いで7番ホームへの連絡橋を渡り、特急の停車しているホームへ。

何処だ・・・何処にいるんだっ!

ドクンドクンドクン

鬼の力を少しだけ解放し、由美子さんの気配を記憶と照合して辿る。

・・・・!

あ、あそこだっ!!

由美子さんは列車の客席には座らず、乗車口に佇んでいた。

 

「由美子さんっ!!」

 

「・・・!!」

 

俺は由美子さんの前に立つと息を切らしながら・・・・・・・

・・・・・何を言えばいいんだろう。

 

「ゆ、由美子さん。ゴ、ゴメン!あの人達が言った事で不快にさせたのなら

 ・・・あ、謝るからさ。きゅ、急に帰らないでよ。」

 

「・・・・・・・耕一くん。」

 

「ほ、ほら、まだ隆山の名所、沢山あるんだぜ?

 俺、由美子さんに教えてやろうと思って、昨日から色々考えて・・・・。」

 

ジリリリリリ

 

『7番ホームから隆山発東京行きの特急たかやまが間も無く発車いたします・・・』

 

「ごめんなさい。」

 

「・・・・・えっ!?」

 

「私、耕一くんのおかれている立場や、周りの事を考えないで、勝手に連れまわしちゃったね・・・。」

 

「な、何言ってんだよ・・!?」

 

「耕一くんって、どこか影があって、不思議な魅力がある人だなぁって思ってたんだ・・・。」

 

「は、はぁ?一体何言って・・・・。」

 

「耕一くんは・・・・あんなに愛されているんだから、裏切っちゃ駄目だよ。」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「参ったなぁ・・・私が入る余地なんて・・・初めから・・・・。」

 

ツゥー

由美子さんの頬に涙が伝う。

・・・!!

 

「は、早く降りて・・・・

 

プシュ〜

 

ドアが閉まる・・・・

クソッ!!

とっさに特急に乗ろうと身を乗り出すと・・・・

グワシッ

・・・ほわっ?

後ろ襟を誰かに掴まれ、そのままリバース。

パタン♪

ガタン・・・・ガタンガタン・・・・ガタンガタン

ドアの向こう側の由美子さんは一度もこちらを振り向こうとはしなかった・・・・。

あぁ・・・・電車が・・・電車で・・・・電車でGO。

尻餅ついた僕は・・・呆然と特急列車を見送っていました。

 

「駄目ですよぉ♪耕一さん。無賃乗車じゃないですか。」

 

最後の最後まで飽く迄邪魔しやがる柏木4死舞。

 

「・・・・・・・・・。」

 

「あの子も無料で鶴来屋に宿泊出来たんですから、ラッキーよね♪」

 

「残念だなぁ、折角御土産の『隆山まんじゅう』持って来てやったのに。」

 

「・・・・・二度と来るな。」

 

「えへへ。愛の力の勝利って感じだね♪」

 

俺の背後で、無邪気に喜ぶバカ4死舞。

楓&初音は、『鶴来屋の御利用、有難う御座いました。ぶぶ漬食ってお帰り下さい。』
                                              ↑
                                  (※京都地方で使われる『二度と来るな』の意)

といった垂れ幕をかかげてハッスルしている。

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「さ♪耕一さん。帰りましょう♪今日はちーちゃん特製のスペシャルディナーとか如何?」

 

「耕一ィ、別にいいじゃんか。唯の友達なんだろ?」

 

「・・・・・・・・今夜はたっぷり慰めてあげますから(はあと)」

 

「お兄ちゃん、ほらぁ行こ♪今夜は一緒に御風呂に入ろうね♪」      

 

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・何かが俺の中で、切れた。

 

「・・・・・・・・・・・お前ら。」

 

「もしもーし?・・・・・・耕一さん?」

 

「・・・・・・・・・・・お前ら、ほんと・・・ククク。」

 

「あ、姉貴・・・なんか耕一、変じゃない?」

 

「・・・・・・・・・・・最高だよ。お前ら。クケケケケ。」

 

「・・・・・・・・・・・ダーリン?もしかして、壊れた?」

 

「・・・・・・・・・・今夜も最高のギグになりそうだぜ?」

 

「あ、姉ぇ!お、お兄ちゃんが変だよ!?」

 

 

 

 

「お前ら、今夜はとぶぞ?コラ。」

 

 

 

(エックスエキゾチックジャパン)